ひでじい氏 |
ひでじい@高松出張から帰還して手持ち無沙汰です。夜はまた出かけなければならないので、また一つつくってみました。雰囲気が分からない人は裏のページを見てみてください。 夕刻になってもこの太正浪漫堂のにぎわいは衰えない。この日も大帝國劇場での帝劇公演をはじめ、帝都交響楽団の定期演奏会なども重なり、いつもより遅い夜になっても昼のような談笑の渦に包まれていた。壁際に掛けられた暖かいランプの光が端正につくられたテーブルを照らし、煉瓦の赤い色に深みを加える。様々な珈琲と紅茶を持ったウエイターやウエイトレスが忙しく動き回る。一部では軽いアルコールも出ているようだ。 この夜のオープンスペースの主役は洒落た背広を着こなした青年、シュペーア氏だった。彼は帝國政府の新進気鋭の若手官僚であり、性格も冷静で理知的である。内政を司る彼は民政、つまり今日でいう産業、資源、福祉、環境といった幅広い国のデータを分析する担当であり、ある意味においては国家戦略の方向を最も理解している一人でもあった。無論大の帝劇好きでもある。その彼も帝撃=帝劇説に大いに興味をそそられているようだ。 「帝撃は確かに金を食っているが、膨大な軍隊の予算に比べれば微々たるものだ。それに帝撃は機動警察みたいなものだ。本当は政府や軍自体の予算を改革すべき時期なのだが。」 「シュペーアさん、その話もそうだが、あなたは例の帝撃の話、どう思うんだ。」 「そうだ、どう思うんだよ。」 尋ねているのは菫月とシスルである。菫月は田中公平指揮下の帝都交響楽団で広報を担当しており大の帝劇ファンである。特に近年落ち着きを見せ、さらに演技の質が高まったという神崎すみれを一押しに押している。一方のシスルは商社勤めであり、買い付けで広く海外に出張することも多いが「帝劇が一番いい」と暇があれば日本に帰ってきてしまう。 「そうだな。常識的に考えれば歌劇團があんな秘密部隊になれるはずはない。あれだけ稽古に打ち込んでいる彼女らに特殊訓練を積む余裕はないだろう。」 「確かに帝劇花組の稽古や準備は熱心だからな。オーケストラも気合が入るというものだ。」 「しかしここまでは役人的な発想だ。ただ一点、妙なことがある。」淹れたての珈琲を飲みながらシュペーアが話を続ける。 「モギリと舞台担当のことだな。」シスルの目が光る。 「そうだ。なぜ海軍士官学校の卒業者がモギリや舞台担当になるのだ。」 「陸海軍の確執のせいという…。」 「それなら閑職はいくらでもあるだろう。」 「ふむう。」三人の話が続いていたとき、不意にドアが開いた。 「おお、シュペーア。」入ってきた客の一団の中にミュラーと夢織がいた。 「ミュラーに夢織、遅いぞ。お気に入りのスターのサインでももらっていたのか。」 「シュペーアさん、ちょっとこっちに来てくれませんか。」夢織が手招きした。 「じゃあ、俺達はそろそろ帰る。」 「悪いな。今度はおごるよ。それじゃあまた明日。」 二人と別れて席を移ったシュペーアは夢織に言った。 「どうしたんだ。いつもならいっしょに飲むのに。」 「いえ、今日はこの二人をお招きしているので、そうもいかなかったんです。」夢織は手元のランプをつけると若い男女の顔が浮かび上がった。 「こ、これは…。」いつ帰ってきたのだ。この人は。 「お初にお目にかかります。大神一郎です。」 若い男はにこやかな、しかし稟とした表情で挨拶をした。一方、地味な洋装の若い女が帽子を取った。 「え?」 「失礼します。真宮寺さくらです。」 「どういうことなんだ?」 「まあ座れ、シュペーア。」ミュラーは穏やかに着席を促す。 「もうすぐルドルフが来る。それからイカルスと英爺も調査から帰ってくる。それから今日はスペシャルゲストを招いている。黒火会と名乗る記者だ。」 「そ、その前にお聞きしたい。」夢のような顔合わせに水を飲みながらシュペーアは尋ねた。 「大神さん、あなたは帝撃花組の隊長なのですか。」 大神は笑顔のまま黙して語らない。 太正浪漫堂、煉瓦を蔦が覆い、彫刻の美しい、そして珈琲と紅茶のおいしい洒落た店。そのにぎわいの中、テーブルの一角で信じられない話が始まろうとしていた。 |
夢織時代 |
初めて見た人は・・・。 ああ、この店でなにがあるのかまだよく知らないのですね。 閣下も、お二人も、少し待っていて頂けますか。 えっと・・・、 この間何を話したか、英爺殿が書きとめてくれていたと思ったが・・・。 ぱらぱら・・・ ふむ、このページを読んでみると、大体のことはわかりますよ。 http://www.sega.co.jp/bbs/s/sakura/17_wfoeew_ALL.shtml(編集時注、既に消去されています) 今も話しているようだって? ここは、時の流れが重なっているところですからね。 さてと、お待たせしました。 いい風が入ってきますね。 ああ、ブランデーは入れないでくれ。 私はどうも酒に弱くてね。 ・・・閣下、笑わないで下さい。 シュペーア卿。前にお台場でラジオ放送があったのを覚えておいででしょう。 ああ、私もあれは大好きでしてね。 自費出版で解説本まで出してしまいましたよ。 今思うと、あのとき引っかかっていたことが全て解りますよ。 ねえ、さくらさん。 黒火会さんがいらっしゃるまで、録音盤でも聞いてみませんか。 夢織は店員に録音盤を手渡す。 太正十二年の日付が入ったそれが、あのときの感動そのままに、 生前のあやめの声を紡ぐ。 思い出の、有楽町帝撃通信局。 思えば、この放送が全国の人々が集うきっかけだったかもしれませんね。 |
ひでじい氏 |
「夢織、どうしたんだ、夢織?」 ミュラーの呼びかけに夢織はようやく我に返った。 「考えごとか?」 「ええ、すみません。録音盤を聞いているうちにいろいろなことを思い出していたのですよ。」 「…あやめさんのことですか。」さくらが尋ねた。大神は黙っているが同じ思いかも知れない。 「そうですね。それからいろんなできごとを。もう月日がかなり経ちますね。」 夢織は一連の研究の中で様々なことを知ってしまったのだ。真之介とあやめのことも。薫り高い珈琲が一層その思いを強くする。 「あ、ここだ。ミュラーさん。お連れしましたよ。今日のメインディッシュだ。」聞き慣れた声がする。振り返ると武臨が無精ひげを生やし、くたびれた背広で、しかし精悍な目をした男を紹介した。 「こちらが黒火会氏です。あれ、そちらの方は?…は!あなたはお、大神…。」 ミュラーは微笑して人差し指を口に当てた。夢織も軽く手を挙げ制止の表情をした。 「なるほど。それじゃあ私はこれで。さあ、明日は蒸気バイクを駆ってでますか。」武臨は何事もなかったかのように外に出ると呟いた。 「また、何かが起きているのか…。」 ひでじい@朝です(もう昼だったかな?) いや、確かにそうかも知れませんね。コーナーに響く録音盤に永久に刻まれたその声。あれからなのかも知れませんね。それが太正浪漫堂の一角に万感の思いを与える。 夢織の持っている珈琲は今もまだあたたかであった。夢織さん、期待してますよ。 |
Rudolf氏 |
只今輪転機が回っています。 もうすぐできるぞぉ売れない新聞が。(爆)さて、取り敢えずその信じられない話が出てからまたレスろっと。(なんせ自分が出ていっているからレスしようがない;) |
