背景音楽、我ら黒之巣会 | |
天海: | 黒之巣会とは、かつての徳川幕府宰相、我、天海によって創始された、悪の組織である。 そこには、かつての江戸幕藩体制の復活、西洋文化の破壊を目指す、魔の理想世界が広がっておる! そして、有楽町黒之巣通信局とは、ラジオの前の太正時代の住人に、悪を伝えるべく、急遽結成された放送局である! |
第十話タイトルの効果音、それに続く、先行通信の音楽 | |
天海: | 黒之巣、先、行、通、信! |
先行通信の音楽 | |
天海: | 黒之巣会、帝都市民及び太正政府への対決姿勢を強め、情報網の根幹たる、有楽町帝撃通信局を占拠! |
ミロク: | 司会の長曽我部崇、検閲官の大河原一美らを拉致、監禁。帝都を震撼させるべく電波を送り続けております。 |
天海: | 全国各地で黒之巣会の活動が活発化!天変地異の続発を以て、政府、そして愚民どもを威圧! |
ミロク: | 太正政府は、急ぎ対応を協議しておりますが、全て後手に回り、為す術がないといったところです。 |
天海: | 黒之巣会会員証、限定三百枚募集に葉書が殺到! |
ミロク: | 黒之巣会では、急遽、会員を選抜するためにその適正審査を開始し始めております。 |
背景音楽終わる | |
天海: | さて、先週から始まった有楽町黒之巣通信。司会はむろん、黒之巣会総帥、天海。 |
ミロク: | オーッホホホホホ!紅のミロクよ。ふっふっふ、よろしくねえ。 |
叉丹: | 叉丹も、おそばに・・・・・・・・。 |
天海: | うむ、さて、最初の話題は、と。お?おお・・・通信局占拠の話題であるな。 まあ、我らがこうして放送しておるというだけで十分じゃ。かくして、詳しく伝える必要はない。 |
ミロク: | ははっ、天海様。長曽我部、大河原ら、その他の放送局員らもすっかりあきらめきった様子で・・・・。 ただ・・・(不満そうに)、我らの側について放送するということについては・・・、 頑として首を縦に振りませんわ・・・・。 |
天海: | よいよい・・・、放っておけ。ふぉふぉふぉふぉ・・・、それより次の情報じゃ。 |
ミロク: | ははっ・・・、それでは、先に進みたく存じます。 各地で続発している、天変地異についてですが・・・・・・。 |
叉丹: | (遮るように)それにつきましては・・・・、後ほど録音盤にて・・・、詳しくご報告いたしたいと・・・・。 |
天海: | んー、よろしい。 |
ミロク: | はい(不満そう)。続きましての情報は・・・、黒之巣会会員証についてのものです。 会員証希望の葉書が、はあ・・・・、ほれほれ、この通り、たくさん! |
天海: | ひゃーひゃひゃひゃひゃ!そうであろうそうであろう。それでこそここ通信局を占拠した甲斐があったというもの。 で、どのような葉書が来ておるかな・・・。 |
ミロク: | はい。宣伝通信に続いて読ませていただきます。それでは、宣伝通信です。 |
背景音楽、友情のテーマ | |
ミロク: | みなさん。魔物と仲良くなりたくありませんか?本来魔物は、皆さんの世界に身近なものです。 魔物との、劇的な出会いを求める貴方に。魔物の力を人生に役立てたい貴方! そんな貴方に、「魔物大図鑑」 お値段は、貴方の生き血一升。お求めは、全国黒之巣会関連書籍取扱店まで。 ほら!貴方の肩にも・・・・・・・、魔物が・・・・・・・! |
天海: | さて、それでは、全国の同志から届いた葉書を読んでもらおうかな。 我らを褒め称える葉書をな・・・!ひゃーひゃひゃひゃひゃひゃ! |
ミロク: | はい。それではまず、新潟県の筆名「カオス会の四天王、新潟の葵叉丹」からのものです。 「有楽町黒之巣通信局開局おめでとうございます。拉致されている大河原検閲官に一言。 『我らに帝撃通信局の受信許可証など不要である。違反など、我らには関係ない。 もうじき帝都は我らの手に落ちる。帝国華撃団など、我らの敵ではない!』」 |
天海: | ひぇひぇひぇひぇひぇ!んーんー、「新潟の葵叉丹」よ、我らはお前のような同志をこそ待っておったのだぞ! おまえこそ、黒之巣会会員証第三号にふさわしい・・・・・。 |
ミロク: | ちょっと・・・、叉丹という筆名が気に入りませんが・・・、まあよろしゅうございます。 |
叉丹: | どうしたミロク・・・。おぬしの名でないのが、不服か・・・? |
