ボトルコレクションというジャンルをご存じでしょうか。 特に海外で結構盛んなようで、米国では同好の士が集まって開拓時代の今は影も形もなくなった町の跡を発掘するという本格的な人たちもいます。 運が良ければ当時のガラス瓶がザクザク出てくるそうです。
 昔の真空管もこの様にどこかに埋まっているので有れば、たとえロッキーの山奥でもタクマラカン砂漠や南極大陸でも出かけていって発掘したいのですが、そんな筈もありません。 (南極はひょっとすると...)
 やはり、時間と足と運で探すしか他に道は無いようです。
 ガラス瓶と違って真空管は、たとえ100年近く前の物でも、フィラメントに点火してやるとガラスの中の真空の世界が当時のスペックを伴って甦ってくれます。 
 このコーナーでは、運良くめぐり会えた昔の真空管を中心に紹介しています。


 
HISTORIC TUBES
 真空管は、かなり昔から有ったと言うのが一般的な印象ですが、その起源を探ると、19世紀(1879年)有名なエジソン(Thomas Edison)の炭素電球発明まで遡る必要があるかもしれません。 もっとも真空管そのものの起源は、20世紀始め(1904年)イギリスのフレミング(J.A.Fleming)が発明した2極真空管(2極管)と言うことになります。 また、そのすぐ後(1906年)米国のド フォーレ(de Forest)が3極管を発明し、真空管の可能性が飛躍的に高くなりました。
 こうした偉大な先人のおかげで、私たちは今日真空管アンプを楽しめているわけです。

 このギャラリーは、そうした歴史的変遷を技術的に紹介するというアカデミックな内容では有りません。 現物を紹介する事で、昔の物から戦後まで真空管がどのように変化していったかを何となく分かっていただければと思い始めました。 
 昔の人は、よくこんな球を作ったな とか、変な形をしているな といった感じで、見ていただければけっこうです。
 お気軽にお立ち寄り下さい。
   

UK
 最初の真空管は、英国で誕生しました。 1904年のことです。 発明者 John Ambrose Fleming の名前から Fleming valve と呼ばれるようになりました。
 当時、彼が籍を置いていた Marconi社が、さっそくこの Fleming valve を使用した新型の無線機を発表する事になります。 情報の世紀と言われる20世紀の幕開きに相応しい出来事でした。
  

#01

英国における超古典管の最初は、やはり Fleming valve(フレミングバルブ)と言うことになります。
 ここでは、そのフレミングバルブと少し後に登場する Round valve(ラウンドバルブ)を紹介しています。
 どちらも英国の代表的 Historic valve で、日本の当ギャラリーで紹介できるのが光栄に思える真空管です。




Germany
 ドイツでは、Fleming valve 登場の1年前、Arthur Wehnelt が、やはり2極管を発表していましたが、実用には至らず結果的に真空管発明の栄誉を Fleming に明け渡す事となりました。
 ドイツでの実用化第1号は、Robert von Lieben の Lieben tube です。 1910年代に入ってからの事です。
 この Lieben tube には、開発順に幾つか種類が有りますが、どれも独特の形状をしたものです。(今日見るとガラス製のコーヒーメーカーと思われるかもしれません。)
 数年前某国の特殊なマーケットで一度この Lieben tube を見かけましたが、限りなく非現実的な価格が付いておりました。  (国産普通車が買える値段でした。)

#01

ドイツの最初期の例として、有名な3種類の真空管を紹介しています。 
SSI(Siemens Schottky)、EVN171(Telefunken)そして Type-A(Siemens & Halske)です。
 この3本は、ドイツの超古典管では御三家的存在で、欧州のHistoric tube の代表格でもあります。


#03

1920年代の後半、ドイツを中心に1本の真空管に複数のユニットを封入した複合管が造られるようになりました。
 そのような複合管の代表例と言えるのが、今回紹介する LOEWE 社の一連の真空管です。
 何しろ、真空管ユニットの他に回路に必要な抵抗やコンデンサ−まで一緒に閉じこめてあります。 1920年代のICと言えなくもない特異な存在でした。

#04

TUBE & VALVE GALLERY でも紹介しましたGERMAN POST TUBE の原型は、第一次大戦中に生まれました。 
 開発者は、Siemens & Halske 社のDr.Walter Schottky で、有線電話回線の増幅管として旧ドイツ郵政省に納められました。
そうした初期のPOST TUBE を何点か紹介しています。





France
 1910年代初め 第一次大戦の足音が忍び寄るヨーロッパ各国では、国の命運を左右する軍事用無線通信確保のため、熾烈な真空管開発競争が行われていました。
 ドイツと国境を接するフランスでは特に深刻な問題で、軍を中心にまさに国策と言って良い体制で開発を進めていました。 その結果、当時のドイツやイギリスをも凌ぐ真空管を誕生させています。

#01

フランスでの実用第1号(1915年頃)がこのTM Tube と呼ばれる真空管です。
 高真空、シングルエンドタイプ、円筒形電極 等々当時の世界レベルの最新技術を全て凝縮したと言っても良い当時としては画期的な真空管でした。
 欧州真空管のルーツになったと言っても過言でない存在です。


[NEXT] 次回以降は、準備の出来たものから順次追加する予定です。

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