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新しき出会いは櫻花とともに…。

待望の4月がやってきました。寒いのが苦手... 筆:ひでじい氏
  ├そうですね。 筆:魔女吉氏
  │├「楽しみは最後まで取っておくものですよ。... 筆:ひでじい氏
  │└桜舞い散る・・・ 筆:五十里屋長介氏
  │ └藤枝あやめが見出し至宝 筆:ひでじい氏
  ├再び巡る春に、永遠を歌おう。 筆:夢織時代
  │└巡る酒杯とともに、浪漫堂本館は華やいでき... 筆:ひでじい氏
  ├桜の盛りは短くとも 筆:真神 樹氏
  │└「浪漫堂の俊秀、再び集う…か。」グラスに... 筆:ひでじい氏
  ├巡る。季節が、そして夢が。 筆:花丸氏
  │└「ここの舞台はすみれさんを前に…だ。さく... 筆:ひでじい氏
  ├桜の季節は短いけれど 筆:紀州人氏
  │└春は薫風とともに 筆:ひでじい氏
  ├此処にて迎える初めての春・・・(追加) 筆:フェル氏
  ├(現在許可待機中) 筆:寿津氏
  ├はらりと舞う花びら、うす紅に染まる空(追加.. 筆:美咲 緑氏
  ├桜の樹の下にて我等は出会い 筆:MOS氏
  │└「ほう。夢織さん、いいものをお持ちだ。」... 筆:ひでじい氏
  ├頬に風、目に櫻 筆:Ai氏
  │└「彼の紡ぎ出す物語は、人の心を打たずには... 筆:ひでじい氏
  ├やっぱり春はいい季節ですね。 筆:神楽氏
  │└新しい出会い 筆:Ai氏
  ├桜花の下、皆が集まる場。 筆:冬鳥氏
  ├時は巡り、また新たな春がくる。 筆:まいどぉ氏
  │├「こちらこそ初めまして。舞堂君…でしたね... 筆:ひでじい氏
  │└『舞堂さん、こっち、こっちです!もっと中... 筆:花丸氏
  └春はるるるる〜♪<○田ひかる調(爆)けし... 筆:エズミ氏
   └必ず帰ってくる…。その名は、 筆:ひでじい氏



ひでじい氏
 待望の4月がやってきました。寒いのが苦手なひでじいには好都合な月です。やっとコートやジャンパーから解放されて背広だけで通勤できるんですから。(自転車通勤のひでじいにとっては春は何より嬉しい)

 春はまた出会いの季節ですね。このBBSを通してまた多くのみなさんが浪漫の風を楽しまれますことを。満開の櫻の下をくぐりながら、そんなことを考えていたひでじいでした。
























 フフフ。よし、このくらい潜ればいいかな。こんなことをしないで早くSSを書け!!ひでじいとお叱りを受けそうですが、Windows98に2回も飛ばれちゃねえ。さあ、久しぶりに浪漫の風に当たるとしましょうか。

 それでは太正浪漫堂「出会いは櫻花とともに」そろそろ始めることとしましょう。あくまで番外編ということで。



 春のきらめく日差しがここ帝都にも帰ってきた。くすんでいた煉瓦の色が再び赤みを取り戻す。切れるような水の冷たさが和らぐ。若葉が一斉に顔を出す。

 そして、帝都に櫻花が帰ってきた。

「浪漫堂もすっかり知れ渡っちゃったなあ。今じゃこの人気だ。これじゃビアホールか何かだよ。」そう不満をこぼしながらも、出されたセイロンの葉を使ったロイヤルミルクティーの薫りを堪能するように飲むのはフェルである。彼は帝鉄に勤めているせいもあり、日曜日や祭日に休むことのできない分、こうやって平日に浪漫堂で珈琲や紅茶を堪能しているという訳である。極端に混んだカウンターや暖炉のある部屋を避け、彫刻と絵画に彩られた廊下を抜けると、フェルはテラスへと出た。彼はここ数日テラスに出てくるようになっている。幸いなことに今日は暖かいようだ。

「相当お嘆きのようですね。そこがまたフェルさんらしいですけど。」
「ああ、緑くん。君か。」優しい声に振り向いたフェルはそこに緑の姿を見つけた。緑は若草色の洋服を身にまとい、微笑しながらフェルの傍らに座るとアッサムの柔らかい薫りの葉の方でレモンティーをお願いします、とウェイターに丁寧に注文した。

「これはこれは。劇作家さんに御同道いただけると嬉しいですね。」
「いやですね。いつもいっしょに飲んでるじゃないですか。」
「いや、たまにはリップサービスも必要かと。」
「そんなことだろうと思いました。」

 フェルは緑とつかの間の楽しい会話を交わしながら櫻花の美しさに改めて見入っていた。今いる浪漫堂の本館から別館にかけてはかつて旧家があったところで、ソメイヨシノをはじめ、ヤマザクラやオオシマザクラ、それにさくらんぼの木であるセイヨウザクラなどが植えられていて一段と美しい中庭なのだ。櫻だけではなく、桃や木蓮をはじめ、様々な花木が一斉に咲き誇るこの庭は知る人ぞ知る隠れた花見の名所なのである。今をときめく脚本家の南國やエズミ、智士、紀州人などがこの庭園で脚本をひらめいた、などという話もまことしやかに語られているくらいである。

「やっぱり君と緑さんか。誰か来てると思えば。」また一人、テラスを訪ねてくる者がいた。神樂である。
「神樂さんも花見ですか。」
「いや、君たち同様、カウンターに座り損ねたのさ。もっとも陽光と櫻花とこの珈琲があれば十分だがね。」暖かい中庭で心地よい風に身を任せながら神樂は薫りの中心である熱い珈琲に口をつけた。

「それよりも、フェル君に緑君。何か気づかないかね。」神樂はカップを置いて穏やかな表情でフェルと緑に言った。
「何がですか。」
「ゆっくりと見回してみたまえ。客席を。」神樂の言うとおりフェルと緑は客席を見回してみた。

「あれ、あそこにいるのは魔女吉さんと妙法寺さんだな。」まず目についたのは帝都放送という職業柄、派手な服に身を包んだ魔女吉の高笑いとそれをなだめている妙法寺の姿であった。

「紀州人さん、南國さん、Aiさん、智士さんもいるわね。確か帝劇臨時公演で忙しいはずなのに…。」緑の向けた視線の先には打ち合わせから帰ったばかりなのか、比較的軽装の脚本家達が、多分今度の帝劇臨時公演のことなのだろう、舞台の演出について話し合っていた。南國と紀州人が議論し、智士がそれをまとめていく。フェルや緑にとっても現場の人々の意見は聞いてみたいところだった。

「こっちにはミュラー先生に、夢織、真神の両先生まで来てる?」夢織は学会の発表だったのかシックな色合いのスリーピースだ。ミュラーはシンプルなシングルスーツ、真神は軽いジャケットを着こなしている。相変わらず温雅な夢織と沈思する真神、そしてその均衡をミュラーが取るという構図は変わっていなかった。

「さすがみんな学者だから堅いな。あれ、その横には…はっ?!」
「ど、どうしたんですか。」緑が緊張するフェルの横顔に気づいた。
「帝劇総務課の大神中尉がいる…。」かすれた声で呟くフェルに緑はとっさに振り返った。たしかにモギリのあの大神さんだ。しかしこんなところでミュラーさんと何を…。熱心に話し込んでいる4人にフェルは軽い疑惑を感じたのだった。

「しかし、珍しいですね、ビッテンさん、クリアルさん、鈴掛さん…この浪漫堂にこれだけの人が集まるのも。」緑は下顎に手をやり少し考え込む仕草をした。確かにこれだけの人が集まるのは最近ではなかった。各人の仕事が忙しくなったのだとも、何か事件があったのだとも言われているが神樂やフェル、緑にはよく分かっていなかったのだ。

「それは今日が花会だからさ。」3人の質問に若い青年の声が答えた。
「花丸さん…。」そう、現在ではこの太正浪漫堂を支える花丸がMOSとともに到着していた。浪漫堂に初めて来たときは線の細い感じのした花丸であったが、浪漫堂本館での様々な出会いを通し、その姿は今や中堅の劇作家、そして技師としてその表情は自信にあふれた颯爽としたものに変わっている。

「花会とはいったい…。」神樂が尋ねると、花丸の代わりにMOSが答えた。
「つまり、どんなに忙しくとも年に一度はこの浪漫堂の地で櫻花とともに喫茶を楽しもうということになっているのさ。」説明するMOSのカップに花びらがはらりと落ちた。

「そしてそろそろビールも解禁でいいだろう。」花丸とMOSの間からまた一人、顔を出す者がいた。黒ビールを掲げる外務省書記官のかとおおおがそこにいた。その後ろのカウンターではルドルフ黒火会がエスプレッソを片手に何やら密談している。

「あれ?本館の方が空いているじゃないか。別館は入れなかったよ。」
「ほんと、どうして教えてくれなかったのよ?」
 冬鳥と沙織がフェルと緑に声を掛けてきた。その後ろには浪漫堂名うての酒豪とも噂される晃子やみお、麻妃らの姿も見える。

「あ、フェル君に緑ね。御馳走にあずかろうかしら。」
「はあ。お姉様方もいらっしゃったし退散したいところだが…。」フェルの嘆息に緑は「まだまだよ。エズミさんも来てないし…。」と応じ、神樂もそうだなと相槌を打って、座は笑いに包まれた。

 そうするうちに浪漫堂本館の中庭にも夕日が差し込み、やがて空が茜色から藍色に変わり始めた。ガス灯の橙色の灯火を受けたさくらが暖色に染まる。珈琲、紅茶、ジュース、ビール、ワイン…。それぞれが思い思いの飲物を手に様々な話に花を咲かせていく。先程到着した無法地帯とクリアルは櫻花もいいが桃花もいいなどという花論に終始しており、紀州人と櫻嵐は大皿を次々に空ける健啖家ぶりを発揮していた。シスルととりなべ、かとおおおは海外の情勢について広く談じていた。

 その中でエズミだけは少し元気がなさそうだった。南國と智士が二言三言声を掛けていたが、あまり会話が弾まなかったようである。

「いつものエズミさんらしくないな。」フェルの言葉に緑と神樂、冬鳥も少し心配顔でエズミの方を見た。確かにここのところいつもの快活さは見られない。

 ところが、次の瞬間、そのエズミが立ち上がり、そのまま動かなくなった。ミュラーと夢織、真神も同じような反応を示した。

 二人の男が洒落た背広姿で歩いてきた。他の少し違うのはアタッシュケースと図面入れを抱え重そうにしていることくらいだ。知らない者は訝しげな声でささやき、知っている者は彼らの前に集まっていく。二人はついにエズミの前に達した。二人の男のうちの気の弱そうな方の一人は荷物を置いてエズミに話しかけた。

「ただいま。エズミさん。今帰ったよ。」

 もう一人のちょっと気障な男もニヤリと笑ってエズミに言った。

「姫、ただいまお迎えに上がりました。」

「お帰り、英爺…。お帰り、イカルスさん…。」エズミの言葉の最後は聞き取ることができなかったが、エズミは二人の肩に手を回した。

「調査から無事の帰還おめでとうございます。」
「とにかく無事で何よりでした。」再開を喜ぶ3人の側で夢織と真神が声を掛けた。

「さあ、シャンパンの用意だ。みんな何をしている。ウェイター、極上の物を頼む。」ミュラーの声がテラスにこだまする。夢織と真神が手早くグラスを取り寄せ用意を始めた。何事かと驚く一般客を後目に常連たちが賑やかにグラスにシャンパンを注いでいく。

