LOEWE multiple tubes
3NF の後期版がこの3NFB です。 電気的にはほとんど3NF と同じです。
全長は、3NF とほぼ同じですが、ガラスグローブの直径はふた周り位太くなっていますので、短く見えるかもしれませんが堂々たる外観の真空管です。 ガラス表面には、銀色にメタルスプレーシールドされていますので、内部の構造は分かりません。
ただ、コーティングのはがれた部分から中を覗くと3NF とは内部の構造がかなり異なるように見えます。 まず出力用のユニットが大型化され、その位置も3NF のセンターからサイドに移動しているようですが確かでは有りません。
(ご覧になっている方の中には、それならいっそコーティングを剥がしてしまえば良いのにと思われるかもしれませんが、この様な真空管はオリジナルの状態で次の世代に残すべきと考えています。
興味本位に状態を変化させるのは、厳に慎むべきと思います。 海外の文献でも、コーティングを剥がさず内部を確認するためX線撮影までしている例が有ります。 こうした気づかいが有るからこそ海外では、希少な真空管も現在まで残されているのではないでしょうか。)
3NF のシリーズにはこの他に、3NFK、3NFL、3NFNetz、3NFW が有り、真空管ユニットの構成や抵抗、コンデンサーの数などは基本的に同じです。 だた、3NFK、3NFL は出力段ユニットをかなりパワーアップしてあります。
LOEWE では、1930年代前半に3NF や2HF の発展型にあたるWGシリーズを新たに出しています。 このシリーズでは、各真空管ユニットが傍熱タイプとなり出力管も5極管が採用されるようになりました。 また、ヒーター電圧も50V,63Vなどと大きく変わっています(旧タイプは4V)。
WG33 は、そのWGシリーズの第1弾として登場した真空管です。 ガラス表面には3NFB 同様銀色にメタルスプレーシールドされた上に黒の艶消し塗装がなされていますので、内部の各パーツの配置などは分かりません。
ただ、封入されている真空管ユニットが、増幅用の3極管(AC2クラス)が2つと出力用の5極管(AL4クラス)が1つであることは分かっています。 3NF の改良版といったところです(ヒーター電圧50V)。
WGシリーズには、このWG33 以外にWG34,WG35,WG36,WG37 が発表されています。 WG33 は3NF などと同じく回路ごと封入してあるため6ピンの特殊なベースをそのまま採用していますが、WG34 からは12ピンのベースに変更されると同時に抵抗、コンデンサーを内部に入れ回路ごと封入すると言うLoewe 複合管の特徴がほとんど失われてしまいました(逆にこの為にピンの数を増やす必要がありました)。
これらのLoewe 複合管は、その発売当初から同社のラジオ受信機用に用いられていました。
写真の受信機は、1926年に複合管と同時に発表されたLoewe 2H3N です。 名前のとおり2HF と3NF 各1本使用した本格的な受信機です。 前述のように必要なパーツは回路ごと2本の真空管に入っているため、ご覧のように内部には真空管以外のパーツはほとんど見られません。
あとは周波数帯別のバリコンが3つ並んでいる程度です。 これに外付けのバッテリーとアンテナ(正面からの写真の左端に一部写っています(左右各2本))そしてスピーカーを接続するだけです。
この他に廉価版として3NF 1本のみ使用した受信機も発売されていました。 当時、この廉価版の方が良く出たようで、結果として3NF は結構製造されたようです。
この時代ラジオは各メーカーの主力商品で、同じドイツのTelefunken やSiemens社でも自社製の真空管を組み込んだラジオを製造販売していました。 ただ、Loewe のような複合管は、他のメーカーで造られることは無かったようです。
海外の文献には、当時ラジオはまだ贅沢品で、ドイツでは受信機に税金がかけられ、その税額は使用している真空管の数で決められていたと記載されています。 つまり真空管の数が多いと言うことは、増幅段が多く高級品と考えたからでしょう。 その税金対策としてLoewe では、この様な複合管を製造したと言う説です。
確かに興味深い説ではありますが、それだけが理由とはとても思えません。
ドイツの他のメーカーでは、この様な複合管を製造していませんし(TEKADE 社が2〜3ユニットを封入しただけの複合管を一時期出した例は有りますが)、同時期に英国や米国でも複合管は造られています。
1910年代の混沌とした時代を経て、1920年代は真空管に関する基本的な技術もほぼ確立され、次のステップへと試行錯誤が盛んに繰り返された時代です。 その為、欧米を問わず非常にユニークな真空管が多数登場したのもこの時代でした。 Loewe の複合管もそうした時代の代表的な産物と言えるのではないでしょうか。
ITEM overall length diameter of bulb 3NF 162 45 2HF 148 45 3NFB 156 52 WG33 156 52