「羅針盤」2000年3月号外
積立不足を理由にした企業年金の改悪



◆ 技士モデル、(60歳勤続40年)2010年度退職者で794万円のカット◆

現在50歳の労働者は…(労組試算)企業年金78歳到達まで25%減

現行3,587万円⇒改悪案2,793万円

【技士モデル60歳 勤続40年 平均標準月額32万円、年金標準ポイント169,200】

国会では公的年金の改悪(裏面)、職場では、新会計基準の導入による「5400億円」の退職給付積立不足を理由にした「企業年金」の改悪がすすめられようとしています。
改悪案の中心目的は、退職給付積立不足を理由に企業年金給付(人件費)を削減するのがねらいです。

【三菱電機では、従来は逓増型(60歳から78歳直前まで18年間、年2.5%ずつ増える)で全額終身年金であった制度を、定額型で有期年金・終身年金の組み合わせ型に変更する】

例えば、

@現行では、60歳から毎年2.5%ずつ増えていく終身払いの第1加算年金を毎月5万円の定額年金に切りかえる。

A現行では毎年2.5%ずつ増えて18年保証の終身払いになっている会社が支払う企業年金を15年の有期にきりかえ毎月7万円の定額にする。

B現行では、毎年2.5%増え18年保証の終身払いの第2加算年金を60歳から65歳までの5年間、毎月6万円の定額有期年金に切りかえ、年金総受取額を大幅に減額するというものです。予定利率は5.5%から4.0%に変更する。

C退職金・年金算定ポイントは、現行退職時まで加算していたものを満50歳までにする。

■ 2000年度退職者で474万円、2010年度で794万円カット

【年金水準】は60歳勤続40年の技士モデルで、今回の改悪により、支給保証期間(78歳到達まで)内の年金支給額は、現行制度との比較において、2000年定年退職者で474万円(15%)、2010年定年退職者で794万円(25%)の減額となる。

その結果、会社の退職給付積立不足は、1800億円程度解消される、というものです。
三菱電機の「春闘前進させる会」のアンケートによると、「企業年金・退職金の改定=v問題では、「大変困る」が15%、「もっと検討すべき」が51%、「よく分からない」が26%となっています。


【定年後、安心して生活設計ができる企業年金を】
日本共産党三菱電機伊丹委員会は、こう考えます

@積立不足については、なぜ、積立不足になったのか、どうして未然に防ぐ対策が講じられなかったのか、その原因と理由について、正確な情報提供と十分な説明をし、疑問点や不安にこたえ、労働者の納得のいくものにすること。

A年金制度についていえば、会社はその導入時に労働者にメリットを強調し、期待をもたせていたものです。労働者に犠牲を転嫁する前に、かってバブルや高金利の時期、企業年金運用で得た多額の利益分を公表し、その受益分を不足の処理にまわすようにする。

B定年後の生活設計に必要な退職金や年金は、賃金の後払いであり、従業員にとって基本的な権利です。積立不足を理由にした安易な年金給付切り下げや年金制度の事実上の解体ー労働者の自己責任に転嫁する401K(確定拠出型年金)の導入には反対する。

C新会計基準の採用によって発生する積立不足の処理にあたっては、15年の範囲で適切な計画的解決を図るようにする。会社側の積立不足解消の計画を発表させ、最大限の努力を払わせ、そのあと具体的な条件についての協議をおこない、労使の真剣な話し合いのなかで解決を図る。

【退職給付債務】
退職給付とは、一定期間働いた従業員が退職した際に、企業が支払う義務をもつ退職金と企業年金のこと。
将来支払う退職金と企業年金の合計額を現在価値に置き直したものが退職給付債務となる。新会計基準の採用によって発生する年金・退職金の積立不足について、企業は15年以内に処理することが求められている。

しかし、「財政上のリスクを将来に残したくない」(東京電力)などとして、3年程度で処理することを決めている企業もある。


◆ 若者に不信と不安広げる年金改悪 ◆

小渕・自自公政権が、年金改悪法案の成立をねらっています。
政府案の最大の問題は、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年令を2013年から段階的に遅らせ、2025年には年金の65歳支給を完了させることです。

■ 60代前半の支給全廃

これによって、現在38歳以下(1961年4月2日以降生まれ)の男性、33歳以下(66年4月2日以降生まれ)の女性は、60代前半の支給が全廃されます。

若者が将来受け取る年金カット額はいくらになるのか。厚生省は、夫が2025年度に60歳で退職し、妻は専業主婦というモデル世帯を例にあげ、現行では総額5300万円、改悪されると4300万円になると国会で答弁しています。

現在35歳の夫婦で、現行の2割、総額で1000万円もカットされるという、将来設計を揺るがす重大な改悪です。これでは、多数の若者が老後の不安と年金不信≠ノおちいるのは当然です。

■ 賃金スライド制の廃止

改悪案は、現在の年金受給者も直撃します。5年ごとに現役労働者の賃金上昇にあわせてきた「賃金スライド」を来年度から廃止しようというのです。
しかも、来年度の新規受給者から報酬比例部分の支給額を5%削減することがもりこまれています。

■ 給付削減だけで10兆9000億円

すでに94年の改悪により実施が決まっている厚生年金の定額部分(基礎年金)の支給開始年令のくりのべは、来年4月から段階的に始まります。

現在58歳以下の男性、53歳以下の女性が対象です。年金改悪によって、給付削減額は年々増えていき、厚生年金だけでも2025年には10兆9000億円に達することが明らかになっています。来年度予算案だけでも、医療・年金・介護関連の国民負担増・給付減は総額2兆円にのぼります。

これが景気回復の主役・個人消費を圧迫し、不況をさらに深刻にすることを政府・与党は自覚すべきです。

◆ 公共事業偏重をあらため国民が安心できる社会保障へ ◆

こうした、 不当な削減政策をあらためて国の負担を抜本的に引き上げる方向に転換してこそ、21世紀にふさわしい社会保障体系を築き上げることができます。

社会保障につかう分の2.5倍ものお金を公共事業につぎこむーこの「逆立ち」をきりかえ、公共事業を半減させれば、福祉や医療を充実させることができます。


国民と心の通う政治をおこします− 日本共産党

日本共産党阪神北地区             
      福祉教育委員長              衆議院議員
          前田えり子                      ふじき洋子

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