「こんなものでいいかしら。」智士と麻妃の注ぎ方は堂に入ったものだった。

 ルドルフがテラスの中央に立って言う。

「本来こんな役は真っ平ごめんだが、今日は特別だ。行方不明になっていたイカルスと英爺が無事に帰ってきた。最高の花会になりそうだ。先に帰国した夢織、真神の両先生とイカルス、英爺の帰国を祝して…プロージット!!」

「プロージット!!」一同は唱和し、満天の星空に高く祝杯を挙げる。その若き男女の集まりをガス灯やランプに照らし出された櫻花の色が優しく包み込む。奇しくも隣の別館で催されている帝響演奏会で演奏されているエルガーの「威風堂々」が祝杯に絶妙の彩りを添えた。

「これが伝説の太正浪漫堂…。」緑は自らグラスを持ちながらもその光景を信じられないように眺めていた。

「噂には聞いていたが…。本当にあったんだな。」神樂は目を細めた。

 フェルは輪の中心へと入っていった。そして中心の二人に向かうと決然とした表情で話した。

「初めてお会いします。私はフェルと申します。噂に聞くイカルスさんと英爺さんにお会いできて光栄です。」

「おお、また新しい仲間が増えているな。俺はイカルス。遺跡の発掘なんかをやっている。こっちは英爺、地質学者だ。」
「詩人です!!」きっと親友を睨み付けた英爺を見てエズミが吹き出した。さっきまでの表情が嘘のようである。フェルはイカルス、英爺、エズミと握手を交わし、神樂と緑もこれに続いた。

「しかし、太正浪漫堂の仲間は本当にいたんですね。」フェルは驚きと嬉しさを隠せなかった。
「フェルさん。帝劇を愛する限り、太正浪漫堂はみなさんの心の中に必ずあるのですよ。」夢織は穏やかにフェルに話しかけてきた。そしてその後ろに一人の青年が立っていた。その青年は涼やかな瞳をフェルたちに向け、自己紹介した。

「初めまして。自分は大帝國劇場総務課に勤めている大神一郎です。」フェルはこの名を聞いたとき、自分の歴史が転回していることを実感していた。シャンパンで談笑する者たちの上には櫻花がただ舞っていた。新しい櫻花の歴史が。


魔女吉氏
そうですね。

春がきて、桜が咲いて。
サクラにも随分風が吹きました。
しかし、陽光は総ての者に平等に当たり、
その総ての人々が幸せを謳歌する。

桜の花はもうすぐ見頃ですね。

































じゃ、こんぐらいでここから書こうっと!
浪漫堂では雑魚キャラの私で良いのか?こんな場所に?

「新しき出会い、か。」

隅っこで黒い舶来のジュースを飲む魔女吉。
サイダーの亜種で欧米でも人気らしい。

「へぇ?毒と悪意のプロデューサーが感傷的でないですか?」

その隣には若き次世代の帝都の担い手に教鞭を振るう妙法寺。

「え?ふ、判らんのか!俺様が戦隊でデマゴーグな人間だという事が!ギコハハハ!」

「あのな、それを言うなら「繊細」で「デリケート」だろ。つーか洒落になってないぞ。」

「く、無学だと思って馬鹿にしおって!・・・あ、猫侍くぅ〜ん♪」

浪漫堂に桜の舞う中で交される何気ない言葉。
「場」の持つエネルギーは都市エネルギーに通じるという考えもあるのだが、
ここは、それとも違う何か不思議で暖かい感じがした。

「久々だなあ猫侍君。時々蒸気家具屋で見るのは見てるんだが声をかけ忘れてて。」

「げ!魔女吉!・・・さん。な、なんの・・・いや、何か用ですか?」

「ふっふっふ、猫の兄貴といえば当然・・・・・。」

両手一杯に持ち出した料理の数々。
忌まわしき記憶と共に猫侍は身体を反対方向に向ける。
しかし、逃げる寸前で魔女吉の大きな手が襟首をつかむ。

「や、やめるニャ!もう食べるのは懲り懲りだニャ!」
腰の日本刀をぶんぶんと振りまわす猫侍。
当然素人の魔女吉には避ける事が出来ない。
というよりもそんな気配が無い。

「兄貴ぃ〜♪さぁ、漢魂を見せてくださいよ♪」

ドクドクと顔から血を流しながら微笑む魔女吉。
『こいつ降魔か何かとちがうんか?』
猫侍はその様に恐怖した。

「おいおい、いい加減にしなさい、魔女吉くん。」

大物しか集まらない方向から魔女吉に声がかかる。

「師匠!」

咄嗟に手を放した魔女吉から、猛スピードで猫侍を取り上げるイカルス。

「ほれ見ろ。レディが脅えているじゃないか。君はいつから助平になったんだ?」

「な、何を言ってるんです。猫様は兄貴です!俺の!」

睨み合う魔女吉とイカルス。
師弟が遂に牙を向き合う時が来たのか。
固唾を飲んで見守る猫侍(いい迷惑だから)

そこに、エズミと智士が現れる。

「ほら、魔女吉さんレニですよ。」
「ほい、魔女吉はんすみれですわ。」

智士とエズミから渡されるお手製の似顔絵。
ご機嫌で魔女吉は去っていった。

一緒にその場を去ろうとするイカルス。
しかし、その前に立ち塞がるエズミと智士。

冷や汗の流れるイカルス。

伊達男の決断はどうなるのであろうか?



一方魔女吉。

「五十里屋さーん、絵を下さい〜!」
「な、なんで?」
「今度の番組は活動写真アニメなんですよ。頼みますよ〜。」
「こんな変なの相手にするなら、軟派師の方がマシだぁ!」


そこかしこの絵描きに絵を強請る魔女吉であった。


******************************

久しぶりなので書いてしまいました。
いつもなら大家の後に入れるんですが、何だか嬉しくて入れてしまいました♪
また、面白くなって欲しいですね♪

ではでは♪

ひでじい氏
「楽しみは最後まで取っておくものですよ。」(英爺:地質学者)

「お〜い。まだ仕事が終わらないぞぉ〜。」投げやりな魔女吉の声がする。それもそのはず、今日はミュラーと夢織の誘いの下、帝劇で総見、つまり気のあった仲間達全員で観劇することなのだが、その後欧風酒場「関西館」で集まり宴会をすることになっていたのだ。
 しかし、帝都放送はそのような定時退社を許してくれるほど暖かい職場ではなかった。

「魔女吉君、この仕事も一緒にやってくれないかな。今日中に仕上げを頼むよ。」言葉とは裏腹にやって当然というような企画部長の声が魔女吉に飛んだ。

「しかし俺はちょっと夕方から約束が…。」
「あ、魔女吉君、例の脚本まだだったな。あれ、どうするつもりだね。」ぐっとこみ上げる怒り。しかし魔女吉は寂しげな笑いでそれを包んだ。

「悪いな。みんな。俺ぁ行けそうにもないよ。」手早く浪漫堂に欠席の連絡を入れ、みんなに迷惑を掛けないようにすると、魔女吉は黙々と仕事を続けた。かたがついたのはもう深夜だった。たった一人の残業を終え、ランプを消して戸締まりしていた魔女吉の後ろから不意に声がした。

「魔女の旦那、何をやってるんです?」
「だ、誰だ?!」びっくりした魔女吉は慌てて振り向き、そこに妙法寺の顔を見つけた。
「な、なんだ。おどかすなよ。それよりこんな夜遅くにどうしたんだ。」
「俺も学校で残業だったのさ。おかげで関西館はパァになっちまった。」二人でつくため息。星空が妙にさみしいものに見えた。魔女吉の何ともやり切れない表情を見ていた妙法寺はしばらく考えていたが、手をポンと打った。

「そうだ、魔女の旦那。今日は俺の家で飲み明かそうか。」
「ああ、それはいいなあ。関西館の敵討ちをしよう。」ギコハハハ!!久々に魔女吉の豪快な笑いが飛び出す。二人はそのまま夜の街に消えて
いった。


関西オフの無念をこんなエピソードにしてみました。






五十里屋長介氏
桜舞い散る・・・

目の前の見事な桜花に、ただただ見惚れ
・・・心奪われる。
先刻まで落ち込み、沈んでいた気分が
次第に高揚していくのが解る。

「嗚呼。何と見事な・・・」

絵筆を持つ手ももどかしく、突然に降って涌いたイメェジを紙の上につらつらと載せて行く。

さくら、さくら、一面の櫻吹雪・・・。
そして美しきすみれ様の肖像。

「・・・・・ふう。」

小さく嘆息し、出来上った絵を片手に五十里は櫻並木を歩き出す。そしてふと、その場が見た事のない場所だという事に気が付いた。
・・・元々、地理関係には疎い。
しかも、その見事な桜に心酔していたのである。

「此処は一体何処やねん・・・。」

途方に暮れつつも、何かに導かれるかのように歩を進める・・・・・・と。

「太正・・・浪漫堂・・・・。」

偶然か、はたまた・・・・・・必然か。
桜の花びらに誘われし一人の絵師は、こうして浪漫溢るる場所への扉を開いたのである。


「あ、五十里屋さ−ん、絵を下さい〜〜!」

「な、なんで??」

彼の名は魔女吉。帝都放送のプロデューサーだ。
五十里とは以前一緒に仕事を手掛けた事がある。

たった今仕上げた会心の出来の「すみれ様」を私から奪おうという心積もりかあっっ!!!
おそるべし、魔女吉の絵に掛ける執念!

「今度の番組は・・・・」

「うわああっ!こんな変なの相手に(<絵の争奪戦?)するなら難破した方がマシだああああっ!!」<聞いちゃいねえ。

・・・・微妙に会話がズレている二人であった。

***********************

こんにちは、ひでじい様&魔女吉様。
五十里屋(いかりや)ことごぢうりでございます。

久々の過去読み中にごぢうりの名前を発見しましたので、びっくりしながらのレスです。
魔女吉様のレスに勝手に繋げてしまいました。
敬称略&嘘設定、陳謝です。
そして、ごぢうりを仲間に入れて下さいまして有り難うございます!嬉しかったです(*^-^*)

ちなみに「桜舞い散る」は神崎四葉様のHP内、すみれ様ファンクラブ「紫美麗」会員ギャラリーに置いて頂いております(^-^;;;<四葉様、勝手に宣伝&お名前拝借陳謝です。

それではこの辺で。
今年の4月は京都でお花見をした五十里でした。

ひでじい氏
藤枝あやめが見出し至宝

 晃子、麻妃、そして五十里。大正浪漫堂に集いし絵師たちは美術にも造詣が深かった、今は亡き藤枝あやめが見出した人々である。太正の世の当時、太正デモクラシーとモダンの風が帝都に流れていたとは言ってもまだ女性には厳しい世であった。その中で彼女たちを引き上げた功績はあやめにあるといっても過言ではない。

 この中で雅号五十里を名乗る彼女の経歴は実に奇妙なものであった。元々画商であった父につき、当時流行していた西洋画をはじめ、日本や中国を初めとする様々な絵を見ることができた彼女は父の友人の薦めもあり、女学校時代には水彩画や油絵を描く機会を得るという破格のチャンスを元手として、めきめきと才能を発揮し、若くして女流画家としてもてはやされた。
 しかし五十里の心は満たされていなかった。自分の描きたい物をもう少し線的に、そしてシャープに描きたかったのだ。五十里は密かに自分の描いた物を世に問いたいと思うようになった。後年のイラストの先駆けとも言える感覚がすでに五十里には宿っていた。
 五十里は父やその友人の反対を押し切り帝都に出てその才能を試そうとした。しかし帝都の風は冷たかった。西洋画の信奉者、そして日本画の保守主義者の両方から五十里のイラストは攻撃を受けた。自信を失った五十里はその日の食べ物にも困るようになり、縁日で絵を売って何とか日銭を稼ぐようになった。そんなある日の縁日。

