?? 基軸通貨ってなに ?


■いま米ドルが基軸通貨

「基軸通貨とは、どういうものか」。まず、大蔵省にきいてみました。
国際機構課の今村英章係長は、こうこたえます。
「米ドルは取引量の外貨準備も大きい。”有事のドル買い”といわれるように最後はドルに頼ろうとする。こうしたことを勘案すると、米ドルが基軸通貨であることはだれもが認めるところだ」

実際に、ドルが一番利用されているという実態面からの、基軸通貨の説明です。
たしかにドルは、世界の貿易の48%(92年)、外貨準備の57.1%(97年末)国際債の45%(97年)を占めています。

(参照1)歴史的に見るとどうなのでしょうか。19世紀半ばごろからの、世界資本主義の生産と貿易の拡大に伴って、基軸通貨が生まれました。恒常的で多角的な取引を決済するには、単一の通貨のほうが効果的だからです。

当時、「世界の工場」といわれたイギリスは、世界各国に工業製品を輸出、同時に原材料の輸入を活発におこないました。イギリス通貨のポンド建て貿易が世界に広がりました。ポンドが最初の基軸通貨の地位につきました。

国際金融の専門家、今宮謙二中央大学教授は、一般に

(1)通貨価値が安定している
(2)世界経済のなかに占める経済力が大きく、輸出入も大きい
(3)国際金融市場が発展していること

−−などが基軸通貨になる条件と指摘。
そのうえで、「現在の基軸通貨をわかりやすくいえば、貿易や資本取引など(参照2)国際取引の決済に使用される通貨の中核としての役割を果たすもの」と、説明します。

今宮さんは、同時に「基軸通貨は市場の要因だけではなく、政治・軍事力が強大な超大国、覇権国家の存在と密接に結びついていることが特徴だ」と強調します。
基軸通貨となった特定国の通貨は、国際的支払手段として、あるいは資産の運用、外貨準備などにも利用されます。

■ユーロは将来なれるのか

ちなみに、マルクやフランなど欧州11ヶ国の通貨を一つに統合したユーロは将来、基軸通貨になるのでしょうか。

欧州の金融に詳しい益田安良・富士総合研究所主任研究員は、「ユーロはドルに迫る存在になる」とみています。
ユーロ統合11ヶ国の経済力はアメリカに匹敵することなどを指摘したうえで、益田さんはこういいます。
「欧州は、アメリカの好き勝手にさせないよう、ユーロを将来の基軸通貨にしたいという強い意志を持っている。
一方、ドルの地位は長期低落傾向にある。ユーロへの信認は高い」
すでに中国は外貨準備に占めるユーロの割合を高める意向を明らかにするなど、ドルからユーロへの乗り換えがはじまっています。

とはいえ、ポンドからドルへの移行は数十年かかりました。ユーロが地位を高めていくにしても、時間のかかる話です。

■不安定性の問題どうする

基軸通貨を考えるうえで、大事なことの一つは、通貨の安定です。ドルが下落すると、他国のドル建て資産も減価します。ドルの不安定性は、世界の貿易や各国経済に悪影響を与えます。

ある特定の国の通貨が基軸通貨となっていることは、もともと矛盾と問題をはらんでいるといいます。
基軸通貨国には特権が生じ、その他の国とは利害が異なるからです。

基軸通貨国は、自国通貨建てで国際取引ができるため、為替変動リスクの心配がほとんど ありません。
さらに、自国通貨で対外支払いができるため、国際収支の制約を受けません。実際アメリカは、経常収支の赤字を拡大しつづけ世界最大の借金国となっても、途上国のように外貨準備が減るとか対外的破産に陥ったり、IMF(国際通貨基金)に構造調整を強いられることもありません。

ドルが金との対外交換を停止し、変動相場制に移行。アメリカの赤字の垂れ流しでドル不安がいっそう激しくなりました。そこで、ドルを安定させるため、各国に国際協調が求められます。しかし、米国の利益のために他の国が犠牲を強いられます。
典型的なのが、米日独など5ヶ国による85年の「プラザ合意」。ドル高を是正するため、アメリカは日本に低金利を要求。その結果、日本はバブルになりました。

今宮さんは、最後にこう強調しました。「アメリカは本来、基軸通貨国としてドルを安定させる責務がある。ところが逆に、投機をあおる金融自由化をすすめていっそう不安定にしているところに問題がある。世界の貿易と金融を円滑にすすめるうえで、基軸通貨の安定は重要な問題だ」

(参照1)基軸通貨の歴史
19世紀には、世界貨幣である金にかわって、英国のポンドが基軸通貨になりました。この時代は、英国をはじめ世界各国の政府が通貨と金との兌換(だかん=交換)を約束する金本位制度でした。
第二次大戦後、唯一の経済大国アメリカのドルが基軸通貨の役割を担うようになりました。各国の通貨は、IMF協定によってドルとの交換レートを一定に保つ、固定相場制となりました。
しかしアメリカは、金本位制度を停止しており、ドルは単に海外の友好国政府にたいしてのみ、金一オンスと35米ドルで交換できるだけの通貨でした。
そして71年に、アメリカが金とドルの交換を停止したにもかかわらず、今日まで依然ドルが基軸通貨として存在しています。

(参照2)国際的決済の中核
基軸通貨を経済的に限定してとらえれば、多角的な国際的決済を担う通貨といえます。
現実には、多角的決済はニューヨークの国際金融市場でおこなわれています。各国は、対外取引きのため、アメリカの銀行の預金口座に、ドル建て預金残高を持ち、それを支払いにあてています。
アメリカを除く二国間の決済も、アメリカの銀行の預金口座内の振り替え取引きをする場合が多いのです。

1999年1月12日付「しんぶん赤旗」


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