サクラ大戦帝撃通信局Fromお台場、第1話より
以下、要望の募集の言葉へ。
解説者:
太正十二年。まさに、桜満開のころ。帝都東京は上野公園。
ここは古くから人々が集い、出会う場所。
桜舞い散るこの日、運命的な出会いをした二人の若者がおりました。大神:
ああ、いい天気だ。上野の桜も満開。どうだろう、この人出。みんな花見。楽しそうだ。
でもこっちは任務、任務。合流地点はどこかな?たしかこの辺だと・・・解説者:
帝国海軍少尉、大神一郎。この春、海軍士官学校を卒業したばかりの、新米少尉であります。
彼は、財界の実力者花小路伯爵から、秘密部隊帝国華撃団の隊長に任命され、
迎えの者と合流すべく上野公園に来ていたのであります。雑踏の中から、一つ、足音が近づいてくる。 大神:
あ、あの女の子、こっちに向かってくる・・・。まさか、あの子が出迎えじゃ・・・。 さくら:
あの・・・、大神一郎少尉、ですか? 大神:
は、はい!自分は大神ですが・・・。あの・・・、あなたが出迎えの人? さくら:
帝国華撃団花組、真宮寺さくらです。よろしくお願いします。 大神:
あなたが、帝国華撃団の隊員・・・?あ、いや、自分は帝国海軍少尉、大神一郎であり・・・あります! さくら:
うふふっ、米田中将から伺ってますから。 大神:
あ・・・、そ、そりゃそうですよね。 さくら:
では、大帝国劇場に行きましょう。 大神:
え?大帝国劇場? さくら:
ええ、ご案内するようにと。 大神:
大帝国劇場ねぇ・・・、 解説者:
意外な展開に、とまどいを隠せない大神少尉ではあります。んが、そこはそれ。
命令は命令でありますからして、ふたりは、大帝国劇場のある銀座へと向かうべく、
帝都蒸気鉄道、帝鉄に乗り込んだのであります。チーンチーンと繰り返し鳴る帝鉄の音。 大神:
あの・・・、さくら、さん。大帝国劇場に向かうって・・・一体・・・?その・・・、 さくら:
ふふっ・・・、そうですね。大神少尉には説明しておかなくちゃ。
実は、大帝国劇場に帝国華撃団の本部があるんです。大神:
げ、劇場の中に秘密部隊の本部が・・・! さくら:
しっ・・・!声が大きいですよ・・・。 大神:
ごめん・・・。でも、劇場が本部だなんて、驚いちゃって・・・。 さくら:
地下が基地になっているんです。 大神:
そうかぁ、敵を欺くために、味方をも、か。そりゃそうだよな。
何たって秘密部隊だもんな。簡単にわかっちゃったら意味無いし・・・。さくら:
ふふふっ、兵法の極意、ですね。 再びチーンチーンと鳴る。 さくら:
いかがです?初めて御覧になる帝都の光景・・・。 大神:
賑やかだな。街には蒸気自動車が走り回っているし、歩く人はお洒落だし、何より活気がある。
士官学校のある江田島とはえらい違いです。さくら:
ええ、私も仙台から出てきたときは驚いてしまって・・・。
でも、車はやかましいし、煙で空はいつも暗いし、人は多いし・・・、少し窮屈なとこもあります。大神:
さくらさん・・・、帝都が嫌いですか? さくら:
いえ、そういうわけじゃ・・・、あたしもまだ仙台から出てきて二週間。
帝都のいいところをちゃんと見ている時間がないだけです、きっと・・・。
大神さん。ネオンサインって知っていますか?大神:
ネオン・・・、サイン・・・? さくら:
ええ、夜になると銀座の街を色とりどりのネオンサインが飾るんです。
それに街灯の明かりが重なって、とっても綺麗なんです。
これが今、たった一つだけ私が大好きな帝都・・・かもしれません。キィーン!とブレーキの音。口々に上がる悲鳴。 さくら:
ああっ!? 大神:
何だ・・・!どうしたんだ・・・!? さくら:
突然・・・、列車が急ブレーキを・・・、ああっ!おばあちゃん、大丈夫ですか?
よかった・・・、けがは無いわね。運転手:
せ、線路に、何か不気味な生き物が・・・!何だったんだ・・・、あれは・・・、 大神:
不気味な生き物・・・? さくら:
魔物だわ・・・。 大神:
魔物?そいつが? さくら:
ええ、きっと手先です。これから戦わなければならない敵の・・・、 さくら:
そうか・・・。 さくら:
さ、大神さん。これからは、きっと厳しく激しい戦いが待っています。
こんなことで驚いてはいられませんよ。大神:
そうだね。ようし、やるぞ、大神一郎。帝都を守るために・・・! 大神の決意を鼓舞するように音楽。 解説者:
出会いのとき・・・。しかし、淡い想いも束の間。既に戦いの渦中にあったのでした。