浪漫堂再録書庫に戻る。
太正浪漫堂番外編 鍋の夕べ(SSか?)

太正浪漫堂番外編 鍋の夕べ 筆:ひでじい氏
確かに、忘年会だな・・・ 筆:夢織時代
│└食事中も無法地帯の人を食ったような、 筆:ひでじい氏
「なにかこう感じないか?」 筆:魔女吉氏
「えーと、君は確か・・・。」 筆:驍橘氏
│└ふふふふ.... 筆:紀州人氏
│ └「うん、うまい。今まで食ったことのない味だな。 筆:ひでじい氏
「あれ、そ〜だったんですか」 筆:Ai氏
「流しのバンジョー弾きは如何ですかー?」 筆:シスル氏
例え場所が違えども 筆:妙法寺ラビ氏
│└歌い終わると妙に気分は軽やかだった。 筆:智士氏
「ふへー」 筆:エズミ氏
│└「エズミさんの魔法はいつ解けるのかな。」 筆:ひでじい氏
その夜、少し遅れてRudolfの居宅を訪れる 筆:かとおおお氏
全く、人を何だと思ってるんだ。 筆:イカルス星人氏
「ううっ寒い寒い」 筆:神楽氏

ひでじい氏
ひでじい@仕事帰りです。
こちら某地方では最高気温15℃前後と暖かい日が続いています。(ふう助かった…)みなさんのところはいかがでしょうか。(BATさん、風邪引かないようにね。)

さて、お約束していました作者版「太正浪漫堂番外編」、こんな感じでつくってみましたので御覧ください。時代背景はサクラ大戦3開始後、といったところでしょうか。ただ季節は冬ですのであしからず御了承ください。


「いよいよ年も押し迫ってきた師走の帝都東京。」(BAT)
「浪漫堂のみんなが酒を片手に話す話題は何かしら。」(エズミ)
「陛下には悪いことをしちゃったかなあ。」(英爺)
「いや、いいことなんじゃあないか。」(イカルス)
「次回、サクラ大戦 太正浪漫堂番外編 鍋の夕べ 太正櫻に浪漫の嵐!!」(夢織)
「さあ、今宵は大いに飲もう。」(ミュラー)
「た、煙草はやめてね。」(ルドルフ)



 灰色の帝都の空に粉雪が舞う。時は太正の世。

「ううっ。今日はさすがに冷えるな。」ルドルフはコートの襟を立てて新聞社を出た。時はすでに師走というのに帝都を襲う怪事件、怪事故が続出し、政府の対応もしどろもどろである。おかげで昨日は自宅に帰れず、取材、編集、そしてデバ…いや校正に汗を流すルドルフであった。

「こういった日は風呂上がりに聖と鍋でも…。浪漫堂で少し体でも温めてから買い出しにでも行こうかな。」確かにここのところ聖とも食事を共にはしていない。久しぶりに鍋でもしてゆっくり語りあいたいものだ。そう思うとルドルフは何かほのぼのとしたものを感じてきた。

カランカラン。

 ルドルフは浪漫堂本館の扉を開け、カウンターで眠い自分に喝を入れるためエスプレッソを注文した。うん、さすがにいい雰囲気だ。珈琲の薫り高いお気に入りのこの店で珈琲を飲んでいた彼だが、そのうち何か様子がおかしいことに気がついた。
「この暖炉に人が来ないなあ。」そう、暖炉のそばは浪漫堂常連の「冬の指定席」なのだ。ミュラーと夢織の談笑と、それを聞き入るシュペーアやかとおおお、真神、南國、紀州人、エズミらの演劇手法を巡る議論、MOS、二階堂、花丸らの読み合わせ、イカルスと英爺の漫才にも似た掛け合い…。こういった中で寝そべっていたのがルドルフだったのだ。したがって人気の高い暖炉前の席を確保するのは至難の業だった。それがどうだ。今日は易々と着席し、エスプレッソを飲んでいるではないか。自分が早かったのか?いやそんなことはない。

「いやな予感がする。」ルドルフはエスプレッソを一気に飲み干すと浪漫堂本館ロビーの掲示板を見に行った。落ち着いた色の型枠に布を張ったそれは、帝國歌劇團の公演や帝都交響樂團の演奏会の日程、個人の予定、飲み会の開催まで雑多な情報で溢れていた。ルドルフがその中に見てはいけない記事が大書されているのを発見するのにそう時間はかからなかった。

「拾弐月拾六日午後六時、陛下宅ニテ忘年会ヲ開催予定。浪漫堂有志諸君参集サレタシ。帝劇ニツイテ熱キ想イヲ共ニ語リアワンコトヲ。」ルドルフは恐る恐るその幹事の名を見た。
「南國、イカルス、エズミ、英爺…。あの極悪カルテットめ…。」せっかくの二人の団欒を邪魔だてするのか!ルドルフの中に怒りの炎が燃え上がる。ルドルフは掲示板の紙を破り取りすばやく内ポケットにしまうと、未然に手を打つべく自宅へと急いだ。しかしルドルフはその後に人影が動くのを感知するまでには至らなかった。

「さすがは陛下。目聡いなあ。でも詰めができてないよね。」コーヒーカップを片手にルドルフのはがした場所に全く同じ案内を貼り付けたのはMOSであった。

 ルドルフの居宅は実に見事なものだった。元々は帝都日報の寮で自炊、共同風呂と便所の生活だったのだが京極の乱で寮の一部が破壊され、ルドルフも新しい借間を探さなければならなくなっていた。その頃ちょうど大學近くの雑木林の片隅にある一軒家を借間並みに貸してもらえるということになり、ルドルフは古いながらも二階建ての一軒家、広めの風呂と便所つきの主になった訳である。偶然にもこの家は聖の住まいから近くにあり、休日には聖がよく来てくれるようになった。その緊張感がルドルフ自身に部屋の掃除という思わぬ効用をもたらしていた。

「くっ!一足遅かったか…。」ルドルフは自分の城がすでに落城しているのを察した。煙突から煙が出ている。せめて今日の宴会は別館でしてもらおうと画策していたのに…。ルドルフは足を早めた。

「こ、これは…。」自宅の変貌ぶりにルドルフは茫然自失した。二間ある部屋の襖をぶちぬいて宴会場が設えられていた。どこから用意してきたのか、座布団まできちんとならんでいる。壁には書に卓越した無法地帯の筆で墨痕も鮮やかに「太正浪漫堂大忘年会」の字が踊る紙が貼り付けられていた。

「BATさん、こっちの鍋はお願いね。」
「はい!今持ってきます。」エプロンをつけたエズミとBATが忙しく食器を並べ準備をしている。
「花丸君、火が起きたぞ。」台所を見ると奥のかまどで火を起こしているのはイカルスである。その横でちり鍋の出汁をつくっているのが花丸。
「二階堂さん、こっちはできました。」
「分かった。ありがとう。白菜の刻みが終わったら今度はきのこを頼むよ。」野菜を洗って下ごしらえをしているのは智士、出汁の味見をしながら魚や鶏をさばいているのが二階堂であった。

「有害物質に加え、エンジニア料理人まで来ているではないか。」ルドルフは事態が重大であることに気がついた。そしてその南國は、と言えば外で薪を割っているのをルドルフは見つけた。

