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カローシ(過労死)などとともに世界で例のないような日本のサービス残業(ただ働き)。
これを「なくそう」「なくして雇用を増やそう」と世論、運動が高まっています。 自動車メーカー、本田技研(約三万人)が、本田労組(連合加盟)と昨年九月下旬、「サービス残業のぼく滅」をめざして合意したのもその一つです。 |
まれな例だが |
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本田本社は、「残念ながら一部にサービス残業があった。監督者に通達(弘報)をだし、なくすよう徹底している」(広報部の佐藤英夫主幹)といいます。 日本の大企業がサービス残業があることを認め、なくすことを明らかにした例はきわめてまれです。 本田労組の青山章書記長は、「職場にサービス残業が結構多いことがわかってショックを受けた。放っておけないと会社と話し合った」といいます。 実際、労組の機関紙で、「一人あたりの月残業時間の枠設定が少なく…予算をオーバーするような残業は付けられない。また残業が付けにくいとの声が職場の実態である」と指摘しています。 本田最大の鈴鹿工場(三重県鈴鹿市)で昨年十一月、会社が「監督者弘報」を配布。「五分前にラインストップし、後片付け、整理整頓、夕礼などを効率的に行い、業務が時間外に出ることがないように運営していく」「時間内で対応できない業務は…三十分単位の残業管理を行う」――などを実施するとしています。 |
根絶はまだ |
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それから半年。職場は変わったのでしょうか。サービス残業が多いのがスタッフ・リーダー・班長クラス。ラインの手伝い、資料づくり…で、これまで週二、三日、1〜2時間ほどのサービス残業が常態化していました。 あるリーダーは、「月に十八時間も残業代が付いた」と喜んでいます。 組立ラインの労働者、正路勝さん(55)はいいます。 「休憩時間に、多くの労働者は、部品を自分の周りに準備している。そうしないと早すぎるラインスピードに付いていけないからです。作業終了後、後片づけなどをふくめると一日、二十分ほどのサービス残業になっている」 まだサービス残業の根絶になっていないのが実態です。 |
連合調査では |
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本田労組など大企業労組の多くが加わる連合は、九九春闘白書で初めて、サービス残業の実態を発表しました。アンケート調査にもとづくもので、一人平均で月二十九・三時間におよんでいます。 財界系の社会経済生産性本部は、このデータをもとにサービス残業をなくせば「雇用機会創出効果はおよそ九十万人」と算出(九九年五月)しました。
三菱電機の伊丹地域(兵庫県)の労働者でつくる「春闘を前進させる会」も、同様に試算しました。 |
職場から「一企業だけでは限界」法的規制必要 |
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本田の正路さんは、「組立ラインの各班には、二十五人ほどおり、有給休暇をとる労働者のための要員が二人配置されています。サービス残業を本当になくすためには、あと二人ほど増やすことが必要だと思う」と指摘します。 その上で、「本田の労資合意は重要ですが、一企業だけでは限界があります。サービス残業の根絶には、日本共産党の政策のように法的規制(別項)が必要だと思います」と語ります。 |
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(岡清彦記者) 2000年5月15日付「しんぶん赤旗」 |