DA60系

 

Left to right DET 1(Marconi), DET 1 tubular(Marconi), and DET 1 S.W.(Marconi) 

DET1DET1SW

 DA60 を紹介する前にその前身となったと思われるDET 1 を紹介しておきます。 Marconiの代表的送信管と言えるDETシリーズの第1号がこのDET 1です。 登場時期に関しては資料が少ないので断言できませんが、1920年代まで遡ると考えるのが自然と思います。
 左はその初期タイプのDET 1 で、ナス管のトップ排気。 画像では分かりませんが内部の構造は、下のDA60 のプレートとは異なり丸みの有る扁平のニッケル製です。 また、プレート両面には補助の支柱が取り付けて有り、ステムの部分に金属板で固定するようになっています(DA60 には有りません)。 かなりしっかりした構造です。
 フィラメントは、逆V字型の1本吊りでトリタンタイプです(DA60 はM字型の2本吊り)。 プレート電圧は、MAX1000Vでこの初期タイプのプレート損失は35W(後に40W)となっています。
 中央は、DET 1 の新型管です。 外観上は、フィラメントが旧型同様逆V字の1本吊りで有るところ以外、DA60 新型管と区別できないほど似ています。
 内部の構造は、旧型と全く異なり、プレートの側面にかなり大型の(断面がコ字型)支柱を取り付け固定するという独特の支持方法を採用しています。 かなりの剛性を確保していて、プレートの放熱にもまたかなり貢献していると思います。 この様な2本の支柱の間にプレートを取り付けた構造の真空管は、DET 1 とDA60 以外ちょっと思いつきません。
 右端は、DET 1 から派生したDET 1 S.W. です。 S.W.(Short Wavelength)の名前のとおり、DET 1 より高い周波数を目指した送信管です。
 古典的なダブルエンドタイプ(上と下 両方にガラスステムを持つタイプ)で、下からはグリッドとフィラメントだけを支持しています。 それに被せるようにプレートを取り付け、上のステムでその支持金具を固定して有ります。 初期の大型送信管に良く見られるこの様なダブルエンドタイプの場合、排気は なんと側面で行っています。 このDET 1 S.W. でも画像では見にくいかもしれませんが、側面やや上部に排気用のチップが有ります。
 画像では、他の真空管と同じ大きさに見えますが、ベースを含む全長は25cm有ります。 ベース(L4タイプ)部分の大きさは全て共通ですから、その大きさの違いが判ると思います。
 DET 1、DET 1 S.W. とも用途は送信管として造られましたが、オーディオ用にも適したスペックを持つ真空管と言えます。
  


 

Left to right DO60(Mullard), DA60 earliest type(Osram), DA60(Marconi) and DA60 tubular(Osram)

DO60DA60

 左はMullard のDO60 で、DA60 同等管です。 このDO60 にもDA60 同様下敷きとなった送信管DO40(DET 1 同等管)が存在します。
 このDO60 の登場は、1930年頃と思われます。 前身の送信管からオーディオ用に発展したため、1920年代の送信管の特徴を引き継いだような形状となっています。
 プレートは、送信管に多用されたモリブデン合金のようにも見えます。 また、フィラメントの下の支持金具はM字型金具、テンションを調節する役目も有る吊り金具は、大型のS字型スプリングとなっており、Mullard の1920年代送信管の特徴が良く残っていると思います。
 大型のナス管形状、トップ排気、茶色のベース、丁寧な造りと綺麗な真空管が多い欧州管の中でもトップクラスの球と言えます。
 2番目は、Osram のDA60 初期タイプです。 DET 1 よりパワーアップしたプレート損失60Wで、フィラメントも十分なエミッションを確保するため2本吊りM字型としています(フィラメント電流も2倍の4A)。
 プレートは、炭化処理をしたニッケルと思います。 角張ったプレートで、その四隅でステムに金属板を介して固定した4本のピラーを覆うように取り付けられています。
 当時の価格は、PX25 の4倍以上でした。 PX25 自体かなり高価な真空管でしたから、DA60 が当時一般ユーザーの手の届くような品物で無かった事は想像に難くないところです。 DO60 同様堂々たる雰囲気を持つ真空管です。
 次のDA60 は、排気をガラスステムから伸ばしたガラスチューブで行い、ベース内部に納めてしまうボトム排気に移行した新しいタイプです。
 画像では、撮影位置の関係で旧タイプより大きく見えますが、実際は同じ大きさです。   内部の電極構造は、旧タイプとほとんど同じですが、フィラメントの支持方法が少し簡略化されています。 以外と数の少ない真空管です。
 最後は新型管のDA60 です。 DET 1 のケースと同様、構造は一新されています。
 肉厚セラミック板を間隔材とし、コの字型断面のしっかりした支柱の両面にプレートを1枚づつ溶接で取り付けて有ります。 プレート自体が構造材でもあるという独特のスタイルです。
 トリタンフィラメントの暖かみのある光が白いセラミック板に反射し、如何にも真空管と言った風情を見せてくれます。
 


 

Left to right MZ05-60(Mullard) and MZ05-60 later type(Mullard) 

MZ05-60

 DO60,DA60 同等管の一つMullard MZ05-60です。 DA60 等と違うのは、オキサイドコートフィラメントを採用している点で、6V 1.7Aとかなりの省電力タイプとなっています。 フィラメント材質の違いの関係もあると思いますが、プレートはかなり大型の物となっています。
 左はMZ05-60 の旧タイプで、後の改良型が右のタイプとなります。   旧タイプは、プレート両サイドに取り付けられた大型支柱と、フィラメント吊り金具を支持するセラミック製大型リングの存在が特徴です。 この辺は、親会社のPhilips の影響も有るように思います。
 改良型は、プレートを支持する支柱をガラスピラーから直接立ち上げ、またプレート上下に新たに設けた2枚のマイカ板をガラス内壁に接触させる(特に上のマイカ)ことで電極全体を支持する方法に変わっています。 この構造の変化は、一般的にナス管からST管に移行した際に取られた手法と全く同じです。
 DO60、DA60 のプレート電圧はMAX500Vですが、このMZ05-60 はMAX650Vとなっています。 フィラメントの仕様は異なりますが、同じMullard のDO60 の後継品種かもしれません。
 最後に、もうお気づきと思いますが今回紹介した真空管は全てL4 (Large 4 pin) と言う一般には余り見かけないベースを採用しています。 このL4 ベースは、欧州でも英国だけに採用された規格で、1920年代中頃に登場し、一部の中、大型管だけに採用されました。 今回登場した真空管以外でこのベースを持つものは、数えるほどしか無いと思います。
 因みに、このタイプのソケットは、縁のある四角いお皿のような感じで(真空管のピンがバネ状になっているため)差し込むだけで固定できるようになっています。
  


TUBE DATA
ITEM	Vf(V)	If(A)	Va(V)	Vg(V)	Ia(mA)	Ri(ohm)	Gm(mA/V	u	Ra(ohm)	Po(W)	Pa(W)
DET 1	6.0	1.9	1000			6500	1.7	11			35
DET1SW	6.0	2.0	800 			5000	1.7	8.5			40
DO60 	=DA60
DA60	6.0	4.0	500	-135	120	835	3.0	2.5	3.0K	10.5	60
MZ05-60	6.0	1.7	500	-120	120	940	3.2	3	2.0K	11	60

[HOME/GALLERY]