ひでじい氏 |
「この感触は…。また新たな事件が起きるのか?」社会部の記者が急病のため、臨時に帝都日報に戻ったルドルフは政府や軍、各企業の取材対応に奇妙な違和感を感じていた。 「俺がまだ社会部だったとき、この感触は二回ほど経験している。」それは葵叉丹の乱のとき、そして京極慶吾の乱のとき。情報はシャットアウトしないが驚くほど緻密な情報操作をするのだ。叉丹のときは「震災」、今回は「反乱」。帝都市民以外は表面上はこの2つの乱をこのように知らされていた。無論帝都日報は事実を報道しようとしたが、事実は小説よりも奇なり、のこの事態に当事者や目撃者たち以外は信じようとはしなかった。 「しかし、何かが起きていることは間違いない。」地下鉄の中でルドルフは確信していた。そう、彼が戻ってきているのだ。海軍中尉・大神一郎。彼がモギリをしているとき、確かに大事件が起きるのだ。いや、その事件を処理するためにやってきているに違いない。 「見たところ優男のようだが、あの目だけは花組隊長らしい部分があるな。おっと今日はさくらさんも来るんだな。サインもらおうっと。」地下鉄の駅を出ると太正浪漫堂の灯りが近づいてきた。 「櫻の季節だが夜は冷えるな。アイリッシュコーヒーといくか。」 ルドルフはいつもの扉を開け、暖かい光に包まれながらミュラーと夢織の姿を探すことにした。 「いらっしゃいませ。お一人ですか。」 「いや、ミュラーと夢織を探してるんだが。」 「ああ、ルドルフさん、こちらです。」夢織が手招きした。コンサートや舞台帰りの客をかき分け奥のテーブルにたどりつくと、そこにはいつものメンバーに加え、青年と美しい女性が座っていた。 「大帝國劇場総務課の大神さんですね。私はこういう者です。私もいっしょにお話を伺いたいのですが。あ、いや今回のことは私の個人的な趣味で絶対に記事にはしません。」 「あ、自分は大神一郎です。こちらは、真宮寺さくらくんです。」 「それでは話の前に、すみません、アイリッシュコーヒー、ウィスキー多めで。」 「かしこまりました。」ウエイターが去っていく。 ルドルフさん、こんな感じでどうでしょう。帰ってテーブルに着きましたよ。夜の浪漫堂も雰囲気はいいですが、さてこの後どうなるのでしょう。 |
Rudolf氏 |
私の調べによると、 大神さん、貴方はただの総務の人間ではない、そう睨んでいるのですが。 「ははは、逞しい想像力ですねルドルフさん。ですが私はただの劇場の職員、それ以上でなければそれ以下でもありませんよ。」 なかなか尻尾を出さない、そう睨んだルドルフは一度転換を試みた。 「そうですね、しかしただの職員にしてはよくこちらにいらっしゃるさくらさんはじめ華撃団の皆さんとよく外を出歩かれていますね、まるで、そう。恋人同士のように。」 「;は、ははは、よく知ってらっしゃる。流石は新聞記者さんですね。」 「ふふふ、ここだけの話ですが私はただの新聞記者ではありませんよ、ゴボッ、ゴヘッ。」 この時咽せたのが慣れないウイスキー入りコーヒーを含んだ為なのか口を滑らせた為なのかは察しがつかない、だが語るに落ちたのは言い逃れもできなかった。 「ですが私のかき集めた情報を辿ると必ず黒鬼会絡みの事件はこの帝劇でぶち当たり、そこから一切調べがつかない。しかし帝劇=帝撃説を採れば全ての話に合点がいく、これについて大帝国劇場に住まう方として何かご意見は。」 しかし大神は眉一つ動かさず否定姿勢を崩さない。しかしその返答にはそろそろ窮屈さも現れる頃であった。 「あたしたちはあくまでも歌劇団ですよ、ルドルフさん。」 見かねたさくらが口を挟み出す。 「さ、さくらさん・・・貴方に言われると私も急をして返答を求めようとは思いません。その代わり、サインを頂けますか。」 さくらは気持ちよくそれに応える、しかしルドルフの横にいる夢織、ミュラー両氏の冷たい視線が些か気になりながらも一旦追及の手を休める事とした。 「その道に長けた事で我ら記者陣の間で有名な黒火会殿ならどうしたかな。」 ルドルフには独り言をつぶやくしかなかった。そして新しく注文したセイロンのミルクティーを口に含んだ。(お子ちゃま言わないでー!) (ボソッ:親衛艦隊スクランブル、総員第一種戦闘配置のまま衛星軌道上にて別名あるまで待機せよ。) ええい内輪ネタは難しい!かとおおお師匠に任せればよかった。(何故か笑)でも、こんなカフェテリアがあれば例えガイエスブルクであろうとヴェルゼーテであろうと行きたいなあ〜。(切望) |
ひでじい氏 |
ランプの揺らぎとともに大神とさくらの顔も揺らぐ。 談笑のさざなみは今日の帝劇や帝響定演の風評を運んできてくれる。 しかし、このテーブルにはその穏やかな座談とは異なる緊張した雰囲気があった。 「まあ、陛下、追及はこの程度が限界でしょうな。周囲の方もおられるし、その辺にされてはいかがでしょう。」ミュラーが座の収拾に乗り出した。 「うむ。この話題はまた次の機会にというところですか。」不承不承、ルドルフも応じた。 「さて、黒火会やイカルスたちが来るまでの間、少し話をしますか。実は気になることがありまして。」 ルドルフは自分が帝都日報に再度仮配属されており、社会部で取材している際の、政府、軍、各企業の対応が異常であることの報告をした。時々大神の表情をちらりと見た。大神は冷静で表情を変えずにいたが、明らかにその瞳は情報を逃すまいとする鋭いものであった。 「また何かが動いているに違いないのです。しかも相手が何者かは全く分かりません。ただまた大きな組織が帝都を狙っているように思えてなりません。謎の機動部隊である帝國華撃團も今回は支えられるかどうか。」言い終わるとルドルフは乾いた喉にティーを押し込み、ミュラーに向かって言った。 「俺の結論もあなた方と同じです。もう一度帝都で大戦が起こります。」 「何でも帝撃出撃の際には最近では警察や消防局をはじめ、商店街や工場の人々まで協力するではありませんか。我々も協力したいのですよ。」夢織が側から言った。 「まあ、まあ、事務局総務課の大神さんにそれを言っても仕方がない。それよりももう少しお互いに情報交換しよう。」シュペーアが言った。一座の者は大神たちに有益な情報を与えるほうが先決だ、ということを認識させた。 不意にルドルフの後ろで武臨の声がした。振り返ると後ろには無精髭を伸ばし、背広を着くずした、いかにも記者という男が立っていた。 「ははあ、これが黒火会だな。おおっと今頃になってアイリッシュコーヒーが効いてきたか。」 しかしそれが好奇心であることをルドルフは十分感じていた。今日の舞台には人が揃いすぎている。帝劇に舞台があるように浪漫堂にも舞台は用意されていたのである。 「俺は大神さんや花組のみなさんに無事でいてもらいたいんだ。」しかし、ルドルフはこの考えを心のタンスにしまい込んだ。そしてにこやかに黒火会と握手する。 「舞台の幕が開いたな。」ルドルフはそう呟いた。 陛下、どうもありがとうございます。陛下のレスでインスパイアされましたのでこんな物をつくってみました。どうぞお目通しを。 |
Rudolf氏 |
