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初出・ 20 April 2000
lsat updated 06 August 2000
加筆は

 

#19 前向きな取締を


オービス」が光ったんだけど・・

あれは忘れもしない三月某日。走行中の私の目にまぶしい赤い光が当たるとともに、「パシッ」となんとも言えない明るい音がきこえました。まさかぁ、と思いつつ、心配が頭から離れません。帰宅当夜のワタクシの行動は、噂には聞いていたが見たことはまだなかった、「オービス情報」についてのwebや掲示板探しデシタ。その結果、心配は癒されました。そう、覚悟が決まったのです。仕方ないか、と。あの瞬間に、オービス(速度自動監視取締装置)が作動したことは間違いないようでした。

その後、同じ道を通る勇気のない私は、一ヶ月半以上経過しなくては確認することもできませんでした(情けない・・)。先日、ようやく確認しました。追い越し車線をゆっくりと速度を落として走行し(ちょっとメイワク)、機械をしげしげと見ました。しっかりと確認した後、覚悟はさらに強固になりました。・・・間違いないかもしれない。この「かもしれない」というのは、通知がまだ届かないからです。ここで、時間のある皆様にはこちらのwebをどうぞ(「オービス日記」※リンク切れています 2005.8.9筆)。

通知が来ないで欲しいのはヤマヤマです。しかし、これは避けられないことでしょう(たぶん)。ただ、ワタクシは、初心者講習を受けた身。現行法では免停どころか再試験となります(道路交通法100条2項、100条4項2号、108条3項、道路交通法施行令36条、37条3項)。

一応、法学部に籍をおかせて頂いて、はやン年の身。そこで、その手続についても関心が沸いてくるのは当然の理(?)でしょう。しかし、交通事故・交通取締については、その事例の多さからして推測されますように、膨大な資料があります。真剣に調べるには時間的制約等々があるので、ついでの機会があれば資料を見るという程度にしました。それでも、いくつか面白い資料が集まりました。

交通違反をした場合は、減点されるのではなく、違反基礎点数が累積されていきます。たとえば、無車検で無保険車に載って、無免許者が、シートベルトをせずに、爆音をとどろかせて50「以上の速度超過をし、赤信号を無視した場合はどうなるでしょうか(これは私が勝手に作った事例。実際にはこんな事例あるんだろうか)。

無車検運行で6点、無保険運行で同じく6点、無免許運転で12点、座席ベルト装着義務違反で1点、騒音運転等で2点、速度超過で12点、赤信号無視で2点(酒気帯びの場合は、無免許運転・速度超過がそれぞれ13点に、そのほかはそれぞれ7点になります)です。合計すると、41点(酒気帯の場合は61点)。

基礎点数でこれだけあれば、前歴のない人でも3年間免許を新たに取ることができなくなります*1。しかし、前歴のない人がこんなに沢山のことをいっぺんにするかだろうか。ちょっと疑問がわきます。私の設定にはいささか無理があったかもしれません。しかし、累積するとどのくらいになるのかを示すための設定事例なので、お許し下さいませ。

さて、交通違反通告制度によると、(1) 重い違反(酒酔い運転、無免許運転、30「(高速40「)以上の速度超過)の場合、(2) 比較的軽い違反によって交通事故を起こした場合、(3) 同違反によって交通事故は起こさなかったけれども通告を受けてその日を含めて11日以内に、反則金を納付しなかった場合には、刑事裁判か家庭裁判所の審判を受けることになります。*2

では、この刑事裁判とは一体どのようなものなのでしょうか。上記の速度超過の場合、刑事罰の対象となります(上記速度未満は反則金の対象)。軽い場合は10万円以下の罰金刑、重い場合は6月以下の懲役刑の対象です(道路交通法118条1項2号)。罰金刑の場合は、略式手続きとなります(「交通事故の加害者の刑事責任」河原崎弘氏(弁護士)提供)。もちろん、被告人が、略式手続ではなく、正式裁判を請求することができます(即決裁判手続は、現在行われていない*3)。

ここで、私が見つけた資料による提言を御紹介したいと思います。

この正式裁判を請求する人がほとんどいないことはよく知られていることです。この数は、一万人に一人*4とも言われています。この理由を、かつては「正式裁判を申し立てることができるとは知らない」ことによる、と言われてきました。実際のところ、略式裁判を終えてから正式裁判を受ける権利があることを知る人も多いようです。

しかし、立教大学交通法研究会「正式裁判を申し立てない理由と動機--交通取締・交通切符手続の研究(八)--」(『警察研究』第五五巻第二号、三一〜四六頁)の実証研究によると、必ずしもそればかりが理由ではないようです。たとえ、正式裁判を申し立てる権利を有していることを知っていても、申し立てない人が存在している。しかも、このような人々は「言い分があるにもかかわらず」申し立てていない。ここで制約になっているのが、「時間・費用への考慮ないし動機」です。この結果には肯く方々が多いのではないでしょうか。とするならば、手続上違反処理が淡々となされ、一見片づいているかのように見えていても、違反取締に対する不満・言い分は解消されていないことになります。

