サクラ大戦帝撃通信局Fromお台場、第3話より
以下、要望の募集の言葉へ。
解説者:
銀座、大帝国劇場。
秘密部隊帝国華撃団の隊長として意気揚々と乗り込んだ大神少尉でありました。
が、出撃はただの一回きり。与えられた任務がなんと、劇場のモギリ。
しかし、任務は任務。来る日も来る日もひたすら、モギリ。モギリ。今日も今日とて・・・。劇場のざわめき 大神:
はい、いらっしゃいませ!いらっしゃいませ!もうすぐ開演ですからお急ぎ下さい!
いらっしゃ・・・、あ、この席でしたら手前の扉からお入り下さい。鳴り渡る開演ブザーの音 大神:
開演ですよー!席にお着き下さい!開演です! 解説者:
帝国海軍少尉でありながら、劇場のモギリ。複雑な心境でありましょうなあ、大神少尉。
海軍士官学校を首席で卒業して、まさかモギリをやろうとは。思いもしなかったあ。大神:
はあ、やっと落ち着いた。毎日毎日満員で大変だよ。でも、劇場としては嬉しいことなんだろうけど。
あぁーあ、嫌んなっちゃうよ。そうだ。昼飯昼飯。解説者:
いくら任務とはいえ、秘密部隊ゆえの仮の姿であるとはいえ、日々、同じことの繰り返しでは、
大神でなくても、悩みたくもなろうというもの。かすかに館内音楽 食堂員:
いらっしゃい!あ、大神さんでしたか。モギリお疲れさま。 大神:
もりそば二枚。いや、三枚にしようかな。やっぱり四枚だ。 食堂員:
はっはっは、もりそば四枚ですね。かしこまりました。 大神:
早くしてくれよ、早く。
やれやれ、食堂のボーイに身分を明かすわけには行かないし、疲れるよ、まったく。
あれ、あんなところにさくらくんだ。
さくらくん、どうしたんだい?こんなところで。舞台の手伝いはいいの?さくら:
えっ?あ、大神さん。ええ、終わりました。それに、本番中でお稽古もないし。 大神:
ははっ、そうだね。でも、次の公演ではいい役に抜擢されたんだろ。
大変だろうけど、頑張らなきゃ。さくら:
はいっ。 食堂員:
はい、もりそば四枚。つけ汁も四つ。 さくら:
まあ、たくさん食べるんですね。 食堂員:
まるで欠食児童だね。はっはっは。 大神:
仕方ないだろ。腹が減っているんだから。よし、いっただっきまーす!
(ズルズル、チュルチュル)
ん?なんだい。そんなに見つめないでくれよ。食べにくいじゃないか。さくら:
ごめんなさい。でも、大神さんたらすごい勢いだから。 大神:
(ズルズル)ん、そう言えばすみれくんが君のことをほめていたな。
(ズルズル)さくらさんは初めてのお芝居なのに勘がいい、って。さくら:
ええっ?すみれさんがそんなことを? 大神:
ああ、すみれくん、口は悪いけどいい人だからね。(ズルズル)
んー、そう言えばこんなことも言っていたな。
(高めの声で)さっくらさんは、そそっかしいところがいけませんわ。
一度頭に血が上ると周りが見えなくなるでしょう。困ってしまいますわ。
あなたからも注意してさしあげて、隊長として。おーほっほっほ・・・さくら:
ふふっ。まあ、すみれさんらしい。 大神:
ははっ、うまいだろ。そうだ、さくらくんも食べない?四枚じゃさすがに多すぎるから。 さくら:
そうですね、じゃあいただきます。(ツルツル)ん、よかったあ。
私、すみれさんに嫌われているんじゃないかって心配していたんです。それに、お芝居の才能も。
だとしたら私のことだけじゃなくて花組のみんなにも迷惑をかけることにって。(ツルツル)大神:
やっぱり悩んでたんだ。そうじゃないかと思っていたよ。なに、悩んだって何も解決しない。
(ツルツル)ね、お互い新人同士、頑張っていればいつか・・・、さくら:
お互いに、ですね。ふふふっ、大神さんもモギリばかりで悩んでいたみたいですね。 大神:
実はね。でも君と話していてすっきりしたよ。ありがとう、さくらくん。 さくら:
私も。ん、ありがとう、大神さん。 しばらく続くそばをすする音 大神:
あ、だめだめ。おそばをそんなに汁につけちゃあ。 さくら:
え? 大神:
そばっていうのは、こうしてちょっとだけ汁につけて、勢いよくズルズルっと、こう!(ズルズル) さくら:
はー。わかりました。こうですね。(ツルツル) 大神:
あー、違う違う。もっと勢いよく。(ズルズル) さくら:
はあ、こうですか?(ヅルヅル) 大神:
もっと!(ズルズル) さくら:
はぁ・・・、 解説者:
そばをはさんで、通い合う心と心。いやぁ。若いとはいいものであります。
一心不乱にそばと格闘していた二人ではあります。
んが、ふと合う目と目。そばを取る手もはたと止まる。さくら:
・・・、本当に、ありがとう・・・、新米隊長さん。 大神:
こちらこそ・・・。新米役者さん。 さくら:
ふふふっ・・・ 大神:
はははっ・・・ さくら:
お互い、頑張りましょう。大神さん。 二人を包むように音楽 解説者:
慰め合い、励まし合い、二人は、苦難の道に立ち向かっていくのでありました。