「お嬢ちゃん、この絵きれいだね。」そう言って買ってくれる大工が現れた。五十里は感動しながら絵を手渡した。
 それから噂が噂を呼びたちまち五十里の絵は下町でも評判となった。日本には古くから戯画の伝統が息づいていたのだ。五十里の懐も少しは暖かくなってきた。その活躍が街に遺賢を探す藤枝あやめの目に留まった訳である。

「描いて欲しい人がいるんだけど…。お願いしていいかしら。」彼女から五十里に話しかけた第一声がこの言葉であった。その人物が山崎真之介だったことは知る人ぞ知る逸話である。

 そして麻妃、晃子と並び浪漫堂本館の美の守護神とまで謳われるようになった五十里。しかし彼女の活躍の物語は始まったばかりである。その彼女もまた今の太正浪漫堂になくてはならない一人である。


ごぢうりさん、ごめんなさい。こんな感じで伝記調のレスにしてみました。いかがでしょうか。




夢織時代
再び巡る春に、永遠を歌おう。

ええ、春ですねえ。
桜の花って、近くで見ると白いのに、遠くから見ると確かに桜色なんだと
最近気が付きました。

























私は、そして、彼は、帰ってきた・・・・。
もはやひんしゅくを買おうが気にしなくなったフレッシュジュースを片手に、夢織は歓喜に包まれている自分を感じていた。
この日をどれだけ待ち望んでいたことだろう。
一足早くここに帰還していたとは言っても、やはり何か欠落しているという想いは拭えなかった。

その寂しさを紛らわすため、一番思い出深いあの日の記念写真に想いを馳せることが最近多くなっていたのだが。

しかし、これからは違う。
新たなる時が始まるのだ。
「調査から無事の帰還おめでとうございます」
もっと言いたいことはある。
しかし、それらを言葉にすることのなんと難しいことか。
百万の言葉を並べても、それを表現することはできるのか。
だから、杯をかわす。
酒は飲めずとも、夢織はこの浪漫堂の暖かい大気に酔うのが好きだった。
さすがはミュラーさんだ。
こういうとき、真っ先にみんなに指示のできるこの人も変わっていない。
いや、前にも増して風格すら感じさせる彼の横では、さしてすることも無くなってしまった。
「真神さん、グラスを用意しましょうか」
「ええ、久しぶりに、ですね」

浪漫堂も、あの時に比べると人が増えた。
それまで集っていた人々と同じく、限りない浪漫に心を通わせられる素晴らしい人々が。
「フェルさん、そちらに回して下さい」
最近、夢織が発表した論文に校正で関わってくれたこの人は、新しく浪漫堂に集った人々の名簿を作るという大作業を成し遂げた人だ。

過去の常連、今の常連、そんなものを問わず、ここに集まったすべての人々の手にグラスが行き渡っていく。

どうやら、行き渡ったようだ。
音頭は、やはりこの方にとってもらうのがいいだろう。
最近、「皇帝」という異名で呼ばれることを嫌っているが、やはり漂わせるその威厳はそう呼ばれるにふさわしい。

「プロージット!!」

想いが声に、声が想いに。
浪漫堂に響き渡る美しき唱和の声が、今新たなる時の始まりを高らかに告げた。


***********************************
・・・・・・夢織時代です!
万感。

文中の通りの想いです。

かつてこのBBSで開かれた一大企画、太正浪漫堂。
このBBSに集われた人々が生きた夢の時代、夢の店「浪漫堂」

かつての連載は、現在第六回まで
http://www3.osk.3web.ne.jp/~jidai/sak/romando/
にて再録させていただいております。

御存知な方も、御存知でない方も、よろしければ御覧になって下さい。

なお、かつて浪漫堂に集われた方々の再録許可を現在お願いしております。
どうかよろしくお願いいたします。

名前をお借りしたミュラー大将閣下、真神さん、フェルさん、そしてRudolfさん、すみません。

そして、ひでじいさん。
・・・・・・・・・・。
やっぱり、この場でもう一度言いましょうか。

おかえりなさい・・・。

ひでじい氏
 巡る酒杯とともに、浪漫堂本館は華やいできた。次々と仕事を終えて参集する浪漫堂の常連達。今日が特別な日であることをまるで申し合わせているかのようだ。

「ふむ。興も乗ってきたことだし、久しぶりに歌曲でも歌うとするか。」櫻花の花びらの舞う中、シャンパングラスを傾けて、ミュラーは微笑しながら夢織に語った。

「え…。ここで、ですか。」夢織は少々驚きの念を持ってミュラーに問い直した。いくら興に乗ったとは言っても、この浪漫堂でいきなり歌と言うこともないだろう。穏やかな談笑の輪が広がっている今、歌はどうであろうか。

 そんな夢織の胸中を察したのかどうか、ミュラーは夢織に語った。
「私も突飛だとは思うんだ。しかし彼が勧めてくれるのでね。」ミュラーが手招きした先には菫月の姿があった。

「夢織さん。こんなチャンスはないですよ。帝響のメンバーが伴奏をしてくれるので誰か歌曲を歌わないかという申し出がありましてね。」穏やかな微笑を湛えながら菫月は説明したが、後で夢織の側へそっと近づくと、実は大神中尉がこの場にいるので帝劇のメンバーに会えるんじゃないかと踏んでいるみたいだ、とそっと小声でつけ加えた。

「いずれにしてもめったにないチャンスだ。夢織、私は歌わせてもらうことにするよ。」一般的な歌曲からオペラに至るまで造詣のの深いミュラーはゆっくりと立ち上がってアンサンブルメンバーの方へ歩き出した。

 ミュラーは楽団員と軽く音合わせをすると、低音の甘い声色で歌劇の一節を歌い始めた。ミュラーの歌唱力がこれ程のものであることを夢織は知らなかった。浪漫堂の話し声のさざめきが消え、聴衆へと変わっていく。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの弦楽器の音の海の上に美麗のフルート、哀切のオーボエ、技巧のクラリネット、枯淡のファゴットの木管楽器が浮かんでは消えていく。そして雄壮なホルン、明朗なトランペット、剛胆なトロンボーンの金管楽器が光を放つように入ってくる…。ミュラーはその中をあくまで朗々と歌い抜けた。曲が終わると歓声とともに拍手が沸き起こった。

「すごいですね。ミュラーさん。」夢織は席に帰ってきたミュラーに率直に賞賛の言葉を述べた。
「いや、下手の横好きでね。ただせっかくの機会なのでやってみたんだよ。」ミュラーは謙遜しながら紅茶に少しブランデーを入れて飲んだ。

 しかし、この後がすごかった。ミュラーの気持ちよさそうな歌いっぷりに刮目したのか、次々に曲を歌い出す人々。イカルス、英爺、エズミのトリオでの合唱。智士の沁みいるようなアルト。緑や沙織、ごちうりにフェルと続き、ついには櫻嵐までがコンサートマスターに合図を送るや歌い出した。
 ついには「歌ではなく文で勝負だ」と腕を組んでいた紀州人までが聴衆の喝采のもと、その美声を披露せざるを得なくなってしまった。さらにカウンターテナーに聞きまがうほどの花丸の超絶技巧がこれに続く。座は大いに盛り上がった。

「さあ、夢織さん、次はあなたですわよ。」聴衆に一礼した晃子が夢織に声を掛けた。
「私…ですか。」夢織は意外な気がした。今まで人前で特に歌を披露するなどという経験はなかった夢織であった。しかし順番が回ってきてしまったことを告げる晃子の一声で俄然緊張してきた。

「大丈夫ですよ。夢織さん。」のぶっちとクリアルがしきりに勧める。やがて意を決した夢織はBATが差し出した紅茶を一口飲むとアンサンブルメンバーの方に向かった。静まる聴衆のもと、夢織は口を開いた。それは歌詞のない曲、そう、ヴォカリーズだった。悲哀を込めた短調の曲が進行する。月夜に冴え渡る透明なテナーは聴衆の心に響いた。曲が終わり夢織が客に礼をすると拍手が一つ、また一つと重なり、大きな拍手へと変わっていった。

「なるほど。奥の手は最後まで取っておいた…かな。」かとおおおのニヤリとした表情に、いえ、そんなと謙遜する夢織。しかし夢織の心の内に早すぎた山崎の死を弔う気持ちがその歌に込められていることは、ミュラーや真神など、ごく一部の者を除いた大半の聴衆には知る由もなかった。

 浪漫堂の夜は始まったばかりである。


 夢織さん、関西OFFお疲れ様でした。このようなレスSSをつけてみましたがいかがでしょうか。

真神 樹氏
桜の盛りは短くとも
鮮やかに咲き誇るその姿は人の心に毎年変わらぬ、そして決して同じではない感動を与えてくれますよね。
桜の季節はまさに浪漫の季節だと思います。そして、サクラの季節も。

……自分でも痒くなってきてしまいました(^^;
遂に再開ですか!また楽しませていただきたいと思います。
#ところで、いつの間に外国に行ってきたんですか、私?(笑)
#今回はSSはパスさせていただきます。ちょっと今書いてる最中の物があるものですから…(^^;

ひでじい氏
「浪漫堂の俊秀、再び集う…か。」グラスに透明な液体を注ぐと真神は軽い微笑を持って、グラス越しに浪漫堂の面々を見た。こうして見ると実に多彩なメンバーだ。重厚かつ合理的な思考の持主ミュラーを筆頭に怜悧なかとおおお、沈思するシュペーア、不敵なイカルス、温厚な英爺、人を食ったような無法地帯…。翻ってみればスマートな思考の二階堂、直進するビッテン、そして骨太な紀州人…。分野は様々だが、それ以上に実に様々な性格を取り寄せたものだ。

「いや…。」真神はさらに思考を巡らせた。そのままでは彼らの個性がぶつかってしまう。何が彼らを共存させているのか…。
「帝劇だ。いやそれ以上にこの浪漫堂がそうさせているのだ。」確かにその通りである。帝劇花組の存在が彼らに希望と一片のゆとりを生み出しているのだ。それ以上に南國の大河的視野、智士の内面的視野、エズミの心理描写、櫻嵐の歴史観…。花丸やMOS、BATなど多くの小説家、脚本家、演出家が帝劇花組を通して人間的な感動を呼び起こしているのだ。その感動は晃子やごちうりの腕を経て絵画に、さらには菫月から帝響を経て音楽にまで昇華していく。

「実に危うい共存関係だな。しかし、この絶妙のカクテルを保たなければ…。」確かに帝都の明日はない。先日も大神、加山との話し合いで真神が再三提起した懸案だった。しかし、そういう友人を半ば利用しようとする現実的な思考の自分に反発する自分があるのも事実だった。

「幸か不幸か、陸軍首脳はこの事実に気づいていない。」真神はシャンパンを睨むように見つめると一気に飲み干した。浪漫堂ノ一般大衆ヲ保護セヨ、だと?事はそのような簡単なものではないのだ。

「どうしました?真神さん?」ふと自分の前に若い青年が立っているのに真神は気づいた。

「夢織…。」真神はそこに夢織の姿を見つけると、ふと心に奇妙な安堵が満ちてくるのを感じた。そうだ。まだ希望はある。夢織がいるではないか。いや浪漫堂の面々の知恵を集めれば何とかなる。来るべき新たな大戦に向けて…。月だけでは勝てぬ。陽が必要なのだ。

