私の主張

防災公園計画は都市公団の延命策だ!
(日本消費者連盟関西グループ「草の根だより」200
2年1月号掲載)

震災以後の防災体制
 阪神淡路大震災からはや7年。わずかな揺れを感じても、地震や震災という言葉をきくだけでも、私の体にはあの朝の恐怖がよみがえってくる。大震災以後、地震は防げないが震災は私たちの力で軽減できると、自治体もようやく防災に力を入れ始めた。
  たとえば高槻の場合、95年当時、防災計画はあることはあったが、直下型地震を想定していなかったし、また災害用備蓄資材も種類、量ともにお粗末きわまりないものだった。ところが現在では直下型地震も想定し、地震でも有馬高槻構造線、南海トラフなど6つの場合を想定した防災計画ができている。高槻で地震の被害が最大になる想定は、有馬高槻構造線でマグニチュード7.3の地震が冬の夕刻に起きた場合で、表のような被害がでるとしている。これにあわせて小学校の空き教室等24ヶ所に資材等を備蓄したり、公園などの地下に貯水タンクを整備したりしてきた。また、いざというときの避難所を示すマップもできている。これらを網羅した最新の「高槻市地域防災計画」を読む限り、現状で万全の備えをしているかのようである。

高槻市地域防災計画における最大想定地震の比較

1995年当時

2001年度

地震の規模
地震の発生場所

マグニチュード8.0〜8.4紀伊半島沖

マグニチュード7.3
有馬高槻構造線

地震発生時

冬の夕食時

冬の平日午後6時

建造物全壊棟数

345棟

8965棟

建造物半壊棟数

755棟

16852棟

出火件数

13件

30件

罹災人口

約21536人

112432人

<降って沸いた防災公園計画>
 
もし防災面でまだ不十分な点があるなら、まず災害に強いまちづくり計画を策定し、年次計画をたて、計画的に整備していくべきだ。
 ところが、さる12月議会で、関係する計画も無いのに突然、北部地域(古曽部町)に5ヘクタールもの防災公園整備のための土地鑑定費用が、補正予算(2社、400万円)として計上された。聞けば、「大丸」のグランドや寮、研修所用地が売りに出されている。市街地ではめったにない広さの物件であり、民間業者もマンション建設等で確保したいようだが、「防災公園街区整備事業」という制度をつかえば、市負担分が少なくて防災公園が整備できる。この制度とは、「都市基盤整備公団」(以下「都市公団」という)が大丸から一括して買い上げ、防災公園として整備したのち、高槻市が一括して引き取るというものだ。防災公園という名称であるがが、現在のグランド等は野球場や多目的広場として改修し、寮の跡地には体育館を新設し、残りの部分の整備内容は未定という。
 また、予定地は有馬高槻構造線の真上にある。活断層上には、体育館などの公共施設を建設するべきでない。いざという大地震の際に、避難所として機能するかも疑わしい。

<「防災公園街区整備事業」のからくり>
  95年震災時にも、公園の重要性が指摘された。緑の憩いの場としても、また災害時の避難場所としても、都市における公園は複合的な機能をもつ。公園には本来、防災機能があり、あえて「防災公園」というのなら、他の公園とどのように違うのか疑問に思い、建設環境委員会で質問したが、明確な答弁はなかった。それならば、単なるスポーツ施設をあわせもつ公園ではないか。
 また、市が直接整備するよりも都市公団を介するほうが総事業費は安いというのも解せない。からくりは、国から都市公団に多額の補助金がおりるため、市の負担額は、市単独事業よりはるかに少なくてすむようになっているのだ。特殊法人の都市公団が介在したほうが自治体の負担額が少なくなるというのは、地方分権の流れとは逆ではないか。また、たとえ市の負担額が少ないからといっても、国からの補助金はもともと私たちの税金ではあり、多額の税金が仲介の特殊法人に吸い取られているだけである。
 都市公団が行うこの「防災公園街区整備事業」は、99年度の政府の第二次補正予算で盛り込まれた1000億円の事業である。他市でも、大手企業の工場跡地などを自治体が直接買うのではなく、公団が取得し整備して自治体に引き渡している。
  つまり、この事業の実態は、公団の土地ブローカー、ディベロッパーとしての仕事を確保し、公団関連業者の事業をつくるために税金が投入されているだけである。同時に、広大な遊休地をもてあましている大手企業、青色吐息のゼネコンの救済策になっているだけではないか。

債務16兆円の都市公団>
 都市公団の歴史には紆余曲折があった。日本住宅公団と宅地開発公団が81年に統合され、住宅・都市整備公団となった。「国民に健康的で文化的な住宅を安価で供給する」という当初の理念とはかけ離れた事業実態になり、その存在価値が問われたが、99年都市基盤整備公団として生き残り、ディベロッパー業務を行う。問題の財政投融資を頼りに、放漫な経営体質が続き、「塩漬け土地」を多数抱え、2000年度末には約16兆4千億円の負債を抱える。天下り官僚が多数を占める役員の報酬は特殊法人のなかでも最高クラスであり、大改革を要する特殊法人の筆頭に上げられる。
 小泉改革で公共事業の抑制と声高に叫んでいるが、「防災」に名を借りたこの「防災公園街区整備事業」は、まさに小泉改革の欺瞞性を示すものだ。国も地方も財政状況が厳しい折、大型公共工事はストップすべきだ。もし小泉内閣が本気で改革を進めるのであれば、このような公団を介すれば自治体の負担が少なくてすむという制度は即刻廃止すべきだ。

 地方分権の時代、地方から政府の政策を問い直していかなければならない。特殊法人を温存し、湯水のごとく税金を使う体質が一向に改まっていないことに私は怒り心頭に達している。これからも、生活の場から草の根市民の視点で追及を続けていきたい。