と、ルドルフは記者の本領発揮宜しくクリアルのテーブルに向かって馬産地の話に移ったかと思えば加山晃子のテーブルにて江田島の討論、晃子を連れて麻妃、みおのテーブルにて三人娘発足を宣言したかと思えばミュラーを連れてかとおおおのテーブルで地元の話題に触れて黒火会を引き込めないか画策し、シュペーアと真宮寺独逸分家の今後に話し、最後に寮会に出席した。(只今寮会の帰り) ふふふ☆またボケに走ってしまった・・・いいんだ、僕はお子ちゃまで悪人なんだから。(爆) 失礼☆(ここは忘れて次に行こう) |
夢織時代 |
気持ちは分かりますがね さくらにサインをもらうルドルフを見つめながら、 夢織は、心の中でつぶやいた。 これでも夢織は、さくらのファンなのだ。 財布の中にさくらのブロマイドを入れていることは、 本人は秘密にしているつもりだが、浪漫堂では知られているらしい。 うまいこと、はぐらかされてしまった気もするが、 しかし、ルドルフが言ったことはそれを忘れさせるほどの内容だった。 それは、悲しむべき事であるだろう。 大神やさくらは、再び戦場へ行かなければならない・・・。 この幸せな二人が再び火薬の海に飛び込むことを、出来るなら見たくはない。 黒火会と握手するルドルフの表情が、一瞬翳ったのは、やはり同じ思いを抱いてのことだろう。 慌ただしく浪漫堂の中を動き回り始めた彼の姿を時折目で追いながら、 夢織は思い出したことがある。 ルドルフが、かつて対降魔部隊の山崎真之介と親交があったということを。 あの戦いの凄惨さを知る彼が、今、再び来る騒乱の予感をどう思っているのか・・・。 だが、この二人と同じ帝都にいて、この二人を中心に吹き荒れるであろう、浪漫の嵐に再び触れることができる。 それを喜ばずにいられない自分がどこかにいることに、夢織は嫌悪を抱いていた。 タイムテーブルのバラバラなレスをつけてしまってすみません。夢織でした。 |
ひでじい氏 |
「…夢織はやさしいからな。多分大神とさくらの身を案じているのだろう。」 ミュラーとシュペーアは夢織のその翳りある表情を見て察した。確かに大神とさくらを危地に追い込むことになるかも知れないのだ。そのことを否定することはできない。 しかし、歴史、軍事、報道、科学、技術…。いくばくかの情報を寄せ集め、この二人を少しでも応援することができれば、そして歌劇團を讃え続けることができれば、少しは新しい脅威に立ち向かう二人の危険性を下げることになるかも知れない。 何より若い人々が浪漫堂に集まり太正に新しい風が吹くことを期待しているのだ。黒火会、イカルス、英爺がそろい、ここ太正浪漫堂別館で夢の顔合わせが実現する。しかしその高揚感が夢織の嫌悪感の原因でもあるのだ。 「ともかく前に進まざるを得ないな。」ミュラーは苦笑しながら話を進めることにした。外は風が出てきたようである。 ひでじいです。すばらしいレスSSをありがとうございました。自分の気づかない部分だったので考えさせられるところがあったと思います。 SS的にはイカルス星人さんとミュラー閣下のレスSSのあたりが一番新しい(だろうな)と思いましたのでタイムテーブル補正をしておきました。御了承ください。それでは夢織先生、頼みましたよ! |
黒火会氏 |
こっそりと一杯やってたりして 「やはり華撃団が歌劇団かどうか……」 「もう一押し手掛かりが欲しいところだな」 「陛下が集めた証拠ももちろん重要なのだが……やはり決め手に欠く」 ルドルフ氏が提唱した『華撃団=歌劇団』説は浪漫堂の常連客の話題の中心となって とどまるところを知らない。 その時。 「少なくとも黒鬼会の行動を追っていけば、どうしても歌劇団に行き当たるのは歴然たる 事実ですな」 話に割って入ったのは、少し離れたテーブルで1人ビールを飲む男であった。 よれよれでゆるんだネクタイ、無精ひげが目立つ顔。 どちらかといえば、あまりこの店に似つかわしくない男である。 「歌劇団の一員……失礼、トップスタアの神崎すみれの実家襲撃、歌劇団の有力支援者である 山口大臣暗殺未遂、それに太正維新軍の劇場襲撃時も黒鬼会の魔操機兵が目撃されています。 それに何より、突如失踪した支配人秘書の影山サキも黒鬼会のスパイであったという説も まことしやかに流れているではありませんか」 男は持参品であろうひまわりの種をボリボリかじりながら話す。 「失礼ですが、貴方は……?」 男はニヤリと笑った。 「黒火会、というしがないフリージャーナリストですよ。たまたま知人と待ち合わせを しているところです」 ひでじいさん、スペシャル下司人(爆)の黒火会です。 何やら物々しい扱いにして下さって恐悦です。 ………っていうか、武臨さんがわざわざ招待して下さったんでしたっけ。 はは、私みたいな悪……いやアクの強い者が参加したらひでじいさんが困るでしょうに。 私なんか呼んだら恐ろしいことになりますよ。(笑) 黒鬼小戦(ご存じですか?)で参加することも考えたんですけど、やっぱりここは雰囲気に 合わせることにしました。 その割に浮いた人物像になってしまった………やっぱり雰囲気壊してる、ごめんなさい。 そりでは支離滅レス失礼しまーす。 |
武臨氏 |
「ははは、相変わらず神出鬼没ですね」 少し離れたところで黒火会を待っていた武臨が一同の卓に近寄ってきた。 「ご紹介しましょう、彼こそ黒鬼会研究では右に出る者もいないと言われる黒火会氏です」 「よしてくれよ、俺がそういう堅苦しいのを嫌いなのは知ってるだろう?」 黒火会は右手で顔をつるりと撫でながら羞むような仕草を見せる。 その仕草は、黒火会という人物が無頼ぶってはいるが根は善人である証左に見えた。 次々に握手を求められ輪の中に迎え入れられた黒火会は質問責めにあっている。 「さて皆さん、私は今から別の友人と蒸気バイクでちょっとした旅行に出かけねばなりません。折角来ていただいた大神中尉らともお話しできないのは残念なのですが、ここらでおいとまさせていただきます」 そう言うと武臨は革の上衣を羽織って外へと出て行く。 一同はその後ろ姿に挨拶の声をかけると卓上の会話に戻っていった。 #ってことで実は明日から一泊でツーリングに行く予定ですので私はもう寝させていただきます。 #それでは。 |
ひでじい氏 |
一同は席を立ち次々に黒火会に握手を求める。暖かいランプの光と珈琲の香の中でそれは優雅に見えた。これから始まる話の前奏曲としては、しかしそれはあまりにも美しすぎた。 ひでじいです。これで夢織さんのレスのストーリーにつながっていくわけですね。どうもありがとうございました。 |
黒火会氏 |
「しかしなぜあなたは命の危険を冒してまで黒鬼会を追い続けるんだ」 黒火会はしばらく質問に答えず、ボリボリとひまわりの種をかじりつづけた。 やがておもむろに口を開く。 「黒鬼会は私を魅了してやまない。許されざる狂気の組織であるにも関わらずね。 君達も一度見てみるがいい。黒鬼会を、間近でね」 そういって黒火会はその場にいた一人一人に一枚ずつ紙片を投げ渡した。 「これは………?」 その紙片にはこう印刷されていた。 『決勝戦・VIP席』 えーーと、たしかこの太正浪漫堂はサクラ3に向けての世界でしたから 黒鬼会が存在しちゃまずいんでしたっけ。 まあ私がよくやる悪ふざけの一環だと思って下さい。 それでは簡単ですが支離滅レス失礼。 |