「真神さん、おかしいですよ。」
「い、いや考え事をしていたのだ。それよりもさあ、みんなのところへ行こうか。」真神はすばやく思考を切り替えると微笑して夢織の肩を叩き、料理を一品抱えると共に賑やかな一角へ歩いていった。

浪漫堂の影、というべきシチュエーションもつくっておいて…やっぱりこういうのは真神さんかな?フフフ。

花丸氏
巡る。季節が、そして夢が。

暑く照りつける夏を、憂いの秋を、そして凍てつく冬を経て、巡り来る春、夢の続き。
目を配せ合い、盃を掲げれば言葉は不要。
我々の今までが此処に在る。我々のこれからが此処に在る。
共に祝いを奏でておくれ、春の風に舞えよ桜。ひらり、はらり。
























振りそそぐが如くのその見事さにしばし見とれた後、皆に伝えなければならない用件を思い出し、慌てて歩を進める。
周りを見渡す。確かに今、自分は此処にいる。夢にまで見た浪漫堂。今、再び此処に集う。
そして胸を押さえ、内ポケットに押し込めた物の感触を確かめる。確かに現実にそれは有る。一日晩秋の思いで待ち侘びた便り。

遠い地で励んでいるという。
研究発表とスポンサーを捜すため、昼夜問わず駆け回っていると。
だから、便りをしたためる度に返事は要らぬと付け加え続けてきた。ただ帰還のみを待ち侘びた。

そして今、英爺とイカルスの帰還に胸躍らせる間も無く舞い込んだ一通の便り。
もう一人の、皆が待ち侘びている人物。

我が、友。

気が急いて、テラスの上へと不作法に駆け上がる。大声で告げる。

『聞いて下さい、あいつが、あいつからの便りが届いたんです・・・もうすぐ、帰って来るって・・・!!!』

怪訝そうに目線を送っていた表情が、歓喜の色で染められて。

この上も無く幸せな時間。時が過ぎ行くのが、明日という日が来るのが怖いくらいに。
皆、だからこそ精一杯、歌い、語る。

ここ太正浪漫堂に、今再び春、きたる。
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ふふ、やっぱりこの花会は、自分が幹事を務めさせて頂いたのでしょうか?帝都、長野と続きますと、ついそんな事を思い浮かべてしまいます。

もう一度、伝えさせて下さい。お帰りなさい、ひでじいさん。
夢織さんの所へ、二階堂からの便りが届いたんですよ。大変そうではあるけれど、でも、元気そうでした。
自分の手元の便りでは、学会の発表は5月半ばと聞いています。
もう一人の待ち人が戻るのも、もう遠い事では有りません。

ああ、そして幾度見るとも満ち足りる事の無い至高の夢のひとときも、直ぐそこまで迫っています。
今、此処に皆と居ることに、持ちうる全ての感謝を。

さあ、盃を満たし高々と掲げろ、足を踏みならせ、讃えよ浪漫に満ちた今を、さあ、時の声を上げろ!!!
『プロージット!』

ひでじい氏
「ここの舞台はすみれさんを前に…だ。さくらさんと交互に台詞を入れていく。」花丸の持ち味は丁寧できめ細かな脚本と斬新な舞台演出の共存である。今や有名となった花丸のその才能を見ようと、今日も若手の脚本家や演出家が帝劇のリハーサルに見学に訪れていた。

「花丸君も今や時代の寵児だなあ。」地質研究所からエズミに会いに来ていた英爺は華やかな舞台の裏の真剣な稽古と偉容を誇る帝劇の舞台装置を見て興奮気味である。
「本当に花丸さんの舞台は斬新だし、映えるのよ。私も勉強しなくちゃ。」エズミはきょうは寸劇の打ち合わせだけのはずだったが、花丸の舞台演出が気になるのか、英爺とともに大ホールまで見に来てしまったのだ。

「お、英爺とエズミ君じゃないか。」もう一人顔見知りの人物が近づいてきた。南國である。
「今や花丸君は最早中堅の中でも最右翼の実力を持つ浪漫堂屈指の脚本家だ。それだけじゃない。若手や中堅とも大いに飲み、その意見をまとめ上げているとも聞く。恐ろしく成長したものだ。」南國の目が細くなる。

「南國さんも小ネタだけではいけませんよ。」エズミが混ぜ返すと南國は「おおっとやぶ蛇だな。」と頭を掻いた。

「花丸!!」ちょうどそのとき客席から凛とした呼びかけが聞こえた。涼やかな男性の声だ。右手にアタッシュケースと図面入れを持ったスマートに背広を着こなす青年。

 花組に演技指導をしていた花丸は小休止と軽く断りを入れると訝しげに客席の方を見た。そして数秒後彼は舞台を乗り越え客席の方へと走っていった。

「二階堂?!お前なのか!!」
「ああ、今帰国した。」その声と姿に南國とエズミ、英爺も二人のもとへ駆け寄る。かたい握手を交わしていた二人は南國らに異口同音でこう言った。

「さあ、浪漫堂へ行きましょう。」


こっそりこんなものもつけておきましょう。
メール暗号:isyofeldow

紀州人氏
桜の季節は短いけれど

....「夢の続き」は、きっとまたやってくる....ここに、素晴らしき仲間達がいる限り!!
改めて、おかえりなさいませ。神戸の桜はもう散りかけですが、まだ山の方では見頃かも。
週末には、花見もいいかな、とか思ってます....うーん、当地は週末天候不良か(苦笑)。

































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「さてさて、「花より団子」とはよく言った物だな...もぐもぐ」

『相変わらず色気より食い気だな、紀州人は...ぱくぱく』

「君に言われたく無いぞ櫻嵐君....よし、お代わり!!」

....廻りにお構いなく次から次へと料理を平らげる二人、こと食欲に関しては、
間違いなく「浪漫堂の双璧」である。花丸もそこは心得て手配したはずであるが、
それでもはらはらし通しであった。

『しかし、「色気より食い気」だけじゃあ人生つまらないんじゃないか?』

「それは花にもよりけりだ。帝都には、世界のどこにも無い「名花」があるからな。」

『なるほど、それも八輪も...まったく奇跡だな、これは。』

「だろう? 帝都に名花ありき、すなわち「花組」というわけだからな!」

自分の事のように得意げに語る紀州人、しかし、そこに異論の出る余地はあるまい。

『時に君は、どの花が一番のご贔屓なんだ?』

「うーん、それは、だな...つまり、だ...」

『やっぱり事実だったんだな、君がすみれ嬢贔屓といいつつ、実はレニ嬢にご執心という噂は。』

「い、いいじゃないか! だいたいみんな素晴らしすぎて、贔屓なんかできるか!!」

『はいはい、そういう事にしておくさ。』



「ん? なんだどうしたんだ花丸のやつ、あんなに慌てて....何かあったのか?」

『そういう君は相変わらず落ち着いてるな....図太いというか何というか。...ん、何て言ってるんだ?』

『聞いて下さい、あいつが、あいつからの便りが届いたんです・・・もうすぐ、帰って来るって・・・!!!』

「え!? もしかして、二階堂が帰って来るのか!? そうなのか?」

思わず立ち上がる紀州人。

『....君が驚く所、初めて見たような気がするなあ。私にはそっちの方がよっぽど驚きだ。』

「これが驚かずにいられるか! 彼が帰って来るんだぞ!!」

そう、花丸からの朗報は、皆の心にもう一つの春風をそよがせたのである。

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....相変わらず自己中カキコだなあ、自分(苦笑)。シリアスな役所のはずの桜嵐さんを、
食欲魔人レースに付き合わせてる上に、おまけに(現実社会の)自分ネタを出しまくりだし(爆)。

というわけで、花丸さんと、現在ほぼオフライン中の桜嵐さん、二階堂さんのお名前をお借りしました。
文中敬称略のこと、了解願います。

やっぱりいいですなあ〜。では、これにて。

ひでじい氏
春は薫風とともに

「次世代の演算機はこのような機構ではだめだ。」帝國華撃團花やしき支部で藤枝かえで、李紅蘭を前に熱弁を揮う若き技術者の姿があった。しかし彼の姿を見て驚愕する者は多いはずだ。
 彼の表の名は雅号紀州人、現在帝劇お抱えの脚本家として名声を博している。しかしその真の姿は四菱重工の研究開発部新機構開発掛から帝國華撃團に出向という極めて珍しい経歴を持つ技師である。
 紀州人には相反する壮大な夢があった。一つは舞台の分野で壮大な演出を行うこと、もう一つは工学の粋を集めていろいろな装置を遠隔操作できる機構を開発することであった。

「分かったわ。あなたの計画を進めてみて。」紀州人の野心的な計画、すなわち蒸気演算機の電気化の計画書を厳しい表情でじっと見つめていたかえではやがて完爾として笑うと異論のある花やしきの他の技術者を制して、紀州人及び彼の計画に賛同した李紅蘭の意見を採用した。

「しかし今度の計画はどきどきするわ。花やしきの連中は危ないゆうて反対したけど今まで考えもせんかった話やさかいな。」紅蘭の呼びかけに紀州人は野心的な瞳を返した。

「いえ、これは紅蘭さんの電気でやったろうかいな、って発言を具現化しただけですよ。」
「いや、その思いつきを発展させることが重要なんや。」
 この二人の話は実に研究部門での双方の役割分担を物語っている。紅蘭は分野に限らず実に多くの発明や発見をこなしている。例えば地震の新しい計測システムを考えついたのは紅蘭であるが、これは後に英爺を通じて最終的には東京帝國大學理學部の寺澤寅彦研究室に持ち込まれ、後の地球物理学の隆盛を招くこととなった。実に独創的で多彩な発明、それが紅蘭の持ち味であった。
 一方紀州人は紅蘭によって切り開かれた全く新たなパラダイムを強力に構築することに恐ろしいまでの才能を発揮した。

「しかし、最近の藤枝副司令はよく似てきましたね。」紀州人は含み笑いをした。
「あやめはんですか。そうやなあ。」紅蘭は遠い目をした。

 紀州人の一点集中的にシステムを構築する才能は簡単に売れるものを高く売るといった四菱の方針下ではもて余すものがあった。天才肌の紀州人は必然的に研究部署で孤立していった。そんな紀州人に目を向けた者がいた。

「あなたのその才能を私に預けてもらえないかしら。」
「陸軍に俺が協力するとでも思っているのか!」ただでさえ、陸軍の動向に苦々しいものを感じていた上に、職場での焦燥感から苛立っていた紀州人はその女に吐き捨てるように言った。

「いいえ、陸軍ではないわ。今は言えないけど新しい部隊が誕生するの。その技術者としてあなたの才能が必要なのよ。」

 面を上げたのは声とは裏腹に意外にもうら若き女性、後の帝撃副司令となる藤枝あやめであった。しかし紀州人のその異才を見抜き帝撃に招聘したそのあやめも先の葵叉丹の乱で命を落とし、もはやこの世にはいない。そして現在副司令の地位にあるのは奇しくもあやめの妹にあたる藤枝かえでである。

「確かにあやめはんは紀州人はんの才能を見抜いた。そやけど文才を見抜いたのはかえではんやで。」
「そ、その話はもうよしましょう。」紀州人は照れて紅蘭に軽く手を振った。確かに現在表面上で名声を得ているのは脚本家としての紀州人である。そもそもはレポートの片隅に紀州人が書きなぐった脚本を偶然見つけたかえでであった。

「面白いわね。あなたにこんな才能があったなんて…。帝劇の脚本も書いてみる?」
「副司令、御冗談を…。」紀州人は断ったものの、結局雅号紀州人の名で発表するはめになり、観客や帝劇花組らの強い支持を得た結果、今日の紀州人の立場ができあがったのである。