「あ、陛下。今お帰りですか。大変でしたね。」南國が笑顔で迎える。
「南國、これはいったい…!!」南國に詰め寄ろうとしたルドルフに後ろから声を掛けて来る者がいた。
「ルドルフさん、今日は本当にありがとうございます。最近私の元気がないということで宴を開いてくれるんですね。」振り返ると聖が笑顔で立っていた。ルドルフだけが知っていることだが、聖は人の心が読める。南國たちが本当にそう思っていたか、あるいは聖が彼らを庇っているのか、いずれにしても聖を悲しませることはできない。ルドルフは無条件降伏の文書に調印せざるを得なかった。
 がっくりとうなだれるルドルフの背中から声が響いてきた。

「陛下、風呂の用意ができましたよ。まずは家主からお入りになられたらいかがですか。」振り返ると、英爺が薪を手にして立っていた。
「ふ、風呂?英爺、お前風呂を使ったのか?!」しまった!!ルドルフは脱兎のごとき速さで風呂場に向かった。あそこだけは掃除してないんだ!英爺、余計なことを…。
「ガラッ!!」ルドルフは風呂場の戸を開けた。
「あ、あれ?すごくきれいになってるじゃないか?」
「陛下の家の風呂は大きかったんで、イカルスと僕も掃除に苦労しましたよ。僕も今ようやく風呂を沸かし終えたところです。陛下、まあ湯に近づいてくださいよ。」
「なんだ…。お、湯の花!箱根か。」見るとほんのり薄白くなっているのが分かる。
「敷き板とたらいも檜のものを持ってきました。あ、窓の一輪挿しは聖さんにやってもらいました。」…まあ、こうなれば企画に乗るのも悪くはないな。ルドルフは気をよくして風呂に入ることにした。

「ふう〜。」体を洗い終え、湯に浸かると一日の疲れも癒されるというものだ。夕日がルドルフの顔を照らす。湯の花の入った湯がやさしく体を包み込む。かすかに檜の香が薫る。本当に忙しかったからなあ。こういうのも悪くはない。尤も、風呂上がりに自分の風呂に浪漫堂の面々が次々入っていく姿にを見るのは複雑な心境であったが。そう言えば女性の方はどうするんだろうか。風呂。

「女性陣は風呂はどうするんだ。」
「残念でした。陛下、御期待に添えず申し訳ありませんが、私たちは聖さんのお家で入らせていただきます。」エズミがにこっと笑って答えた。い、いやそういう下司な考えではなかったのだが。BATと智士も同行している。
「じゃあ、後はよろしくお願いします。陛下。」BATに言われ、しばらくの間ルドルフは宴会場となった自宅の留守番をすることになってしまった。ルドルフは寂しく「室内禁煙」の文字を貼った。

「おお、陛下。今やっと着いたぞ。」ミュラーと夢織、シュペーア、かとおおお、紀州人、それにMOSが何やら重い荷物をリヤカーで引っ張って、あるいは抱えてやって来た。見るとワイン、シャンパン、日本酒、紹興酒…酒の山だ。夢織がちゃっかりとフレッシュジュースの大きい瓶を何本か持ってきている。
「じゃあ陛下。申し訳ありませんが我々も早速風呂に入らせていただきます。」夢織たちは台所に酒と器を手際よく並べると早速風呂に直行した。途中風呂から出てきた浴衣姿の南國や英爺、イカルスと挨拶を交わしているのが温泉場みたいでいかにも奇妙ではあったが。

 夕刻になると、あたりめやかわはぎなどを抱えた真神と猫侍、このために上京してきた無法地帯、極上の酒を持参した櫻嵐、そのほか菫月、シスル、黒火会、魔女吉、クリアル、Aiの順で次々とやってきた。中には隆宏や、妙法寺、冬鳥、驍橘のような新顔も顔を並べている。不思議なことにみんな風呂に入るか、銭湯で風呂を済ませさっぱりしてきているのだ。

「まずい。泊まりがけの体勢だな、みんな…。さすがはカルテット。悪逆の限りを…。」二階にたくさんの蒲団が並べられているのをつい先程発見したルドルフだった。

「みなさん、大変お待たせをしました。これから忘年会を始めたいと思います。それではまずミュラーさんから…。」夢織の無駄のない爽やかな司会で忘年会が始まった。レセプションならかとおおおやイカルスのいかしたスピーチが似合うが、温泉旅館と化してしまったここなら夢織の爽やかで簡潔な挨拶がいいだろう。ミュラーも淡々と短く挨拶をすませ、乾杯の順番が回ってきた。

「それでは乾杯の音頭を、今回会場を快く提供していただいた陛下に…。」やっぱり回ってきた。家主だからかな。手にする杯を手にしながら、確かにこの酒は芳醇かも知れないが、これで悪魔の世界を呼び覚ますことになってしまうことを十分心得ていたルドルフであった。しかし彼は言わざるを得なかった。

「それでは…、みなさんお疲れさまでした!!プロージット!!」
「プロージット!!」

 定刻を少し過ぎて大忘年会が始まった。酒を片手に思い思いのことを話す。古代文献の蘊蓄を語る無法地帯に夢織と真神が笑顔で頷く。帝劇の話で熱弁を揮うMOSに南國と紀州人が聞き入る。談笑するミュラーとシュペーア、かとおおお。魔女吉の話に冗談だろうと手を振る菫月とシスル、猫侍。いつもの浪漫堂の風景だが心なしか少し和やかな表情のような気がする。英爺とエズミはいい感じで話をしていたが、花丸とBATに冷やかされているようだ。意外なノリなのがイカルスと智士。これは意外な新カップルかもしれない。

「聖、申し訳ない。」ルドルフは飲めないワインに手を出しながら聖に詫びを入れていた。聖はルドルフの心を読んだのかハッとした表情でルドルフを振り返ったが、やがて優しい顔で首を左右に振った。大宴会の幕が今開いた。




 段取りとしてはこんな感じですかね。もしよろしかったらみなさん、いらしてください。以前参加できなかった方も是非お越しくださいね。

夢織時代
確かに、忘年会だな・・・

無法地帯の語りに真神とともに聞き入りながら、夢織は・・・やっぱりジュースを飲んでいた。
それでも、なんとなく酔っぱらったような気がする・・・。
まあ・・・当然かも知れない。
後着組総出で持ってきた酒の山を思い出しながら、夢織は納得した。
あれだけのものを空けようと言うのだ。
既に、そこらじゅうで開かれている。
酒がここに集った人々の暖かな情熱と笑顔で蒸発して、ほのかな香気が宴会場と化したルドルフの家全体を包んでいた。
こんな酔いは、素敵だ。

浪漫堂ではない・・・でも、ここは確かにその匂いがそのまま感じられる。
今年一年、いろいろなことがあった。
新たなる嵐の胎動も、彼方のことではなく、直に感じられるようになった。
それでも、危機が迫っていても、
今は、このすばらしい人々と、同じ時間を分かち合えることを幸せに思おう。
苦しかったこと、嫌だったことは、この場で忘れよう。
今、ここは、確かにある現実。
疑いようのない、幸せな時間・・・・。