ミロク: | ん・・・・・!!! |
叉丹: | それとも、私の人気がうらやましいか・・・? |
ミロク: | 何っ!? |
天海: | こりゃ、やめんか!それより、先を続けい。 |
ミロク: | ・・・はい・・・。では、次のお葉書を・・・。 兵庫県の筆名、「ミクロマン」からのので、 「突然ですが聞いて下さい。最近、姉の様子がおかしくなったのです。 それというのも、かなり前に蒼き刹那と名乗る奴を一目見てから、 『刹那様になら、政府転覆されても構わない』などと言い出したのです。 天海様。こんな姉に何か言ってやって下さい。 |
天海: | んー、刹那か・・・・・・・・。惜しい男を亡くしたものよ・・・・・。 |
ミロク: | ・・・・・・天海様・・・・・、く、口惜しゅうございます・・・・。 刹那に・・・、刹那に・・・、この晴れ舞台を見せてやれていたらと思うと・・・・、 (泣き崩れる) |
叉丹: | フッフッフ・・・、女々しいものよ・・・・・・。 |
天海: | こりゃ、やめんか、叉丹。 |
叉丹: | は・・・は・・・・、 |
天海: | それでは、兵庫県の「ミクロマン」よ、お前には、黒之巣会会員証第四号をやろうぞ。 これからは姉と共に、悪と黒之巣会のために尽くすのだぞ・・・。 そして、今は亡き刹那、羅刹の両人が、地獄で立派に活躍するように祈るがよい・・・。 |
ミロク: | はは・・・有り難きお言葉・・・。 |
天海: | 活躍といえば、叉丹。その方の報告は? |
叉丹: | はっ、それでは、お楽しみ頂きましょうか。天海様。 |
ミロク: | (遮るように)あ、お待ち下さい!まだ葉書が・・・! |
天海: | もうよい!それより愚民どもが泣き叫ぶ声を早く聞きたいわ!さあさあ叉丹、はよせい! |
叉丹: | それでは天海様、黒き叉丹が送る、黒之巣地方通信と参りましょう。 ハッハッハッハッハ(乾いた笑い) |
天海: | うむ、今日は? |
叉丹: | 帝都数カ所から、天変地異の様子などを、録音盤にて、 |
天海: | 楽しみじゃのう・・・・。 |
録音盤を回す音 | |
吹きすさぶ嵐の音 | |
叉丹: | フフ・・・、ハハハハハハ・・・!! 見よ!逆巻く水の流れを!聞け!この音の凄まじさを! (荒波の音が背景に重なる) 今、品川駅(?)は、海の水が逆流し、集められていた木々は、 正に、御するもののない棍棒と化しておる! 巨大な材木が凶器となって、沿岸の倉庫に、水に浮かぶ船の群に襲いかかっておる! (波の轟く音、木々のきしむ音、崩れる音) ハーッハハハハハハ!!!・・・ハハハ!! |
録音盤を停止する音 | |
天海: | ひゃーひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ・・・!!!! |
ミロク: | ほーほほほほほほほほほほほほ・・・・・・!! |
天海: | 愉快!いやいや、実に愉快じゃ!ひゃひゃひゃひゃひゃ! |
叉丹: | 続いては、九段の堀近くでの様子に・・・。 |
天海: | ふん、ふんふん。 |
録音盤を回す音 | |
強烈な風の音 | |
叉丹: | 風が舞い、武家屋敷の瓦が飛ぶ!(瓦の飛ぶ音)飛ぶ!!(さらに重なる音) 堀の水も騒ぎ、波立ち、ハハハ・・・、ハハハハハハハ! 見よ!鯉が堀から放り出されて、苦しんでおる!ハハハハハハハ・・・・! |
録音盤を停止する音 | |
天海: | ん?これだけか? |
ミロク: | 鯉が?お堀の鯉が飛び出しただけか? |
叉丹: | いや・・・、それは・・・・、まあ・・・・・・・・・。 しかし、風雨の凄まじさは、それはもう・・・・。 |
天海: | うむ、まあ愚民どもは季節はずれの嵐に恐れをなしたであろうのう。 |
叉丹: | いかにも、では、もっとも凄まじかった、八重洲の模様を・・・。 |
天海: | 八重洲とな?蒸気鉄道の大事故でも起こしたか? ひゃーひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! |
叉丹: | ・・・・、そこまでは、至りませんでしたが・・・、まあ、お聞き下さい。 |
天海: | うむ。 |
録音盤を回す音 | |
大地を揺るがす地響き | |
