FERRARIとヨシムラ(07/12/1999)
1986から89年まで バイクのTT-F1のメカニックをしていました
86・87年は あのヨシムラから85年ワークスマシンを借りていたのですが
自分が今までメンテした乗り物の中で
一番印象に残っているのが このヨシムラGSX-Rです
当時メーカー以外では 最強のマシンでホンダ・ヤマハ・カワサキなどの
メーカーワークスに立ち向かい戦っていたヨシムラのマシン作りが 細部に渡って施されていました
他メーカーが水冷エンジンを使っている中 油冷エンジンというハンデを乗り越えるため
異常とも言えるほどの軽量化 マスの集中化がされており 例えばオイルクーラーステーなどの
ステー類は これでもかというほどの 軽量穴が開けられていました
しかも その処理が本当に美しかったのを覚えています
又 フレーム、エンジン、カウル類が とてもきれいに磨き上げられていて
触るのがもったいないくらいでした
レースウィークの金曜日 公式練習開始前
鈴鹿では20分ほど前から コースインゲートという所へ
整備の終わったマシンをメカニックが並べるのですが
この頃は(今はどうか知りませんが・・・)
まだまだ和やかな雰囲気で
各ワークスマシンを 間近で見られる数少ないチャンスでした
自分などは遠慮もせずに ワークスマシンの脇にしゃがみ込み
「へぇー ここはこうなってるんだ」
なんて 観察していました
その中で ひときわ美しかったのがヨシムラワークスのマシンで
もう アルミ部品なんてピッカピッカで 贅肉の全く無いピッカピカの
パーツで組まれたマシンでした
まるで抜き身の日本刀のような迫力があり 近寄りがたかったのを覚えています
そのヨシムラから1・2年落ちとは言え お借りしているマシンです
当然 うちのチームに来たから薄汚れたなんて 思われたくなかったので
相当神経を使いました
毎日 整備が終わると掃除です
掃除というより磨きでした・・・
しかし そうして各パーツを磨くと 例えばアルミパーツにクラックが
入っているとすぐに分かります
量産車のパーツと違って強度限界まで軽量化されたパーツですから
走行後のクラックチェックは 欠かせなかったのです
この頃は 故POPヨシムラさんが現役で ヨシムラさんのマシンに対する
考え方を垣間見る思いでした
又 当然ながらエンジンもすばらしく エンジンのウォームアップの時
PITでブリッピングして エンジンを温めるのですが
その時のエンジンが スロットルのミリの動きに連動してレスポンスし
とても気持ちよかったです
後に RC-30やOW-01などのメンテもしましたが
これほどのレスポンスはありませんでした
自分はどうしても POPヨシムラ氏とエンツォ・フェラーリ氏が
だぶって仕方ありません
どちらも エンジン屋でパワー至上主義 そして何よりレースを愛し
レースに対して 鬼のような精神力で挑まれていたからでしょうか
うちの328で ブリッピングする時 ヨシムラGSX-Rを思い出すのは
「FERRARIとヨシムラ」
どちらも同じ思いを込めて 作られたマシンだからかも知れません