私の主張

公共施設での一斉殺虫剤散布の中止を!
日本消費者連盟関西グループ「草の根だより」2001年1月号掲載)

 私たちの身の回りにはたくさんの化学物質があふれています。そしてわずかな化学物質でアレルギーを起こす化学物質過敏症やシックハウス症候群など、化学物質による健康被害が深刻な問題になっています。建物に使用される接着剤、可塑剤、難燃剤や殺虫剤もその一因で、室内の環境汚染を防ぐ対策が急を要していますが、不特定多数の人が利用する公共施設でも早急に室内の環境汚染対策に取り組まなければなりません。
 さて、私が日々通う高槻市役所では、年2回、定期的に殺虫剤の散布が行われてきました。最近では一般市民が来庁しない12月2日の土曜日に行われました。家庭では薬剤散布など考えられないこの寒い時期にです。散布されたのはエクスミン乳剤、フェニトロチオン乳剤、SV乳剤、スミチオンMC剤でした。
 この市役所での一斉殺虫剤散布の法的根拠は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(いわゆるビル衛生管理法)です。この法律では、多数の人が利用する一定規模の建物で、かつ環境衛生上特に配慮が必要なものを「特定建築物」とし、「建築物環境衛生管理基準」を設けています。そして、その管理基準のひとつとして、この法律の施行令第2条に
「清掃及びねずみ、こん虫等の防除は、次に掲げるところにより統一的かつ計画的に行うこと。 イ適切な方法により掃除を行ない、衛生的な方法により汚物を処理すること。 ロねずみ、こん虫等については、適切な方法により発生及び侵入の防止並びに駆除を行うこと。」
とあり、また同規則第4条の3には「日常的に行う清掃のほか、清掃及びねずみ、こん虫等の防除を、それぞれ六月以内ごとに1回定期に統一的に行わなければならない」とあり、これらの条文を根拠に、年2回定期的に一斉薬剤散布が行われていたのでした。
 ところで、この条文のいう「防除」とはどのようなことをさすのか、東京都衛生局食品環境指導センター・建築物衛生課に確認したところ、下記の資料をいただきました。資料によれば、「防除」とは定期的に薬剤散布をすることではありませんでした。
 しかし、高槻市では、とにかく定期的に薬剤をまかなければと思い込んでいたようです。
 12月議会でこの防除の原点に戻り、一斉薬剤散布の中止を求めたところ、前向きに検討するとの答弁でした。
 また、市役所の担当は総務部庶務課でしたが、市の特定建設物に該当する建物について調査してもらったところ、総合スポーツセンターや市民会館、総合保健福祉センターなど、同じように薬剤散布が行われている施設もあることが判明し、これらの施設でも見直すように要望しました。すでに町田市や相模原市では公共施設での一斉散布は中止されています。
 全国各地の自治体で、自治体自らがその地域の一事業者として率先して環境にやさしい行動に取り組んでいこうと、地球温暖化防止を含む率先実行計画「エコオフィスプラン」を策定し、電気、燃料、水道水、紙の使用量や廃棄物の減量、グリーン購入、自然エネルギーの導入などに取り組んでいます。しかし、私は、化学物質に対する取り組みも大きな課題だと考えています。化学物質に対する国際的な原則は「予防」です。環境にやさしい自治体をめざす以上、疑いのある化学物質は使用しない、この予防の原則を自治体自らが貫ぬくべきではないでしょうか。



資料1:東京都特定建築物の環境衛生管理基準より
(5)ねずみ・昆虫等の防除 ネズミ・昆虫等に対する生息状況の点検は毎月1回以上実施します。点検を行ってみて、生息が確認される場合は、そのつど「防除」を実施します。「防除」とは、殺虫剤の散布だけではなく防虫防そ構造の整備などの環境対策も含みます。 生息が確認されて実施した防除の終了後には、効果判定を実施します。効果が認められない場合はその原因を確かめて今後の作業計画策定の参考とするとともに、必要に応じて再度防除作業を行う必要があります。効果の調査に係わる基準として、次のことに注意しなければなりません。
ア 蚊やハエなどの防除作業終了後から1週間の間に、ゴキブリやねずみは1週間から3週間の間に実施します。
イ 効果の判定にあたっては、次の事項を参考にして総合的に行います。
(ア) 捕獲器等の器具を用いた生息調査
(イ) 糞や虫体、足跡等の調査
(ウ) 無毒餌を用いた喫食調査
(エ) 聞き取り調査や目視