消費税減税を中心に、11兆円の国民負担の軽減を
――国民生活防衛の緊急要求――

 日本共産党の志位和夫書記局長が11月11日発表した「消費税減税を中心に、11兆円の国民負担の軽減を――国民生活防衛の緊急要求」について紹介致します。
 家計消費の冷え込み、失業、倒産など、あらゆる指標が戦後最悪を記録し、国民の暮らしと営業は未曽有(みぞう)の危機に直面しています。国民生活の現状は、もはや一刻の猶予も許されないまったなしの事態にたちいたっています。

日本共産党は、今年4月16日に「深刻な不況から国民生活をまもる緊急要求」を発表していますが、その後のさらなる事態の深刻化をふまえ、あらためてこの危機的な国民生活の現状を打開するため、以下の6項目の緊急要求をおこなうものです。

1、消費税をただちに3%にもどし、庶民がうるおう7兆円減税を実施する

〔消費税をただちに3%にもどす〕

 個人消費が11カ月連続マイナスになっているように、いまの不況の最大の問題は家計消費が極端に冷え込んでいることにあります。
そのもとで、どの世論調査をみても、圧倒的多数の国民が第1にもとめているのが消費税減税です。

消費税減税は、政府自身も認めているように、消費拡大に確実につながる対策です。国民の暮らしをまもるためにも、個人消費の落ち込みが不況をさらに深刻化させるという悪循環をたちきるためにも、消費税の税率をただちに3%にもどし、5兆円の消費税減税を実行することを要求します。

 そのさい、地方財政の危機的状況を考慮し、消費税収の地方自治体の取り分を現行のまま確保するようにすべきです。

〔2兆円規模の庶民に手厚い所得減税を恒久化する〕

 最高税率の引き下げや定率減税では、納税者の8割から9割が今年より増税になり、消費をますます冷え込ませるだけです。基礎控除、扶養控除など人的控除をそれぞれ10万円程度引き上げる庶民に手厚い減税を恒久化すべきです。こうした所得減税と消費税減税を組み合わせた7兆円規模の減税をおこなえば、すべての層が今年より減税になります。

2、医療・年金で4兆円の負担軽減、将来が安心できる社会保障制度をつくる

〔医療費2兆円の負担増を値上げ前にもどす〕

 宮沢蔵相は、昨年9月からの2兆円にのぼる医療費値上げが景気を悪くした「ひとつの要因であった」と認めました。医療費値上げによって、深刻な「受診抑制」、「治療中断」もおこっています。日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会もそろって要求しているように、ただちに値上げ前にもどすべきです。また、今年10月から実施された診療報酬改定は、入院患者の追い出しを促進するものであり白紙にもどすべきです。

〔基礎年金への国庫負担を2分の1に引き上げ、保険料を2兆円引き下げる〕

 政府が来年予定している給付削減や保険料引き上げの計画を中止するとともに、基礎年金への国庫負担を現行の3分の1から2分の1に引き上げ、保険料を2兆円以上引き下げることを要求します。

 医療と年金で、あわせて4兆円の国民負担減をはかることは、当面の景気回復にとっても、大きな積極的効果があります。

〔「財政構造改革法」を廃止し、社会保障に手厚い財政へ〕

 「財政構造改革法」の破たんは、政府も事実上認めています。社会保障切り捨ての「財革法」は「凍結」ではなく廃止すべきです。「財革法」による予算削減が強行された難病患者の医療費公費負担、母子家庭への児童扶養手当の復活を要求します。

 医療でも、年金でも、福祉でも、国民が将来に安心のできる社会保障制度をつくることは、当面の景気対策のうえでも重要です。
そのために、「公共事業には50兆円、社会保障には20兆円」という逆立ちした財政のあり方にメスをいれ、社会保障に手厚い財政への転換をめざすべきです。

年金制度では、基礎年金への国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げることとあわせて、巨額の年金積立金を計画的に取りくずす、労働条件や育児・介護制度などの改善で高齢者や女性が働きやすい環境をつくり年金の”支え手”を増やすなどにより、老後が安心できる公的年金制度の確立をめざすべきです。

