(1)正当理由なき解雇の禁止、人員整理計画の事前協議制など、雇用をまもるルールをつくる
■希望退職など雇用削減の計画や工場閉鎖などは、労働者代表、関係自治体との事前協議を義務づける・・・ 希望退職の募集や工場閉鎖が、ある日突然、新聞紙上で発表され、労働者や中間管理職はもとより、ひどい場合には工場長すら知らされていなかったという乱暴なリストラが横行しています。労働者には何にも知らせず、マスコミを使って大量人員整理を「既成事実化」するなどという無法は世界では通用しません。
ヨーロッパでは、EUの「欧州労使協議会指令」で、人員整理や工場閉鎖など、企業が雇用に大きな影響を与える決定をする場合には、労働者・労働組合への情報提供や「合意を目的とした事前協議」を義務づけています。アメリカでも、「労働者調整・再訓練予告法(WARN法)」で、レイオフの情報公開、州・地方政府への通告などが義務づけられています。労働者と関係自治体への情報提供と事前協議は、企業としての最低限の責任です。
■整理解雇四要件を法制化する
正当な理由のない解雇を法律で禁止することは、解雇制限法(ドイツ)、雇用保護法(イギリス)などヨーロッパでは常識です。日本でも、裁判所の判例で、経営上の都合での整理解雇は、企業が存続できず、解雇回避の努力をつくし、人選が合理的で、労働側と協議をつくした場合に限定するという、四つの要件が必要ということが確定しています。この法制化は労働界も一致して要求しており、当然のことです。
■企業組織再編にあたって、本人の同意、労働契約の継承、労働条件の保護を原則にする
合併や営業譲渡、分割という企業組織の再編を理由とする解雇を禁止するとともに、再編前の企業に所属するか後の企業にするかは、労働者の同意がなければ決められないようにします。前の会社での労働条件や労働協約はそのまま引き継ぐことにします。また、労働組合との事前協議や一人一人の労働者へも情報公開を行わせます。
破たんした企業やその一部を買い取る場合でも、雇用の継承、再就職のあっせん、職業訓練など、譲渡を受けた者にふさわしい雇用責任を果たす努力を義務づけます。
(2)希望退職や転籍など「退職」を強要するための人権侵害を許さない
■希望退職や転籍、出向などにあたっての「強要」行為を厳格に規制する・・・ 転籍や出向など労働契約の変更は本人の同意が原則です。ところが、形だけの「同意」をとりつけるために、いやがらせや脅迫まがいの強要行為がまかりとおっています。希望退職に達成目標をかかげ、退職に追い込むやり方も横行しています。
最高裁の判例でも、希望退職をせまるために繰り返して呼び出すなどの行為は違法とされています。こうした強要行為を禁止し、立会人の同席や希望退職や転籍の同意は7日以内であれば撤回できる「クーリングオフ」制度などを確立します。
■転勤にあたって、家族的責任、家庭生活などへの配慮を義務化する
転勤は会社都合が優先され、世界でも例がないような単身赴任や長時間通勤が当たり前のようになっています。本人の生活と健康に大きな負担となるだけでなく、家庭が犠牲にされ、少子化などの社会問題の要因にもなっています。
世界の流れは、仕事といえども、家族としての責任を犠牲にしてはならない、ということです。日本でも、やっと介護や育児の責任がある労働者の転勤を制限する動きが出ていますが、転勤にあたって、育児・介護はもとより、家族的責任、家庭生活を配慮するのは当然です。
■労働者ひとりひとりの雇用と人権を迅速に救済する
希望退職や転籍の強要、職場でのいじめ・嫌がらせ、セクハラなどを受けた労働者の人権と雇用を迅速に救済することが求められています。昨年10月から厚生労働省が始めた個別労働紛争に関する相談は、9万件にものぼり、その半数がリストラに関するものでした。
しかし、この制度は「紛争処理」のための「助言・指導」や「あっせん」にすぎず、雇用と人権の救済にはなっていません。また、裁判での救済は、長期の時間と多額の費用という重い負担があります。
行政、司法あわせて、雇用と人権を迅速に救済する制度を確立していきます。当面、労働基準監督署などに、正規の相談員を配置するなど労働者の人権救済の機能をもたせ、必要な勧告を行えるようにします。公共職業安定所や労政事務所、地方労働委員会などとの相互協力体制を強化します。
裁判費用への負担を軽減するために、労働裁判・法律扶助制度を創設し、雇用保険会計から必要な範囲で裁判費用を貸付・援助できるようにします。また、将来的には、労働問題を迅速に解決する労働裁判所の設置などを含めた検討もすすめます。
(3)派遣やパート、有期雇用など、不安定な雇用に置かれている労働者の雇用と権利をまもる
無法なリストラのなかで、正規雇用が大きく減少するとともに、パート、臨時、派遣など、賃金も労働条件も悪く、真っ先に解雇される、未権利で不安定な雇用が急速にひろがっています。とくに、青年は、完全失業率が10%にもなるうえに、安定した仕事につけないフリーターが200万人にものぼっています。
こうした事態は、雇用不安をいっそう深化させ、国民経済全体で大きなマイナスになるだけでなく、仕事や技術の伝承、職場のやる気など、企業や産業、日本のものづくりの将来にとっても、大きな障害になっています。
■雇用不安をひろげる危険がともなう「有期雇用」は育児休暇の代替、臨時の仕事など、合理的な理由がある場合に限定する
政府は、有期雇用の期限を原則1年から3年にするなど延長しようとしています。これでは〃契約期限がきたら解雇自由〃という不安定な労働者を大量につくり、雇用不安をさらにひろげてしまいます。採用にあたって、あらかじめ期限を限定することができるのは、育児休業の代替、災害復旧のように臨時に仕事が急増したなど、合理的な事由がある場合に限定します。
■パート労働者などへの賃金・労働条件への差別を禁止する
正社員と同じ仕事をしながら、パート、アルバイト、準社員などの「名前」の違いで、賃金や休暇、福利厚生など労働条件での不当な差別をなくします。とくに、賃金・諸手当などを労働時間に比例して決めること以外は、労働条件の違いをつくってはならないことを明確に定めるとともに、広がる一方の賃金格差を是正させるために、政府が目標をもって取り組むようにします。
■派遣労働者の雇用と権利をまもる
「安上がりな労働力」のためだけに派遣社員を利用することや、悪質なピンはねを規制し、派遣は、特別な技能など業務上の必要に基づくという本来の姿にしていきます。中途解約でも、派遣元に契約期間中の賃金を保障する義務があることも明確にします。
健康保険や厚生年金など社会保険に加入する権利を保障し、派遣会社を移動した場合や派遣以外の仕事に就いたときにも、加入期間を通算する制度を確立します。本人の希望にもとづいて派遣社員から正規雇用になれる道を開きます。
2、雇用を増やすためにも、サービス残業の根絶・長時間労働の是正を
360万人もの完全失業者が仕事をもとめている一方で、ただ働きのサービス残業が蔓延し、過労死、過労自殺が増えるという異常な長時間労働がはびこっています。政府や財界は「ワークシェアリング」という言葉だけ持ち込んで、賃下げ・リストラに悪用していますが、労働時間を短縮して仕事を分かち合うというのなら、健康も、家庭も犠牲にするサービス残業・長時間残業や法律で定められた休暇も取れないという異常な事態こそ、真っ先に是正すべきです。
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