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◆ 社名の歴史 ◆
「青磁社」という名の出版社は私たちで3代目となります。 第一次青磁社は昭和初期に歌集出版などを手掛けていました。 第二次青磁社は昭和40年代頃に詩集出版をメインに、やはり歌集も出版していました。 歌集出版にゆかりある社名を引き継いだ使命を、今後十二分に果たしていく所存です。


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◆ 週刊時評 ◆
川本千栄・広坂早苗・松村由利子の三人がお送りする週刊時評(毎週月曜日更新)



「女歌」と括る意味
text 広坂早苗

 先回の週刊時評で取り上げられていた「短歌」2月号の特集「女歌の現在(いま)」について、私も疑問に思う点があったので、記すことにする。
 まず、先回川本さんが、「何人かの女性歌人を選び、それを全て男性歌人が評する。また女性歌人の変化について、これも男性だけで座談をする。これらの構造に、ある種の古さを感じるのは私だけだろうか」「現代において、女性・男性問わず生き方は多様化しており、女性という分類で括れないことは短歌だけに限らないだろう。」と疑問を呈していた点であるが、私もほぼ同感である。この特集の構造は、男性の目から見た女性の歌を語るものであり、歌壇において男性は評価する側、女性は評価される側という発想が露骨に見える。この特集を読んだときにまず感じたのは、このことへの抵抗感であった。
 小高賢・大島史洋・吉川宏志の三者による座談会「女流歌人はどう変化したか」においても、ところどころ違和感を覚える発言があった。特に小高の次のような発言である。

 いままで女性にとって結婚、出産などの有無は大きな圧力として存在していました。それが、それほどでもなくなった。馬場さん世代が奮闘していた対男性、対社会という力学からもかなり自由になった。作品にそれが影響しているのではないでしょうか。

 男・女、働く・働かない、生む・生まない、結婚・未婚という対立軸がなくなったとき、女の人はどういう基準で生きていくのかなあ。もちろん男性的な発想ですが、気になります。

 男女雇用機会均等法が成立し、離婚や一人暮らしが当たり前になってきたとき、これから女性は何を根拠に自分の歌を構築していくのでしょうか。

 1980年代に盛んであった女歌論議では、女歌を、女性ということに目覚めた歌とす る立場と、手法(釈迢空が「ろまんちつくでありせんちめんたるである」と表現したような)と見る立場の両者があったが、小高の発言は前者の立場から成されているかと思う。女性の歌は、恋愛・結婚・出産・育児といった女性としてのライフステージを歌うものであったから、そのライフステージが多様化すれば、歌の構築が難しくなると考えているようなのである。女性特有のライフステージのみが、女性の歌のテーマであると考える、この一面 的な見方には納得がいかない。また、その上で今後女性の歌にはどのような活路があるかを論じているのだが、大島も指摘しているように、それは男女共通 の問題であり、女性の歌人に対してのみ特に提言するようなことでもないはずだ。
 男女とも生き方は多様化し、出産・育児をする女性にしても、育児が終わった後の時間は長い。小黒世茂の熊野、渡英子の沖縄のように、確固としたテーマを持って歌っている女性の歌人も多い。介護の現場を歌う男性の歌人も増えている。何を歌うか、という観点から男女の歌を分けることは、すでに難しくなっているのではないか。

 それに対して、王朝和歌や『明星』の女流歌人の文体に通じるような、手法としての女歌というものは現在にもあり、これは女歌の特徴として論じる価値があると思う。吉川が、今野寿美の〈柚子ななつ賜はりひとつ身にをさめ六つは夜に身をかをらする〉を取り上げて、

 何でもないことを、じつに優美に歌っている。これは女歌(じょか)の文体だと思うんです。男ではなかなか作れない。こういう歌は残っていってほしいな。

 と発言しているのに共感した。現在「女歌」と分類する意味があるのは、こうした表現技術・文体の問題に限られるのではないだろうかと思った。


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