「さて、私たちも話すだけでなく、食べましょうか」
夜はまだまだ終わりそうにない。

***************************************
こんばんは、夢織時代です。
シリーズ最終回に、とんでもないものをくっつけた私を、ちゃんと参上させてくださってありがとうございますっ。

幸せな、限りなく幸せな時間・・・

忙しくても、心は亡くすまいと心に誓う夢織でした。

ひでじい氏
 食事中も無法地帯の人を食ったような、それでいて的確な話はミュラーや夢織、真神の心を捉えて離さない。その無法地帯がふと鍋を見た。

「しかし、この出汁、ちょっと普通と違うな…。うまいけど何かひと味違う…。」

「卿らもそう感じるか。確かにうまいのだが…。」ミュラーも首を傾げる。確かに鶏や魚、野菜のうま味がぐっと引き立ってるのだが、どうも普通のだしではないのだ。

「酒の方もどちらかと言えばワインが合うような…。」真神も不思議そうな顔をしている。

「ははあ、二階堂はん、仕掛けたな。」自らも鍋に参加しながら給仕をしている二階堂を見つけて無法地帯が声を掛けた。

「ふふふ。さすがは無法地帯さん、お見通しですね。」二階堂は気づいてくれたことがよほど嬉しいのか満面の笑みを浮かべ振り返った。

「そうです。じつはちり鍋用のだしは中華風スープを使ったんですよ。」

「そうか、それで前日からあんなに下ごしらえをしていたのか。」夢織も初めて合点がいった。正直なところこれだけのメンバーのことだ。好きな食材もいろいろだろう。共通するだしや味付けはあるのかという疑問はあったのだ。

「さまざまな食材を生かすスープというのは難しいんですよ。それで一工夫加えてみました。昆布や鰹といった日本のだしや薬味に加えて、いろいろ足してみたんですよ。もっとも日本人好みの味付けにはしましたが。」

「なるほど、それでおいしいんですね。」夢織は酒を飲んでいるわけでもなく、またそれほど大食漢でもないのだが、つい箸が進んでしまう。

「おお、きょうは夢織に酒の肴をさらわれそうだ。」ミュラーが目を細めながらワインに手を出す。

 時は静かにゆっくり流れる。談笑とともに夜が移ろいゆくきょうの宴であった。



 夢織さん、どうもありがとうございました。せっかくでしたからこっただしにしてみました。お味はいかがかと。

魔女吉氏
「なにかこう感じないか?」
肩まで湯に浸かりながら、魔女吉は真摯な顔で周りに話しかける。

「まさか。魔物はもう暫く出てこないと思うが。」
黒火会が呑気に手ぬぐいを頭に載せる。

「おや、あなたもですか魔女吉さん。私も感じてました。」
シスルが持参のタオルで風呂海月を作りながら答える。

「たしかに。なんだこの感じは。ま、そんなには感じないが。」
顔に湯をかけながら菫月が反論する。

「確かに。しかし、違う気もするな・・・」
そこでAiが口を挟む。

その疑問にナンダカンダと話していると、二つの影が風呂に現れる。



花丸と妙法寺が到着したようだった。

「あ、大丈夫みたいですよ。花丸さん。おーい!皆さーん!」
妙法寺が桶を持ちながら湯船に手を振る。

そして花丸が。
「間に合いましたね。いやぁ、土蜘蛛の巣会に乗り遅れるかと思いましたよ。」



「「「「「それだ!」」」」」


**************************************

こんばんわ、魔女吉です。
お風呂のシーン(色気無し)を想像しました。
だって、その他の面子が・・・

土蜘蛛の巣会/~大川総帥として、何となく。

いやー、鍋のシーン入れたかったんですが、
ま、誰か端っこに入れてくれる事を祈りつつ。

外伝は3巻まで続きますよね?

ではでは♪

驍橘氏
「えーと、君は確か・・・。」紀州人が、台所で何やらソワソワしている人物に声を掛けた。
「あ、紀州人さん、驍橘です。」急に後ろから声が聞こえたため、少し驚きながらも彼は答えた。
「そう、そうだったね。で、何をしているんだい?」酒のせい、或いは気の合う仲間と一緒だからであろうか、紀州人は非常に気分が良さそうだ。
「少し酔いざましにホットミルクセーキを作ろうと思いまして。良かったらお一ついかがです。」驍橘は浪漫堂でいつも必ずといってもいいほどミルクセーキを飲んでいるのだ。
「実は、私も少しゆっくりしようかと思っていたんだよ。どれ、一つ貰うとするか。」浪漫堂のものとまではいかないが、甘いミルクの香りが台所中に広がり、なかなか美味しそうだ。

そんなやり取りが続いている間にも、浪漫堂の面々が集う方からは、時々、楽しそうな声が聞こえてきていた。

「そうだ、一つ私と賭けをしませんか。」そう言いだしたのは、驍橘であった。
「ほう、してどんな?」興味を示したのか紀州人も乗り気である。
「あの二組のカップルですよ、どう思います?」英爺達の方を見ながら、そう言うと彼はカップに手をかけた。
「どう思うって、そうだな、私は、イカルスと智士の方がいい感じに見えるがね。」紀州人は即座に答えた。この素早さから察するに、やはり少しは気になっていたようだ。
「そうですか、それでは、賭けは成立ですね。私は、英爺さんとエズミさんの方だと思いますから。」驍橘は最後の一口を飲み干すと、二杯目を入れるためにその場を離れながら言った。
「どちらかが上手くいったら、その時点で賭けは終了と言うことで。負けた方が浪漫堂で一杯おごるというのはいかがです?」
「いいでしょう。」紀州人も、それに同意した。
「あくまでも、これは二人だけの秘密と言うことで・・・。彼らに知れるとどうなるか分かりませんからね。」驍橘は、紀州人に念を押した。
「確かに。」陛下宅でまさかこのような約束が交わされていようとは、未だ知る人はいない。













こんばんは、驍橘です。
最後の最後で浪漫堂に参加できたこと、本当に感激です。有り難うございました。

P.S.
(最終回のレスの所で揚げ足を取る。)わーい、名前が驍嵐になってる所があるー。
櫻嵐はんと一心同体なのね(けっこう嬉しかったらしい)。
これで私も櫻嵐さんの才能を受け継げる訳ですな(大きな勘違い)。
それではー。

紀州人氏
ふふふふ....

鍋を前にほくそえむ者あり、すなわちその者の名を、紀州人と言う。
(さっきの賭けの件....驍橘君との賭けだが、まあ勝てばそれはそれで良しだが、負けたら負けでも一緒に
 飲む理由ができるから良し、だな)
実は賭け事にはめっきり弱い紀州人である、その彼が賭けに乗ったのは、『負けても構わない』と思って居るからに
他ならない。
(それに、あの連中をダシにギャンブル、という事自体が面白いしな....まあ、それはともかく、だ)

『おいやばいぞ南国。』MOSが言う。
『やばいって何がだ?』
『奴の目を見ろ、アレは完全に食欲魔人状態だ。』
『そういえば....五人分は食う、っていう噂だな...』
『それだけじゃあ無い、それでまだ腹八分目、なんて抜かしてるんだ、まして自腹切ってる訳じゃなし、十人分は
 食いかねん、これじゃあ俺達は鍋に有りつけないぞ...っておい!!』

そんな相談をしている暇があればこそ、だ。すでに紀州人は目の前の鍋と格闘している。
『ああ、やっぱり....』
『ん? どうしたんだ?』
『あ、ミュラーさん、どうしたもこうしたもありませんよ、紀州人の奴、一人であんなに食っちまって、あれじゃあ
 みんな鍋にありつけませんよ?』
『その事なら予測済みだ、それに櫻嵐君もいるしな、その辺は陛下に負担してもらうよ。』
『さすが閣下、用意周到ですね!!』
『はっはっは! まあ彼の事は多少は知っているし、な。』

その頃それを遠目に見ていたルドルフが、
『あのバカが...他人の家で食う時ぐらい少しは遠慮するのが常識だろうに....』と天を仰いでいたで
あろう事は、想像に難く無い。

宴は、まだ始まったばかりである....