「では紅蘭さん。私は少々寄るところがありますので…。」
「お疲れさん。浪漫堂、今日花見やってなあ。ウチらも寄らせてもらうわ。」

 紅蘭と別れ、更衣室で紀州人は手早く白衣を脱ぎ捨て、洒落た背広に着替えると何事もなかったかのような表情で浪漫堂本館に繰り出した。

「いよう。イカルス、英爺、エズミの三羽がらす。」宴席で紀州人は三人に声を掛けた。

「三羽がらすとは失礼ね。せめて二羽のからすと一羽の白鳥とでも言ってもらえないかしら。」エズミはおかんむりである。

「まあまあ、エズミさん。」櫻嵐がエズミたちとの間に割って入り、紀州人に静かにシャンパンを勧めた。

「あまりいける口ではないが、今夜は飲もうか。」紀州人は櫻嵐からのグラスを受け取ると櫻の樹に向かって掲げるような仕草を取って口に運んだ。数年前とは全く異なった新しき風の中に身を置く自分に心地よさを感じていた。紀州人の背にも櫻花は静かに舞っていた。



 全くのフィクションです。紀州人外伝ということで(笑)何となく職場で思いついたので書いてみました。紀州人さんには陳謝。




フェル氏
此処にて迎える初めての春・・・(追加)

こんばんは、ひでじいさん。
こちらに参上してから初めての春、ひでじいさん始め皆さんとすごせる事が何よりも嬉しく。
桜の舞い散る帝都で、一堂に会せたら素敵ですね。
ではまた。




















このくらいで良いかな?(笑)
昨日発見していたのですが、レス遅れちゃいました・・・・。
ちゃんとしたSSレスを付けようかと思ったのですが、もう少しお待ちくださいね。

そして、ひそかにレスが付こうとしていた。
DC版カキコ行きます!!(すこしづつ)
<6/16記入>

夢にまでみた光景。
浪漫堂の人々の中に今、自分が立っているのだ。

「夢じゃ・・・無いんだ・・・」改めてフェルは言葉を口にすることで浪漫堂の雰囲気に酔った。
飲み干したシャンペンはまた格別の味だった。

浪漫堂には何度か足を運んではいた。
が、浪漫堂が、これほど浪漫堂としての輝きを放っているところは正直、見たことが無かった。
ひときわ心地よい音楽、そして時間。


「ほほう、フェルさんはここに集う人たちの名簿を作り上げたんですか。」夢織と話していた英爺がフェルに確認するように聞く。
「いえ、南国さんの資料を拝借して、それを手本に新たに書き足しただけです。」
「まったくです。まんまと横取りされましたよ。」フェルの言葉に反応して南国が笑みを浮かべて言った。
「まいったなぁ・・・」
「いつもこう素直だったらいいんですけどね。」困惑するフェルに緑がとどめを差す。気取った態度も今だけは肩無しだ。


「あれぇ?フェルさんが夜まで居るなんて珍しいですね。」
「ほんと、混雑を嫌っていたのに。」
「え?ちょっと待って、あれ、もしかして大神さん?」
三人の女性が浪漫堂に入ってきた。
フェルの元へ歩み寄ると、フェルが状況を三人に説明した。
そして、英爺とイカルスに三人を紹介する。

ショートヘアにスレンダーな長身のきりん。
浪漫堂にて「草寒」と言う表題の短編の小説集をを編纂している。

ボブカットにぽっちゃりした印象の美亜。
花組の舞台の題材に「若草物語」を執筆している。

ロングヘアーを束ねた小柄な碧乃。
大神一郎と桐島カンナを主役に据えた恋愛小説を執筆している。三人いずれも帝都でも評判の新鋭の女流作家であった。

「いやいや、こちらこそよろしくお願いしますね。」三人の挨拶にこれ以上無い満面の笑みで英爺が答える。エズミが背中をつねったのは言うまでもない。
「しかし、話と違うな。」イカルスがいぶかしげに言った。
「さっき聞いたんだがフェル君、君は男色家らしいじゃないか。」
「え?だっ、誰に聞いたんです?」「さっき沙織さんに。」一同が視線を向けると悪戯そうな微笑みでこちらを見ている沙織がいた。
「やれやれ、沙織さんにはかなわないな。」諦め顔でフェルは肩をすくめて見せた。

花会は遅くまで続いた。
帝響をバックに歌い、アルコールに、香り高い珈琲、紅茶に、数々の料理に舌鼓を打ち。
そして浪漫あふれる語らい。
春の夜の夢はそれぞれの心の中に大きな一ページとして刻まれたことだろう。

新たな歴史が、ここから始まろうとしていた。
人々の心の中にいつも存在する太正浪漫堂の。
=============================はいっ、と言うわけで最終ページになってからやっと追加です。HN無断使用させていただいた方すみませんです。


薔薇な現状とちがって随分と軟派なフェル君ですねぇ・・・
いや、ここバージョンはそういうことで。(めちゅ)

というかこんなんレスって言って良いのだろうか。
さて、一応保存して欲しいのでいずこかに打診してこないと☆




寿津氏
(現在許可を頂けるのを待っております)





美咲 緑氏
はらりと舞う花びら、うす紅に染まる空(追加有)

こんばんは、ひでじいさん。
あれだけ待った桜の花、今ではすっかり満開となりました。
ここ2、3日花冷えが続きましたので、桜の花は散らずにもっていましたが、
明日は雨(予報によれば大雨とか)ということなのできっと散ってしまうかもしれません。
ま、つかのまの美しさというのが桜の良さなのかもしれませんが。
〜春はまほろば〜
では、この辺で失礼します。






























一応空けるんですよね。
と、まねをしてみてちょっと回顧録。
(フェルさんに陳謝)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「花会にお招き頂きましてありがとうございます。
美咲 緑です。よろしくお願いします。」

あ、ちょっと声うらがえっちゃった。
緊張ー。
あ、でも皆さんにこにこしてくれているし。
よかった〜。
フェルさん、緊張してる。
なんかカチコチになって。

でもすごいなー。これが、あの太正浪漫堂なんだぁ。
あ、なんかちょっと顔がほてってきちゃった。
私酔ってるのかな。
シャンパンに・・・?。
ううん、この雰囲気にかな。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

120%美化の緑を描いて頂きましてありがとうございまいした。
お話を続けるってのがまだちょっと分かり難いため、心情を語らせて頂きました。
正直、自分の名前が出てくるのってドキドキします。
実はこのSS見つけた日。
@の後ろにもありますが、さくらの故郷、仙台の桜の開花宣言の日だったそうです。
ひでじいさんがご存知でこれをあげられたのでしたらすばらしいことですが。
もし、偶然であるならば、これが素敵な贈り物ってことになりますよね。
さくらの故郷に櫻咲く時、再会を祝う。
まさにサクラ大戦ワールドですね。
では、この辺で失礼いたします。
ありがとうございました。

===============================

6/19(土)
今日ははマリア様のお誕生日ですが、なぜかここで追加です。
いえね、上のカキコのままではちょっとと思いまして、考えてはいたのですが結局最終ページになってしまいました。
意図したことだろうとお疑いの皆様、違うのですよ。
その訳?は後書きにて。
という訳で、長文になってしまいましたが
太正浪漫堂番外編SS・緑編前夜、それでは、スタートです。


※※※※※※※※※※


東京帝大の中にある図書館。
そう、ここには興味深い資料や書籍が沢山置いてある。
冬の厳しい寒さしのぎに、とふと立ち寄ったことがきっかけでなぜか入り浸るようになってしまった。
大好きな帝劇スタア達の戯曲、帝都の歴史書など興味深い本を読み漁っていくうちに、ふと不思議なものを見つけた。
それは、『太正浪漫堂』と書かれていた。
帝都のとある場所に存在するカフェテラスの中で起きた人間ドラマ。
しかしながら、そのカフェの存在については・・・。

本当に実在するのだろうか。
さりげなく誰彼に話を聞くも、場所を知るものは誰もいない。
帝都をフラリと散歩しながらそれとはなく探してはいたのだが見つけることは出来なかった。

月日が経ち、弥生の頃になった。
帝都は日一日と暖かくなってきた。
朝食後いつもの散歩に出かけた私は、朝もやの中をどう歩いたのか今となっては思い出せないのだが、
ふと迷い込んだ路地の一角に蔦に覆われた赤煉瓦の建物の喫茶店を見つけた。
♪カラン
とりあえず中に入ってみることにした。
木製の壁にところどころほどこされた葡萄の彫刻。
飾り棚の上に置かれたクラシカルな調度品に絵画の数々。

「いらっしゃいませ。」
静かなマスターの声に導かれ、ひとまずカウンターに座る。
「ご注文は?」
「ダージリンを・・・お願いします。」

注文の品が来るのを待っている間、店内を見回してみる。
まだ朝も早いせいか、客は私くらいだろう。
そう思っていたら、窓際の席に一人。
淡い灰色の背広を着込んだその人は、ティーカップを持ったまま窓の外の風景を眺めていた。
窓の外には大きな櫻の木の枝が見える。
まだ蕾がぽつりぽつりとついているだけのさびしそうな枝。
「・・・・・・・まだ、咲かない・・・のか?」
つぶやき声が聞こえてきたその時。

バタン。

紺色の服を着たその人は、勢いよく入り口の扉を開けると、そのまま窓際の方へと歩いていった。

「英爺、おまえここで何をしているんだ。」
「ああイカルス、君も一杯いかがかい?」
「って、何をのんきなことを言っているんだ。
学会の資料が間に合わないからって、徹夜で手伝わせておいて。
『ちょっと出てくる』って言っていなくなったと思ったら。
こんなところで珈琲なんてゆっくり飲んでいる時間はないんだぞ。」
「わ、分かったから、まぁ、そうせかすなよ。」
「マスター、お代ここに置いておくよ。」
「おごってくれるのか、親友。」
「馬鹿言え、後でちゃんと返してもらうからな。さ、行くぞ。」

バタバタっとその場を立ち去る二人。
そして再び、静かな時間。

ふと先ほどの二人の会話を思い出してみる。
ひで・・じい?いか・・るす??
ってまさかあの本の中の・・・ってことはここがあの。

「マスター。ちょっといいですか?」
「はい、何でしょう。」
「あの、この店の名前ってなんて言うんですか?」
「え、お客さん、入り口の看板見てなかったのですか。『太正浪漫堂』ですよ。」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「お客さんはここは初めてですか?」
「はい、そうなんです。前から一度来てみたいって思っていたのですが見つからなくて。」
「そうですね。ここは見つかり難い場所にありますからね。
でもね。見つけることができれば、そこから新たな出会いが始まりますからね。」
「新たな出会い、ですか?詩人ですね。マスターは。」
「人の集まる場所っていうのはそうですよ。
ただ、あなた自身がそこへ行くか行かないか。
そこで何かを見つけるか見つけないかだけの差ですけれどね。」

ダージリンの香りの中、そんな不思議な会話を楽しむ。

そして・・・

この日から毎日という訳ではないが、時々はこの店を訪れるようになった。
初めは一人カウンターでマスターと話しながら飲むことが多かったのだが、
その内顔なじみが出来、何人か話し相手とその場を楽しむようになった。

さらに月日は流れ、卯月・・・

満開の櫻を眺めにここへ立ち寄った私。
テラスの方にフェルの姿が見えた。
一緒に花見でもとテラスの方へ。

「今日はどうしたんでしょう。人の集まりが多いですね。フェルさん。」
「やはり皆さん、花見でしょうね。」
「南国さんに、エズミさん、智士さん、紀州人さん。また、打ち合わせかしら。」
「緑さん、いいんですか。ここでのんびりしていて。」
「ちょ、ちょっと大声出さないで下さいよ〜。ここへ来てるのばれちゃうとまた叱られますから。
先日も台本上げるのが遅いって怒られちゃったし。」
「あいかわらずですね。」