では、不満を持っている人々は裁判官に自分の言い分を聞いて欲しいと思っているのでしょうか。裁判官に会って不満や言い分を話したいと考えている人々は、交通切符手続で処理されている違反者のなかの26.2%、つまり四人に一人くらいの割合でいる*5のだそうです。では、このような人々は何を言いたいのでしょうか。なぜ、裁判官に言いたいと考えているのでしょうか。立教大学交通法研究会「何故裁判官に話したいのか--交通取締・交通切符手続の研究(九)--」(『警察研究』第五五巻第三号、五三〜六六頁)の実証研究によると、「自分を取締り、取調べ、罰金を科す側に対して、不満や言い分を訴え」たいのに、そのような機会がないか、または不十分であったから、法執行の監視者であると思われる裁判官に会って話をしたいと考えている、という結果がでています*6

以上からすると、取締に対する不満を解消する道を探る必要があることが分かります。しかも、即決裁判の復活という、_単純な_方法ではないものが必要とされていることを推測するに難くありません。

そこで、私の提言をしたいと思います。・・要するに、私は自分の不満(^_^;)をここで解消しようとしているわけですね。ここでは、懸案のオービスについてのみ申し上げることにしましょう。

オービスのような監視装置を速度違反に利用するのではなく、もっと有効活用をして欲しいと思います。たとえば、事故のよく起こる場所に設置し、事故の瞬間を記録する。そうすれば、公平で客観的な証拠を残すことができます。また、危険な車線変更を頻繁に繰り返すような車を撮影するように改良して欲しい。そうすれば、酒気帯び運転・過積載運転・居眠り運転のような、事故を誘発する危険性の極めて高い車をより迅速に特定することが可能となるでしょう。しかも、これらの違反についての動かしがたい証拠になります。*7

現在、交通事故において証拠保全は被害者にとって困難であることはよく知られています。とすれば、このような撮影は、望まれるべきものとも言えます。しかもこれらは事故の原因を探る場合にも役に立ちます。「取締に対する」不満が生じる余地も極めて少ないでしょう。とすれば、こうした目的による車両撮影は、現在の取締のための撮影よりも、前向きな取締になるのではないでしょうか。

さて、今回はなんだか力がはいってしまいました・・。通知が来るとしたら、略式裁判コースだから、かなあ(泣)。

 

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*1 違反点数、処分の基準については、中部自動車学校発行・編集『学科教本』132、137頁参照。

*2 場合わけについては、同上、138頁参照。

*3 立教大学交通法研究会「何故裁判官に話したいのか--交通取締・交通切符手続の研究(九)--」(『警察研究』第五五巻第三号、五三〜六六頁)五三頁。そのため、裁判官に会って違反者(被告人)が話をする機会はない。しかし、同手続は廃止されているわけではない。なぜ、即決裁判が行われなくなったのか。同手続の長所だった、口頭主義・直接審理主義に基づく審理が、交通事件数の大幅な増大によって、裁判官数・書記数・法廷数等々の制約により、実現できなくなる可能性が高くなったからである。つまり、口頭主義・直接審理主義が形骸化することが予想されたからである。五三〜五五頁を参照のこと。

*4 立教大学交通法研究会「正式裁判を申し立てない理由と動機--交通取締・交通切符手続の研究(八)--」(『警察研究』第五五巻第二号、三一〜四六頁)三二〜三三頁。この数は昭和五二年〜五六年のものです。したがって、資料としては古いです。現在の数については、司法統計年報(刑事編)をご覧下さい。

*5 立教大学交通法研究会「何故裁判官に話したいのか--交通取締・交通切符手続の研究(九)--」(『警察研究』第五五巻第三号、五三〜六六頁)六三頁。

*6 同上、六四頁。

*7 これと似たようなことは既に考えられていたようです。以下のメールマガジンの記事を参照。

「Date: Thu, 3 Aug 2000 18:40:00 +0900Subject: ☆自動車ニュ−ス&コラム20000803
X-Mag2Id: 0000000772
2000年08月03日号

◆警察庁、死亡事故多発の交差点にハイテクカメラ設置へ

警察庁が、交通事故の衝突音を感知して、事故前後の状況を自動的にビデオテープに録画する「交通事故自動記録装置」を、来年度に全国で100カ所以上の死亡事故が多い交差点に導入すると毎日新聞社が報じた。

デジタルカメラで1秒間に3コマ撮影し、「事故音」をマイクが拾って事故を感知した時だけ、前後計8秒の状況をビデオテープに録画する。これまで、警察庁科学警察研究所と民間メーカーが試験運用を7年間行い、発生したほぼすべての事故を記録したという。装置は1台約350万円。

[毎日新聞社] http://www.mainichi.co.jp/



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