「羅針盤」2000年9月号外
労働省の監督指導を受けた
日立の「Eワーク制」とそっくりの「MERIT勤務制度」

三菱電機では、これまでの「裁量企画手当方式」に代えて、主務職3号の人を対象に「MERIT勤務制度」(擬似的裁量労働制)があらたに導入されようとしています。

この制度は、日立ですでに、総合職6級以上の一万人を対象に「Eワーク制」という名で導入され、今回の労働省の「サービス残業」是正勧告、監督指導が行われたものです。

日立の「Eワーク制」は、月30時間の残業代相当の手当、ボーナス時に約10万円の手当をもらう代わりに、残業はやらされ放題=A建前として残業が多いときはこの制度を除外できるとなっています。しかし、「実際に除外しようとすると上司などから圧力がかかり、非常にむずかしくサービス残業≠ノなってしまう」といわれています。


健康不安、家族を心配させても
残業代さえもらえない
●裁量制(Eワーク制)開始の時、9割の人が、除外申請していたのに、部長が「除外者が多すぎる。全員Eワークにし ろ!」と強制。ほとんどの人が適用となってしまった。

●裁量対象者は、勤務時間を入力しても収入に関係ないため、ほとんどの人がデフォルト値(「定時出勤、定時退社」)で登録してしまう。
実際の残業時間は、規定の残業時間(30時間)を超えてしまう人が圧倒的。
(日立の例―「茨城民報」4月号外より)


労働省の指導では「適切な労働時間管理を行うための一つの方法としてフレックス制に代え企画業務型裁量労働制の導入によって労使委員会における自主的な労働時間の状況等の把握、管理体制の確立について取り組みを行うこと」としています。
■ 労働省の「今後の対処方針」

今回、監督指導を実施した22事業場のうち13事業場について労働基準法関係法令違反が認められたことから、労働時間管理上の問題は、単に今回の監督指導の対象とした事業場だけの問題にとどまらず、フレックスタイム制及び自己申告制を導入している広範囲の事業場において同様の問題を抱えていることが懸念される。

 こうしたフレックスタイム制と併せて労働時間を自己申告により把握する場合の労働時間管理に係わる問題を解消するため、電気機械器具製造業の業界団体である「社団法人日本電機工業会」に対し、以下の2点につき、会員に対する適切な指導を行うよう局長名による文書指導を行う。

  1. フレックスタイム制については、労働日ごとの始業終業時刻及び労働時間の長さを使用者が把握することが当然の前提になっており、こうした労働時間の把握を厳正に行い、それに基づき適正に賃金台帳の記入を行うこと。

     また、自己申告は安易に用いられるべきものではないが、これによる労働時間の把握を行う場合においては、その適正な把握を阻害する要因を除去し、労働時間の適正な把握を行うこと。

  2. 本社等において業務の遂行状況や成果等の評価を労働時間の長さによって行うことになじまない者については、適正な労働時間管理を行うための1つの方法としてフレックスタイム制に代え企画業務型裁量労働制の導入によって労使委員会における自主的な労働時間の状況等の把握、管理体制の確立について取組みを行うこと。

「労働省の監督指導結果」が報道されてから
朝日新聞に、家族から涙の訴え
●「…拝見いたしました。労働省によるフレックス勤務の是正勧告は、わが家の場合手遅れでした。私の夫も電機メーカー勤務で、連日終電まで残業し、休日出勤もあたり前の生活を送っていました。

そして先日亡くなりました。それまで元気に働いていたのにあっという間の出来事でした。後には十歳と三歳の子供が残されました。葬儀は「父の日」と重なり、子供たちは用意していたプレゼントを、ひつぎの中に納めました。楽しみにしていた夏休みの旅行も、家族で思い描いていた夢も希望もすべてなくなりました。

子供と過ごす時間を十分にとれないことを、いつも気にしていた優しい父親でした。子供たちはなぜ父親が急にいなくなったのか納得できないようです。

働きすぎて逝ったことは疑いもない事実ですが、それを法的に証明するのはとても大変です。働きすぎている皆様、自分が突然いなくなったら、残された者はどうなるか考えて見て下さい。働きすぎている自分の体に危機感を持って下さい。こんな思いをするのはわが家だけで十分です」(「朝日」七月二十日付)

●「フレックス勤務は実質的にはサービス残業をもたらしているとして、労働省が是正勧告したという記事を読み、国の対応の遅さを感じました。夫は三十代、電機メーカーの中堅社員です。

毎朝六時半に家を出て、帰宅は午前二時過ぎ。時には始発電車で出勤します。土、日休みもほとんど取れず、四歳と一歳の子供たちは、父親の顔を見ることはめったにありません。

四年ほど前から会社は大幅なリストラをすすめてきました。夫の仕事は増え、役職は上がりましたが、残業代は実態より少なくて、年収は減少しました。昨年からは三十時間を超える残業は申告しないようにと言われています。かって、夫は労働条件のひどさに疑問を覚え、実際の残業時間を申告しました。

もちろん、すぐに上司から取り消すよう指導を受けました。我が家では何度となく夫の転職の話しが出ます。その度に、景気が回復するまでの辛抱だからと夫は言います。でも、景気が回復しても、子供が成長するまで夫は生きていられるのでしょうか」(「朝日」七月四日付)


■労働省の指導に職場から大きな反応

●「電通の過労死問題は衝撃的だった。労働省の指導は歓迎であり、サービス残業は撲滅してほしい」
(Sさん・男性)

●「メーカー社員の苦しみがようやく理解されたようです。会社側からの改善の動きが出ることを期待しています。サービス残業は電機業界だけでなく、すべての業界の問題だと思います。
今回の労働省の動きが業界全体に拡大し、法律違反のない健全な会社経営に取り戻す努力が行われることを期待します」
(Dさん・男性)


■日本共産党が三月に国会に提出した「サービス残業根絶特別措置法」

@使用者に実際の労働時間の把握と記録を義務づけ、労働者がだれでも見てチェックできるようにさせる。

Aサービス残業が発覚した場合、使用者は割増金とは別に、制裁金を労働者に支払う義務を負う。



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