MOS氏 |
いつかこの輪の中に入る事を夢見て・・・ こんばんわ、ひでじいさん。浪漫堂の雰囲気の良さに惹かれてこんなものを書いてしまいました。 「ほお、君も帝劇を題材にした文章を書いているのか。」 紀州人は、向かいに座った青年に話しかけた。 「ええ、と言っても寸劇のようなものですが。」 ダージリンティーを片手に答えたこの青年はここ最近浪漫堂に出入りするようになり、常連間ではMOSという雅号で通っている。 「・・・いずれは、帝劇をモチーフにした一大活劇を書きたいと思っています。もっとも、まだまだ精進が足りませんが。」 話はいつしか、今話題の『歌劇団=華撃団』説に移っていった。 「そうですね・・・、軍の事情とか、そういうことはよく分かりませんが・・・・、ひとつ、言える事があります。」 「何だい?」 「『歌劇団』の少女達も、『華撃団』の戦士たちも、この帝都を、ひいてはこの世界を、誰よりも愛している、と言う事です。」 にこりとして、MOSという青年は言い放った。 うーん、我ながらえらくキザな文章を書いたものだ(赤面)。さて、黒火会氏を交えての会談、どのような話になりますか、楽しみにしています。 |
ひでじい氏 |
珈琲の薫りが鼻をくすぐる。自分の好きな紅茶は少し分が悪い。 サスペンダーを着けたMOSはそう思いながらも愛飲の茶を手放さなかった。浪漫堂の若手文芸家の中でもさらに若手に属する彼に取っては帝劇の脚本の仕事はやりがいのある仕事だった。 「なるほど、君もなかなかだな。」紀州人の横に座っていた南國が笑いながら言葉を返した。 「しかし、この浪漫堂に来るのが日課になってしまいましたね。」ショートストーリーで最近帝都でも頭角を現してきたエズミがMOSに言う。彼が今飲んでいるのはカフェマルニッシモだ。一種のカクテルコーヒーである。 「確かにここはいいですよね。煉瓦や彫刻、木のいい店の造り、活気があってかつ騒がしすぎない店内。そして月に一度はあの帝劇メンバーの寸劇や帝都交響楽団メンバーのアンサンブルが見られますし。」MOSが言うと、 「それに来れば悪友が必ずいる。」紀州人が混ぜ返す。 和やかな談笑は突然の訪問客である一人の女性によってうち切られた。 「あ、あのう、ここで帝劇の話ができるんですよね。」 「そ、そうですが、あなたは?」エズミがとっさに腰を上げる。 「わ、私、雅号はBATです。よろしくお願いします。」 全員が一斉に立ち上がり、それぞれが挨拶を交わす。浪漫堂にまた新たな仲間が加わったのだ。 「こういう人ならイカルスと英爺は喜ぶんだが。」 「そう言えば彼ら、今日は遅いなあ。」 「大方、帝劇の楽屋にプレゼントでも置きにいっているのだろう。」 「ははは。」 穏やかな談笑が戻ってきた。新人を交えてまた一段と活気を増す浪漫堂。しかし今日の浪漫堂はいつもと違う。彼が帰ってきているのだ。大神一郎。 こんなもんでいかがでしょう?これであなたも浪漫堂の常連ですよ。 |
イカルス星人氏 |
タイトルだけ見ると。 こんばんは、ひでじいさん。 タイトルだけ見ると、池袋の浪漫堂の紹介カキコみたいですね。 あの狭さを知っているとこのお話の浪漫堂はまさに夢のような空間。 おお、次回は私が何か情報を持って出てくるのか。恐縮であります。 高校のころは地質の研究をして化石を掘ってたし、歴史も好きだし。 ここのBBSでもよく過去を探索しているし(爆)。 考古学者というのはいい役所かもしれない・・・。 それにしても斬新な試みの上登場人物もだんだん増えるみたいで先が楽しみです。 大変かと思いますが楽しみにしております。 それでは、また。 |
ひでじい氏 |
「おい、英爺。どうだ。分からないのか。」帝大地学研究室でイカルスが言った。 「そう言われてもこの状況ではな。」英爺は首を傾げていた。「現地調査も自分は直接はしていないしな。」 「奴さんは陰陽師という怪しげな家系の後継者だ。古代から江戸までの遺跡や文献を丹念に調べ、その成果を組み合わせて今回の大乱を招いたようだ。呪術というのはほとんどが迷信に過ぎん。ただ一部に霊子力学に適合する方法もあったようだ。」 イカルスは自分が政府調査団だったときの調査結果のことを話していた。 「そして虫酸の走る話だが、誘拐してきた男女百数十名を殺している。殺害の方法は様々だ。ただ、その人たちを使って何か実験をしていたようだ。英爺、頼む!このままじゃあその人たちが浮かばれないんだよ。」 「今、調べているよ。…待て、そうか、そういうことか!」英爺の瞳が見開かれる。 「帝国政府調査団の研究班はなぜ気づかないんだ?イカルス、遺跡で何の実験を行い、何をしていたかということだが。地質的に共通しているのはウランが取れるところということだ。」 「ウランってのは何だ。」 「僕もよくは分からないが、何でも物質を崩壊させるとすごいエネルギーが生まれるらしい。ウランはその原料になるんだ。理論的にはまだよく分かっていない。しかし京極か木喰、あるいは陸軍研究機関がこれを知って実験していたとしたら。」 「なるほど!謎の一つは解けた。早速調査団代表に報告しよう。大神中尉にも言っておく必要があるな。」 言うと、英爺は疲れたのかソファーに座り込んで番茶をすすっている。イカルスは苦笑しながら言った。 「疲れたのか。」 「ああ。早く浪漫堂で珈琲を飲もう。」 「英爺、お前の夢は何だ。一つは恋愛を描き続ける詩人だが。」イカルスが茶化して言う。 「そうだな、それで全てでもいいんだが、後はこれだ。」英爺が世界地図を広げた。 「見ろ。南アフリカと南米を。」 「どうかしたのか。」 「海岸線が似てないか。」英爺に言われて見ていたイカルスははっとした。 「あ!確かにくっつきそうだ。」 「僕はくっついていたんだと思う。世界各地を冒険してこの事実を確かめたい、と言うのは壮大に過ぎるかな。」 当時大陸が移動するなどということは異端中の異端と言われていた。この英爺の希望がかなえられるのは、はるか後のドイツのウェゲナーの大陸移動説、そして1960年代のプレートテクトニクスを待たねばならなかった。 「英爺らしいな。」とイカルスが言った瞬間、 ドゴーン、と爆発音がした。 「な、何だ。」崩れる研究室の間から二人が見たものは、 「抹殺!抹殺!」と繰り返す脇侍であった。 「う、うわあ!」恐慌状態の二人の前に立ちはだかったのは一人の男であった。 「間一髪間に合ったな。大神い〜、大学はいいなあ。夕飯おごるだけでは安すぎだぞ。さあ、みなさん、逃げますよ。おっと失礼。自分は大帝國劇場施設課の加山雄一です。太正浪漫堂への御案内をさせていただきます。さあ、こっちへ。」 加山の誘導で逃げる二人。それを追う脇侍たちを何発もの弾丸が貫き、脇侍は倒れた。 「隊長、指示のとおり援護任務は完了しました。」 光武コクピットから姿を現したのはマリア=タチバナである。 こんなもんでいかがでしょう。イカルスさん? |
イカルス星人氏 |
