わさび通信第67号 (98年12月3日)
深刻な財政危機に陥っている大阪府は、9月25日、府建設事業再評価委員会を発足させ、事業採択後5年経っても未着工の事業や、事業採択後10年以上経っても完成しない事業など34事業について、中止も含めた再評価いわゆる「時のアセスメント」を行っています。この34事業の中に、高槻市内の「檜尾川砂防ダム建設計画」(→地図参照)が入っています。
大阪府によれば、ダムの規模は高さ11.5b、幅78.4b、事業費は8億円、用地は60%のみ買収済とのことでした。檜尾川は天井川で、対象流域は土砂の流失が多いため砂防施設が必要であると、89年に策定された計画です。
早速、私は、檜尾川周辺の皆さんと現地視察や調査を行いましたが、この砂防ダム建設計画には、不透明なことが多く、緊急な必要性があるとはとても考えられません。主な問題点は、以下のとおりです。
@ 10年前に計画されたこの砂防ダムは、上流からの土砂をすべてとめるクローズド型である。この型のダムは日常的に土砂がたまり、災害時逆に危険である。現在は大きな岩石のみをとめるスリットタイプなどが推進されている。
A 8億円もの砂防ダム建設に関し、地元高槻市や地元団体からの文書による要望書が、大阪府にも高槻市にも一切ない。
B 檜尾川上流のこの場所に、なぜこの大きさのダムが必要なのか、根拠がまったく明らかになっていない。
C 10年前に比べ、檜尾川は下流で改修が進み、計画地に早急に砂防ダムを必要とする理由が見あたらない。
建設事業再評価委員会は、再評価の結果を来年度の予算に反映させるため、12月中に答申を出す予定です。そのため、私は問題の多いこの事業の中止を求める意見書を委員会に提出しました。
財政危機に瀕している大阪府ですが、10年前に比べ府税収入は増えていません。しかし、府債(府の借金)は増え続け、それに比例して土木費も膨らみ続けてきました。府が、今しなければならないことは、福祉や教育を切り捨てるのではなく、膨らみ続けた土木費を抑え、借金が前提となる公共事をストップすることです。まして、檜尾川砂防ダムのような不要不急のダム建設は中止するべきです。
アメリカでは、生態系への影響、コストの面などから、93年にダム建設中止の方針を明らかにしています。山崩れを防ぎ、土砂を流さないためには、山の開発をやめ、森林整備に力をいれるべきです。
*刑事裁判も終了し、不正受給分も返還されましたので、本文は2003年11月に削除しました。