●「…拝見いたしました。労働省によるフレックス勤務の是正勧告は、わが家の場合手遅れでした。私の夫も電機メーカー勤務で、連日終電まで残業し、休日出勤もあたり前の生活を送っていました。
そして先日亡くなりました。それまで元気に働いていたのにあっという間の出来事でした。後には十歳と三歳の子供が残されました。葬儀は「父の日」と重なり、子供たちは用意していたプレゼントを、ひつぎの中に納めました。楽しみにしていた夏休みの旅行も、家族で思い描いていた夢も希望もすべてなくなりました。
子供と過ごす時間を十分にとれないことを、いつも気にしていた優しい父親でした。子供たちはなぜ父親が急にいなくなったのか納得できないようです。
働きすぎて逝ったことは疑いもない事実ですが、それを法的に証明するのはとても大変です。働きすぎている皆様、自分が突然いなくなったら、残された者はどうなるか考えて見て下さい。働きすぎている自分の体に危機感を持って下さい。こんな思いをするのはわが家だけで十分です」(「朝日」七月二十日付)
●「フレックス勤務は実質的にはサービス残業をもたらしているとして、労働省が是正勧告したという記事を読み、国の対応の遅さを感じました。夫は三十代、電機メーカーの中堅社員です。
毎朝六時半に家を出て、帰宅は午前二時過ぎ。時には始発電車で出勤します。土、日休みもほとんど取れず、四歳と一歳の子供たちは、父親の顔を見ることはめったにありません。
四年ほど前から会社は大幅なリストラをすすめてきました。夫の仕事は増え、役職は上がりましたが、残業代は実態より少なくて、年収は減少しました。昨年からは三十時間を超える残業は申告しないようにと言われています。かって、夫は労働条件のひどさに疑問を覚え、実際の残業時間を申告しました。
もちろん、すぐに上司から取り消すよう指導を受けました。我が家では何度となく夫の転職の話しが出ます。その度に、景気が回復するまでの辛抱だからと夫は言います。でも、景気が回復しても、子供が成長するまで夫は生きていられるのでしょうか」(「朝日」七月四日付)