土日と仕事でいない間にレス込みで話が進んでる・・・。 こんばんは、ひでじいさん。労作、お見事です。これで敵まで出てどうなることやら。 しかし出演した上マリアさんに助けられ加山君がお迎えとは感激でありますなあ。 それでは、時間軸が狂わない程度にレスをつけさせていただきましょうか。 地質学者と考古学者。 一般社会から見ればある意味似たような役廻りである。 だが、実際はどうだろうか。私は考えた。 この男は一方で男女の恋愛の機微を軽妙洒脱に謳った詩を発表する詩人である。 そして、本業の地質学の方でも、こうした浪漫を持って研究を続けている。 自分の学説自体が浪漫に満ちたものであり、日々の研究はその裏付けに過ぎない。 私はこの英爺という友人を常日頃頼もしくも思い、また羨ましくも思っていた。 このような男こそあの「太正浪漫堂」の客として相応しいのだろうなと。 わが身に翻って、私の研究とは一体何なのだろう。 現実を確定するために、過去を解き明かす。 過去に起きた事実と、今ある現実の隙間をはめ絵のように埋めていく。 そこに、果たして浪漫があるのだろうか。 今までの私は、自分の仕事にそうした懐疑的な思いを抱いていた。 そして、文芸雑誌に雑文を投稿することで気を紛らわしてきた。 だが今、自分の今までの考えは間違いであったことに気がついた。 過去の謎を解き明かすことは過去と現在をつなぎ合わせるだけではない。 そこから未来を築き上げる礎となるものなのだと。 京極の行為の謎の部分を考古学の立場から解き明かす。 そして、今また新たに帝都に迫りつつある邪悪なものについても。 それが、帝都の希望に満ちた未来を切り開く一助になれば、自分の仕事も浪漫に満ちたものとな るであろう。 そして、この「太正浪漫堂」に集う仲間達となら、それはきっと可能だろう。 私はそう思わずにはいられなかった。 いつもの私なら根拠のない推論や憶測など断じて除外するのだが。 こういうふうに考えてしまうこと自体がそもそも「浪漫」なのかも知れぬ。 そう思いながら、私は浪漫堂の中へと入っていった。 |
真神樹氏 |
「時に真実よりも大切な嘘があるものですよ」 「んっ?誰かと思えば真神君じゃないか」 「シュペーアさん、お久しぶりですね」 「君も来てたのか…」 「ええ、私の部署(ところ)は閑職なので……自由になる時間も多いのですよ」 「…それは皮肉かね?」 「おっと、失礼。そう聞こえたのなら謝ります。私は事実を口にしただけのつもりでしたが……」 「それよりも、今のは一体どういう意味です?」 「ああ、これは夢織先生、それにミュラー先生もご挨拶が遅れましたな。 それに……そちらのご婦人は失礼ながら真宮寺さくらさんではいらっしゃいませんか? お目にかかれて光栄です。私は真神 樹という名のしがない物書きです。私は貴女の大ファンなんですよ。 それから貴方は帝国海軍、大神一郎中尉殿ですね?将来の元帥候補と早くも呼び声の高い」 「いえ、私は……」 「おっと、私としたことが。どうも少し酔っているようです。これは口にしてはならないことでしたね。失礼しました」 「…そんなことより真神君、今のは一体どういう意味かね?」 「おや、頭脳明晰を以って鳴られるミュラー先生らしからぬお言葉ですね。その通りの意味ですよ。 世の中には、明らかにされぬ方がいい真実というものがあるものです。想像の中だけに留めておくべき真実というものがね。 まあ、真実を明らかにすることを天職とされている両先生には承服しがたい台詞かもしれませんが……」 「君だって歴史を研究する者の端くれだろう?」 「ええ、例え資料整理が仕事であっても、私も研究者の端くれだと自分では思っています。 しかし、戦史などというものに埋もれているとわかるのですよ。真実の中には、虚構(フィクション)というオブラートに包んでおくべきものもあるということが。特に、同時代の真実については。 ……おっと、どうも座を白けさせてしまったようですね。自分で思っているより、酔ってしまっているようです。これ以上失礼を重ねない内に退散することにしますよ。 それでは、失礼」 「……………」 「…真神さん、どうかしたんですか?いつものあの人らしくなかったですね」 「ああ、夢織先生。気を悪くしないでやっていただきたい。彼は今、太正十二年から十三年にかけて起こった例の騒乱の記録編纂に携わっているのでな……口に出せないことが多くて、ストレスが溜まっているのだろう」 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 厚かましくも、自分を登場させた一コマで乱入してしまいました。 こんにちは、真神 樹です。 今回は前回とは打って変わって、何だか謎めいた雰囲気ですね。 いかにもシリーズものといった雰囲気でゾクゾクします。 私の乱入戯言などはお気になさらず、続編執筆頑張って下さい。 |
ひでじい氏 |
浪漫堂の扉を閉めた真神 樹は星空を仰いだ。いつもの快活に仲間と談笑する真神ではない。 「知りすぎたのだ。俺は。ミュラー、夢織、お前たちなら分かるだろう。知るということのつらさが。」 そして真神が歩き出そうとしたとき、向こうから三人の男が息を切らせて走ってくる。 「おい、イカルスに英爺じゃないか。いったいどうしたんだ。…あ、あなたは。」 「おおっと、真神研究員、それ以上は秘密です。真神さん、東京帝国大学に魔操機兵が現れました。お願いします。」 「分かりました。すぐ行きます。」 加山の耳打ちを受けた真神はこともなかったように二人に話しかけた。 「すまん、お二人さん、野暮用だ。今日は勘弁してくれ。」と言うや帝都の闇に消えていった。 こんな感じでいかがでしょう。サクラワールドにすでに組み込まれているような設定になっちゃいましたが。 |
ミュラー大将氏 |
「さて、私はこれから酒屋へ寄らねばならん。」 暫くしてミュラーは、そう言うと一人で酒屋へと入っていった。 「オヤジ、モエ・シャンドンのシャンパンを1ダースと1本くれ。」 「何かお祝い事でも有るんですか?」 「まあな。」 店のオヤジに代金を払うと店の前に待たせていた男に近寄るとこう言った。 「お待たせした夢織さん。」 「何を買われたのですか?」 「こっちが皆が帰ってきたときのお祝い用だ。」 「では左手に持っている1本は何ですか?」 「これか?・・・我が家で飼っていた鳥が天に召されてね・・早く生まれ変わって来いよってな。」 「鳥ですか?」 「ああPさんって言う雀だ・・・、しけた話はここらで良いだろう・・とにかくお祝いだ。」 ミュラーはそう言うとシャンパンを地面に置き懐からなにやら取り出すと、それに話しかけた。 「艦隊を衛星軌道上へ、艦砲射撃に備えよ。直に皇帝陛下の直衛艦隊も来るはずだ。また後で狙点は連絡する・・以上だ。」 「さあ、祝宴の会場を用意しに行こう。」 そう言うとシャンパン1ダースと1本をもって何処かへ歩き出した。 ******************************************* こんばんは、ひでじいさん。 なんと、小官が雀のPさんの喪に服している間に、何やら面白そうな事を。 何処か会場見つけて下さいねシャンパン1ダースは重いので(爆) では、これにて失礼します。出張、この続き、頑張って頂きたい。 |
ひでじい氏 |
