「羅針盤」9月号 第116号
発行 日本共産党三菱電機伊丹委員会
「羅針盤」は1985年10月に創刊された日本共産党伊丹委員会の職場新聞です。
「仲間と仲間、職場と家庭を結ぶ連帯のきずな」として月刊紙として発刊されました。
創刊後13年目を迎え、今号で第116号です。

三菱電機は「企業危機」で
リストラ人減らしは避けられないか?

正社員だけでも2年間で2,000人削減
時間外削減で裁量企画手当(20時間相当分)の停止

三菱電機は98年3月期の決算が単独・連結ともに赤字に達したことから、「2期連続は回避したい」といい、このほど労働組合に99年度末人員を44,500人とする2,000人員削減、時間外20%削減を理由にした裁量企画手当(時間外割増し金20時間分)や会社表彰金の停止など、総人件費を削減する「業績改善緊急対策」なるものを提案してきました。労働組合は会社提案に協力する態度をとっています。 (すでに、三菱電機は2,000年度末正規社員数を43,000人とする3,000人削減を発表している)

三菱電機は、重電機器、産業メカトロニクス、情報通信システム・電子デバイス、家庭電器など4つの部門をかかえ、従業員46,440人(98年3月31日)の総合電機メーカーです。

この三菱電機が「創業以来の危機的状況」で「同じ赤字が2年続けば会社の貯えが底をつく!」(社内報)というのです。

三菱電機の3月期決算をみると、確かに、当期損失(赤字)は338億円。連結決算で当期損失は1,059億円となっています。それでは明日にでも倒産かというと、とんでもありません。

■内部留保6,302億円、資本金の3.6倍に

こんなときに過去の利益のためこみである内部留保を見てみる必要があります。

内部留保とは、企業が毎期の利益のなかから企業内部にため込んだ過去の利益の総額といえます。企業の利益のうち毎年期末に税金や株主への配当、役員への賞与となって処分され、外部に流失した残りが内部留保となってため込まれるのです。

この部分は、商法で積立てを義務づけられている資本準備金、利益準備金などの法定積立金と貸借対照表に明示されずに、資産の過小評価、負債の過大計上、また退職引当金など各種の負債性引当金や過剰な減価償却による利潤の「費用化」による秘密積立金から構成されています。

内部留保は、資本準備金、利益準備金、退職給与引当金など各種引当金や税引き後の純益の蓄積である任意積立金などに、当期未処分利益金(税引き後の純利益に前期繰越金を加え、その合計から中間配当を除いたもので企業がどのように使ってもいいもの)を加えて算出します。内部留保を算出するため、三菱電機の貸借対照表から資本の部と固定負債の部を掲載しました。

【資本の部】 【固定負債の部】 (単位:百万円)
資本金 175,813 固定負債 717,213
法定準備金 社債 270,000
資本準備金 181,050 転換社債 77,262
利益準備金 40,273 長期借入金 149,974
その他の剰余金 189,367 退職引当金 194,364
任意積立金

電子計算機買戻引当金 649
(1)研究基金 300 海外投資等損失引当金 24,510
(2)特別償却準備金 27,097 その他固定負債 451
(3)プログラム準備金 2,272 ( 三菱電機98年3月期決算より作成)
(4)圧縮記帳準備金 2,413
(5)別途積立金 161,440
当期末処分損失 △4,155
(うち当期損失) △33,853
資本合計 586,505

三菱電機の98年3月期の内部留保は、法定準備金、剰余金、退職手当引当金、電子計算機買戻損失引当金、海外投資等損失引当金をあわせると、6,302億円もたまっていることがわかります。資本金の3.6倍もあります。

■この不況の時期に252億円も増やす
剰余金も資本金を上回る1,893億円

バブル崩壊・「90年代不況」が始まったのが91年です。92年3月期の内部留保が6,050億円ですから、この不況のあいだに252億円も増やしていることがわかります。