叉丹: | 地面が軋む!見よ!地割れが始まった! (さらに続く轟音) おお・・・!地面が陥没して・・・、ハハハハ・・・・!なんと、凄まじい勢いで噴き出したものがある! 燃やせ!全ての物を燃やし尽くせえっ!これぞ!この世の終わり、地獄の光景! ハーハハハハハ・・・!ハーッハッハッハッハッハ!! こ・・・これは・・・、炎ではない・・・・、だが、おお、ああ、熱い・・・! 熱いぞ・・・・! おお、温泉だ!温泉が噴きだしたぁ!! ハーハハハハハハハハハ・・・・・・・!!!!! |
録音盤を停止する音 |
天海: | 温泉!? |
叉丹: | それはすごい勢いで。 |
天海: | で、愚民どもは? |
叉丹: | は、なにやら喜んでいる様子で。恐怖のあまりに気が動転・・・・・・・・、 |
天海: | たわけ!そりゃホントに喜んでおったんじゃ! |
ミロク: | ・・・・、天海様・・・。(あきれはてて)これほどの天変地異を起こしながら、何故・・・。 私が行っておれば・・・、ん・・・、なんとしても口惜しゅうございます。 |
天海: | うむ、やはり、帝国華撃団・・・! |
叉丹: | いかにも、いつも、あと一歩というところで邪魔を・・・。 |
天海: | うむ、しかし、まあよい。こうした数々の出来事が、連鎖し、木霊し合い、 やがて、大きな力となって、破滅へと導く・・・、ひゃーひゃひゃひゃひゃひゃ!! よし、そこで、今日の標語に参ろうぞ。 |
ミロク: | ははっ! |
迫り来る太鼓の音 | |
ミロク: | では、天海様。どうぞ。 |
天海: | オッホン!残酷の、裏に息づく美意識に、笑いの絶えぬ、我、天海。 ひゃひゃひゃ! |
ミロク: | さすがは天海様・・・!何と素晴らしい標語でしょう・・・! それでは、宣伝通信に続いては・・・。 |
天海: | もうよい。黒之巣会の、占拠の目的は果たした。 |
ミロク: | はい、仰せの通り・・・。 |
天海: | 我らが帝撃通信局を占拠したは、あくまで手段。 目的は、帝都を骨の髄まで震撼させ、政府転覆への一助とすることにある! やがて、帝国華撃団も・・・。ふっふっふ・・・。 今は沈黙しておるが、必ずや奪還の動きに出よう。 いや、既に手だてをまとめ、ここに迫っておるやも知れぬ。 |
叉丹: | 帝国華撃団がここへ・・・、 |
ミロク: | 攻めてくると・・・? |
天海: | ひゃーひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! |
叉丹: | ならばここで迎え撃ち、きっと奴らを・・・。 |
天海: | たわけ!ここで戦ってもどうなるものでもあるまい。 今はもっと大きな目的のために、身を引くことじゃ。 |
ミロク: | しかし・・・!それでは我らの気が済みません! |
天海: | お前たちの気持ちなどどうでも良い!来るべきのその日のために、今しばらく身を潜めよ・・・。 虎視眈々と・・・・・。 |
叉丹: ミロク: |
来るべき、その日のために・・・・・! |
天海: | わかったな! |
叉丹: ミロク: |
ハッ! |
天海: | ならば、最後の通信じゃ、参るぞ。 泰平を、むさぼる汝、愚民ども!帝都は魔物によって、黒之巣会によって支配される。 その日は近い。怯えるがいい、怯えるがいい! お前たちは、我らの前にひれ伏し、許しを乞うのだ! 西洋文明に毒され、精神を蝕まれた愚かさを嘆くがいい・・・! |
叉丹: | んっ・・・・・!?誰かが密かに近づいてきているようです。 ・・・足音を忍ばせて・・・、気配を消して・・・。 フッ・・・、だが、この叉丹を欺くことはできません。 |
天海: | きたか・・・。 |
ミロク: | 人質救出のために・・・・ついにここへ・・・、 |
天海: | よい、では、そろそろおさらばしようぞ。 聞け!帝都の愚民どもよ!有楽町黒之巣通信局はこれにて終わりとする。 やがて来るその日まで・・・、さらばじゃ・・・、さらばじゃ・・・!! ひゃーひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!(三重に重なる笑い声) |
叉丹: | ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!ハハ!ハハハハハハハハハハハハハ・・・・・・・・!!!!! |
ミロク: | ホーッホッホッホッホッホッホッホッホッホ・・・・・・・!! |
そして訪れる静寂。 |