***************************************
どうも紀州人@食欲魔人です(爆)。驍橘さんが名前を出して下さったので、押っ取り刀で参上しました。
会社の忘年会に行けなかっただけに、ここではバリバリ食ってやる!!(爆) と意気込んでおります。

ふふふ...食うぞ食うぞ....(爆死) ではでは♪

ひでじい氏
「うん、うまい。今まで食ったことのない味だな。鰹と昆布を基にしてるが複雑な味わいだ。」煮えた鍋から紀州人の口へ食べ物がどんどん消えていく。あっという間に鱈、鶏、豆腐、きのこ類、白菜、白滝…多くのものが消えていった。

「さすが櫻嵐さんと一、二を争う紀州人さんですね。あっという間に全滅だわ。」せっかく煮えた鍋物がパッと消えてしまう。BATが嘆くのも無理はない。

「大丈夫です。こういうこともあろうかとミュラーさんの指示で二階堂と用意しておいたんです。」先日の浪漫堂の事件の後、妙に料理づいた花丸は自信を持って答えた。早速BATを伴い台所に向かう。

「なるほど、すごいですね。これなら一安心だわ。」台所にはきれいに刻まれた食材が「櫻嵐・紀州人用」という札を貼り付けられ、ルドルフ邸の台所に堆く積まれていた。

「そうです。後はこれを片っ端から鍋に入れてくれればいいんですよ。」
「取りあえず、私たちも食べられるんですね。」
「そう言うことです。」

 ともかくにも紀州人はひたすら食べていく。向こうでは櫻嵐も負けじと食べる。二階堂の絶妙なだしはいやがおうにも食を進ませた。

 ひでじいです。さあどんどん食べてくださいな。

Ai氏
「あれ、そ〜だったんですか」
Aiは片手にグラスを持って真っ赤な顔を英爺に向けた。
「私もそうなんですよ。徳島の出身」
「本当ですか」
やや驚きを込めた表情で、英爺がAiを見る。
「ほんと〜ですよ。あ、疑ってますね。疑ってるでしょ」
どうやらAiはからみ酒の傾向があるらしい。酔眼を英爺に向けて、絡み始めた。
「い・・・いや、そんなことは・・・・・・」
「ふふ〜ん。それじゃあ、お互いに確認するいい方法がありますよ」
酔っ払いに理性ある態度は無駄にすぎない。あきらめて英爺はAiの話にのることとなった。
「どんな方法です?」
「簡単なことですよ。は〜い、皆さん注目〜〜〜!」
足元をふらふらさせながらAiが立ちあがり、手をパンパンと叩く。
「ん?何事だ」
「なんだなんだ」
「Aiさん、顔が真っ赤ですよ」
ルドルフ邸に集まった浪漫堂の面々が、何事かとAiの方を見る。
「一番手、Ai。いかせていただきま〜す」
足元に座っている英爺を見てにやりと笑うと、いきなりAiはどこからか団扇を取り出した。
「♪踊る阿呆に見る阿呆♪同じ阿呆なら踊らにゃ損損♪」
歌いながら、Aiの足が独特のステップを踏む。千鳥足とも思えるのだが、そのステップには一定のリズムが刻まれていた。そして、手に持った団扇を手首を返して捻る。
「そ・・・それは!」
知らず知らずの内に英爺は立ちあがり、Aiと同じステップを踏み出した。
「ひ・・・英爺さん・・・!」
エズミが口に手を当て、驚きに目を丸くする。
「エ・・・エズミさん。身体が勝手に動くんだ・・・・・」
いつの間にやら、Aiと英爺はふたり並んで、忘年会の会場を踊りながら歩き出した。
「フフフフフ。どうです、英爺さん。私もあなたも、この呪縛からは逃れられないはずです・・・・・
一生ね!」
「うおおおおおお!身体が勝手にいぃぃ!」
最初何事が始まったのか、まるでわからない表情の浪漫堂の一同だったが、その中のひとり、イカルスが声を上げた。
「むう・・・・!あれは徳島名物阿波踊り!」
「なに〜、阿波踊りじゃと〜」とシスル。
「何か知っているのですか、師匠!」と魔女吉。
「うむ・・・・・・・」

阿波踊り・・・・・・江戸時代より受け継がれる徳島名物の盆踊り大会。その昔、阿波藩は農民・町人の締めつけの厳しい地方であった。その圧政からの不満を逸らすため、阿波藩蜂須賀家公認で年に一度馬鹿騒ぎを許されていたという・・・・・・・・。現代においては、国内はおろか、遠くブラジルでもこの踊りを行う地域があるという。ちなみに徳島の小学校では、体育の授業において、この踊りを習わせている(実話)。
民明書房刊『阿波踊り-----その恐るべき洗脳計画』より抜粋。

「は〜はっはっはっ。そのと〜り。徳島に生まれた者はこれが骨の髄まで染み込んでおり、県外に出ると宴会芸としてこれを披露するのですよ(多分嘘・・・・だと思う)」
「♪踊る阿呆に見る阿呆♪」
すっかり英爺も踊りに夢中になっている。
「んん〜〜〜〜。女踊りがないな〜〜。さっきから英爺さんを羨ましそうに見ているエズミさん!あなたに女踊りを命じます!」
英爺を心配そうに見ていたエズミが、Aiの次の標的となった。
「え・・・え・・・そんな・・・・。私、阿波踊りなんて踊ったこと・・・・・・・」
「いいからいいから。♪同じ阿呆なら踊らにゃ損損♪」
酔っ払いに理屈は通用しない。憐れエズミは英爺と並んで阿波踊りを踊るハメになった。
「なんで私がこんな目に〜〜〜〜(泣)」
「違う・・・・・・・」
いきなり無法地帯が立ちあがった。
「エズミさん!両手は目線よりやや上に!足運びは三歩進んで一歩下がるような感じで!」
エズミの腕を掴み、いきなり踊りの指導を始める無法地帯。
「ふふふ〜ん。どうやらあなたも御同郷のようですね。正体見たり」
「仕方あるまい。この無法地帯の踊りを見せてくれよう!」
高らかに宣言すると、無法地帯も踊り出した。
「「「♪エラヤッチャエラヤッチャヨイヨイヨイヨイ♪」」」
徳島出身の三人の声が合わさる。
「私は違うのに〜〜〜〜〜(涙)」
エズミの泣き声は、浪漫堂の面々の笑い声にかき消された。


-------------------------------------------------------------------------------------

こんなん書いてみました。
うわ、地元ローカルネタだ。他郷の人には何のことやら。
でも、阿波踊りくらい知ってますよね?
これ知られてなけりゃ、徳島って他には何もない・・・・・・・・・・・・。
ま、楽しい席ですから、少々ハメを外してもいいですよね。
では。



シスル氏
「流しのバンジョー弾きは如何ですかー?」

「・・・返事がありませんね?」
ルドルフ邸からは、物音一つ返ってこない。
「ならば、もう一度・・・流しのバンジョー弾きは如何ですか?
「やっぱり、返事がありませんね・・・・・・!?」
何かに気付いたのか、背中に背負っていたバックから慌ててスケジュール帳を、
シスルは引っ張り出した。
「しまった・・・日付を間違えた!」