ミュラーはウエイターに尋ねた。 「奥の別館を使わせてもらいたいのだが。」 「人数はいかほど御用意しましょうか。」 「ふむ、10数名ほどだな。」 「かしこまりました。それではどうぞ。」 ウエイターが先頭に立って一同を案内した。ミュラー、ルドルフ、夢織の先導で黒火会、大神、さくらと続く。シュペーアが用心しながら扉を閉める。 太正浪漫堂別館は一昨年横の洋館を買い取り改装された建物である。肩の凝らないパーティーやレセプションによく使われ、使用料金も格安なことから好評を得ていた。狭いながら甲州種の葡萄棚もあり、秋には収穫され葡萄酒がつくられるとのことである。帝國歌劇團や帝都交響楽団の公演打ち上げにも利用されるほか、横の浪漫堂本館と合わせファン感謝パーティの形態になることもある。 内装は元の所有者の手入れもよく、行き届いた調度が雰囲気を醸し出している。地下はワインクーラーや食材の保管庫、冷凍冷蔵庫となっているが、1階はレセプション会場で豪華な内装、一方2・3階は質素で暖かい家族的な造りとなっており、それぞれ人気が高い。 一同が着席して間もなく、イカルス、英爺、加山の3人が到着した。 「どうした。イカルスに英爺。遅いじゃないか。」夢織が言う。 「ああ、情報解析には成功した。ここに資料と地図もある。今日はミュラーさんや夢織さん、黒火会氏の調査結果とつき合わせようと思ってな。ただ、今脇侍に襲われた。」 「何!」 「脇侍だと。」 「葵叉丹と京極慶吾以外にまだ居るというのか?」 英爺も言う。 「危ないところを通りかかった帝劇の加山さんに助けられたというところだ。」 「それでは私はこの辺で失礼します。」と加山は丁寧に辞去の挨拶をすると大神の横へ近づきささやいた。 「じゃあな。大神い〜。さくらさんと寄り道してあまり遅くなるなよ。」 「な!」 「冗談だ。」 一同が和やかな笑いに包まれる。その中で照れる二人。ミュラーはシャンパンを回すと、 「お二人の門出を祝って、とはいかないが、一同の無事を祝って乾杯。」 「乾杯。」 一座の者はシャンパンを飲む。しかし、その視線は黒火会に注がれている。ルドルフが一同を代表して尋ねた。 「では黒鬼会の活動についてお伺いしたい。」 「黒鬼会は京極慶吾の周到な準備の下に発足した組織だ。広い意味では陸軍、警察の一部、陰陽師などかなりの部分に根を張っており、現在も一部は残っているものと思われる。…」 黒火会は形のくずれたネクタイを思い切って緩めると、一気呵成に話し出した。聞き入る一同。推測と現実がついに重なり始めた。 その頃退出した加山は別館前で月組の各人に矢継ぎ早に指示を出した。 「帝都の哨戒活動を強化せよ。風組に応援要請を。ここの警戒は俺以下5名で行う。誰も近づけるな。それから藤枝副司令に会談が始まったことを伝えろ。」 指示を終えると夜空の月を見て嘆息した。 「大神、やっとさくらさんに会えたというのにお前も難儀な。ただ、これは任務だからな。」 「加山隊長、準備完了しました。」部下の声に我に返った加山は次の指示を出した。 「会談内容を蒸気通信機で銀座の米田司令のところへ逐一送り込め!」 閣下、こんな感じで別館をセットしましたがいかがでしょうか?閣下と夢織氏、ルドルフ氏にはご迷惑をお掛けしますがよろしくお取りはからいください。(笑) |
エズミ氏 |
やったーっ(^ ^)/ やったーっ、お仲間に入れたーーっ!嬉しいでーす。(^−^) こんばんは、ひでじいさん。私も浪漫堂の一員に加えていただき、大歓喜です。 実は、前回から読んでまして、すっごくしゃれてて素敵な雰囲気だなー、と思っていました。 私も入りたいなー、でもでも、レスつけたら入れろって言ってるみたいやしなー(笑)、などと思っていたんですが、はいれて嬉しいです。 なんかひでじいさんの本文とみなさんのレス文が錯綜して、イメージを触発しあってて素敵です。 ありがとうございました。(^ ^) しかし、一つだけ・・。実は私女だったりします。(核爆)うーん、オヤジ発言ばかりを繰り返してるせいでしょうね。(笑) >ショートストーリーで頭角をあらわしている・・う、嬉しい。 カフェマルニッシモだなんて我ながらしゃれたものを飲みやがって、にくいよっ、このど根性ガエルっ!(核爆) 格調高いひでじいさんのSSに馬鹿レス・・。すんません。浮かれまして・・。(笑) 私はさしずめ帝劇の大ファン。その人間関係にワイドショー的興味を抱くエセもの書きと言った所でしょうか。 ぜひぜひ、続きをお願いします。ではでは。 |
ひでじい氏 |
「しかし、BATさんは紅一点だなあ。どちらかというと男だらけになってしまう私たちに取っては気分を和やかにしてくれるが。」MOSは嬉しそうに言った。 「おいおい、俺たちじゃあだめなのかい。」紀州人はお手上げといった表情で笑う。一同には軽いアルコールを含んだ珈琲と軽食が運ばれる。 そのとき、エズミが恐る恐る手を挙げた。 「ち、ちょっと待ってください。あのう、私もそうなんですけど。」 「ええっ?!」一同は大声で驚きの声を上げた。周辺のざわめきに慌てて小声に戻す。 「し、しかしその服装はどうしたんだ?」南國がかろうじて言う。確かにエズミは袴姿やカッターシャツにスラックスなど、男物の服装を着てきていた。 「あ、これは夜間外出するときなんです。まだまだ女性が夜間外に出るのは厳しいですし、用心のこともあったんで…。」 「じゃあ、昼はどうしてたんだ?」MOSも驚きに包まれながら質問した。 「普通の女の子の服装で来てました。」 「どうりでエズミは夜しか来ないな、って思ったよ。」智士が唸りの声を上げる。 「わ、私も男装しなければならないんですか。」BATが言う。 「いや、今はこれだけ夜に公演があるんだ。女性の服装で来てもいいよ。エズミも気にせず来たらどうだ。」南國が和やかにみんなの発言を引き取った。 「これからはそうするようにします。でも、男の人の衣装って楽ですよね。」 一同は爆笑した。職場、学校、性別…。それぞれに違う立場の者が一つになる浪漫堂の良さを再確認した日である。 「さあ、今日の公演についての話からはじめましょうか。」智士の音頭で話題は帝劇のことに移っていった。BATやエズミも賑やかに意見を述べる。今宵の浪漫堂の楽しい一時が始まったようである。 すみません。女性の方だったとは(汗)申し訳ありませんでした。上のような話で辻褄を合わせてみました。エズミさん。ありがとうございます。そして太正浪漫堂へようこそ |
エズミ氏 |