資本金にたいする比率をみても、資本金1,758億円に対して、当期損失(赤字)338億円を引いた残りの剰余金が資本金を上回る1,893億円もあるのです。

この一つの事実をみても、三菱電機の「危機」なるものが、いかにいいかげんなものであるかがわかります。貸借対照表には記載されていない含み利益=含み資産を加えればさらに膨らみます。

■賃上げなどにまわせば、消費不況打開に

わたしたち働くものは、不況で賃金が上がらず、生活が苦しいと、とかく企業もそうなのではないかと思いがちですが、大企業と労働者の生活とでは大違いであることがわかります。
大企業の場合には、ためこみすぎた内部留保の使い道をみいだせないでいるのが実態といえます。これを賃上げなどにまわし、消費需要を高めるように使うことができれば、消費不況を打開する道につながります。

■赤字の責任は経営陣に

98年3月期決算の赤字の主な原因は、海外子会社のリストラ費用(損失329億円)や長野工場などAV部門のリストラ費用(損失32億円)などです。
社長自身が、「事業の見直しや選択あるいは資源の投入やリスクマネージメントの問題」(決算報告書での社長挨拶)、市況悪化や通貨危機にたいする経営の舵取りミスの責任であると認めているところです。

■許せない労働者への犠牲転嫁

ところが、経営陣は「会社が危ない!危ない!」と、明日にでも企業がつぶれると言わんばかりの「企業危機」宣伝を煽り、「業績改善緊急対策」と称して、大量の人員削減をはじめ、時間外削減、裁量企画手当や諸手当のカットなど、労働者に責任と犠牲を押しつけようとしています。本末転倒≠ニいうのはまさにこのことではないでしょうか。

■リストラは業績向上に直結しない

大企業の「リストラ」が業績向上に貢献するよりも、かえって社内の矛盾を広げていることは労働省が最近発表した調査(「間接部門の効率化等の雇用への影響に関する調査研究」)でも明らかです。それは、残った社員の長時間・過密労働やサービス残業など負担増加だけでなく、大量の失業者をつくり、消費不況にいっそう拍車をかけ日本経済をいっそう困難にするでしょう。

■労働基準法の改悪中止。一方的な解雇をやめさせる

日本共産党はこうした事態を打開するため、労働基準法の改悪を許さず、企業の一方的な解雇、出向、配転をやめさせ、「解雇規制法」の制定で雇用のルールを確立させるなどの緊急政策を示して全力をあげています。


裁量企画手当制停止に職場の声

●裁量企画手当制度の一時停止で、裁量企画手当(時間外20時間分)が新たな残業規制でカットされ、大幅な減収になるのではないか。これまで20時間を前提にした収入で家のローンを組んでいたので今後の生活が心配だ。(S)

●そもそも裁量企画手当制は「業務の改善・効率化を図る」ということで、職場の反対の声を押しきって導入されたものだ。経営が赤字だからといって、時間外を削減するため20時間の手当が邪魔になるだけでは納得できない。会社のやり方は矛盾だらけだ。(K)

●裁量企画手当制で、これまで20時間以上の残業はサービス残業させられてきた。今度は「20時間の20%カット」で16時間以下に押さえこまれる。あまりにもひどすぎる。(T)

●株価の下落、経営状態の悪化のなかで、三菱本体がまずつぶれないことが大事ではないか。そういう意味で、会社提案を受け入れざるを得ないのでは、そうしないと自分の職場を失うことになる。(D)

●電機関連の他のメーカーで利益をあげているところもあるので、三菱の赤字は経営者の責任が大きいと思う。(Y)

●「仕事で成果はあげろ、金は出さない」では、まるでドレイ∴オいではないか。(B)


読 者 の 広 場
「羅針盤」読者からの投稿

●大型連休を本当に実現するには

7〜8月、職場は夏期「大型連休」となりました。前後2週間16日間の連休、他企業の人はうらやましがるのですが、カレンダーをよくみると、中身は連休前後の振り替え休日と本人の有給休暇の強制充当です。会社に出させた休日は16日間のうちたったの1日でしかありません。

