「羅針盤」5月号 第114号
発行 日本共産党三菱電機伊丹委員会


「羅針盤」は1985年10月に創刊された日本共産党伊丹委員会の職場新聞です。
「仲間と仲間、職場と家庭を結ぶ連帯のきずな」として月刊紙として発刊されました。
創刊後13年目を迎え、今号で第114号です。


■今国会成立断念!世論と運動の大きな成果

「現段階で参議院に送っても成立はむずかしいと判断した。国会全体を見ながら、しばらく冷却期間を置きたい」(5月20日、労働委員会・理事懇談会,自民党理事)

政府・自民党は20日、労基法改悪案の今国会成立を事実上見送りました。世論と運動の大きな成果です。さらに今国会で廃案をめざすたたかいが重要になっています。

裁量労働制の施行を一年遅らすなど「修正」しても悪法の本質に変わりはありません。政府は国会で裁量労働制の拡大や変形労働制の緩和について―「健康をふくめた新たなルールをつくろうとするものです。長時間・過密労働にはならない」と答弁していますが、職場の実態をまったく無視した態度か無知だとしかいいようがありません。職場の実態を調査してからものをいうべきです。

職場では脱法的な「裁量制」(裁量企画手当制)が先取り的に導入され、10時、11時と深夜にわたる長時間労働とサービス労働がまんえんし、総労働時間が年間3千時間を超える労働者も出ています。

家族からも「主人の過労死が心配」「子供の寝顔しか見られない」「なんとかしてほしい」など深刻で切実な声が相次いでいます。

こんな悪法が通ったら、労働者は会社の長時間労働にしばりつけられ、自分の健康はおろか家庭生活はメチャメチャに破壊されてしまいます。悪法は廃案にする以外にありません。

■労基法改悪許すな!

職場からの告発(その1)

「私は社員の妻です。今、(主人の)過労死を心配しています」こういう書き出しで始まる「訴え」が、三菱電機伊丹の働く仲間でつくる「春闘を前進させる会」の98春闘要求アンケートに寄せられました。

「夜は11時半より早く帰ることはなく朝は7時に家を出ます。土曜も必ず出勤、日曜も出勤する時もあります。どうしょうもないぐらい忙しすぎるのです。裁量企画手当ができた頃、残業するよりたくさん(給料が)もらえると、夫婦で喜んでいました。不公平です。家族と接する時間もありません。子どもも日曜日にしか父の顔をみられません。その日曜日さえも奪ってしまう会社です」―裁量企画手当制が導入されている技術労働者の妻(40歳代)からでした。

三菱電機の研究・開発、設計などでの長時間労働が裁量企画手当制度のもとで、いかに深刻になっているかを示す告発でした。

■裁量企画手当制で長時間・サービス労働

三菱電機は「グローバル化・低成長時代・メガコンペティション(大競争時代)」という名のもとにリストラ(事業の再構築)、研究・開発・工期の短縮化など推しすすめています。このため、研究・開発、設計部門の職場はノルマと成果が追求され、異常な状態が続いています。

製品のモデルチェンジに追いまくられる職場は、裁量企画手当が導入される以前と比べて総労働時間は長くなりサービス残業が増えています。

「業界トップの製品をつくろう」という目標にむかって、とことん完成度をたかめるため骨身を削られるような追求が毎日つづけられているのです。

「半年ごとに新機種投入がくりかえされるために、かぎられたメンバーでの開発は、いきおい深夜までの仕事を状態化させてしまうんですよ」と西口(仮名)さん。この西口さんの職場全体が毎日深夜の10時、11時と長時間労働が慢性化しています。同僚である川口さん(仮名)は、連日、朝8時30分から夜中の11時ごろまで働いています。

3月の期末とあって1日14時間という長時間労働です。土曜出勤もあたりまえで、日曜出勤もあり、月間の残業時間は170時間ほどです。しかし、川口さんが実際に申請している残業手当はわずかなものです。裁量企画手当が原因です。この制度は、仕事の「効率を高め」、20時間以内で、「成果を出す」ことを求めています。このため、20時間をこえる残業はきわめて申請しにくく、多くがサービス残業になっています。

川口さんは、20時間分しか残業手当を申請していません。それは職場の36協定(残業についての労使協定が40時間)のため、職制が申請をしぶり40時間におさえられるのです。