でわ(笑)

妙法寺ラビ氏
例え場所が違えども
「ここもまた浪漫堂という訳か・・・」
『室内禁煙』の張り紙に従い、庭に出て煙草に火をつけた妙法寺は独り感慨深げに呟いた。
太正浪漫堂という建築物だけではない、そこに集う人々の想いもまた浪漫堂の一部なのだ。
「まあ、新参者の私が考えるまでも無い事なのだがな・・・」
そう、ここにいる誰もが皆その事をよくわかっている。そして大事に思っている。
その『想い』こそが、この宝石のような空間を形作っているのだ。


「とりあえず私も鍋にありつかせて頂くとするかな」
まだまだほろ酔いさえ感じさせない足取りで、宴会場にもどった妙法寺が見たものは・・・

「はっはっは!いやぁ実に楽しい!今日はなんぼでも食える気がしますな!!」

心底楽しそうな笑顔を浮かべながら、同時に卓上の料理を次々と片付けていく一人の御仁
「確か脚本家の紀州人さんとかいったか、しかしあの様子は・・・」
以前、互いの自己紹介の時に自分の出身地・神戸にゆかりのある方だとは聞いている
「だがあのような大食家とは聞いてないぞ」とは妙法寺の正直な感想。
近くでは、皆に「Rudolf陛下」と呼ばれている今日の会場提供者が
頭痛でもするのか額に手をあて天を仰いでいる。
眺めている間にも、卓上の料理は次々と消化されていく。
「こりゃ私の分がまわってくる事は当分なさそうだな」
半ばあきらめ顔で、酒を探して視線をさまよわせる妙法寺であった。


会場の一角では魔女吉、花丸、シスル、董月といった面々が
どうやら先の黒鬼会の話で盛り上がっている様だ。
「そういえば男風呂では妙な連帯感があったなぁ。お、黒火会さんも加わったか」
俺を差し置いて其の話はさせぬとばかりに、黒鬼会研究の重鎮達が会話に加わり
場はさらに熱い語らいになっていく気配である。

自分もその会話に参加しようかと妙法寺が思いはじめた時
いつのまにか、なにやらいい雰囲気になっている3組のカップルが目に止まった。
銀座中學國語教諭という堅苦しい肩書きのせいか、全く浮いた話に縁の無い妙法寺にとって
仲睦まじく語らっている様子は、茶々の一つも入れたくなるのに充分すぎるものだったが
「それも不粋というものだな、馬に蹴られて死ぬのも御免だしな」と傍観者を決めこむ。

ところが神様というのは悪戯好きのようで、Ai氏が余興と称して阿波踊りを披露したとたん
あわれ英爺&エズミペアの雰囲気はぶち壊しになったようだ

「こりゃフォローの必要があるな・・・ふふ、私の芸が役に立ちそうじゃないか」
どこから取り出したのか、妙法寺は黒いハードケースを抱えイカルスと智士の所へ近づく

「ちょっと失礼。ご無礼を承知でイカルスさんにひとつお願いがあるのですが・・・」
いぶかしげに妙法寺を眺めるイカルス。
「何だね?妙法寺くん、単刀直入に言ってみたまえ」
会話の邪魔をされて少々機嫌をそこねてしまったようだ。
「実は、少しの間だけ智士嬢をお借りしたいのですが・・・」
「いきなりやってきたかと思えば、その上あつかましい奴だな、君は」
ひるまず妙法寺はイカルスにそっと耳打ちする
「実はかくかくしかじか・・・という訳でして」
「ほう!そいつは名案だ。すまないが智士さん、名残惜しいがしばらくそいつに付き合ってくれないか」
「は?ま、まあイカルスさんがそうおっしゃるなら・・・」
「これはありがたい!ささ、ではこちらに・・・」

同様にしてエズミ、さらにはBATや猫侍たちまでかり集めた妙法寺。聖はというと
「私でよろしければお手伝いしたいと思います。お役に立てるかどうかわかりませんが・・・」
話を切り出す前に、にっこりと微笑みながら答えたそうである。
その時ルドルフは妙に複雑な顔をしていた様だが、気にしない妙法寺だった。
しかしこの男、女性陣を集めていったい何をしようというのか?


そして別室、女性陣を集めた妙法寺が段取りを説明すると・・・
「え〜っ!わたし自信ないですよぉ〜」とBAT
「いいえBATさん、これはチャンスだわ。女性といえば花組しか思い浮かばない男どもに、私たちの魅力を見せつけてやるんだから!」
「そやそや、ウチを男扱いしよった魔女吉のやつに目にもんみせたるわ!」と猫侍
皆、少々酔っているご様子。
妙法寺はといえば、黒いケースから何やら楽器を取り出し一心不乱に調弦をしている。
椰子の実を二つに割った様な胴に8本の弦を張った柄のついた、とても小さな楽器。
「あら妙法寺さん、変わった楽器をお持ちですのね」
「ああ聖さん、これはマンドリンといいましてね」
ポロロン・・・妙法寺が調弦を確かめる様に奏でてみる。
「可愛い音ですわね」
「ええ、繊細な楽器です。でもなかなかどうして、力強い音も出せるんですよ」
そんな会話の間にも、女性陣のボルテージはだんだんと上がってきた様だった。
「ではそろそろ参りましょうか」


宴会場に戻ってきた女性陣と妙法寺の物々しい様子を見て
皆が何事かとざわめき出す。
愉しげな笑みを浮かべ見つめているのはイカルス。
固唾を飲んで見守っているのは英爺とルドルフ。

その時、妙法寺が手に持つ楽器を見てビッテンが立ち上がった。
「そ、それはカラーチェの・・・!!」
その言葉に妙法寺がニヤリと答える。
「ご名答。確かにカラーチェ・マンドリンですが、よく御存じですね」
「知らいでか!カラーチェといえば我らが織姫嬢のイタリアが生んだ名音楽家・・・」
「おっと、音楽談義は後の楽しみと致しましょう」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「え〜皆様、大変お待たせ致しました。それでは今宵、浪漫堂女史の面々によります『真冬の夢の夜』どうぞお楽しみ下さいませ」
しんと静まりかえる宴会場。
挨拶の後、一礼し厳かな雰囲気のなかマンドリンによる前奏が始まる。

そして智士の独唱でスタート。

♪誰もいない交差点に立つ あなたとわたしの間に粉雪が舞う

エズミが重なるように続く

♪願い事がひとつだけあるの 今日は特別な日だからすこし夢を下さい

伴奏のテンポが上がり、そしてBATや猫侍が続いていく

英爺もルドルフも、そして皆も次第に我を忘れて聴き入っていく


♪今日は特別な日 愛があふれそうな日
 きっとみんなに奇跡が起こります・・・


宴はまだ始まったばかりである
今宵ここに集いし人々に幸あらんことを・・・・・・



其は文化と芸術の交わる場、そして
愛すべきものを守るため、力を尽くす人々が集う場所
そう、ここもまた太正浪漫堂
是の時間も、少しも色褪せることなく・・・





・・・ところで、ラストはエズミ嬢の独唱だったのだが
「♪あなたとふたりのラブストーリー」と歌いながら
英爺氏と見つめあっていたのかどうかは、また別のお話(笑)