医療保険では、世界一の高薬価といわれ、医療費の3割(8兆円強)を占める薬剤費にメスを入れるならば、国民への負担増なしに、医療保険財政を立てなおせます。

3、中小企業の危機乗り切りのため、   貸し渋りをやめさせ官公需を増やす

〔銀行の不当な貸し渋り・資金回収をやめさせるため強力な行政指導をおこなう〕

 中小企業への貸し渋りや資金回収をすすめ(資産圧縮)、海外での投機に重点を移している大銀行に、いくら税金を投入しても貸し渋りはなくなりません。60兆円の銀行支援策は中止すべきです。

 いま必要なことは、銀行が産業活動や国民生活に必要な資金を供給するという公共的役割を果たすよう、銀行法にもとづく強力な行政指導をおこなうことです。
そのため、業種別・企業規模別の貸し出し内容など、徹底的に情報を開示させ、国民的な監視を強め、貸し渋りや不当な回収を規制します。自己資本が不十分な銀行は、国際業務から撤退させ、国内業務に専念させます。

〔政府系金融機関に本来の役割を発揮させる〕

 貸し付け条件を最大限緩和し、無担保・無保証人融資、低利融資を拡大します。中小企業金融公庫、国民金融公庫だけでなく、日本開発銀行や北海道東北開発公庫なども、中小企業への融資ができるようにします。政府が決めている20兆円の貸出枠の金利を1%下げるのに必要な資金は2千億円です。

〔中小企業向け官公需を抜本的に引き上げ、福祉型公共事業を推進する〕

 国・自治体などが発注する官公需は約32兆円に及んでいますが、97年度の中小企業向け実績は、国が40.9%、地方自治体は69.4%にすぎません。中小企業向けの発注率を国50%(政府答弁)、自治体75%(過去最高)に引き上げれば、中小企業に新たに2兆3千億円の物品購入や仕事をまわすことができます。

 無駄な巨大プロジェクトを中止し、公共事業費全体を抑制しながら、社会福祉施設や住宅、教育施設などに重点を移すよう要求します。とくに、介護保険制度の実施を間近にして、遅れている特養ホーム、老人保健施設などの思い切った増設をはかるべきです。特別養護老人ホームは、新ゴールドプランでも8万人の待機者が出ます。この解消には、新たに1,600カ所(50人定員の場合)の施設が必要ですが、この建設によって中小建設業を中心に1兆円弱の仕事を確保することができます。

〔大型店を規制し、商店街をまもる〕

 大型店の市街地からの撤退と郊外への進出などで、従来の駅前などの商店街がさびれ、地域の崩壊がすすんでいます。現行の大店法(大規模小売店舗法)は、失効するまであと1年半あり、厳正に運用するよう要求します。無秩序な出店や撤退をおさえ、中小小売店・商店街振興と良好な住環境・まちづくりをすすめることが必要です。

4、一方的解雇の規制、労働時間の短縮による雇用の拡大。失業保障の充実をはかる

〔「解雇規制法」を制定して一方的な解雇をやめさせる〕

 ヨーロッパ諸国では、労働者の雇用をまもる法律があるのに、日本の労働者は、雇用にかんしてまったく無権利な状態に置かれています。「解雇規制法」を制定し、企業の一方的な解雇や「希望退職」という名の退職強要をやめさせます。

〔違法な「サービス残業」を規制し、労働時間を短縮して新しい雇用を創出する〕

 違法なサービス残業は、政府統計からの推計で年間3百時間におよんでいます。これは、民間労働者の数で換算すると4百万人分の雇用に相当します。年間1975時間の労働時間を、ドイツなみに4百時間減らすと約6百万人の雇用が創出されます。

〔福祉、教育、防災分野の雇用を拡充する〕

 介護・福祉、教育、防災など、国民生活に不可欠な分野での人員不足が深刻です。たとえば、ホームヘルパーは、厚生省の試算でも介護を必要とする高齢者すべてにサービスを提供するには、あと25万人の増員が必要です。

