サービス残業解消へ通達 (厚生労働省)
使用者に労働時間管理の責務 

2001年4月7日(土)「しんぶん赤旗」
■ サービス残業(ただ働き)解消にむけた初めての通達
サービス残業(ただ働き)解消にむけた厚生労働省通達が6日、各都道府県労働局長あてにだされました。この問題で同省が踏み込んだ通達をだしたのは初めてです。

通達は「割増賃金の未払いや過重な長時間労働」が広範にあることを認め、「使用者に労働時間を管理する責務があること」を改めて明らかにしています。

通達は、使用者が労働者の日々の始業・終業時刻を確認し記録することを明記。その方法は使用者の確認による記録、またはタイムカードやICカードなど客観的な記録を原則とし、使用者による記録の場合は「該当労働者からも併せて確認することが望ましい」としています。

通達は、サービス残業がはびこってきた要因の一つである自己申告制についても言及。使用者は、労働者や労働組合等から、労働時間の把握が適正に行われていない旨の指摘があった場合、「実態調査を実施すること」とし、事実上労働者に時間管理台帳の閲覧権を認めています。

残業代申請の上限規制を「講じないこと」と明言し、残業時間削減の社内通達や残業手当の定額払い等、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないか、確認と改善をするよう定めています。

日本共産党は、「サービス残業根絶」法案の提出をはじめ、労働者・国民のたたかいと結んで、その根絶を求めてきました。
【解説】 厚生労働省が通達

サービス残業解消へ かつてなく踏みこむ厚生労働省が、六日まとめたサービス(ただ働き)残業の解消にむけた通達は、かつてなく踏みこんだ内容となっています。

明確な犯罪行為であるサービス残業が横行している背景には、企業が労働時間の把握を労働者の自己申告にまかせる一方で、「残業代の申請は上司の許可が必要」「予算枠は月二十時間以内」などの規制をしていることが広く指摘されています。

残業代を請求すると、「能力がないからだ」とされ昇進や賃金査定にマイナスとなることから労働者は請求したくてもできず、泣く泣くただ働きをさせられているのが現状です。

通達はこうした実態をふまえ、まず、使用者に労働者の日々の始業・終業時間を確認し記録する責務があることを明確にしています。

始業・終業時間の確認方法では、使用者が直接確認する、またはタイムカード、ICカード等客観的な記録を基礎とすることを原則とし、前者の場合は当該労働者からも確認することを求めています。


■ 労働時間台帳閲覧権認める
とくに通達は、残業時間の自己申告制の場合について3点にわたり、使用者が講ずべき措置を示しています。

一つは労働者に対し適正な自己申告を行なっても不利益な取り扱いが行われることがないこと等を説明すべきであること。

二つは、労働時間が適正に把握されているか否かについて、労働者や労働組合などから労働時間の把握が適正に行なわれていない旨の指摘がされた場合は、実態調査を行なう必要があるとしています。
これは事実上、使用者が管理する労働時間台帳の閲覧権を労働者に認めることになります。

三つには、労働者の残業時間の申告を阻害する目的で残業時間数の上限を設定したり、残業時間削減の社内通達や残業代の定額払いも改善の対象としています。

また、労働基準法109条が3年間の保存義務を課している「その他労働関係に関する重要な書類」として、使用者が記録したものやタイムカード等の記録のほかに、「労働者が自ら労働時間を記録した報告書」が同等に位置付けられています。

通達の対象は、裁量労働制適用の労働者を除いていますが、使用者は「健康確保を図る必要から適正な労働時間管理を行なう責務がある」としています。

■ 粘り強い告発実を結んだ
これまで労働者・国民が、広範に行なわれているサービス残業の是正を求めて粘り強く告発したたたかいが、昨年の労働省による電機大手製造業の監督指導となり、今回の通達に実を結んだといえます。

この通達を力に、労働者・国民のいっそうの告発、是正を求めるたたかいが待たれています。日本共産党は、国会内外で労働者・国民と手を結び、いっかんしてサービス残業の根絶を求めています。

                                    (畠山かほる記者)



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