定常宇宙の勝利宣言

 こんなに早く定常宇宙の勝利宣言をすることができようとは予想外でした。
 少なくとも後数十年はかかるであろうと思っていたのですが、観測家の方々がこれほどがんばっていたとは知りませんでした。私が予測を世間に初めて発表したのはほんの数カ月前の事でありよく間にあったものです。こんなに大胆なことを本当にしても良いのかと不安でしたが、サイエンス誌に報告された内容が正しいのであれば、理屈としては勝利宣言を出さざるをえません。その理由をここに書きますので是非読んでください。

アメリカの科学誌サイエンス(1998年2月27日発行)のNews欄に「Astronomers See a Cosmic Antigravity Force at Work」という記事が掲載されました。その内容をここに要約して書きます。
 オーストラリアのBrian Schmidt博士が率いるthe High-z Supernova Search Team と米国のSaul Perlmutter博士の率いる超新星を観測するグループが以下に説明する同様の結論に達した。
 超新星の光度の時間的変化を観測することによりその超新星の絶対光度がわかる。そして地球から見える明るさを測定することにより、絶対光度と見かけの明るさからその超新星までの距離がわかる。そのようにして遥か遠くのビッグバンが起こったとされるまでの半分ほどの距離に位置する超新星の距離を出したところ、宇宙膨張がほとんど減速していないビッグバン宇宙モデルで予想されるよりも更に10%−15%も遠くに位置することがわかった。最も支持されているビッグバンモデルでは宇宙は現在膨張しているが重力の作用によりその膨張は徐々に減速していくとされている。膨張が減速している宇宙では遥か遠くの天体までの距離を測定すると、減速されないと考えた場合に予測される位置よりも近くに観測される。だから、予想位置よりも遠くにあると観測されるとは、宇宙論学者にとっては予想外のことであり、信じられないものであった。
 この観測データが正しいとした場合、大多数の宇宙論学者の結論は宇宙の膨張は加速しておりその加速の原因は宇宙に反発力を与える「宇宙項」が存在するというものである。

 アインシュタインの導き出した一般相対性理論を解くと宇宙は一定の大きさに静止していることができず膨張する(ただし重力によりその膨張は減速するが)か収縮するしかないと考えられていました。(この考え方は間違いであることを当ホームページにて証明しました。この詳細については当ホームページ上の「3.一般相対性理論と宇宙」もしくは「9.相対性理論の修正」の中の項目「一般相対性理論を修正する」をご覧ください。)
 アインシュタインはその哲学的信念から宇宙は定常状態であるべきだと考えました。それで重力と拮抗する反重力的な力を仮定しそれを「宇宙項」として彼の一般相対性理論の式に追加することにより、静止した宇宙を可能にしようとしました。
 しかし、この「宇宙項」はただ単に定常宇宙をつくり出すためにのみ追加された項であり、そのような力が存在する正当な理由は全く不明でした。
 そのうちに、遠い銀河の赤方偏移が発見されそれがドップラー効果により説明されることにより、宇宙が膨張していると結論づけられたため、アインシュタインは「宇宙項」を自分の一生で最大の失敗であったと後に語っています。
 このように、宇宙項とは宇宙を定常に保つためにのみ考え出された架空の反発力でありそれ以外に何の意味も持たなかったのです。
 それが遠い銀河が予測されていた距離よりも更に遠くに観測されたという理由で、今度は定常宇宙を正当化するためではなくビッグバン宇宙を正当化するために持ち出されるとは非常に奇妙なことです。1つの観測的矛盾を覆い隠すために新しい理論を付け加えるのですが、その矛盾以外にその理論を付け加える理由は全くありません。 「宇宙項」を復活させても観測データが少し変わると直ぐに引っ込めたりまた出してきたりするでしょう。全く節操などありません。このような理論がビッグバンにおいてはいくつも存在します。パッチワークのようなビッグバン宇宙論に正当な存在意義など私にはとても感じられません。
 新しい予測していなかったような観測結果が得られた場合あらゆる可能性について検討しなければいけないのに、サイエンス誌を読むと宇宙論学者の考えでは、あらゆる可能性の中から定常宇宙はポッカリと抜け落ちているように思えます。ビッグバンの理論的根拠は一般相対性理論にあるとされています。もちろんそれは「宇宙項」がない一般相対性理論です。元々そのような経緯があるのにビッグバン宇宙を守るために「宇宙項」を復活させなければいけないというのであれば、もう一度初心に戻ってそもそもビッグバンは正しいのかという問いかけをしなければなりません。
 定常宇宙では今回サイエンス誌に書かれたようなデータが必然性を持って予測されます。つまり当ホームページにおいて主張するように宇宙が定常であり、光がそのエネルギーに比例する力で絶対静止系(背景放射の系)にとどめられようとする力を受けているのであれば、宇宙項を持ち出さずこれらのデータと矛盾しない宇宙モデルができあがります。こう考えれば勝敗はもう既に明らかですが、さらにもう一度確認することにしましょう。

 対立する物理学の理論において一方の理論が勝利するには、一般的には以下のような条件が必要であると考えられます。
1)相手の理論が論理的に矛盾を持っていることを証明する。
2)その理論によって何かしらの観測しうる事柄が予測され、それが実際に観測されかつその事柄が相手の理論によっては全く予測されないか、または異なった結果が予測される。
 これらにより対立する理論の勝敗が決まると考えるのは物理学の常識に沿っています。それではビッグバン宇宙と定常宇宙について検討してみます。
1)について
 一般相対性理論よりビッグバンが導かれるという従来の考え方に対して、当ホームページにおいて一般相対性理論からはビッグバンは導けないことを証明しました。 この主張に対して多くの人から賛同のメールをいただきましたが、反論は皆無でした。1万近くのアクセスをいただいたにも関わらず、この主張に対してなんら反論がないのは反論が不可能であったからと私は判断します。
2)について
 遠くの銀河までの距離を測定すると、赤方偏移がドップラー効果によるものと判断した考え方からは、宇宙の膨張がまるで次第に加速されるように見かけ上観測されるであろう事、及びそれに対する解釈として、宇宙項(反重力)が存在するであろうという馬鹿げた結論を出すであろう事まで当ホームページにおいて完全に予測していました。(「9.相対性理論の修正」の中の項目の「赤方偏移率の変化について」を御覧ください。)この事柄は今回サイエンス誌に発表された内容と一致します。 私のこの主張は今回のサイエンス誌の論文の発表(1998年2月28日)以前より当ホームページにおいて発表していたことであり、必要であれば多くのアクセスされた方々により証言を得ることが可能と思います。またビッグバンを信じている大多数の宇宙論学者にとっては宇宙の膨張が加速しているように観測されるという事は全く予測外の出来事でした。
 以上の理由によってサイエンス誌に発表された観測データが正しいとすれば、定常宇宙はビッグバン宇宙に対して勝利したと言ってよいはずです。

 当ホームページにおいては光がそのエネルギーに比例した力で絶対静止系にとどめられる理由を、光が宇宙の湾曲に沿って加速度運動するので宇宙全体から絶対静止系へとどめようとする重力作用が働くため(詳しくは「6.赤方偏移の新しい考え方」及び「9.相対性理論の修正」をご覧ください。)と考えましたが、それ以外の力が絶対静止系にとどめようとして働いたとしても同じようなデータが得られると考えられます。宇宙全体からの重力作用が働くという考えが正しいのかどうか、また正しいと仮定してもそれだけではなく他にも力が働くのかどうかはさらに遠くの銀河まで正確に距離を測定することにより明らかになるでしょう。

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