保育でも待機児童の解消に、約1万人の人手が必要です。30人学級の実現のためには、新たに7万人の教員が必要です。また、消防士は基準20万人のところが14万人で、6万人も不足しています。こうした分野での人材確保に職業訓練など計画的に着手するようもとめます。

〔雇用保険の弾力的運用で失業保障を拡充する〕

 「給付延長」条項を弾力的に運用し給付期間を延長すべきです。給付額を平均給与の6〜8割となっているものを一律8割にします。
また、離職理由が「自己都合」だと3カ月間の給付制限がありますが、「会社都合」を倒産や解雇などに限定せず、実態にあわせ幅広く適用させることが必要です。

雇用を維持した企業に助成をおこなう「雇用調整助成金」の対象を、中小企業については、当分の間、業種・地域指定をなくし、すべての中小企業が対象となるようにします。

5、暴落した米価の補てん、強制減反の中止をおこない、災害被害対策を強化する

 米価の暴落、農畜産物の価格の低落によって、一戸当たり農業所得は、暴落前より3割以上も減収となっているうえに、豪雨や台風が農家・地方経済を直撃しています。

 98年産米の自主流通米について、暴落前の94年から96年の3カ年の平均価格(約2万円)をもとにして、その差額を補てんします。政府米の買い上げ量を、新食糧法スタート時に政府がいっていた150万トンまで増やすようもとめます。

 強制減反を中止し、補助金を出さないなどのペナルティーによる目標達成の強要をやめるべきです。重くのしかかっている土地改良負担金の返済猶予措置を講ずるべきです。無利子・低利の営農資金枠を拡充し、低利借り換えができるようにします。

 20都道県に被害をもたらした8月末の豪雨だけでも、農林水産省の集計で被害額が7百13億円にのぼっています。被害農家にたいする無利子貸し付け(5年間返済猶予)をただちに実施するよう要求します。

6、住民利益をまもるため、地方財政への緊急措置をおこなう

 いま地方自治体の財政は、不況の長期化による税収の落ち込みだけでなく、巨額の公共事業による浪費によって危機的状況におちいり、その犠牲が福祉・教育予算の切り下げなど、住民に押しつけられています。

住民福祉をまもるため、地方交付税の引き上げ、自治体借金の金利負担の軽減、地方債の財政投融資資金引き受け分の低利借り換えや償還繰り延べなどをおこない、民間からの借入金についても同様の措置をとるべきです。
「景気対策」として、浪費型の地方単独公共事業を押しつけるやり方はきっぱりやめるべきです。

国民の負担軽減11兆円、事業規模23兆円の緊急対策
──財源確保をこう考える

 以上の緊急要求を実現すれば、事業規模は約23兆円、そのうち国民の負担軽減は11兆円となります。必要な財源は約13兆円です。その財源確保については、つぎのような方策をとるべきです。

 (1)60兆円の大銀行支援の公的資金投入計画を中止する。

 (2)年間50兆円にのぼる公共事業は、巨大開発型から福祉型に重点を移し、総額の縮減をはかる。5全総(全国総合開発計画)を中止する。「景気対策」として、公共事業を無理やり積みます方式を中止する。

 (3)世界第2の軍事費大国であるうえに、NECなどの水増し事件に見られるように、「聖域」にされてきた、年間5兆円にものぼる軍事費を大胆に削減する。

 (4)世界に類のない準備金や引当金などによって、大企業への課税ベースが著しく狭い現状をあらためるなど、大企業優遇の不公平税制を是正する。

 (5)国債の低利借り換えによって国債費を圧縮する。国債の平均金利を1%圧縮するだけで2.8兆円となる。

 こうした財政の民主的改革をおこなうなら、景気対策の財源は十分に確保できます。そして、10年後には、日本の財政を赤字体質から脱却させ、再建の軌道にのせ、高齢化社会をささえる財政の基盤をつくることが可能となります。消費税廃止への道もそのなかで開かれます。


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