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◆ 社名の歴史 ◆
「青磁社」という名の出版社は私たちで3代目となります。 第一次青磁社は昭和初期に歌集出版などを手掛けていました。 第二次青磁社は昭和40年代頃に詩集出版をメインに、やはり歌集も出版していました。 歌集出版にゆかりある社名を引き継いだ使命を、今後十二分に果たしていく所存です。


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◆ 週刊時評 ◆
川本千栄・広坂早苗・松村由利子の三人がお送りする週刊時評(毎週月曜日更新)

歌の読みの危うさ
text : 吉川宏志

 『正論』七月号の「負け犬サヨクの癒し場発見! 『朝日歌壇』」(中宮崇)という文章を読み、いろいろと考えさせられた。人によってはこの題を見ただけで嫌になるのかもしれないが、傾聴すべき点もあるように思われた。たとえば、

  米軍が地雷を敷設して誰もいないアフガンの村には砂舞うばかり  (横須賀市 U・E 近藤芳美選)

について、中宮氏はアフガニスタンの地雷は、
「旧ソ連がアフガニスタン侵攻の際に敷設したものや、ソ連撤退後の部族間抗争で敷設されたものが殆どであり、米軍が村に地雷を設置して村人を追い払ってしまったなどという話は聞いたことがない。」 と述べている。中宮氏の解説が正しいとすれば、いくら反戦を目的に作られた歌であったとしても、批判は免れないだろう。
 これは「朝日歌壇」だけの問題ではない。短歌は誰でも気軽に作れるという特徴があるので、詳しく調べることをせずに、誤った情報や思い込みをそのまま表現してしまう危険性があるのである。自戒すべきことだろう。
 ただ、中宮氏の言説にも危うさを感じる点がある。

   金郷県馬廟鎮村楊さんの畑の大蒜(おお ひる)皮むく夕べ (大阪府 K・T 近藤芳美選)

 「大蒜とはニンニクのことであるが、中国産ニンニクは、禁止農薬の使用などによって最もその危険性が指摘されている作物であることを指摘しておこう。」
 中宮氏はこの一首を中国の危険な農業を美化した歌だと読むわけだが、そのように政治的に読む必要はなく、漢字の地名の美しさや「楊さん」への親しみを味わえばよい歌であろう。短歌は繊細な言葉の芸術なのだから。
 戦前の俳壇では「枯菊」という語さえ皇室に対する不敬とされたという(山本健吉『現代俳句』)。中宮氏のような歌の読みは、こうした検閲的な読みにつながる恐れもある。
 中宮氏は「朝日歌壇にこんな句が掲載されたことがある。」と、短歌をすべて「句」と数えている。普通 短歌は「一首」と数えるもので、単純なミスだろう。ただ、そのミスを利用して「サヨクを批判するわりには日本の伝統文化に対する知識が足りない」と非難されたら中宮氏も嫌であろう。それと同じことで、短歌を読む場合も、細部に言いがかりをつけるような読み方をすべきではないのである。

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