書いちゃいました。(長) 「それにしてもなんですよね」 エズミはため息をついた。 「みんな私のことを男と思ってたなんて。いくら男装してたとはいえ、やっぱり色気がないんでしょうか・・」 みんなは困ったように顔を見合わせる。壁際でエスプレッソの香りを楽しんでいた英爺は苦笑を漏らした。 「仕方がないさ。その格好なんだから。大体エズミは書くものも性別不詳と来ている。おまけに女だてらに帝劇の大ファンなんだからな」 「女だって関係ありませんよ。素晴らしいものは素晴らしいんですから。彼女たちの魅力は舞台だけではありません。舞台を離れてなお美しい一人一人の個性にある。私はそれをできうる限り忠実に写し取っていきたいんです」 新米のもの書きの癖に、生意気なことを言う。 口を尖らせるエズミに、紀州人はにやりと笑う。 「確かに男も女も関係ない、だったらそう気にすることはないんじゃないのか?」 「う・・」 やぶへびに気づいてエズミは顔をしかめる。にやにや笑う面々。 智士がさらに茶々を入れる。 「BATさんのようにもっとエズミも女の子らしいものを書くんだな」 「そ、そんな、女の子らしいだなんて・・」 初々しく顔を赤くするBAT。エズミは両手を広げる。 「わかりましたよ。ま、私はさしずめ男装の麗人、マリア・タチバナと言った所でしょうか」 あごを上げるエズミの頭を、笑って南国はこづく。 「そりゃあ言い過ぎだ。お前、マルニッシモで酔ったのか?」 「連載のスケジュールがきつくって疲れがたまってるんじゃないのか?」 と、MOS。 みんなの攻撃を受けながらも、エズミは気取ってカフェマルニッシモを一口含む。 「めっそうもない。それを言うなら南国さんです。もっとも南国さんにとっては100話なんかおそるるに足らず、と言った所でしょうが」 片目をつぶるエズミ。 「はは、違いない」 笑い合う面々。珈琲の香りと共に漂う皆のざわめきは、ゆっくりと浪漫堂の赤レンガへと吸い込まれていった。 すいません。書いてしまいました。(^^;; しかも勝手にみなさんいっぱい出しちゃってます。平にご容赦。m(_ _)m なんか浪漫堂風にあこがれてしまって。しかし私の普段の文章とえらく違うなあ。(笑)私のキャラも違う。(爆)絶対にこんなんじゃない。(激爆) 全然いいです。ひでじいさん。出してもらったことの方が嬉しいです。 別に宣言もしてなかったですしね。(^ ^) マリアさんのくだりは冗談ですからねー。すいませんでしたあ。(^^;;; ではでは。 |
二階堂氏 |
さすがですね、ひでじいさん。 一週間ばかり御無沙汰している間に、こぉ〜んなにSSが増えていてビックリこきまろ(爆)の二階堂です。 いやはやお久しぶりです。 初めは、夢織さんの書かれたとおり??でしたが、なるほど大変面白いです(^^) 浪漫堂か・・・大正(いや太正?)のセピアな雰囲気ばっちりっす。 なんと言ったら良いのか、”こおひぃ”が良く似合うSSですね。 ひでじいさんの書くSSが更に読みたくなった(書いて下さい♪)二階堂でした。 |
ひでじい氏 |
太正浪漫堂の凝った彫刻の扉を開けて入ってきたのは見覚えのある顔であった。 「南國さん、もういらっしゃてるんですか。」 「二階堂、二階堂じゃないか。」南國が懐かしげな声をあげる。 「いつアメリカから帰ってきたんだ。」紀州人と智士、エズミも駆け寄る。 「さっきですよ。幸いなことに向こうの商社から飛行船のチケットをプレゼントしてもらいましてね。船旅に比べるとすごい速さで帰国できましたよ。」リボンタイをなびかせ二階堂が答える。 「向こうに行っている間も帝劇が見たくて。蒸気機関の仕事が手につかなかったですよ。」 「おいおい、それじゃあエンジニア失格だ。」紀州人が笑う。 「それよりいつもの常連は?夢織さんやミュラーさん、シュペーアさん、それに「陛下」は?」 南國と紀州人は笑顔で答えた。 「ああ、ここの客のほとんどは気づいていないが、今すごい人と別館で話をしている。我らが大神一郎中尉だ。」 「ああ、帝劇の大神さんか、本当にいい人だったよね。人あたりもいいし。」 「二階堂さん、知らないんですか。」エズミが不審な声で言った。 「今、帝國歌劇團は帝國華撃團だって噂が流れてるんですよ。で、大神さんは海軍出身だし、その隊長さんじゃないかって話です。」 「ええっ!!それは面白いなあ。海外で全くその手の話を聞いていなかったんだ。ぜひ聞かせてもらいたいですね。」 二階堂は座り心地のいい椅子にゆったり座るとウインナーコーヒーを注文した。 「あれ、こちらの方は?」二階堂の質問に、 「二階堂さんと入れ違いでこの浪漫堂にお邪魔してるMOSという者です。今帝劇やその他の劇場の脚本を書かせてもらっています。」と若い男が挨拶した。 「そちらの女性は?」 「わ、私はきょう初めてお邪魔させていただきましたBATといいます。よろしくお願いします。」若い女の子があわてて挨拶する。 「浪漫堂も一段と賑やかになってきたなあ。僕は二階堂です。エンジニアなんで一つよろしくお願いします。」 三人はそれぞれに握手を交わした。 「まあ、珈琲でも一杯やりますか。南國さんの最新の脚本も読めますしね。」 「おいおい、仕事の話は抜きにしよう。帝劇の女優で誰がすばらしいかの方が議論になるぞ。」 「それもそうですね。」 一座の者は再び談笑に入った。しかしその中で南國だけが気づいたことがある。 「あれ、あれはイカルスと英爺、どうしたんだ、真剣な表情で別館に入っていく。何があったんだ。」 二階堂さん、ようこそ太正浪漫堂へ。ありがとうございます。花組の人たちと会えるような演出で考えていたんですが、どんどん大きくなっちゃっています。二階堂さんにはこんな感じで颯爽と登場していただきましたがいかがでしょうか。御返事お待ちしています。 |
二階堂氏 |
「・・・それで君は一体どうしたんだい?」 紀州人は身を乗り出すようにして、二階堂のアメリカ話に夢中に聞き入っていた。 「こう言ってやりましたよ。「残念ながら、貴方がたは本当に花のある女性をご存知無いらしいですね。どうです?一度日本にいらっしゃっては。私が帝都をご案内いたしますよ。」ってね。」 二階堂は、茶目っ気たっぷりに片目を瞑ると手に持っていたままの珈琲を一口すすった。 「違いない!」 「はははっ」 「ふふっ」 ポンっと膝を打つ紀州人に、誘われるように一同も笑う。 しかし、その中で南国は一人、真剣な面持ちで別館の方を向いている。 「どうしたんだい、南国?僕の話はお気に召さなかったかい?」 「え?・・・イヤあの・・・」 既にその場は、二階堂の話から再び、今をときめく帝都の花・帝劇の女優の話題で盛り上がりを見せている。 その様子を眺めながら、二人はやや外れたテーブルについた。 「ホントに久しぶりだな・・・脚本読んだよ、なかなか面白いじゃないか。」 「それは光栄だね・・・しかし、なんだかお前にそんなこと言われると照れるな・・」 「そう?僕は良いものは認めるさ・・・しかしさっきはどうしたんだい?何だか、随分と真面目な顔をしていたじゃないか?」 「え、そうか?」 「そんなに真面目な顔は珍しい。」 「その言い草は酷い・・・ったく、お前は変らないな・・・ふう、まあちょっと遅くなったけど、こいつで乾杯といくか・・・五体満足無事なお前に。」 「ははっ君も相変わらずだね。」 二人は笑いながらワインのグラスよろしく、珈琲のカップを軽く打ち合った。 すると、打って変わって真面目に南国が話し始めた。 「・・・さっき、英爺とイカルスが別館の方に行ったんだが・・・」 「どうかしたのかい?」 「いつもと様子が違ったんだ。」 「・・・」 「何かあると思う。」 「ふむ・・・もしかして・・・」 「お前、何か知ってるのか?」 「いや、向こうでちょっと耳にしたんだが・・・」 -------------------------------------------------------------------------------------- どもども、いや〜嬉しいですね♪ なんだかモボっぽくて、格好良いっす。 お礼に嫌な所で終る(爆)お返事を書きましたです♪ どうなるかな〜〜わくわく♪ ではでは。 二階堂でした。 |
