私の主張

 国民保護法案っていったい何だ!−明日から戦時−
                  (
日本消費者連盟関西グループ「草の根だより」2004年
5月号掲載)

    
<年金問題に隠れている重大法案>

 国民年金法案が十分な国会審議もなく、私たちへの説明責任も果たされないまま採決されるようとしている。 

 しかし、この年金問題の影で、重要な法案が審議されているのだが、このことがマスコミでもほとんど報道がなされていない。それは、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案」である。略称「国民保護法案」といい、10194条からなるかなり長い法律案だ。

 昨年有事
3法が成立したが、これはあくまでも基本的なことが書かれているだけで、実際には、今国会に提案されている有事7法案が成立しなければ、戦争準備はできない。「国民保護法案」はこの中で一番私たちの生活に深く結びついた重要な法案なのだ。

 
414日に衆議院に提案され、現在「武力事態対処特別委員会」で審議されているが、すでに513日に一般審議が打ち切られ、公聴会も開かれないまま520日ごろには委員会採決、本会議採決があり、衆議院で成立予定とのことである。シナリオは年金法案とまったく同じで、参議院選挙前にすべて片付けておこうということだ。
 

<「日常」が「戦時」になってしまう法律> 

 『国民保護』というと、いざという時私たちを助けてくれる法律かと思うとそうではない。実は、戦時のために、平時から計画を立て、戦時に備えた体制をつくっていこうというものだ。まさに日常から『戦時』にしようという法案なのだ。

 したがって、法案が成立すると、まず都道府県、市町村、医療機関、通信機関(マスコミ)等は、政府の指針に基づき保護のための計画をつくらなければならない。そして保護のための避難訓練等がなされる。あくまでも強制ではなく、基本的人権は尊重されるとあるが、罰則も明記されていて、私たちも協力しなければならなくなる。つまり、戦時に備えた地域での統制が強化されるようになる。

 また戦時にそなえた啓発活動も行われ、子ども達の教育現場でどのような教育が行われるのか、きわめて危惧される。

 しかも、いざというときには高齢者やこども、障害も持っている人の避難こそ優先されるべきだが、このような人たちへの特別な対応は考えられていない。シュミレーションした鳥取の自治体では全員の避難など不可能と言っており、幹線道路を自衛隊等が優先的に使えば、住民避難はますます困難になる。また放射性物質や生物剤等の汚染拡大防止策も書かれているが、あまりにも非現実的である。

 そして、戦時かどうかは首相官邸に設置された安全保障会議が判断するのだが、アメリカの情報にのみ頼っていると、アメリカの判断で日本が戦時として対応しなければならなくなるかもしれない。

 現に法案では実際に攻撃された際の私たちの保護よりも、物資の収用や輸送に力点が置かれており、これは米軍への協力法案だとの指摘もされている。

<知らない間に法律ができていいのか> 

 この法律案では、戦時に備え、地方自治体が果たす役割が極めて大きいし、住民自身の権利も制約されることがある。

 地方分権社会がめざすのは、身近な自治体が多くの権限をもち、住民ニーズに合ったまちづくりをし、住民自治を進めていくことであった。しかし、自・公に支えられた小泉政権は、国民保護法案のように、市町村の仕事にしばりをかける法律を次々と成立させ、地方分権、住民自治を骨抜きにしている。

 私たちを保護するためには戦時にならないように外交努力をすることが大切だと思う。法律案の内容をもっと明らかにし、時間をかけて審議をすべきだし、私は、この法案も廃案にすべきだと考えている。(5/16記)

*有事関連法案には、既に3法律が成立しています(武力攻撃事態対処法、改正自衛隊法、改正安全保障会議設置法)。
 今国会で立法化されようとしている7法案は次の通りです。
(1)外国軍用品等海上輸送規制法案
(2)米軍行動円滑化法案
(3)自衛隊法改正案
(4)特定公共施設利用法案法案(一部では「交通・通信利用法案」とも呼称)
(5)国民保護法案
(6)国際人道法違反処罰法案
(7)捕虜等取り扱い法案