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

皆様こんばんわ、妙法寺ラビです。
最終話に拙いレスをつけただけの私に、銀座中學國語教諭
などという設定をつけて浪漫堂に迎えいれて下さった
ひでじい様のご厚意に甘えて、こんな駄文を書いてしまいました。
一応、Ai様のつけたレスまでを参考に書いてみました。
名前を無断借用してしまった皆様、申し訳ありません。
そういえば「はじめまして」の挨拶さえ済ませて無い方の
名前まで使っちゃってます。うゎ、いいのかな?<それ、多分ダメ

と、とりあえず智士さまのHPから挨拶まわりに行ってこようかな・・・
ひぃ〜、皆様ごめんなさ〜い!私は、私は、え〜い!それ
脱兎!!(爆)


智士氏
歌い終わると妙に気分は軽やかだった。
頬が緩むのを隠せなかったが、今日はそれでもいいかと智士は
嬉々として席に戻った。
「へぇ〜、歌も歌えたんだね」
 意外そうなイカルスに少しだけムッとしながらもフワフワの気分は
変わる事無く智士が答えた。
「一応歌の勉強もさせられましたからね」
「そうか。しかしソプラノだったのは意外だった」
「意外は余計でしょう。でも基本的に歌うの好きなんですよ」
「何だか今日は発見が多い日だ」
「意外性があるって言うのは一つの魅力だと思うんですけど、
イカルスさんにはどう映るのかな?」
 智士は含み笑いをしてイカルスを見た。どうやらイカルスは
どう答えたら良いのか思案をしているらしい。
「無理に答え出さなくてもいいです。さあ、せっかくのお鍋です。
いただきましょう」
 そして智士は途端に鍋奉行へと切り替わった。
「いいですか?順番は野菜をひいて、肉、間に練り物で豆腐と
白滝。ああ駄目ですよ!白滝を肉の隣にしちゃ!
肉の成分で硬くなっちゃうんです!間にはえのき入れましょう!」
 そう、イカルスが意外だといったのは思いのほか智士が鍋に
五月蝿かった事だろう。本人曰く
『鍋奉行は譲れません!』
 こうしてふたたび鍋奉行智士のお小言が始まるのだった。
「あー!妙法寺さん白滝はそこだめ!イカルスさんしいたけはよく
味がしみてからにして下さい!それって出汁でもあるんですから」
・・・こうしてやかましい鍋の会は過ぎて行くのだった。


******************************

妙法寺さんこんばんは。(はじめましてかな?)
何だか調子よく歌わせてもらってありがとうございます。
しかし、カラオケ屋へ行くと2時間3時間は当たり前の
智士でございます。
同郷のよしみって奴でよろしくして下さいね。

ひでじいさんこんばんは。
どうも鍋に入れてくださりありがとうございます。
予告通り、勝手に鍋奉行してみました。
嗚呼、鍋が美味しい季節ですね。冬には鍋が一番!
身も心も温まると言うのは嬉しいです。
できればご一緒に鍋などつついてみたいものです。
(でも、南国さん集計によると徳島!!OFF会は無理かな?)

そして、イカルスさんへ
今回いっぱいお名前使わせていただきました。
一応前回に付けられなかった分、今回に付けてみましたが
こんな感じでいかがでしょう?
うーん、何だかイメージ違うとか言われそうかな?
まあ、架空のと言う事でご容赦を。

それでは皆様、また。

エズミ氏
「ふへー」
エズミはため息をついた。何が何やらわからぬ間に巻き込まれていた阿波踊りの輪の中をやっと這い出てきたところである。徳島出身者一同はまだ踊りたりんとばかりに手足をわちゃわちゃと動かしている。エズミはその中で何かに憑かれたような目で踊っている英爺を見て、むむむ、とうなった。
(英爺さんにあんな一面があったなんて・・。って、少女漫画だったら二度惚れに陥るとこだけど・・惚れ直せそうにないような・・複雑なキモチ)
エズミはちょっぴりセンチな気分になりながら、再び鍋の前に陣取った。鍋からはもうもうと湯気が出ており、中では出番を待ち構えた食材たちが、ぐつぐつとてんでにアピールしている。
「おお。ここはちゃんこですかあ。うれしいなあ」
「あ、ダメですよ、エズミさん。今あくを取りますから・・」
ニコニコ顔で箸を伸ばそうとするエズミを聖がやんわりと制した。長い黒髪を大きなリボンで結わえ、仕立てのいいいつもの着物の上には真っ白な割烹着を着ている。うーん、おねえさん。(爆)
「そう言えばエズミさん、なんだかえらく久しぶりのような気がしますね」
そう声をかけたのは、ポン酢を持つ手さえもさまになる・・ような気がする、エズミが言うところの“だんでぃ樹さん”もとい真神樹であった。
「わははは。いやーそうなんですよ。最近なんだかめっちゃ忙しくって・・帰ってきたと思ったら忘年会と送別会ラッシュでちっともこの辺りに顔を出せません」
エズミは頭をかきながら言い訳をかます。もっともそれは事実でもあって、エズミは歯医者の予約も断りつづける師走なのである。ああ、年が明けて早々歯石を取られる・・。(爆)
「ウチの研究室にもまた来てくださいよ」
「樹さん、それほんまに思ってますかあ?」
「ええ、みんなてぐすね引いて待っていますって・・」
「そうそう」
後ろから顔を出したのは純情青年外交官(自称)のかとおおおである。
「うちのはるかちゃんと遊んでくれるって約束もどうなってんですかぁ」
「そ、そりゃもちろん近いうちに・・。いや、だってゆっくり遊びたいですやん」
「ほんとだ。鍋より先にオープンカフェでしょうが」
イカルスも参戦する。
「わ、はははは・・」
エズミは笑ってごまかすと、お気に入りの杏露酒ロックを片手にその場を退散した。

さほど広くない庭には、さきほどからちらちらと降り出した粉雪がうっすらと積もっている。エズミはグラスを片手に空を見上げた。まんまるな月がぽっかりと、澄み切った闇の中に浮かび上がっている。飲み会の最中、ふと外に出て一人になる瞬間がエズミはとても好きだった。中の喧騒とは打って変わる静寂の世界。中がにぎやかであればあるほど、その場に一人の自分を感じて、けれど中に入ればたちまちに一人じゃなくなる・・それを実感して幸せな気分になる。
ふわり、エズミの肩に暖かいものがかぶせられた。見覚えのある濃いグレーのジャケット。エズミはちょっと笑ってジャケットの前身ごろをかきあわせた。振りかえらなくてもわかる。なかなかに進展したものだ。
「月に帰るにはまだ早いよ」
そう言いながらエズミの横に立つ青年の顔は寒そうながらも、どこか飄々としている。
「12時の鐘はまだ鳴ってない」
エズミはくすくすと笑って若者の顔を見上げた。普段は朴念仁のくせに、自ら詩人を名乗るだけあって突然ロマンチストなことを言う。そのギャップもエズミはなかなか気に入っていた。さっきまで阿波踊りを踊り狂ってたくせに・・。
「それはシンデレラ。でもかぐや姫が月に帰るのも子の刻(夜の十二時)だからあながち間違いじゃないわね・・」
若者・・英爺はにっこり笑うと、その場にしゃがみこんだ。
「へえ、それは知らなかったよ。奇しくも西洋とこの日の本のお姫さまは同じ時間に魔法が解けるわけだ」
「そうね・・。魔法が解けて灰かぶりに戻ってしまうシンデレラに、人間界の呪縛から逃れて本来の姿――天人に戻るかぐや姫か。まったく逆のようには見えるけど、本当の自分になる、って意味では同じかもしれないな・・。あはは、これで一編短編ができちゃいそうだね」
エズミの笑い声は白い息となって大気に溶けてゆく。ふむ、と英爺は膝の上に頬杖をついて、エズミの顔を見上げた。
「エズミさんの魔法は・・いつ解けるのかな」
その顔を見てエズミは思う、“ふたり”も悪くはないな、と。


