ガイドライン法案

米国の戦争に参加する戦争法案

1999年2月10日「しんぶん赤旗」


米軍の「作戦法規」からみると…

■輸送、補給、通信提供などは攻撃対象

 ガイドライン(日米軍事協力の指針)法案によって日本が引き受ける米軍への軍事協力が、国際社会でどのように扱われるか――。同法案の重大な問題の一つとなっています。一般紙も、衆院予算委員会での日本共産党の志位和夫書記局長の追及(一月二十六日)をとりあげ、「日本がいくら兵たん活動を『武力行使と一体ではない』と主張しても、国際社会では通用しないという現実を、パートナーの米国の戦争法規が明らかにしているとも言える」(「朝日」六日付)とのべました。その戦争法規の一つ、米海軍省の『指揮官のための海軍作戦法規便覧』からみると、ガイドライン法案が戦争法案そのものであることがわかります。


■港湾、飛行場も軍事目標

 志位氏がとりあげた米海軍省の『作戦法規』は、「海上における合衆国海軍の作戦を規律する国際法及び国内法の基本原則を説明」するために作成されたものです。つまり、米海軍が戦争をするときに従わなければならない国際法や国内法を、指揮官に周知徹底させるための解説書です。

 このなかで、戦争に際してどういったものを攻撃目標にしていいのかを説明しています。

 米海軍省の『作戦法規』は、「軍事目標」について、「その性質、位置、目的又は使途により敵国の戦争遂行能力又は継戦能力に効果的に貢献するもの」で、「その全面的若(も)しくは部分的破壊」が「攻撃者にとり明確な軍事的利益を構成するもの」と定義しています。

 つまり、敵国が戦争をしたり、戦争をつづけたりするためになくてはならないものであって、それを破壊することによって戦争を有利にたたかえることになるものであれば、すべて「軍事目標」になるとしています。

 『作戦法規』は、その具体例として、港や港湾施設、飛行場、鉄道、橋、石油貯蔵区域などをあげています(別項1)。そのなかには、「戦争遂行のための製品を生産する産業施設」や発電所まで含まれます。

 米軍は、昨年十二月のイラク空爆では、テレビ施設まで攻撃しています。

 ガイドライン法案によって、日本は、「周辺事態」で戦闘している米軍に民間空港や港湾を使用させたり、輸送で鉄道や道路を使わせることになります。そうなれば、こうした施設はすべて「軍事目標」になってしまうのです。

■民間船舶も攻撃対象に

 しかも、『作戦法規』は、民間の船舶であっても攻撃目標にすることができる場合として、いくつかの項目をあげています。(別項2

 そのなかに、「敵国の軍隊の陸海軍の補助艦としての立場で行動している場合」、つまり、武器・弾薬や兵員の輸送や、軍事物資の補給などをおこなっている場合が含まれています。

 また、「敵国の軍隊の情報システムに組込まれているか…それを支援している場合」というのは、早期警戒や偵察、通信などによって軍事情報を提供したりすることです。

 こうした場合には、「事前の警告」を与えないでも「攻撃されえ、そして破壊されうる」としています。

 ガイドライン法案は、自衛隊ばかりか、民間業者も動員して公海上での輸送をはじめ、補給や通信などの兵たん支援をおこなうことを定めています。こうした行為が攻撃対象になるというのは、日本が軍事協力することになる米軍自身の『作戦法規』からも当然の国際ルールとされているのです。

■日本も「交戦国」の立場に

 『作戦法規』は、「武力紛争に参加している国家(交戦国)」と「敵対行為に直接関与することを回避しようとする国家(中立国)」の関係についてものべています。

 『作戦法規』は、中立国の義務として、第一に「自国の領域を…作戦根拠地として使用させることを防止する義務」をあげています。つまり、自分の国を戦争のために使用させないことです。一方、「交戦国が中立国領土を通過して、部隊や軍需物資、補給品を移動させることは禁止される」としています。

 このことに照らせば、ガイドライン法案で日本の民間空港や港湾を使用させることは、在日米軍基地や自衛隊基地の使用とならんで、米軍に「作戦根拠地」を与えることになるのです。

■人員の輸送も敵対国の行為

 さらに、『作戦法規』は、「中立国の船舶及び航空機」でも、「敵性を取得」する場合があるとして、「敵国の側に立って、敵対行為に直接参加すること」や「敵国軍の海軍又は陸軍の補助艦、補助航空機としての立場で行動する」場合をあげています。

 「補助艦、補助航空機」としての行動とは、軍需物資を輸送したり、補給にあたっていたりした場合です。

 中立国の船舶や航空機が、武器・弾薬などの「戦時禁制品の輸送」をおこなったり、「敵国の軍務または公務についている人員の輸送」をおこなえば、「拿捕(だほ)」の対象になるとのべています。

 補給についても、交戦国の軍艦は、中立国の港湾を「軍需物資の補給品や武装を補充したりもしくは増加させる」ために使用してはならないとしています。逆にいえば、交戦国の軍艦に補給すれば中立国の立場を失うということです。

 修理・整備、通信も同様です。交戦国の軍艦にたいし、「兵器システムを増加したり修理すること」や「戦闘能力を他のいかなる点についても増強すること」は中立国としては禁止対象。「交戦国軍との通信に用いる機器を設置」するために港湾を使うことも同じく禁止です。これらをおこなえば中立国の立場をなくします。

 このようにみると、ガイドライン法案が米軍への軍事支援として掲げる補給、輸送、通信、修理・整備などをおこなえば、日本はまさに「交戦国」の立場に立たされるのです。

 
「交戦国」「中立国」

 政府は「戦争が国際法上認められていた時代の、交戦国、中立国という言葉は、今日そのまま適用されない」(高村外相、九九年二月五日衆院予算委)などとのべて、追及を避けようとしています。しかし、米軍は「交戦国」と「中立国」の区分けについて、「敵対行為の拡大を制限し、紛争に参加していない国にたいする交戦国の行為を制限」するなどのために「重要な役割を引き続き果たしている」(『作戦法規』)としています。


(別項1)

米海軍省「指揮官のための海軍作戦法規便覧」(1987年)が、軍事基地や軍艦、軍用機などの兵器以外で「軍事目標」にあげている主なもの


(別項2)

 敵国商船は、以下の状況のいずれかにあたる場合には、事前の警告を与えるか又は与えないで、水上艦により攻撃されえ、そして破壊されうるのである。

 一、臨検及び捜索又は拿捕(だほ)に積極的に抵抗すること。

 二、正当に命令された停船命令による停船を拒否すること。

 三、敵国の軍艦又は敵国の軍用機の護送下で航行していること。

 四、武装している場合。

 五、敵国の軍隊の情報システムに組込まれているか又はいずれにせよそれを支援している場合。

 六、敵国の軍隊の陸海軍の補助艦としての立場で行動している場合

 七、敵国の戦争遂行(継戦努力)に統合されており、一九三六年のロンドン議定書の規則に従えば、特定の遭遇の状況下では、水上艦を差迫った危険に曝(さら)すか、さもなくば任務の達成が妨げられる場合。


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