私の主張

有事法制3案の廃案を!
    憲法の3原則「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」を守りぬこう!
                     (日本消費者連盟関西グループ「草の根だより」20
02年5月号掲載)

<戦争放棄の憲法第9条>

 二度と悲惨な戦争を繰り返さないと誓った日本国憲法には3つの原則がある。「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」だ。

平和主義については、憲法の第2章に「戦争の放棄」の章を設け、第9条には【戦争の放棄,軍備及び交戦権の否認】として、次のように書かれている。

(1)日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。

(2)前項の目的を達するため,陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。国の交戦権は,これを認めない。

 この憲法9条を読めば、日本は軍隊をもつことはできないし、戦争はできないことが明らかだ。

<世界第3位の軍事大国>
 
 しかし、92年PKO協力法、99年周辺事態法、2001年テロ対策特別措置法などにより、自衛隊は災害救助だけでなく海外での活動を拡大させてきた。防衛白書によれば、日本の防衛予算はすでに世界第3位である。「9条」があるから日本は戦争をしないのだと思い込んできた人も多いと思うが、攻撃されたときには守ることができるという「専守防衛」の名のもとに、莫大な税金が防衛予算として使われ、陸・海・空の装備が整備されてきたのだ。

<憲法違反の有事法制3案>
 
 このような中で、現在、国会で審議されている「武力事態攻撃法案」「自衛隊法改正案」「安全保障会議設置改正案」のいわゆる有事法制3案は、憲法の定める平和主義の理念に反し、日本をいつでも戦争ができる国にする法案だ。したがって、有事法制3案は憲法違反の法律であり、多くの問題点を抱えている。

  まず、「武力攻撃事態法案」は「武力攻撃事態」への対処に関する法律であるが、この「武力攻撃事態」「武力攻撃のおそれのある事態」「武力攻撃が予測される事態」とはそれぞれ具体的にどのような事態なのかについては、国会答弁もあいまいなままである。

 武力攻撃事態」等の定義もあいまいなうえに、「武力攻撃事態」に対処する基本方針等は安全保障会議で検討し、閣議で決定、国会は事後承認となっている。これでは国民主権とはとうてい言えない。

 また、「武力攻撃事態」に対処するため、地方自治体は「必要な措置を実施する責務」があるのだが、何をどのように実施するのか、これもまったく不明である。5月17日に、防衛庁や総務省などが慌てて都道府県防災担当者に説明したというが、都道府県レベルでは十分な議論もなされていない。まして高槻市などの市町村レベルには、説明すらなされていない。地方自治体に係る重大な法案を、地方の声も聞かずに国会だけ、しかも短期間の審議で採決するなど、地方分権の趣旨や民主主義の原則に反する。

 この地方無視に対し、5月17日国立市長は政府に44項目にわたる質問書を提出したし、三重県議会は法案撤回の決議を行っている。

<私権が制限される>

重要なのは、私たちの権利、基本的人権が制限されるということだ。法案では、「憲法に保障される国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するための必要最小限のものであり、公正かつ適正な手続きの下に行われなければならない」とされており、基本的人権が制限されることを明文化している。しかし、その制限内容や適正な手続きは明らかにされていない。

そして、自衛隊法103条との関係で、輸送・建設・医療関係者などには従事命令が出されるし、スーパーなどには食糧保管命令が出され、従わないと罰則がある。米保管命令などが出されると、私たち市民には売ってもらえなくなる。また、自衛隊がここに陣地をつくりますと言えば、土地はとりあげられてしまう。このように、有事法制3案では、武力攻撃事態になると、私権が制限され、市民生活に大きな影響を及ぼす。

また、法案では、警報の発令や避難の指示、国民の生命・財産を保護する法など「事態対処法制」の整備は、2年以内を目標に行うこととされている。余りにも不透明との地方自治体からの批判に、「国民保護法制案」(仮称)が20日までに都道府県に通知されたというが、私たちには具体的な中身は何も示されていない。このような法律の全体像が見えないまま国会で審議し、議論が不十分なまま強行採決するなどということは、法案審議過程から民主主義を踏みにじる行為である。

まして、新しい制度をつくるときは必ず予算が伴う。財政難といいながら、全体像を明らかにせぬまま制度をつくってしまうことは暴挙というほかない。限られた財源の中で、福祉や社会保障、教育を切り捨て、防衛予算だけは突出させていくに違いない。

<アメリカの戦争に参戦のため>

 武力攻撃事態、つまり、日本国内がすぐさま戦場になることは、政府も考えにくいと答えている。ではなぜ、ここまで強行に法案を成立させようとするのか、それは、アメリカの戦争に参戦するためだ。今もアフガニスタンへの攻撃を続ける米軍に、半年間期限を延長して、インド洋で海上自衛隊が燃料補給を行っているが、もっと大規模に民間人も動員して米軍と行動をともにするためなのだ。

<有事法制3案の廃案を!>

 1938年公布された国家総動員法第1条には第一条 本法ニ於テ国家総動員トハ戦時(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ際シ国防目的達成ノ為国ノ全力ヲ最モ有効ニ発揮セシムル様人的及物的資源ヲ統制運用スルヲ謂フ」とある。

有事法制3案により、憲法9条がないがしろにされ、戦争がいつでもできる状態の社会というのは、基本的人権が制限され、本人同意無しに戦争に協力させられる社会であり、財産も物資も取り上げられる社会である。まさに戦前の国家総動員法下の社会と同じ社会ではないか。21世紀版国家総動員法が今つくられようとしているのだ。
 5月20日現在、5月末に衆議院本会議で採決される可能性があると聞く。でも本当に心の底から有事法制をどれだけの人が望んでいるのだろう。4月17日に提案され、連休もはさみ、まだこの法案の中身やその重大性に気づいていない人にほうが多いのではないか。

昨夜、大阪・扇町公園では、5・20有事法制反対関西集会が開かれた。呼びかけは陸海空交通運輸関係14労働組合であったが、宗教関係者や市民運動グループの参加もあり、5600名が参加、2つのコースに分かれてのデモがあり、私も中央郵便局前まで高槻市民の皆さんとともに歩いた。

 小泉内閣は、有事法制3案を6月19日の国会会期末までに成立させようと目論んでいる。まさに多くの人がサッカー・ワールドカップに心奪われている間にだ。あの戦争で、私たちの親や祖父母たちの世代が何に苦しんだのか、アジアで、沖縄・広島でどれほど悲惨な行為が繰り返され、多くの命が奪われたか、もう一度思い起こそう。そして、日本の戦争国家への道を開く有事法制3案に対し、反対の声をあげよう!(5月21日記)