「ああ、君達も来ていたのか?」
「あ、神楽さん。こんばんは。」
「神楽さんもお花見ですか?」
「ま、そんなところだけれどね。それよりも今日は人が多いね。何かあるのかな?」

「おや、君たちは知らなかったのか?今日は『花会』の日だからね。」
「「「花会?」」」
「花丸さん、『花会』って何ですか?」
「それはだね。」

花丸、そして一緒に来ていたMOSの説明を聞いた後、輪に加わる3人。
しばしの時、会話を楽しむ。
そんな中、一角で拍手があがる。

「緑さん、あの二人帰ってきたんだって。」
「え、フェルさん。あの二人って?」
「あれ、緑さんは知らなかったの。英爺さんとイカルスさん。調査中に行方不明になってたって。」
「知らなかったけど。ふぅん、そうなんだ〜。」

そう言ってその一角の方を見ると・・・
あ、あれれ。あの二人って・・・あの時の。

「緑さん。何をぼ〜っとしているの。挨拶に行くよ。」
歩き出すフェル。
しかしながら、その場に立ち尽くして動くことのできない私。
「み・ど・り・さ・ん!!」
神楽の声になんとか気を取り戻したが、それでも神楽に引っ張られるようにしてその場へと向かう。

「初め・・・まして。」
緊張・・・、それとも動揺?
私らしくない挨拶。
声はうらがえってしまうし、なんとなくぎこちない。
そんな私でもみな暖かい笑い声で迎えてくれた。

「プロージット!」
高らかな乾杯の声がテラス内に響く。
ふと見上げるとはらりと舞う櫻花。
ひょっとして
今日のこの出会いはすべておまえの魔法?
櫻花は何も語らなかった。
が、今日のこの時の出来事を喜んでいるかのように、また一片花びらを降らせた。


※※※※※※※※※※


初めのレスカキコから2ヶ月が過ぎました。
この間、さらにいろんな方々との出会いがあり、OFF会に参加して直接お話を聞き、
そして『太正浪漫堂SS』を読ませて頂いたことで、ひでじい様のSSになんとかレスSSを書いてみようという気になってきました。
が、結局は続きではなく前夜になってしまいましたが。
でも、このSSはきっと初めにカキコした時にはまだ書くことが出来なかったものだと思います。
これだけの時間が経ち、いろんな体験があったからこそ、このSSは書くことが出来たのだと思います。
そんな時間と体験を与えて頂けたすべての皆様に感謝。
「ありがとうございました。」

最後になりましたが、本SSで勝手にHNを使用させて頂きました皆様に陳謝致します。
(ひでじい様、イカルス星人様、フェル様、南国華撃団様、エズミ様、
智士様、紀州人様、神楽様、花丸様、MOS様。以上登場順にて。)
少々設定が違っているのでは、ということについては深く追求しないで下さいませ。

それでは、この辺で失礼します。

(以上、6/19 23:20 追加修正)

MOS氏
桜の樹の下にて我等は出会い

こちらはまだ少し肌寒いですね。とはいえ随分と過ごしやすくなりました。こちらの桜も今週が峠でしょうか。「花の命は短くて・・・」という言葉が思い出されます。













ふふふ、表の浪漫堂(笑)ここに復活ですね。私もちょっと久々にここの粋な空気を吸うとしましょう。

MOSも夢織やルドルフと同様、酒は全く・・・・・というクチだったので、自然と下戸(?)集団が出来ていた。

「あ、ルドルフさんに紹介しますよ。彼が神楽です。夢織さんは・・・長野でお会いしましたね。」
「よ、よろしくお願いします。神楽です。」
「ははは、そんな緊張しなくていいさ。同じ浪漫堂に集う者同士だ。気楽に行こう」
「あ、ありがとうございます。」
「ところで・・・ここに来ると言う事は、君も酒はイマイチな方かな?。」
「いえ・・・・、私、まだ未成年ですから。」
「え?そうなのか?。失礼ながら、君の年齢は?」
「15です。」
「ええ?。いや失礼。年齢以上に落ちついて見えるもので。」
いきなり笑い出すMOSと夢織。
「???どうしたんだ?。突然。」
「あはは、失礼。ルドルフさん、だまされちゃいけませんよ。彼はまぎれもなく35歳ですよ」
「ええ!?。いや、しかしとてもそんな年齢には見えないが・・・・・」
また笑い出すMOSと夢織。神楽はあきれたように
ルドルフは目を白黒させている。
「ははは、冗談ですよ。彼は15歳とは思えぬ知識と見識の持ち主でして、こうしてよく年齢詐称だろうとか35歳だろうとか言ってからかっているんですよ。」
「なるほど、君達も存外人が悪いな。ははは。」
「全くですよ。会う度にこの話題なんだから」
「まあまあ、ほら、せっかく夢織先生の選んで下さった極上の紅茶があるんだ。そうすねるなよ。」
「そうですね。じゃあ私もご相伴するとしましょう」
「ところで、先日の帝劇の特別公演だが・・・・・・」

桜の樹の元、宴はまだまだ続く・・・・・

こんな感じでしょうか?うーむ、まだ調子が戻ってないなあ(^^;)。
あ、一番大事な事を言わなければ。お帰りなさい、ひでじいさん♪

ひでじい氏
「ほう。夢織さん、いいものをお持ちだ。」酒に弱い分、紅茶の香には鋭いMOSの瞳が一瞬細く引き締まった。

「舶来品の見本市でたまたま買ったんですが、香が絶品でしょう?」夢織がティーカップをくゆらしながら応える。夢織の紅茶好きは有名なところだ。元々酒には非常に弱い彼は、珈琲の強い香もあまり好みではないようで、フレッシュジュースや紅茶の世話になることが多かった。特に紅茶に関しては自分の好みを見つけるために、様々な喫茶店に寄り、何種類も飲み歩いたという逸話も残されている。
 一方のMOSも商社勤めのシスルや海外を飛び回る二階堂から常に各地の葉を取り寄せ、紅茶の味には一方ならない人間である。

「セイロンでも、アッサムでもない…。そうか。」MOSはカップを置くと夢織に向かった。

「ジャワですね。」MOSは脚本を書き終えた直後のように微かに頬に朱を入れて夢織に答えた。
「御名答。」夢織はにこやかに応じると静かにカップを傾けて飲み干した。

「しかし、卿が15歳とは…。あの論評からそうは思えぬが。」ルドルフがガス灯の柔らかい光の下で話を基に戻す。
「そうですね。若くして才能を発揮している…。素晴らしいことです。」帝都日報文化面での帝劇公演の的確な批評を夢織も激賞した。
「いや、そんな…。」少々照れる神樂。MOSはそんな議論を引き取り、こう言った。

「浪漫堂でいろんな人と話をすることだ。神樂君。そして…。」
「何ですか?MOSさん。」
「いや、何でもないんだ。」MOSは穏やかに言葉を切った。彼の頭にはそのとき生き急ぎすぎた一人の天才のことがよぎったのだ。確か夢織さんから聞いたことのある人物、その名は…。

 浪漫堂の宴は何もなかったかのごとく続いていた。

MOSさん、先日はお疲れ様でした。休息していただくため、こんなレスSSをつけてみましたがいかがでしょうか。




Ai氏
頬に風、目に櫻

桜吹雪など見ますと、やっぱり春はいいなぁという気分になります。
晴れた日には、散歩などすると楽しいですね。
新しい季節と、新しい世界が広がる気分です。















麗かな春の風を頬に感じ、Aiは浪漫堂の窓の外を見た。薄く白いレースのカーテンが微かに風にそよ
ぎ、そこから暖かな空気が流れ込んでくるのがわかった。そして、風とともに小さな櫻の花びらも、窓
の外を舞っている。陽光の中で舞う櫻の花びらは、新しい季節を祝福しているかのようだった。いや、
新しい季節を、新しい世界を作り出しているかのようだ。

(綺麗だな………)

素直にそう感じた自分自身に驚き、少し照れもした。自分が夢の中にいるような、ふわふわとした浮遊
感に包まれているようである。こうして夢の世界の住人になるのも悪くないな、と浮遊感を楽しんだ。

いつしかAiは無数の櫻の樹に覆われていた。
永遠に続くかと思える櫻並木。
いつまでもいつまでも舞い続ける櫻の花びら。
暖かな風。
さざめく笑い声。
春の匂い。
無限と夢幻の時間。



「どうしたの、愛ちゃん」

不意に声をかけられて、意識が急速に現実に引き戻された。声のした方に振り向いて、返事をする。

「さくらの世界に行ってたんですよ、せんせい」

智士はいつの頃からか、Aiのことを『愛ちゃん』と呼ぶようになっている。それに応えてか、Aiも
智士のことを『せんせい』と呼んでいた。せんせいと呼ばれた智士は、その返答に少し目を丸くしたが、
視線を窓の外の櫻の樹に移して、微かに微笑んだ。一枚の櫻の花びらが、智士の前に舞い降りた。



劇作家とか脚本家とか言われているが、Aiはまだまだ駆け出しだった。最近ようやく帝劇の前座の小
舞台をいくつか任されて書いた程度である。それは確かに自分でも大したことだとは思っているのだが、
もっと大きな舞台を自分で作成してみたいと思うのは、この世界に生きる者としては当然だろう。
もうすぐ春の特別臨時公演のが開催される。今回の舞台の脚本を書いているのは、南國と紀州人であっ
た。さきほどからこの両者はその件で色々と意見交換をしており、それを智士がまとめているという構
図である。Aiはふたりの手伝いという位置付けだが、それは学習の場であった。先輩方の声をいちい
ち頷いてメモする。

「前から気になってたんだが………それにはどんなことが書かれてるんだい?」

一息ついたとき、紀州人がAiの手にあるメモに目をやって、そう言った。

「色々ですよ。紀州人さんや南國さんの言葉とか、自分の舞台のアイデアとか」

「見せてはくれないのかい」

薄く笑って南國が言った。

「企業秘密です」

ちょっと茶化した感じでAiは答えた。南國と紀州人は顔を見合わせて肩をすくめて苦笑する。智士は
変わらず穏やかな笑みを皆に向けていた。暖かな風が一同の頬を撫でた。



カラン

浪漫堂の扉が音を立てて開く。
ふたりの男が帰ってきた。




うつろいゆく季節。
変化する事象。
けれど、春はまたやってくる。
変わらぬ想いと夢幻の時間を持って………。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


お久しぶりの浪漫堂SSですね。
麗かな春。
桜舞う季節に皆さんとご一緒できて幸せです。
夢のつづきはいつまでも。

『鍋』ではかなりふざけたキャラだったのに、今回は真面目なキャラになってしまいました。
書くたびにキャラが変わっているかも(笑)。
南国さん、智士さん、紀州人さん、お名前をお借りいたしました。