このため、川口さんのサービス残業は、130時間になります。1時間の残業手当が3000円ですから、39万円が不払いです。

職場がこうした状態ですから裁量企画手当が適用されていない青年労働者(28歳以下の主員)も残業手当は20時間内におさえられています。

西口さんは怒りをこめこう語ります。「会社は、賃金を『労働時間ではかるのではなく成果ではかる』といいますが、職場全体がこのような状態では、査定のしようがありません。部員全員の評価を上げることなどできないので結局は会社への忠誠心≠ナはかることになります。

超高負荷の場合、個人の処理能力では限界があり、長時間残業でなければ仕事を処理することができません。残業代を支払わない口実に成果主義を使われたのではたまったものではありません」と。

(次号に続く)


■東芝、日立が持株会社へ、大規模な企業分割

4月24日、東芝は、日本の製造業で初めて大規模な企業分割に踏み切る方針を明らかにしました。
全社を純粋持株会社とOA(音響・映像)機器、情報通信、電子部品など6〜8の事業に分割、再編するとしています。

日立も5月11日、事業持株会社へ移行する方針を固めたといわれています。

日立は「家電事業のリストラの一環として、家庭用エアコン、冷蔵庫などの部門を別会社化し、7月15日付で1000人を転籍・出向」(『日経』4月25日付)。

三菱電機は昨年末からOA事業や半導体事業部門の「事業構造の再編」(リストラ)で一部分社化をすすめています。東芝や日立の「企業分割」が、三菱電機がすすめるリストラに拍車をかけることは必至です。

■持株会社とは

持株会社とは、他の会社の株式を所有することでその会社を支配する会社をいいます。それには二種類あります。一つは、事業を営みながら株式で他の会社を支配している事業持株会社。もう一つは、今回、橋本内閣が解禁した「純粋持株会社」―事業は、おこなわず、ただ株式を所有して会社を支配するための会社です。

大企業各社は99年度の新卒採用計画を発表していますが、日本経済新聞がまとめた99年度の新卒採用計画調査(5月7日付)によると、三菱電機の新卒採用計画は、大卒400名(98年度実績660名)、短大・高専卒0(同170名)、高卒160名(同330名)、合計560名(同1160名)と今年度実績の半減となっています。

失業率が過去最高を記録しているとき、大企業のリストラによる人減らしと、採用抑制は、雇用不安を増大させ消費不況に拍車をかけるものです。

■年功制がなくなっても 青年の賃金は上がらない

三菱電機エンジニアリングでは、三菱電機より先行して2年前に「人事処遇制度」が改悪されました。能力賃金が導入され、現在の制度は年功制がなくなってきています。しかし、青年層からは「賃金が上がらないので仕事もやる気がおこらない」、「いい会社があればいつ転職してもいい」と。年配層からは「給料はあがらず医療費の出費は増え生活の見通しがつかない」など不安の声があがっています。 (読者・Y)

■昨年の給料より少ない主人の4月分

今年のベースアップ1500円。主人の給与4月分の総額は昨年の4月分に満たない金額でした。
わたしの家庭は子供が私学にいっているから学費と交通費だけで月に5万円ぐらいかかります。月に1500円アップぐらいでどうやって暮らしていけるのでしょう。

貯金もこれまで使い、残り少なく引き出せない状態です。いま一番金のかかる時期なのに、三菱の労働組合は何をしているの…。会社は不況にそなえて内部留保を6000億円もためこんでいるときいています。

消費不況の今の時期にこそ使うべきだと思いますが、私の考えが間違いでしょうか。

会社は「未来をひらく三菱電機」と宣伝していますが、私たちの生活はどうしてくれるのですか。 (40歳代の妻)


◇編集後記◇

政府・自民党は労基法改悪案の今国会成立を断念しました。世論と運動の大きな成果です。みなさんの職場からの告発は大きな力になっています。共同の輪を広げ廃案まで頑張りましょう。参議院選挙は目前に迫っています。

職場の要求、関心、話題などお寄せ下さい。お待ちしております。


●バックナンバー<1998年4月号>


日本共産党三菱電機伊丹委員会 E-Mail:melcojcp@osk3.3web.ne.jp

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