私の職場は携帯電話の開発部門で、開発スケジュールはいつも遅れ気味で推移しています。連休はそういった追いつめられた意識のはけ口と化し、工期短縮の犠牲になってきました。

今回も残念ながら先例にたがわず、せっかくの連休も半分以下になってしまった若手エンジニアが続出しました。また、派遣労働者の多くもそれに巻き込まれました。
いまでもヨーロッパ諸国のバカンスとはほど遠い夏期連休ですが、少なくとも労働時間の上限が法律で規制される労働法制をかちとらなければ「 」付きの長期連休さえ砂上の楼閣でしかありません。(H)

●「わかりやすい決算」への反論(投稿)

社内報「めるこ」7月号で「誰にでもわかる決算」という論文が載りました。しかし、これは簿記や会計学の知識を持つ人のみがわかって、その他の人にはわからないものだと思います。

それは、論文の図が貸借対照表の「貸方」「借方」とは簿記の用語で左方すなわち資産の増減を「借方」、右方すなわち負債および資本の増減を増減を「貸方」すなわち資産に含まれるものとしては、現金、預金、先日付小切手,受取手形、売掛金仮払金、有価証券、商品、仕掛品、製品(流動資産)、建物、機械設備、土地、建設仮勘定、営業権、特許権、投資、前払費用、資本的支出(固定資産)、開発費、創立費、社債発行費、新株発行費(繰延資産)などがあります。

貸方すなわち負債資本に含まれるものは支払手形、売掛金、未払金、未払費用、前受金、預り金、預り有価証券(流動負債)、借入金、社債(固定負債)、資本金、資本準備金、資本剰余金、任意積立金、当期未処分利益(資本)があります。

「めるこ」の論文では買掛金などの流動負債が存在して会社の経営を圧迫しているかのような印象を植え付けていますが、流動負債は株式会社であれば当然に発生するものでそれは「売掛金」などの流動資産とバランスするものです。5流動負債と流動資産の比を流動比率といいますが、これが1以上の会社には銀行は金を貸しません。

それ故当然に三菱電機にも流動負債に相当する流動資産が存在しているものと推定されます。それから、長期借入金についても、マルクス主義経済学では長期借入金と資本金を併せて固定資本と呼び、流動負債を流動資本と呼びます。

それ故長期借入金は会社にとって資本の一種なのです。資本金であっても株主に対して配当というコストがかかります。借入金に対しては利息です。ただ剰余金のみがコストがかからないのです。

会社の主張はコストのかからない剰余金をふやしてもっともうけたいというもので、とても承服できるものではありません。会計学上も流動負債と長期借入金+資本金の比を長期適合比率といって経営の安定性の指標にしています。三菱電機は1以下で全然問題がありません。

会社はわたしたちが、会計上の知識を持っていないと思いひどいペテンでごまかそうとしています。このような策動をほおっておけません。わたしたちは今後も賃上げなどの要求実現のたたかいをすすめていかなければならないと思います。(K)

●裁量労働対象業務の拡大

三菱労組は7月に定期大会を開きました。
新人事処遇制度にそった成果主義による能力賃金の推進。裁量労働問題では、来春の政府による「労基法改悪」を前提に「裁量労働対象業務の拡大をふまえ、裁量企画手当方式のあり方の検討をはじめる」という方針を決定しました。

「労働者の利益を守る」という労働組合本来の存在意義が問われます。(N)


◇編集後記◇

「羅針盤」8月号は休刊させていただきました。
暑さもやわらぎ秋はそこまできています。
国会では労基法の改悪案が9月4日の衆院本会議で自民、民主、平和・改革、自由、社民の賛成多数で可決。日本共産党は反対。本当に許せません。

参議院での廃案めざしがんばります。(N)

職場の要求、関心、話題などお寄せ下さい。お待ちしております。


●バックナンバー<1998年6・7月合併号>

●バックナンバー<1998年5月号>

●バックナンバー<1998年3・4月合併号>


日本共産党三菱電機伊丹委員会 E-Mail:melcojcp@osk3.3web.ne.jp

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