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last update 09 November 1998

(初出・08.11.98

今日の診察室 #1


恐怖の体験は、なかなか記憶から消えない。

いろいろな動物が病院に来ます。もちろん、私もその一人ですので、正しくは、「行きます」ですね。月に何度も通っていると、たくさんの人、動物に出会います。その中でも、印象に残った彼女・彼たちの紹介を、今回はしたいと思います。

ある日出会った印象深い彼女の名前は、「もこ」ちゃん。

雑種で、生後2ヶ月ほど。茶色の短毛に覆われたスレンダーな身体の持ち主です。そして、彼女の最大の特徴は「振動」です。病院の外で、だっこされている時点から、傍目にも分かるほどにぶるぶる....と震えているのです。

(うーん、そんなに怖いものかなあ、病院って。。)

確かに、病院、もとを辿れば注射が嫌いな動物は少なくありません。これは、下手な先生に出会ってしまったが故に生じた、不幸の一つでしょう。注射のことを考えると、怖くて怖くてついつい、うんちのお漏らしをしてしまう。こんな犬をたくさん見たことがあります。信じられないかもしれないでしょう?しかし、この時は、普通の時ではなかったのです。

今からするともう数年前になりますが、うちの先生のお手伝いで、狂犬病注射のアシスタントをしたことがあります。ここで、大量のお漏らしを図らずも目撃してしまったのです。先生にしたら、「よくあること」らしいのですが、この光景に、ワタシは本当に驚いてしまいました(この大量脱糞事件については、また別の頁に書いていますので、そちらを読んで下さいね)

さて、話を「もこ」ちゃんに戻しましょう。

彼女の診察が終わったので、またもや、さわりたい欲求をこらえられないワタクシは、頼んで、だっこさせて貰いました(仔犬も好きなんですね、ワタシ)。

そうすると、まーだ震えている。しかも、しばらくして、「はぁ」とため息までつく

(うーむ、一体なぜ?!)

大抵、生後二ヶ月くらいの仔犬・仔猫はかなり無邪気なものなのです。自分の身に降りかかってくるかもしれない「恐怖」には無頓着。だからこそ、可愛いく見えるものです。

しかし、生後二ヶ月にしかならない彼女の仕草・ため息は、なんだかとっても大人びているのです。もちろん、大人ならば、すべての犬が震える、っていう必要十分条件にはありませんよ(笑)。この振動やため息だけを見ると、この犬は成犬ではないか、と思ってしまう、というものです。

そこで、話を聞きました。(今からよーく考えると、オイオイ、なにやってたの、ワタシって思いますけど(^_^;) 若いっていいことですねぇ。?)

そうすると、この振動の原因を少しでしょうが、把握することができました。彼女を連れてきていたご家族と彼女との出会いは、私たちの住む市が試験的に始めた里親募集だったのです。

この里親募集について、簡単な補足をしましょう。これは、保健所で引き取った仔犬を、一般家庭に引き取って貰う制度です。この犬の譲渡は、もちろん無料ですが、「責任をもって犬が天寿を全うするまで面倒をみる」ことが条件です。この審査は、保健所が行います。病気に罹患していない仔犬を選択するなど、譲渡について、保健所の方々は、私たちが考える以上に、非常に気を使っています。やはり、まだ始まったばかりの制度です。この制度の継続を願っていらっしゃる立場からは、「最初が肝心」なのです。

彼女は、大変幸運なケースなのでしょう。それでも、やはり、ご家族に出会うまでに、何か怖い目にあったのかもしれません。ということは、保健所の職員に何か意地悪をされたのか?、と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ワタシは、この可能性はおそらく「かなり低い」と思います(このことについては、また後日、別の頁に書くかもしれません。)。むしろ、通常ならば、母親といる時期に引き離された、何らかの事情の方にこそ、関係があるのではないでしょうか。

家の中ではかなりの「暴れん坊」。それなのに、外に一歩でると、ずーっと震えっぱなし。こういう状態なのだそうです。外でも、楽しく遊べるようになるといいのに、とは思います。しかし、このようになるには、数年かかるのでしょう。

(よいご家族に出会えて本当に良かったね、もこちゃん。でも、今度逢うときは、ため息つかないで〜。)といいながら、あれから遭ってないないなー。ゲンキかな?と、毎日病院に行く、ご老人の方々のようなことを考えてしまいました(^_^;)。


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