「始終業時刻の把握」・企業に労働時間管理の義務
”サービス残業”なくすため厚生労働省が画期的な通達
羅針盤2001年4月号外

日本共産党と労働者のねばり強い告発と追求が実る
「自殺過労死」まで生み異常な長時間労働の温床となっている「サービス残業」。職場でまん延している違法なただ働きをなくすため厚生労働省が「企業に労働時間管理の責務がある」とする▼通達(4月6日・掲載)を出しました。

これまで職場の労働者と日本共産党が、広範に行われているサービス残業の是正を求めてねばり強く告発・追及したたかいが、昨年の労働省による電機大手製造業への監督指導となり、今回の「画期的」な通達に実を結んだといえます。

「日本共産党には参った」

「毎回のようにサービス残業問題をとりあげる日本共産党には、省内で『参った』という声もあがった。

日本共産党の主張してきたことが通達にかなり盛り込まれた」(厚生労働省の関係者)「サービス残業」問題で、日本共産党が国会でとりあげた質問は、97年以降だけで87回。(3月29日現在)

「サービス残業なくしたい」(小渕首相)

99年7月の予算委員会で、大森猛衆院議員が、三菱電機のサービス残業の実態をとりあげ、政府にき然とした態度をとるよう求め、当時の小渕首相も「サービス残業はなくしたい」と答弁。

始業・終業時刻をタイム・ICカードで記録
通達は、

@企業が労働者の日々の始業・終業時刻を労働日ごとに確認し記録すること。

Aその方法は使用者が「現認し記録する」か「タイムカードやICカード等を基礎に記録する」ことを明記しています。

(通達のポイントは次の通りです。)

「自己申告制」に対する具体的規制
@実際の残業時間を申告しても「不利益な扱い」がないことを説明する。

A自己申告した労働時間と合致しているか定期的に実態調査をする。労働者や労働組合等から指摘があれば実態調査をする。

B適正な残業代申告を阻害する目的で残業時間の「上限」を設定したり、残業手当の「定額制」などが申告を阻害している場合は改善する。

悪質なケースには司法処分
監督署の窓口だけでなく、リーフレットの活用や集団指導などあらゆる機会を通じて「集中的な周知活動をおこなう」。実効性を担保するため監督署が点検や重点指導をおこなう。

重大な悪質ケースには「司法処分」で対処するとしています。

具体的規制は大進歩
労働基準監督署長をつとめた、全国労働安全衛生センター連絡会議議長の井上浩さんの話

「労働時間の具体的な記録が義務付けられていないことが労基法上の不備となっていて、これがサービス残業を生む温床になっていました。今回の通達はそれを補い、具体的な規制を加えたもので大進歩というべき内容です。

この基準を本当に守らせていけば、サービス残業根絶に威力を発揮するでしょう。そのためには、国民的な大運動がなによりも重要だし、労働基準監督官の増員なども欠かせません。

将来的には、労働時間の具体的な記録を法的に義務付けるため、この基準を労働基準法に明記し、罰則を科して強制力をもたせることが求められます。」



「労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき
措置に関する基準」の策定について

厚生労働省が発表した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」の策定について(別添)をご紹介します。

厚生労働省発表 平成  年4月6日
厚生労働省労働基準局監督課 議長 中野 雅之
中央労働基準観察監督官        山本 靖彦
「労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき措置に関する基準」の策定について

厚生労働省は、本日、平成12年11月30日に開催された中央労働基準審議会の建議を受け、使用者が労働者の労働時間を適正に把握する責務があることを改めて明確にし、労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき措置を示した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(別添)を策定し、併せて、今後、集団指導、監督指導等あらゆる機会を通じて本基準の周知を図り、その遵守のための適切な指導を行うこととしたところである。

労働時間の適正な把握のために  使用者が講ずべき措置に関する基準について

労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有していることは明らかである。

しかしながら、現状をみると、労働時間の把握に係る自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの。以下同じ。)の不適正な運用に伴い、割増賃金の未払いや過重な長時間労働といった問題が生じているなど、使用者が労働時間を適切に管理していない状況もみられるところである。

こうした中で、中央労働基準審議会においても平成12年11月30日に「時間外・休日・深夜労働の割増賃金を含めた賃金を全額支払うなど労働基準法の規定に違反しないようにするため、使用者が始業、終業時刻を把握し、労働時間を管理することを同法が当然の前提としていることから、この前提を改めて明確にし、始業、終業時刻の把握に関して、事業主が講ずべき措置を明らかにした上で適切な指導を行うなど、現行法の履行を確保する観点から所要の措置を講ずることが適当である。」との建議がなされたところである。

このため、本基準において、労働時間の適切な把握のために使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにすることにより、労働時間の適正な管理の促進を図り、もって労働基準法の遵守に質するものとする。

1 適用の範囲

本基準の対象事業場は、労働基準法のうち労働時間に係る規定が適用される全ての事業場とすること。

また、本基準に基づき使用者(使用者から労働時間を管理する権限の委譲を受けた者を含む。以下同じ。)が労働時間の適正な把握を行うべき対象労働者は、いわゆる管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除くすべての者とすること。

なお、本基準の適用から除外する労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務があること。

2 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置

(1)始業・終業時刻の確認及び記録

使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

使用者が、始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。

ア. 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。

イ.タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置。

上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。

ア.自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

イ.自己申告制により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。

ウ.労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間の削減のための上限を設定するなどの措置を講じないこと。
また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

(4)労働時間の記録に関する書類の保存

労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存すること。

(5)労働時間を管理する者の職務

事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。

(6)労働時間短縮推進委員会等の活用

事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間短縮推進委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消等の検討を行うこと。

(以上)

【基準の2の(3)のアについて】

労働者に対して説明する事項としては、自己申告制の具体的内容、適正な自己申告を行ったことにより不利益な扱いが内容が行われることがないことなどがあること。

(基発339号・厚生労働基準局長)


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