「羅針盤」2000年8月号外
労働省の「サービス残業」是正勧告の監督指導文書

労働省は、フレックスタイム制が導入されている大手電機メーカーの多くで労働時間の管理が不適切で、「サービス残業」を広く生んでいるとして、残業代支払いなどの是正勧告と監督指導を6月30日までにおこないました。

その監督指導結果の概要と今後の対処方針について労働省発表(文書)を原文のままご紹介いたします。


電気機械器具製造業におけるフレックスタイム制を導入している
事業場に対する監督指導結果について 
■ 第1 監督指導結果の概要

今般、電気機械器具製造業においてフレックスタイム制を導入し、自己申告による労働時間の把握を行っている主要な企業に対して、労働時間管理の適正化を主眼とした監督指導を実施したが、その結果は次のとおりである。
  1. 監督指導を実施した事業場は22である。22事業場のうち、労働基準関係法令違反が認められ、是正勧告を行った事業場は13事業場(59.1%)であり、また、労働時間管理等について指導を行った事業場は14事業場(63.6%)である。
    是正勧告及び指導の双方又は一方を行った事業場は16事業場(72.2%)である。

  2. 労働基準関係法令違反事項を条文別に見ると、労働基準法(以下「労基法」という)第32条(法定労働時間)及び労基法第108条(賃金台帳)がそれぞれ6事業場と最も多く、次いで、労基法第37条(割増賃金の支払)が5事業場、労基法第89条(就業規則の作成、届出)が4事業場、労基法第106条(法令等の周知)が3事業場となっている。

    労基法第37条違反について、その具体的な様態を見ると、労働者の自己申告に基づく労働時間が、出退勤の状況を示す他のデータと相違しており、その結果労働者の実際の時間外労働時間よりも少ない労働時間分の割増賃金しか支払われていないものなどであり、自己申告による労働時間の把握が適正に機能していない状況が見られる。

  3. 労働時間管理の指導を行った事項を項目別に見ると、自己申告による不適正な労働時間の把握に係わるものが10事業場と最も多く、次いで、管理職の労働時間把握、労使協定の適正化に係わるものがそれぞれ2事業場となっている。
    また、長時間労働従事者の健康管理について2事業場を指導している。

  4. 自己申告による不適正な労働時間の把握について、その具体的な指導内容をみると、労働者が自己申告した時間と事業場の巡回記録等とが相違がしていることから労働時間の適正な管理を行うよう指導したものが最も多く、その他、労働時間を適正に把握するため、日々の始業終業時刻についても把握するよう指導したもの、フレックスタイム制適用者の時間外労働時間が他の労働者に比べ3分の1程度であり、自己申告による労働時間の把握が不十分と認められると指導したものなどがある。

    自己申告により適正な労働時間の把握がなされていない理由としては、時間外労働時間に対し支払われる賃金の予算が決められているため自己申告時間を一定時間内にせざるを得ないもの、時間外労働時間の削減通達が自己申告時間を一定時間内とする旨に解されているもの、一定の時間外労働時間を超えると賞与の減額があるため時間外労働時間を一定時間内で申告しているものなどが挙げられる。

  5. 本監督指導を実施した事業場において、フレックスタイム制適用者は、本社で勤務し、いわゆる総合職であるものが中心であり、なかでも研究開発、企画、立案等の定例的で日常反復される業務でない職種に就いているものが少なからず認められた。

    また、監督指導を実施した22事業場のうち、時間外労働の多い労働者に対して1年に1回の法定の健康診断以外に臨時の健康診断等を行っている事業場は8事業場あったが、他の14事業場については、時間外労働の多い労働者についても1年に1回の法定の健康診断を行っているだけであった。


■ 第2 今後の対処方針

今回、監督指導を実施した22事業場のうち13事業場について労働基準法関係法令違反が認められたことから、労働時間管理上の問題は、単に今回の監督指導の対象とした事業場だけの問題にとどまらず、フレックスタイム制及び自己申告制を導入している広範囲の事業場において同様の問題を抱えていることが懸念される。

 こうしたフレックスタイム制と併せて労働時間を自己申告により把握する場合の労働時間管理に係わる問題を解消するため、電気機械器具製造業の業界団体である「社団法人日本電機工業会」に対し、以下の2点につき、会員に対する適切な指導を行うよう局長名による文書指導を行う。

  1. フレックスタイム制については、労働日ごとの始業終業時刻及び労働時間の長さを使用者が把握することが当然の前提になっており、こうした労働時間の把握を厳正に行い、それに基づき適正に賃金台帳の記入を行うこと。

     また、自己申告は安易に用いられるべきものではないが、これによる労働時間の把握を行う場合においては、その適正な把握を阻害する要因を除去し、労働時間の適正な把握を行うこと。

  2. 本社等において業務の遂行状況や成果等の評価を労働時間の長さによって行うことになじまない者については、適正な労働時間管理を行うための1つの方法としてフレックスタイム制に代え企画業務型裁量労働制の導入によって労使委員会における自主的な労働時間の状況等の把握、管理体制の確立について取組みを行うこと。




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