花丸氏 |
突然の書き込みと、皆様方が育て上げたストーリーへの不作法な割り込みをどうかお許し下さい。 自分は、花丸と言う皆さんの様に創作をする事に憧れを感じている者です。 皆さんの作品を拝見させて頂いている内に本SSを見て、どうにも我慢できずに書いてしまいました。 皆さんの作り上げた太正浪漫堂の、なんと魅力的な事でしょう。 この世界の末席に、聞き手としてだけで十分ですから居させて欲しい、そんな思いで以下を書きました。 皆さんのお邪魔にはなりたくありません、そう感じる方が一人でもいらっしゃったら、すぐに邪魔にならないようにします。 ただ、もし「ま、いいか」ぐらいに思っていただけるのなら、こんな話を横に添えさせて下さい。 下記の文章の中で、「・・・彼らはきっと快く自分を迎えてくれるで有ろう・・・」と言う一文とその前後の文章が有りますが、これはストーリーの中の皆さんの人物像を想像した上で悩んだうえ付け加えた者で、他意はありません。また、イメージの決め付けと取られてしまうかもしれないとも思ったのですが、浪漫堂の雰囲気を考えたうえで、どうしても書かずには居られない一文でした。 どうかご容赦下さい。 また、極力注意したつもりですが、その場に居合わせているにも関わらず名の出ない方がいらっしゃいましたらそれは当方の注意不足による者です。 速やかに修正いたしますので、どうかご一報下さい。 では、稚拙な文ではありますが、目を通していただけたら幸いです。 追伸・2Fへ。 勝手に名前を使った上、文中呼び捨てでごめんね。 でも、2Fと知り合っていたおかげでこの文を書こう!と言う気になれました。深く感謝。 「おいおい、勘弁してくれ・・・」 柱の陰に隠れ様子を伺う花丸は、誰に言うともなくそう呟いた。 その夜もいつもの様に浪漫堂へと足を運び、文壇の名士達が繰り広げる議論と行き交う人々を肴にカウンターの片隅でブランデーグラスを傾けて居た。 そこに颯爽と現れた、かねてからの知人である二階堂を見かけ久しぶりの再会を祝おうと後を追った所、現在の文学界の賞賛と注目を引き受けるそうそうたる面々と和やかに談笑をする場に、いささか不格好ながら居合わせる事と相成ったのである。 現在二階堂の周りに居合わせているのは、飛ぶ鳥を落とすかの如き勢いの若手脚本家南國歌劇団氏、最近帝劇の脚本、演出を手がけ新鋭の名を欲しいままにするMOS氏、現在の小説界にその人有りと謳われるに紀州人氏、そして昨今小説界に新風を巻き起こしつつある智士氏、エズミ氏、BAT嬢。 更には二階堂が訪れる寸刻前までは、その場には夢織時代氏、ミューラー氏、シュベーア氏、そしてルドルフ氏を筆頭とする、浪漫堂を代表する面々が談笑していたのだった。 いずれを取っても花丸にとっては憧れの人物、各々の作品を万障厭わず収集し、貪るように読みあさり、彼らの発表の場である文学界の大改革によりいくつかの過去の作品が失われた時などは「この世の文学は死んだ」とまで周りの者に言い切ったほど傾倒している面々である。 先ほどから、その面々の輪の中に入ってアメリカでの体験談を語る知人をきっかけに場に加わろうとするアイデアが3回ほど花丸の頭を通り過ぎていた。 花丸は、今目の前に居合わせている彼らに対するのに優るとも劣らぬ程、自らの通り名を花丸と周囲の者に称するほどに帝國歌劇団・花組にも傾倒していた。 彼らと、帝劇の話題を共有し時を過ごせたなら・・・そんな想いが、彼の背を強く押す。 日頃、恐れる者などは無いと豪語していた花丸であったし、自らの社交術によってその輪に加わる自信は有った。 そして、それより何よりその様な姑息な手段を用いずとも、彼らはきっと快く自分を迎えてくれるで有ろう事もわかっていた。 だがしかし、ただ与えられた物を読み、想いを馳せるのみの自分があの輪に加わったところでどの様に口が開くのか。 そう思うだけで、足が竦んでしまうのであった。 「ふぅ・・・他を羨んでも仕方がないか。二階堂の人柄と誠実さはあの場に居るに足る相応しさで、自分はまだまだ修行が足りぬと言う事だ。いい女と同じ、引き際が肝心だな」 未練か、しばし迷った後あたかも自分を説得するかの如く呟くと、踵を返しカウンターへと戻ると再びグラスをブランデーで満たし、時間よ止まれとばかりに続く談笑の輪に向けて掲げる。 「ただ、せめて今宵一晩この末席で構わぬ、貴君らの話で酔わして欲しい・・・太正浪漫に・・・乾杯」 ぐい、とグラスを傾けると、花丸は目を閉じ彼らの織りなす物語に静かに耳を傾けるのだった・・・ |
桜嵐氏 |
浪漫堂の扉が音を立てて開く。 入ってきたのは・・・桜嵐だ。息づかいが荒い。おそらく走ってここまでやって来たのだろう。 「間に合った・・・。」 桜嵐は仕事の都合上、土日は浪漫堂を訪れることができない。だがやはりサロンが最も賑わうの は休日だと相場が決まっている。実は間に合っているわけではないのだが、とりあえず知った顔 が多く見受けられたため、桜嵐はそう呟いていた。 「あれは・・・大神中尉に真宮寺さくらさん! それに・・・黒火会さんまでいらっしゃるのか!? ああ、今日はなんてついてる日なんだ!」 桜嵐は黒火会のウワサは良く聞いていた。だが他の常連とは異なり、毎日サロンに足を運べる わけではないので、つい話す機会を逸していたのである。 早速握手を求め、軽い挨拶を交わすと、ぞの場にいる全員に向かって、何やら叫びだした。 「出来たんだ! 真宮寺一馬大佐に関する新たな報告書が!! みんな、とりあえず目を・・・あ。」 そこまで言ってしまっておいて、初めて桜嵐は後悔の念を抱いた。 さくらさんがいるではないか・・・己の軽率さを呪いたくなってくる。 「さくらさん、その、これは・・・。」 「いいんですよ。あたしにもお父様の話・・・聞かせて下さい。」 先の戦いの影響からか、さくらは以前にも増して穏やかに・・・父親に似てきている。 自分の追い続けてきた真宮寺大佐の姿が、一瞬さくらとだぶって桜嵐には感じられた。 コツン 軽く桜嵐の頭をこずいたのは夢織だ。 仕方ない奴だ・・・といった表情だが、やはり眼差しは暖かい。 やがてサロンに集う仲間の多くが、桜嵐の周りに集まってきてくれた。 「それでは軽い講釈などを・・・。」 左手の紙束を時々覗き込みながら、たどたどしい説明は一刻ほど続いた。 桜嵐の心に、顔に、目に、皆への感謝の情が表れていたのは言うまでもない。 ************************************************************************** こんな感じでよろしいのでしょうか? ・・・て、それ以上に遅刻しすぎですね。(^^; できれば土日以外にアップしてほしい・・・。(ほぅ、わがままな要求だなオイ) この企画は、ほんとにこれからもどんどんと続けていって下さい! 追伸:夢織さん、黒火会さんの名前、使わせていただきました。(^^; |