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last updated 29 September 2000

 

#27 その道ゆきどまり


忘れられない・タクシードライバー

関西、特に大阪のドライバーの運転は「荒っぽい」らしい。なかでも、マナーが悪いことで有名なのはタクシー(らしい)。突然停車するわ、いきなり発進するわ。とすこぶる評判が悪い業界ですが、大阪では、深夜は言うまでもなく、御堂筋線ではニ、三重に駐車してお客さん待ち。いたって評判悪いデス。

しかし、とある観光地でワタシはもっと凄いタクシーの運転手さんに出会っており、この方に比べれば、大阪のタクシーの運転手さんのマナーはまだマシだと言わざるを得ません。しかも、そのレベルは、50歩100歩というレベルではなく、やることのスケール、発想が違う(?)のです。

彼のことは、何度思い出したか分かりません(笑)。そのお陰で、もう6年近く前のことになりますが、今でもイロイロはっきりと憶えています。彼と出会ったのは、金沢城近くにある日本三大庭園の一つ、兼六園。オンナノコ4人がわらわらと歩いていたのを、彼は見逃さず、声をかけてきたのです。

「名所案内したるわ」
「一日ハイヤーはどや」
「有名なとこから穴場まで連れてったる」
「4人もおったら、一々タクシー拾うより、安いで!」

(なぜか記憶では関西弁。たぶん、不正確。)

一応、関西人の私たちは、その強引さには負けませんでした(ツモリ)。が、一人がど〜しても行きたい、と言っていた場所が入っていて、しかも、ちょっと不便な所にある、というので、このプランに乗ることになってしまいました。早速タクシーに乗り込むことになると、なぜかワタシが助手席。他の三人が後ろという配置。

で、出発!

最初はまあ、色々と建物を紹介してくれ、馴染みの土産物屋に案内してくれ、夜景のキレイな場所に(昼間だけど)連れていってくれて、忍者屋敷にも行ってくれて、有名な壁が続く場所にも行き、カメラマンになり、ポーズまで指定してくれて、‥と、ご親切。しかも、そのうちに、自分の奥さんの話(秋田美人なんだそうな。)と写真、愛人さんの話まで飛び出す始末。

なのに、その彼がだんだん不機嫌に。しかも、そのうちに時計を気にしだします。

「もう契約時間切れるから、兼六園戻るで」
「時間ない!!!」

ナンダナンダという私たちの驚きを乗せたまま、タクシーは最初の地点である兼六園へと急ぎます。しかし、どうも間に合わない、らしい。

「よし、裏道とおろ」

ここは観光地。ちょっと中にはいると、狭い石畳が続くような路地が続きます。そこに入っていくと、クルマの道は行き止まりのようです。先を見ると石畳みの下り階段しかありません。しかし、彼はこう言ったのです。

「いくでぇ〜」


左右の路肩にある、滑り台状の部分にタイヤを乗せて、タクシーは階段をものすごいスピードで下りていきました。そのとき、階段を上ろうとしていた、おばあさんは手押しクルマを急いで道路脇によせ、去りゆくタクシーを見送っていました・・・。彼は何度あの道を通っていることでしょうか。あまりにも早すぎる、巧すぎる運転技術。

オンナノコしか乗せない、と言い張り、乗車拒否をする、タクシー運転手。金沢の町で、そんなタクシーに出会ったら、間違いなく、この人でしょう。



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