では、失礼します。

ひでじい氏
「彼の紡ぎ出す物語は、人の心を打たずにはいられない。」

 帝劇グラフでのAiの脚本に対する論評である。しかしこの論評には若干の社交辞令と表面的な感動しか言い表していなかった。

「そうね。愛ちゃんの脚本ですごいと思うのは…。その構築力かしら。」智士がダージリンティーを口に運びながら言った。

「単に甘いストーリーの間にハッとする影を入れたり。単なるひと味で描かないところがすごいな。」南國もエスプレッソで応じる。

「誉めても何もでませんよ。みなさん。」Aiは頭をかきながらもまた何か思いついたらしく手帳に書き込んでいた。

「後は情報収集力、というところか。」紀州人はAiのメモ癖を半ば感心、半ば呆れつつそう評した。

「なかなか面白そうだなあ。」見るとイカルスと英爺が興味深げにそれぞれの論評を聞いている。

「立ち聞きはよくないぞ。土の一族。」紀州人が混ぜ返す。
「土とは心外な。考古学は違うぞ。」
「僕は岩石だ。」めいめいが反発するのを見た智士が吹き出した。

 今日の浪漫堂で談笑がとぎれることはない。


Aiさん、お世話になっています。ひでじいです。こんなレスもつけさせていただきました。

神楽氏
やっぱり春はいい季節ですね。

私の家の近くの桜は、残念ながらほとんど散ってしまいました。
でも、地面一面に桜の花びらが敷き詰まっている景色には、また感動しました。
桜の花びらは、咲いている時だけではなく、散った後もまだ私たちの目を楽しませてくれます。




















では、ここから始めます。
*************************

「そうさ、これが本当の太正浪漫堂なんだ……」
イカルス、英爺、エズミと挨拶をかわした神楽は、一人壁にもたれて店内を見渡していた。
自分のあこがれていた人たちが、今、目の前にいる。
その光景を忘れないように、しっかりと目に焼き付けておくために…




神楽がはじめて帝劇の舞台を見に行ったのは、1年前のことだった。
最初はたんなる演劇か…と考えていたが、劇が進んでいくにつれてどんどん話に引き込まれていってしまい、最後のカーテンコールの時には涙が止まらなくなっていた。
思えば、本当に感動して泣いたのはあの時が初めてだったかもしれない。
その劇の名前は、たしか……そう、「夢の続き」………

その劇を見て以来、神楽は急速に花組にのめりこんでいった。
公演があるときには毎日帝劇に行き、舞台を一言一句聞き逃さないようにしながら、くいいるように見ていた。
そして、その帝劇の舞台のシナリオを書いている脚本家の人たちに、ずっと憧れと尊敬の気持ちを抱いていた。
神楽自身、少しは物書きとして自信を持っていたのだが、その脚本は、とても自分なんかではかなわないと思える物ばかりだったからである。
そして、もっと帝劇について調べていくうちに、帝劇が好きな人たちが集まる場所、太正浪漫堂にたどりついたのである。




「この夢がずっとずっと続いて欲しい、か。まさに今の気分だな……」
ふと、自分の思い出を回想していた神楽は、そう独り言を言った。
「しかし、みんな本当に楽しそうだ………」
店内では、すでにいくつかのグループが出来ていて、それぞれが話に花を咲かせていた。
神楽は、その光景を微笑ましげに見ていた。

生来口下手な性格からか、神楽はあまり人付き合いが上手ではなかった。
友人たちが話している中にいても、だれとも会話をせずにいることも珍しくはなかった。
そういった性格から、一人で誰とも話さずにいることも多かった。
だからこそ、みんなが暖かく話している光景を見るのが、神楽は好きだった。

「やあっ、楽しんでいるかい?」
不意に言葉をかけられた神楽が振り返ると、そこにはMOSが立っていた。
「ええ、楽しんでいますよ。こんないい人たちに囲まれて、綺麗な桜が見れて、そして料理もおいしいとあれば、楽しくないはずがありませんよ。」
「そりゃよかった。でも、そう考える15歳も珍しいと思うけどなぁ。やっぱり本当は35歳なんじゃないの?」
「だ〜か〜ら〜15歳ですってば!……はぁ、何回このことを言ったかな……」
「ははは、冗談だよ、冗談。」
神楽は、その性格や物事の考え方からか、よく「絶対に年齢詐称してるでしょ」や「本当の年齢は35歳?」とよくからかわれるのだった。
少し前にあった長野での帝劇ファンの集まりの時にも、そのことでものすごくからかわれたという、苦笑混じりのエピソードもあった。

「ところでさ、神楽くんってまだ未成年だからお酒を飲んだら駄目だよね。あっちでちょうどお酒が飲めない人たちばかりで紅茶を飲んでいるんだけど、神楽くんもいっしょにどうかな?」
「ええ、いいですよ。ちょうど喉も乾いていたことですし。」
正直、お酒を飲むことが出来ない神楽にとって、このお誘いは嬉しいものだった。
「それじゃあ、こっちだ。ついてきて。」
そう言って、MOSは神楽を案内していった。

「今日のことで、私の性格もなにか変わるかな?いや、変えないといけないのか。」
そう自分に言い聞かせる神楽
「まあ、なにはともかく、今はこの瞬間を精一杯楽しもう。この輝かしい瞬間を……」

そして、宴はまだまだ続く………

*************************
遅れましたが、はじめまして、ひでじいさん。
「太正浪漫堂」シリーズは、私がここをROMしていた時に始まったので、全てリアルタイムで見ていました。
いつか、このシリーズに出たい・・・そう、ずっと思っていました。
今回のSSで出させていただき、まことにありがとうございます。m(__)m
そして、お帰りなさいませ、ひでじいさん。

ひでじいさん、エズミさん、イカルス星人さん、MOSさんのお名前をお借りしました。
文中敬称略のこと、すいませんでした。

それでは、また。

Ai氏
新しい出会い

どんっ

 やや混雑の観を呈した浪漫堂の店内を、書類を歩き読みしていたAiは、肩口に軽い衝撃を受けた。
そして、その拍子に書類が手を離れ、十数枚の紙がはらはらと浪漫堂の磨かれた床の上にと舞い降りて
いった。

「あっと」

「あ……すいません」

 ぶつかったのは壁や柱などではなく、初めて見る顔の青年だった。いや、少年といったほうがよいよ
うな幼い顔立ちをしている。どうやら相手もよそ見をしながら歩いていたようで、すかさずしゃがみこ
んで。床に広がった書類を拾い集めはじめた。無論Aiも同じようにしゃがみこんで、書類を集める。
幸い浪漫堂の床は掃除が行き届いており、濡れた部分もなかったので、大した支障もなく書類はそれぞ
れの手元に収まった。

「どうもすいません。よそ見をしていたもので」

 立ちあがった少年は少し緊張気味にAiの顔を見ると、ぺこりと頭を下げた。

「いえ。私も歩き読みなんかしてましたから、おあいこですよ」

 気にしていないという風に軽く手を振ると、少年の顔にはじめて笑顔を広がらせた。そして、その手
に持った数枚の紙束に目をやる。

「あの……これって、もしかして帝劇の公演企画書なんですか?」

 少年の手にある紙束には、花組の名前や舞台設定などがこと細かに書かれていた。どうやらレニを主
役とした舞台らしく、レニについての記述がもっとも多くなされていた。恐らくこういったものは初め
て見るのであろう少年は、目を輝かせて問いかけてきた。

「ああ……。うん。企画書と言ってもまだまだ思考錯誤の最中ですから、正式に発表されるかどうかは
わからないんですけどね」

「あなたが……書いてるんですか? もしかして、帝劇の劇作家ですか?」

 少し驚いている表情だ。

「まだまだ駆け出しですけどね。私はAiと言います。今は南國さんや紀州人さんのパシリ」

 少し冗談めかして、Aiは視線をテーブルのひとつに向けた。そこでは南國と紀州人が智士とともに
紅茶を飲みながら歓談をしている。少年はそちらに目を向けると、初めて見る大物劇作家の素顔にすっ
かりと興奮しているようだった。顔が薄く蒸気している。

「わ……私は神楽と言います。今日初めて浪漫堂に来たので、色々と新しいことがあって……いや、ど
う言ったらいいんでしょうね。とにかく何でもかんでも珍しくって」

 神楽と名乗った少年は、興奮気味に早口で語った。Aiはそれを見て、自分が初めてこの浪漫堂に来
たときの興奮を思いだし、少し笑った。

「これからよろしく。神楽さん」

「こちらこそ」

 挨拶を交わすと、神楽は持っていた企画書をAiに手渡した。その時、少し奇妙なものがAiの手に
見えた。それは右の手のひらに描かれた図形。閉じられた眼の模様。少し気になったが、初対面でそこ
まで尋ねるのもぶしつけかと思い、特に何も言わなかった。Aiは企画書を受け取ると、軽く手を挙げ
て南國や紀州人のいるテーブルへと去って行った。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


関西オフで神楽さんが疑問に思っていたことの回答です。
「全然回答になってないやん!」というツッコミがありそうですが(笑)。
これから機会があれば、少しずつ当時の裏設定を明かしていきますね。
当時も少しずつ書いていくつもりだったんですが、急展開で最終回になってしまいましたし。
ま、大したものではありませんが。


ではでは♪

  

冬鳥氏
桜花の下、皆が集まる場。

こちらは、もう桜も散り始めています。
散り際の桜吹雪も見事ですが、このBBSでの「さくら」はいつまでも一緒に咲き誇っていたいものですね。































−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
この位降りればいいかな。(笑)
ひでじい様、こんにちは。
そして、久々の浪漫堂SS、私めにまで出演させて頂き本当にありがとうございます。(><)

本当ならば、私も浪漫堂レスで返すべき所ですが、そこまでの文才はとてもとてもございません。
でも、もしかしたら過去で追加のレスを書くかもしれませんので、その時はお願いします。(読まねぇって、おい)

 最後に、ひでじい様のご帰還と、「浪漫堂」に集う全ての方々のご活躍を願い、
『プロージット!!』
では。



まいどぉ氏
時は巡り、また新たな春がくる。

今朝の雨で近所の櫻は殆どが散ってしまいました。
櫻の季節は終わっても、ここに集う人々の熱い想いがある限り、サクラの季節は終わらない。

永遠に続くこの春に・・・。
新たな出会いを祝して。







































ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このくらいですか。(笑)

『プロージット!!』
唱和するその声を、舞堂は秘かな羨望を持って聞いていた。
できることなら自分もあの輪の中に入りたい。
だが、そこに集った人々の放つ輝きは、新米の劇作家である舞堂にとっては余りに眩しすぎた。
(ま、いいさ。俺にはこの場所が似合っている。)
静かな諦念と共に一同を見渡すことのできる位置に移動する。
もともと他人との付き合いの苦手な舞堂にとって、活発に論議が交わされるその場の空気を吸っているだけで、何か満たされる物を感じたものだ。
しかし・・・今回は異なっていた。
胸の奥底から何か熱いものが溢れてくる。
羨望や嫉妬といった負の感情ではない。
「帰るべき場所」に「帰るべき人」が「帰ってきた」
そのことに対する祝福と喜び。
余りに強いその感情に抗うことは舞堂には出来なかった。
壁際の席を立つと、ゆっくりと人の輪に入っていく。
そして。
「初めまして英爺さん。舞堂と申します。」

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では、あらためて。

ひでじいさん、おかえりなさい。
初めまして、まいどぉです。これから宜しくお願いします。
夢織時代さんのHPで浪漫堂シリーズを読んで以来。あなたが帰ってくる日を待っていました。
以前書き込まれた帰還の挨拶には、返事を書いていなかったので改めてここで。
・・・にしては拙い文章ですが(笑)まぁ、新米の寸劇作家
なもんで、こんなもんでしょうか。(^^;

ではまた。

・・・おっと、そういえば。
さっき、フェルさんの所で見たんですが、ひでじいさん徳島に住んでらっしゃるんですね。私も徳島在住です。
いつかお会い出来たらいいですね。

では。

ひでじい氏
「こちらこそ初めまして。舞堂君…でしたね。」花丸と話していた英爺は振り返ると微笑して言った。

「英爺さん、正直言って自分は上がっています。」舞堂は少々興奮している心を落ち着けるためか、軽くシャンパンに口をつけた。
「だけど、この浪漫堂で自分も何かやってみたい…そう思いまして。」

