ふくしまのゆふべのそらがかき抱(むだ)くかなかなのこゑ死者たちのこゑ みなづきは水の月なり濃みどりの雨を着たまふ磐梯のやま 青く脈打つ阿武隈川、雨を着る磐梯山、福島の大自然をふかく愛し、福島の先人を心から敬愛し、福島の言葉を根底的に信頼する作者が、3・11以後の「ふくしま」が直面する自然と現実をとことん見つめ、考え、うたっている。やわらかい心、そして、剛直な志が読める一冊である。・・・佐佐木幸綱「帯」より 第13回前川佐美雄賞
しんしんと時間がしろく降りつもりやがて消えゆくまでを見ていた過去(すぎゆき)の記憶に深く埋もれたる匂いの影のよぎるような日 そうであることとそうではないことの間(あわい)はつねに淡く隔たる
三首あわせて一つの景色、心の中の景色が出来あがる。言葉の踊りともいえるし、つかの間に消える言葉のドラマともいえる。わたしはそれを愉しむのである・・・岡井隆「跋文」より 第40回現代歌人集会賞