すいませーん。中途半端ですー。でもなんかこれ以上書けませーん。
とてつもなくさぶいことを書いてしまいそうで・・。(^^;;
え、すでに充分さぶい?まったくでごわす。
よかったら英爺さん、あるいはラヴラヴお得意な方、引き継いでくださいな。うう、恥ずかすいい。(*><*)

ではでは、最終回に参加できなかったので、ちょっとひでじいさんに・・。
浪漫堂本編完結、本当にお疲れさまでした!!同時期に連載物をやっていた身としてはなんだか勝手に親近感を抱いちゃったりしてました。
私もあまりBBSに書きこみしていない不届きモノにもかかわらず、素敵な役どころを与えていただいて、とっても楽しかったです。
私が女だった事件、(笑)智士さん爆弾発言事件、脱線イロモノ浪漫堂事件(爆)、さまざまな人たちの愉快な乱入、そしてそして、いつのまにそうなったんやらの私と英爺さんラヴラヴ事件。(笑)
本編ももちろんすばらしかったんですが、私にとっては内輪ネタ、そしてリレーならではのイレギュラーの数々が本当に楽しかったです。

素晴らしいものを本当にありがとうございました、ひでじいさん。また季節ネタかなにかで浪漫堂を書いてくれると嬉しいです。できる限り参加して、参加できない時も一読者としてエズミの活躍を楽しませていただきます。(笑)
では、失礼致します〜〜。

ひでじい氏
「エズミさんの魔法はいつ解けるのかな。」英爺はかすかに微笑んだ。

 冬の寒さの中、月がエズミを、そして英爺を青白く照らし出す。屋内の喧噪を静寂が掃き清めるように、そして、最上の舞台をつくり出すかのように、月はひたすら白銀のように輝く。

「それは…。」エズミはその光景に一瞬息を止めた。風が少し出た。風がルドルフの家の裏の雑木林を軽く撫でていく音がした。先程まで夜空に出ていた雲が切れ、満天を月と星が覆う。その光に呼応するかのように、庭に薄く積もった雪が白く浮かび上がり、そこにたたずむ英爺の姿をエズミの瞳に運ぶのだ。

「それは…、それはあなた次第…。」エズミの最後の言葉はほとんど聞こえなかった。英爺はその言葉を聞いてハッとした表情でエズミを見たが、やがて目を閉じて小さく頷くと立ち上がり、ゆっくりとエズミのところに近づいてきた。
 エズミは次第に近づく英爺の顔を見ながら、太正浪漫堂での出来事を思い出していた。ミュラーさんと夢織さんの紹介で初めて会ったときは変な人だなあ、と思っていた。帝劇の大神さんに恋するさくらさんのことを一生懸命に詩にしていたっけ。それから普通の服で行ったときは私と気づかず「こ、こちらでございます。」とか言って浪漫堂の階段を踏み外したことがあった。男装の私にはつい先日まで気づかなかった。そのときにはよく「エズミくん、演劇も音楽も舞台は心で見るものだ。」って言ってた。本当に帝劇や帝響が好きで、よく通っていた。珈琲もよく飲んだし、お酒もよく飲んだ。夏はテラスで、冬は暖炉の前でみんなとよく話をしたわね。あの頃は浪漫堂の草創期で南國さんや紀州人さん、私、英爺さん、そしてイカルスさん。それだけだったけど本当にいろいろな話をした。

 でも私も英爺さんのことを知ったのはつい最近だった。あなたが実は地質学者だったこと。親友のイカルスさんとともに危険を乗り越えていたこと…。
 そして、ランプを不器用に磨きながら私を励ましてくれたこと、魔物の槍から庇ってくれたこと、私のむいた林檎をおいしそうに食べていて、それから…。

 全ては帝劇から始まった物語、そしてあの太正浪漫堂から始まった物語。でも、あれから随分経って今では…。

「エズミさん…。」英爺の顔がエズミの間近にある。
「英爺さん…。」英爺の右手がエズミの耳元の髪に触れる。と、そのとき、

「おーい!エズミくん、英爺さん、何やってんだ!宴会はこれからだぞ!」南國が二人を呼ぶ声がした。

「はあ…。」がっくりとうなだれる二人。
「仕方ないね。」英爺がぽつりと言った。
「そうですね。この続きはクリスマスで。」エズミが気を取り直したように言う。
「そうしよう。じゃあまたクリスマスで。さあ、みんなが待っている。行こうか。」満面の笑みで今度は英爺が手を差し出す。
「ええ。」エズミは英爺に手を重ねると二人して南國の後に続き宴席へ戻った。

 庭は全てを見ていたが、何事もなかったかのように白く輝き続けていた。






 後から読み返すと非常に恥ずかしくて照れるのですが、えい、と載せてみることにしました。ごめんなさい、本当にごめんなさい。ちょっと不器用ですが、こんな描き方をしてみました。(でもかとおおおさんは怒らないかなあ)

 レスではお心遣い深く感謝しています。本当に僕たちは浪漫堂の親友だったと思います。こんな機会を与えてくれた偶然に感謝しながら。

かとおおお氏
 その夜、少し遅れてRudolfの居宅を訪れる一人の青年の姿があった。

「ちょっと遅れてしまったでし。まったく、ご主人しゃまの書いた地図はわかりにくいでしねー」

 かとおおお外交官の書生、のぶっちである。
 地方から出てきたばかりなので、まだお国訛りが抜けないようだ。(笑)

「うー、知らない人ばかりでなんか緊張するでし。
 こ、こんばんは、でし」

 そうっと玄関の扉を開けるのぶっち。
 目ざとく見つけたのはエズミである。

「あら、のぶっち君、いらっしゃい。もう始まってるわよ。早く席についたら」
「エズミしゃま、ありがとうでしー。エプロン姿がよく似合ってるでしよ☆」
「フフ、ありがとう。あなたもいつもの学生服じゃなくって、ちゃんとスーツ着てきたのね」
「ご主人しゃまのお古を借りてきたでし。おかしくないでしか?」
「おお、のぶっち君じゃないか。見違えたぞ。馬子にも衣裳とはよく言ったものだ」
「あ、夢織しゃま。この間はご主人しゃまがお世話になったでし」
「まあまあ、堅苦しいあいさつはいいから、こっち来ていっぱいやりたまえ。鍋ももう煮えているぞ」

 のぶっちがついたテーブルにはかとおおおも座っていた。

「待ちかねたぞ、のぶっち。さあ、私の隣へ」
「(ご主人しゃま、なんだかそわそわしてるでしねー。なるほど、同じテーブルにBATしゃまと智士しゃまがいるでし。ははーん、奥手なご主人しゃまは、話す話題がなくて困ってるでしね。よし、ここはボクちゃんが場をとりもつでし)」
「のぶっちくん、はじめまして。BATです」
「はじめましてでしー。でもお名前はかねがねご主人しゃまから聞いてるでし。浪漫堂一のカワイコちゃんとのウワサはほんとうだったんでしね」
「あら、かとおおおさんておうちではそんな話してるの?」
「もちろん、帰るとすぐにその話ばかりでし。この前もBATさんの言ったことを逐一報告………イタッ!!」

 かとおおおが思いっきり脇腹をつねったので、のぶっちは思わず飛び上がってしまった。

「(ご主人しゃま、痛いでしー)」
「(お前がいいかげんなことばかり言うからだ!)」
「おや、何をこそこそ話しているんですか? のぶっちくん、はじめまして。智士です。よろしく」
「おお、これは浪漫堂一の美人とその名も高い智士しゃまでしね。お会いできて光栄でし。
 智士しゃまのこともいつもご主人しゃまが話しているでしよ。一度でいいからデートしたいって」

ゴン!!

