私の主張

政務調査費の透明化を!
日本消費者連盟関西グループ「草の根だより」2001年4月号掲載)

<地方議員の仕事はまず調査>
 「調査なくして発言権なし」、この言葉を、私は議員活動の原点にしている。
 議員の仕事は、まず市長提案の議案をチェックすることから始まるが、行政の施策の問題点を見抜くには、行政から出てきた資料だけを鵜呑みにしているとごまかされ、何も見えてこない。税金の無駄遣いを数多く指摘してきた尼崎市議の丸尾牧さんは、質問するにあたっては、「加工」資料ではなく、「原」資料にあたると言われていた。その「原」資料も実際はどうなのか、現場へ行き、自分の目で確かめれば、本当の問題がもっとよく見える。そして時間をかけ、体を使って問題点を実感してこそ、初めて説得力ある言葉が出てくる。政策づくりを仕事にしているプロの職員に、問題点を指摘し、草の根市民の視点で政策提言するには、何よりも時間をかけ体で体得した言葉で説得するの一番強い。


<資料は議員の命>
 調査といえば、まず体を使って現場に行くことだが、それとともに大切なのが貴重な資料をいかに早く手に入れ、それを読みこなすかである。元堺市議・長谷川俊英さんは「資料は議員の命」と言われたが、行政の資料や一般に出版された本とともに、私の場合、各地の市民運動のミニコミ紙も貴重な資料だ。
 もともと議員になる前から市民運動に関わっていたし、ミニコミ紙の購読という形で多くの市民運動を支援してきたが、議員になってからはどんどん購読紙が増えた。手元に届けばその日のうちに目を通し、これはと思うものはコピーをとって、関係するファイルに入れている。10年間の議員活動のなかで、私の質問のテーマの多くは各地のミニコミ紙からであった。草の根市民派の私にとっては、ミニコミ紙は議員の命なのだ。


<法的根拠のない市政調査費>
 公費の支出は、すべて法律や条例に根拠が必要である。逆にいえば、法律や条例に基づかない公費の支出は違法である。
 91年4月、初当選したときのことだった。準備期間わずか1ヶ月で議員になった私は、毎月の報酬と市政調査費を何の疑問ももたずにもらった。会派視察費として、年間20万円使えますよと説明を受ければ、「へぇー、市政調査費の旅費とこの会派視察費の違いは何なのかしら」と思いながらも、3回視察に行った。
 92年、尼崎市議会でカラ出張が発覚したとき、高槻市議会でも市民の方が会派視察に関する資料を情報公開請求された。公開された資料から、これが視察かという視察が多々明らかになり、大問題になった。このとき初めて、私は、会派視察制度も市政調査費も法的根拠のないものであることを知ったのである。
 政治腐敗を防ぐために故市川房枝さんがたてた4原則「議員の仕事は議会で質問すること」「質問したことは必ず有権者に報告すること」「議会を休まない」「歳費の使い道を有権者に報告する」をしっかり守っているつもりであったが、法的根拠のない公費を受け取っていたことには、ショックだった。市民の皆さんには申し訳なく、集会で心よりお詫びをした。
 以後、議員としていくら調査活動が重要で費用がかかるといえども、私は法的根拠ない市政調査費は受け取らず、会派視察も行っていない。行政のチェックをするべき議員は、自らの税金の使い方は一番厳しくあらねば、説得力がない。率先垂範あるのみである。


<法的根拠もった政務調査費>
 ところが、地方分権に名を借りて、地方自治法が改正され、法的根拠をもって、この4月から、議会の政策形成能力を高めるための「政務調査費」をもらえることになった。この3月は、全国各地の議会でいっせいに「政務調査費の交付に関する条例」が制定された。
 行政の透明化や説明責任が問われる時代、議会によっては、市民への情報公開対象に収支報告書だけでなく、領収書や帳簿を含めたところもある。私の知る限り、大阪府内では、箕面、吹田、摂津、交野、大東、阪南、貝塚、和泉の各市議会では、領収書の添付を義務付け、政務調査費の透明化を図った。
 私の所属する高槻市議会では、会派に属さぬ私にはまず何の働きかけもなかった。12月議会の後半に突然「特別職報酬等審議会」が開かれる予算が上がってきた。理由を聞いて初めて議長からの依頼で、市長の附属機関であるこの「審議会」で政務調査費の額を審議してもらうというのだ。
 まず、現在の市政調査の実態を明らかにし、どこまでを会派の政務調査というのか確認した上で、額を議論するのならわかるが、そのような議論を会派に属さぬ議員も含め議会全体で議論せずに、いきなり市長の附属機関の「審議会」に審議してもらうというのだ。私は反対した。だが、年が明け、わずか2回の審議会で政務調査費の額は現行の月額一人あたり7万円との答申がだされた。
 その後も議会内で全体の議論があると思っていたが、何もないため、議長に尋ねると、2月23日の議会運営委員会(以下、議運)で条例案を諮るという。そこで、私は自分の意見をまとめ、2月21日付けで議長に申し入れた。だが、23日の議運にも案は出されず、結局1ヵ月後の3月23日の議運に案がだされた。それは、全国議長会のモデル案とほぼ同じもので、領収書の公開など、透明性を高める条項はなかった。そして、議運では、休憩時間に私ともう一人の無所属議員が透明化を図るべきではないかと意見を述べただけで大きな議論にならなかった。3月27日の本会議では、二人が反対の立場から質問をしたが、不透明な条例が圧倒的多数で可決されてしまった。このような結果に、私も高槻市議会の一員として、市民の皆さんに申し訳ない気持ちである。


<本当に政務調査費は必要か>
 政務調査費は本当に必要なのだろうか。
 私の場合、市政調査費をもらっていたときの一番の支出は資料購入費だったが、書籍や雑誌は議会で購入し、地方自治法に設置が定められている議会図書室に置けばよい。会派で買って会派のものにせず、税金で買ったものは共有化すべきではないか。
政務調査のための会議といっても、高槻市議会の場合、議会の会議室を使用できる。食糧費など不要で、お茶だけで十分だ。視察のための交通費といっても、そう頻繁に出かけるものでもない。電話も、政務調査のための電話は会派の控室からかければ無料でかけられる。コピー代は、議会に2台リース機があるが、使用量が多いため、1枚5円でできる。最近では議会事務局のパソコンにインターネット接続がしてあり、検索もできるし、新聞記事検索も利用できる。
 こうして考えると、私の場合、資料等を図書室で購入してもらえさえすれば、新たな政務調査費なしでも政務調査は十分できる。
すべての議員が私と同じスタイルだとは思わない。だが、税金を使っての政務調査なら、領収書を公表し、私たちはこのような調査をして政策提言に生かしたとなぜ堂々と説明責任を果たさないのだろうか。
 高槻市議会の条例案策定の密室審議とできた制度の不透明さの上では、私はこれからも政務調査費はもらわないことにした。でも、政務調査は、報酬や期末手当の中できっちり行ない、議員としての責務を果たします。