「何か以前の自分を見ているようですよ。」側にいた花丸が苦笑して言った。

「え?花丸さんが、ですか。」我ながら不器用な切り出し方をした自分に少々舌打ちしていた舞堂だったが泰然としている花丸の話は驚きだった。

「ああ。友達の二階堂に誘われてここに来たときは本当に不安だった。しかし…。」
「しかし、何ですか。」
「舞堂君。浪漫堂は問題じゃない。浪漫堂に集う人々が大事なのさ。」

「…。はい。」舞堂はしばらく考えていたが、花丸の話に自分なりの結論を見出したようである。

「さあ、難しいことを言ってないでお茶にしましょう。」さっぱりとした気性の若い女性が紅茶を注いでくれた。舞堂はその女性から紅茶を受け取りながらその顔を見た。

「ま、まさか?!あのエズミさん!!」
「エズミ君がどうかしたのか?」くるりと振り向いたのは不世出の脚本家と謳われた南國であった。

「すごい。まさに信じられない世界だ。」舞堂の前に素晴らしい舞台が幕を開けた。

ひでじいです。そうですね。実は近くにいるかも。よろしくお願いしますね。


花丸氏
『舞堂さん、こっち、こっちです!もっと中へ!』

腕を掴み、半ば強引に話の輪の中に引き込んで。

『舞堂さん、お酒は嗜まれるんですか?そうだ、智士さん、イカルスさん!!』
『舞堂さん、浪漫堂に来てこれを食べなければ甲斐が無いという物です、ですよね?紀州人さん、桜嵐さん!さあどうぞ、お味は如何ですか?』
『舞堂さん、黒鬼会に興味がお有りなんですか?でしたら・・・ねえ、黒火会さん、魔女吉さん、妙法寺さん、愛さん!ちょっと来て下さいよ、話を判って下さる方がおられますよ!』

ちょっとだけ悪いかな?と思いつつでも、ついつい人の輪から輪へと引き回してしまう。

宝物を見つめる様なまなざしだった。
大切な物に触れる様に、そっと声を掛けてきた。

自分とそっくりだったから。自分と同じ、否、それ以上に素敵な事に触れて欲しいから。

浪漫堂の素敵な所を全部見て欲しい、感じて欲しい。
だから、ちょっとだけ悪いかな?と思いつつ、でも・・・。

『舞堂さん、こっち、こっちです!!早く早く!!』

春、太正浪漫堂。夢が舞う。
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まいどぉさん、初めましての挨拶もそこそこにお名前を借りる事、ご容赦下さいませ。

花丸、と申します。お見知り置き頂けましたら幸いです。

最初の自分と同じ気持ち・・・どうしても我慢しきれなくて、勇気を振り絞って声を掛ける。
なんだかとっても重なってしまって、つい声を掛けてしまいました。

ここはとても素敵な場所です。そして、過分に素敵な思いを今までさせて頂きました。
そんな思いを、まいどぉさんにも味わって欲しい。そう思って、自分の話の中にお名前をお借りしました。
お邪魔では有りませんか?
もし、お邪魔では無かったら、これから仲良くして頂けたらとても嬉しいです。
今後とも、是非宜しくお願い致したく。

では、この場はこれにて失礼します。何か不具合有りましたら、お手数ですが申し付け下さい。
また、お目にかかれるその時まで。ごきげんよう。

追伸
文中まいどぉさんと、智士さん、イカルス星人さん、紀州人さん、桜嵐さん、黒火会さん、ラビさん、Aiさん、魔女吉さんのお名前を拝借致しました。
呼称等、不具合有りましたらお手数ですが申し付け下さい。
容認頂けましたら幸いです。
また、この場をお借りさせて頂いたひでじいさんには、深く御礼申し上げます。

花丸 拝

エズミ氏
春はるるるる〜♪<○田ひかる調(爆)けして宇多田ではない。

いいですねぇ、春。こんばんは、ひでじいさん。
しょっぱなからバカなことを書いてすいません。(^^;;私がバカなのはいつものことですけどね。<開き直るな

でも、春は本当に、歌い出したく、そして踊り出したくなっちゃうようないい季節ですよね。そう思って自転車に乗りながら歌っていると、口に虫が入るわけですが。(核爆)

日本人で良かったなぁと、桜を見ると思います。淡い淡い、美しさ。
大阪城の桜もとっても美しかったですよ〜。
ではでは。(^^)























はい、では私も行ってみましょうか。(^^)
ひさびさなのでちょっと緊張。では。

******************************************

「夜桜もいいものですね。」
 エズミはぽつりとつぶやくと、頭の上の満点の桜を見上げた。夜の闇を淡くほのぼのと切り取るように、薄桃色の花びらたちは緩やかな春風を受けてさやさやと揺れる。木の幹に体を預けて、ぼんやりと見上げる桜は夢のような美しさである。
「だね。」
 同じ木にもたれて、隣に座る英爺もうっとりとした表情で目を細めている。
 広々とした浪漫堂の中庭には、大勢の人間がいたる所で酒宴を繰り広げている。花の美しさを損なわない明るさのガス灯が、桜を彩る蛍のように美しい。
 英爺とエズミはそんな喧騒を少し離れた大きな木の下で、ぼんやりと酒宴を眺めていた。
「…………。」
「…………。」
「……なんか喋ってくださいよ。」
「エズミさんこそ……。」
 エズミは困ったようにへへへと笑った。
「なんか、アレですね。ひさしぶり過ぎて、なにを喋っていいのかわかんないんです。やっと英爺さんが帰ってきてくれて、嬉しいやら、なんなんやら。」
「なんなんやらってなんなのさ。」
 相変わらず色気のない口調のエズミに、英爺が吹きだす。
「緊張してるってことですよぉ。そういえば、私も浪漫堂に来るの久しぶりだなぁ。こんなに桜が咲いてたんだ。今年、初桜ですよ、私。」
 目を細めるエズミに英爺は反対に目を丸くする。
「そうなの?去年は花が散るまで1週間ぶっ通しで花見大会に参加してたお祭り好きのエズミさんが。風邪でもひいてたの?」
 エズミは呆れ果てた顔つきで英爺を見ると、ぐい、と英爺のネクタイをひいた。
「英爺さんが心配でぇ、それどころじゃなかったに決まってるでしょー。」
 エズミに詰め寄られて、英爺は苦笑いを漏らす。さすがに自分の台詞に照れて、エズミはちょっと頬を赤くした。
「あははは……。ご心配おかけしました。」
「よろしい。」
 エズミは照れ隠しのように、にっこり笑うと英爺のネクタイを離した。
「それにしても、この浪漫堂も人が増えましたね。話したことのない人もたくさんいるみたい。」
「そうだね。僕もすっかりご無沙汰してたからね。あとで挨拶回りでもしようか。」
「賛成!!」

 英爺は再び桜を見上げると、柔和な笑みを浮かべた。
「いろんな人、いろんな出会い、春は出会いの季節だからね。桜の下は新しい出会いにふさわしい舞台だね。」
「…………。」
 エズミは英爺の言葉を聞いて、不意に表情を曇らせた。英爺から視線をはずすと、じっと宴席の仲間達を眩しそうに見つめる。
「春は出会いの季節か…。」
 下を向き呟くと、立ち上がる。桜の花を背に軽く服のすそを払うと、エズミは振りかえり、英爺に向かってあいまいに微笑んだ。
「でも、英爺さん……春は別れの季節でもあるんですよね。出会いと別れ。二つの意味を持つからこそ、春は美しい季節なのかもしれませんよ。」
「………春の別れか。なんだい、縁起でもないなぁ。帰ってきたばっかりなのに。」
「あはは、ごめんなさい。なんでもないですよーっと。さ、行きましょうか。私たちもちょっとは飲まないと、ね。」
 エズミはくるりと背中を向けると、明るい宴席へと歩いて行った。


****************************************


はい、おそまつさまでしたぁ。
文中、謎で思わせぶりな表現が出てきますが、お気になさらないでください。<だったら書くんじゃない
相変わらず、というよりもはやお約束でカップル組ませちゃってるひでじいさんには陳謝です。

しかし、ダメな文章だぁ・・。(^^;;
では。(^^)


ひでじい氏
必ず帰ってくる…。その名は、

なぜかPCが帰ってきました。部品が来週まで届かないからなのだぞうです。取りあえずお帰りなさい。エズミさん。そしてまたお会いできますことを心から楽しみにしています。















くくく。さあ、お約束のレスSSですね。徳島ではまだ花が散りきっていません。櫻花は咲き続けます。月の終わりまであなたのために櫻花は咲き続けるのです。櫻花絢爛の太正浪漫堂本館。スペシャルバージョンと行きますか。最初にひでじいがつけるSSをとくと御覧あれ。太正櫻に浪漫の嵐!!

「さ、行きましょう。私たちもちょっとは飲まないと、ね。」踵を返して宴席へ歩き出そうとするエズミの手を英爺がそっとつかんだ。ざらざらにささくれ立ち荒れた手。いつもの英爺の手はどちらかというと華奢でつるつるとした掌なのだ。その感触は英爺とイカルスの巡検がいかに苦難を伴うものであったかということをエズミに物語っていた。

「ごめん。大事な時にいなくて。だけど…。」ランプの揺らぎが英爺の面を通り過ぎていく。優しさとも悲しみとも取れる英爺のその表情を今でも忘れることができないとエズミは後日人に語っている。

「僕にだけは本当のことを話してほしい。」その瞬間、雲の間から月が顔を出した。薄暗い橙の英爺の顔が急速に白皙を帯びる。

「英爺…。」エズミは堰を切ったように英爺に話し始めた。エズミの語調は月光の明滅に合わせるかのように時には低く聞き取れないようなつぶやきで、そして時には甲高い声で早口に英爺に向かってエズミは話し続けた。月光と燈火の二重奏で照らし出される櫻の花びらが二人の間を踊るようにすり抜けていった。
 エズミの瞳には端正な背広姿の英爺が像を結んでいたが、不意にその姿がぼやけた。目に光るものを浮かべながらエズミは英爺の胸に飛び込んだ。

「だから私、お別れするしか…。」エズミの最後の言葉は声にはならなかった。

「馬鹿なことを言うな!!」英爺の口から厳しい言葉が飛んだ。その鋭さにエズミは驚きを持って英爺の顔を見た。こんな峻厳な表情の英爺をエズミは初めて見た。英爺はエズミを落ち着かせるように、その髪を撫でていたが、やがてエズミを椅子に座らせると自分の上着を上からかけ、自身はサスペンダーを少したくし上げながらエズミの目線の下から話しかけた。
 ゆっくりと少しづつ柔らかな声で英爺はエズミに説いていく。最初は抗弁するような仕草のエズミだったがやがて思うところがあったのか、英爺の言葉に頷くようになった。そして最後は微笑を持って英爺に応えられるようになっていった。

「分かったわ。もう一度、がんばってみる。」
「ああ、もう別れの季節などとは言わないでくれ。君には浪漫堂のみんなが、そして僕がいるんだ。」元気を取り戻したエズミの手を取って立ち上がらせると英爺は力強く言った。

「ウェイター。僕とこちらの御婦人に珈琲を。熱いのを頼む。」

 二人で飲んだその珈琲は限りなく暖かかった。太正浪漫堂の夕べは過ぎていく。


 エズミさん。お待たせしました。途中退院のひでじいです。浪漫堂に影は似合わない。ここの二人にはいい思いをしてもらいましょう。またお会いすることを楽しみにお待ちしています。

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