「(痛いでしー。何もグーで殴ることはないでしよー)」
「(いいかげんにせんか! それではまるで私がナンパ師のようではないか!)」

 と、そこへエズミが割って入ってきた。

「なんだか面白そうなお話ですのね。なら、わたしのこと、かとおおおさんはおうちでなんて言ってるのかしら?」
「よくぞ聞いてくださったでし☆ それはもう、二言めにはエズミしゃまの名前をうわごとのようにつぶやいてるでし。この間なんか寝言で○○○○したいだの××××が見たいだのとてもここでは言えないことを口走っていたでしよ」

ガタン

 かとおおおはのぶっちの言葉が終わるか終わらないかのうちに立ち上がると、ゆっくりとした仕草でポケットに手を入れた。

「あれ? ご主人しゃまどうしたでしか? ポケットから手袋なんか取り出して。
 うん? 白い手袋でしね。なんか手の甲に星形のマークがついてるでし。 
 それを右手にはめて………ゲゲッ! まさか!?」
「フフフ、今ごろ気づいたかね。のぶっちよ、覚悟はいいな。
 食らえっ!! 必殺・ドーマンセーマン・パ――――――――ンチ!!!」
「ぐわわわっ!! シャ○しゃま〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 あわれのぶっちは空の彼方まで飛んで行き、クリスマスの夜空に光る星になったという……。



 以上、星神のぶっちの伝説でした。(笑)
 まあ、番外編ということで、こんなイロモノまがいでもいいですよね。(^^;
 しかしひでじいさん、「作者版・番外編」って、まるで他にも番外編があるような書き方じゃあないですか。ま、実際あるんですけど。(爆)
 ひょんなことから参加させていただくことになった「太正浪漫堂」、私にとっても大変楽しかったです。純情青年外交官の役割を演じるのも。(最初は魔人Kだったような気もするが(^^;)
 それでは皆様、よいクリスマスを……。

追伸
エズミさんとのことは全然気にしてませんよー。(^^)
ただ二人でラブラブになっちゃうと面白くないので、三角・四角関係にして盛りあがらせているだけです。(おいおい)
あと、ひょっとしたら「裏・浪漫堂」もうちょっと続くかも……。(ぼそぼそ)

イカルス星人氏
全く、人を何だと思ってるんだ。
イカルスは愚痴っていた。
来る早々人の家の風呂の掃除をさせられ、その次は釜焚き。
やっとご婦人と二人きりになったのもつかの間、余興に連れて行かれて
しまう。
戻ってきたら戻ってきたで今度は鍋奉行を始めてしまった。
これでは恋の囁きなどできようはずもない。
一体今日の私は客なんだろうか、下働きなんだろうか。
「イカルスさんは宴会の余興とかなさらないんですか」妙法寺が言う。
「できないことはありませんが・・・・。
林檎を一個丸のまま口の中に入れるとか、手の指を反対に折り曲げて手
の甲につけるとか、口を開けたまま口笛を吹くとか・・・」
「そういう雑技団みたいなのじゃなくって」妙法寺はげんなりしている。
「そうだ、お前何かやってくれないか」英爺がやってきて言う。
「いいでしょう。皆さん、今から私が重大発表をします。」
皆が急に静まり、固唾を飲んでその次の言葉を待つ。
「今まで皆さんに隠していたのですが、実は私男の人にしか魅力を感じ
ないのです。これが本当の「隠しゲイ」なんちゃって」
「おい、まさか俺のことをそんな目で見ていたのか」英爺が仰天する。
その傍らでエズミが腹を抱えて笑っている。「隠しゲイ」の部分が個人
的に大受けしたらしい。
「と言うのは冗談でして、実は私について持たれている疑惑について釈明したいのです。私は決して胸が大きい女性が好きだと言う訳ではなく、実際花組でもご贔屓はレニ嬢ですし、ああ、もう誰も聞いてない」
仕方なく座ったイカルスを、智士が睨みつける。
「で、本当のところはどうなんですか」
「え、ああ、勿論私が好きなのはご婦人です。胸はついてりゃいいって
感じで大きさにはこだわりません」
「本当かしら」どうもまだ信じてもらえないらしい。
「どうも面白くないな。妙法寺君、あっちの鍋にこのきのこを差し入れてきてくれ給え」
十数分後。
「英爺さんがエズミさんの手を握って何か熱っぽく語っています。
ルドルフさんに至ってはワインを喇叭飲みしながら聖さんの目を正面か
ら見て口説いてます。一体何があったんでしょう」
「面白くなったでしょう。これを食わせたんですよ」
イカルスは先程のきのこが入っていた袋を取り出した。
そこにはこう書かれていた。「人格変換茸」

お名前を借りた皆様、陳謝。本人は忘年会が年内一回しかなく寂しい日々を送っております。

神楽氏
「ううっ寒い寒い」そう言いながら道を歩いているのは、
見たところ学生ぐらいの男だった。帽子をかぶり、コートを着て歩く姿を見るに、どうもこのあたりを知らないようだ。
この男、名前を神楽という。

「休みを利用して、初めて浪漫堂に行こうと思ったけどもう少し厚着をしてきたらよかったかな」と言いつつも、あたりをきょろきょろと見回している。

「あっ、あった。ここが太正浪漫堂・・」と神楽は立ち止まった。「この中に英爺さんや、イカルスさん。エズミさんや南國さんがいるんだな・・・」と言いながら、神楽はなぜか入るのをためらっているようだ。
(どうした、何をためらっているんだ。あの人たちにあいたいんじゃないのか)
「よ、よしっ」と神楽は店内へと入っていった。

「あれっ」店内には色々な人がいると思っていた神楽だが、
なぜか客はまばらだった。不審に思いながら珈琲を注文し、
店内を見わたすと一枚の記事が目に入った。
「拾弐月拾六日・・・これって今日のことじゃないか!」
読んでみると、どうやらルドルフ陛下の家で忘年会をやるらしい。といっても神楽がその家の場所を知るわけもない。

「やれやれ、日が悪かったか」と落ち込むがしかたない。
「しかたない。今日は浪漫堂にきて、名物の珈琲を飲めただけでもよしとするか。
だがいつかきっと・・・」

***************************************
どうも神楽という新人です
太正浪漫堂シリーズはずっと見ていました。
今回が最後というらしいので仲間にいれてもらいたいと
思い、こんなものを書いてしまいました。
(ちなみに、初SSです)
ひでじいさん、イカルスさん、エズミさん、南國さん、
勝手に使わさせてもらいました。すみません。

それではまた。


浪漫堂再録書庫に戻る。