監督指導を実施した事業場は22である。22事業場のうち、労働基準関係法令違反が認められ、是正勧告を行った事業場は13事業場(59.1%)であり、また、労働時間管理等について指導を行った事業場は14事業場(63.6%)である。
是正勧告及び指導の双方又は一方を行った事業場は16事業場(72.2%)である。
労働基準関係法令違反事項を条文別に見ると、労働基準法(以下「労基法」という)第32条(法定労働時間)及び労基法第108条(賃金台帳)がそれぞれ6事業場と最も多く、次いで、労基法第37条(割増賃金の支払)が5事業場、労基法第89条(就業規則の作成、届出)が4事業場、労基法第106条(法令等の周知)が3事業場となっている。
労基法第37条違反について、その具体的な様態を見ると、労働者の自己申告に基づく労働時間が、出退勤の状況を示す他のデータと相違しており、その結果労働者の実際の時間外労働時間よりも少ない労働時間分の割増賃金しか支払われていないものなどであり、自己申告による労働時間の把握が適正に機能していない状況が見られる。
労働時間管理の指導を行った事項を項目別に見ると、自己申告による不適正な労働時間の把握に係わるものが10事業場と最も多く、次いで、管理職の労働時間把握、労使協定の適正化に係わるものがそれぞれ2事業場となっている。
また、長時間労働従事者の健康管理について2事業場を指導している。
自己申告による不適正な労働時間の把握について、その具体的な指導内容をみると、労働者が自己申告した時間と事業場の巡回記録等とが相違がしていることから労働時間の適正な管理を行うよう指導したものが最も多く、その他、労働時間を適正に把握するため、日々の始業終業時刻についても把握するよう指導したもの、フレックスタイム制適用者の時間外労働時間が他の労働者に比べ3分の1程度であり、自己申告による労働時間の把握が不十分と認められると指導したものなどがある。
自己申告により適正な労働時間の把握がなされていない理由としては、時間外労働時間に対し支払われる賃金の予算が決められているため自己申告時間を一定時間内にせざるを得ないもの、時間外労働時間の削減通達が自己申告時間を一定時間内とする旨に解されているもの、一定の時間外労働時間を超えると賞与の減額があるため時間外労働時間を一定時間内で申告しているものなどが挙げられる。
本監督指導を実施した事業場において、フレックスタイム制適用者は、本社で勤務し、いわゆる総合職であるものが中心であり、なかでも研究開発、企画、立案等の定例的で日常反復される業務でない職種に就いているものが少なからず認められた。
また、監督指導を実施した22事業場のうち、時間外労働の多い労働者に対して1年に1回の法定の健康診断以外に臨時の健康診断等を行っている事業場は8事業場あったが、他の14事業場については、時間外労働の多い労働者についても1年に1回の法定の健康診断を行っているだけであった。