私の主張

 「戦争ができる国」をめざすあぶない教科書にNOを!
             
(日本消費者連盟関西グループ「草の根だより」2005年7月号NO340掲載)


<あぶない教科書>

憲法改悪、教育基本法改悪の危機が迫っていることを多くの人が感じている。すでに自衛隊の装備はアメリカに次ぐ力を持っているし、周辺事態法、テロ対策特別措置法、武力攻撃事態法、国民保護法など、いつでも戦争ができる態勢が既成事実化されてきた。改悪側の残る課題は、憲法9条の改悪と戦争に積極的に加担する意識をつくり出すことになった。
 この戦争を肯定する意識をつくりだすため、96年12月、「新しい歴史教科書をつくる会」が結成された。「つくる会」は教科書から従軍慰安婦の記述を削除するように申し入れるなど、教科書採択に対する戦略をたて、2001年の中学校教科書採択に照準をあて、二つの取組みをした。
 その一つが、扶桑社版『歴史』『公民』の教科書を検定に合格させ、発刊することだった。
 しかし、その内容は自民党の憲法改悪案の先取りとも言えるもので、「大東亜戦争」を肯定し、「戦争ができる国」をめざすものであったため、「あぶない教科書」として大きな反発を受け、中国や韓国からも批判された。

<現場を知らない教育委員が決めていいのか>

「つくる会」のもう一つ取組みは採択制度の変更だった。学校で使う教科書を決めることを採択というが、従来は次のように行われていた。

@教科書採択は4年に1度行われる。

A採択2年前に、教科書発行者は学習指導要領をもとに、教科書を編集する。
B採択1年前に、発行者から申請のあった教科書を文部省が検定をする。
C採択年には、8月末頃をめどとして、公立学校では所管の教育委員会が、私立・国立では校長が、採択を終える。
D採択された教科書の需要数が大臣に報告され、発行者が印刷し、翌年4月に子どもに渡される。

そして、Cの採択時には、現場の教員の声が尊重され、採択されていた。ところが、「つくる会」は教科書採択権は現場の教員になるのではなく教育委員会にあると主張し、地方議会などで議員に質問をさせ、採択に際し、現場の先生の声をできるだけ反映させないよう、教育委員が決定するようにさせた。

<「リベンジ」を狙う「つくる会」>

 しかし、結果的に扶桑社の教科書はほとんど採択されなかった。私学や都立の養護学校など単独校でしか採択されず、公立の学校の採択区はゼロであったため、全国10%シェアをめざしていたにもかかわらず、0.038%だった。
 そこで、2005年採択に向け、
「リベンジ(復讐)」と称して、この4年間活動を強化してきた。
 その一つが「つくる会」側の教育委員を増やすことである。教育委員(5名)は、議会が同意して首長が任命することになっている。園遊会で「日本中の学校で国旗を揚げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と発言し、天皇にたしなめられた米長邦夫氏(永久棋聖)は、石原都知事が任命したが、選挙で首長をとり、「つくる会」支持の教育委員を増やしてきた。
 さらに3月には、文科省から採択の教育委員会会議の非公開を求める等の通知をださせた。
 また、市町村教育委員会の採択時には都道府県教育委員会が策定した選定資料を参考にすることになっているが、この資料や観点も改悪させた。都道府県議会で議員が改悪を求める質問をしたり、与党多数を利用して請願・陳情を採択させているのだ。その結果、7月13日に
栃木県大田原市では、全国で初めて採択区レベルでの扶桑社の教科書が採択されてしまった。各地から撤回を求める声が大田原市に寄せられているが、まだ他にも危険なところがある。

<草の根市民のネットでNO!を>

 戦争を繰り返すなというのは誰しもの願いだ。世論調査でも9条改悪を望まない人が多数をしめているが、この声が反映されずに戦争ができる国づくりが進められていて、地方議員としてさまざまな場で危機感を感じる。
 この夏、まさに今、次の世代の子どもたちに戦争を賛美するあぶない教科書をわたさないようにと、熱い戦いが各地で繰り広げられている。草の根市民のネットワークで、戦争への動きに対して、一つずつストップをかけていこう!