私の主張

PCBの厳重な保管・管理を!
(日本消費者連盟関西グループ「草の根だより」2000年12月号掲載)


<PCBとは>
 PCBは、人間がつくりだした油で、絶縁性に優れ、化学的にも安定しているため、高圧コンデンサーや低圧コンデンサーに使用されていました。高圧コンデンサーの中にはPCBが多量に入っていましたし、蛍光灯に使用されている低圧コンデンサーにもPCBが入っていたのです。
しかし、1968年のカネミ油症事件を契機に、1972年からPCBの製造が禁止されました。PCBを体内に取り込めば、皮膚障害や肝障害を引き起こすためです。また、変異原性があるとも言われています。従って、PCBが漏出して環境汚染をひきおこさないように、厳重に保管・管理しなければならないことになっています。
 使用済みのPCB入りのコンデンサーなどは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では、「廃PCB」といわれ、「特定管理産業廃棄物」に指定されており、「特別管理産業廃棄物管理責任者」という資格をもった人が管理しなければなりません。
「特別管理産業廃棄物管理責任者」は、管理台帳を作成し保管数量の把握をすることや、保管場所や表示ラベルなどを適正に維持管理することや、行政庁への報告などをしなければなりません。具体的には、コンデンサーなどが壊れても地下に浸透しないように、金属製の容器や受け皿の中で、倒れないように転倒防止をし、PCBが飛散しないように蓋等をしておかなければなりませんし、廃PCBそのものにも保管場所にも、「PCB」についての表示をしなければなりません。
 そして、廃PCBを保管している事業所は、毎年大阪府へ保管状況を提出することが義務付けられています。
最近、全国各地の学校でPCBを使用した低圧コンデンサーの蛍光灯が破裂し、子どもたちにPCBが付着する事件が続出しています。これは、PCB入りコンデンサーの入って蛍光灯は、製造後15年くらい経って劣化してくると破裂しやすくなるためです。文部省などでは、来年度中に学校等の施設で使われているPCB入り蛍光灯を取り替えることにしましたが、このような事故は予測されたことで、遅きに失する措置です。
 
<たらいまわし>
 高槻市でも、1970年代以前にたてられた建物では現在もPCB入り高圧コンデンサーを使用しているかもしれませんし、その後に建替えられた建物ではPCB入りコンデンサーを保管しているはずではないかと考え、8月中旬実態調査をすることにしました。
議員ならなんでも資料はすぐに手に入るように思われがちですが、けっしてそんなことはありません。いかにして資料を手にするか、苦労の連続で、議会で質問するとき以上に、資料入手には神経を集中させて、やりとりをしなければなりません。勝負の第1ラウンドです。
市役所は縦割り行政です。まず、市役所本庁の管理をしている総務部庶務課に聞くと、本庁で使っていた高圧コンデンサー、低圧コンデンサーは地下の受電設備の隅に保管しているが、他の分は知らないとのことです。この段階で、廃PCBを高槻市としてどこにどれだけ保管しているのか把握している統括部門がないことが明らかになりました。
 次に環境部環境保全課に聞くと、廃PCBは産業廃棄物だから、大阪府の産業廃棄物の担当に聞いてほしいとのことでした。
 そこで、大阪府の産業廃棄物担当に電話すると、大阪府は廃PCB保管事業所名を公表していないというのです。私は何も民間事業所の分まで教えてくれとはいっていません、市会議員として高槻市が保管している分を教えてほしいのですと、くいさがりました。それでもなかなか私の要求する資料を出してくれそうにありません。ついにそれなら今すぐ府庁へ行って情報公開請求しますと粘った結果、ようやく、府と市で相談し、市の窓口は環境部環境保全課にし、大阪府から保全課に資料を提供し、それを私がもらうことになりました。なぜ大阪府から直接もらえないのか納得がいきませんが、まあ高槻市の保管状況がわかれば一歩前進です。こうして、ようやく高槻市保管分の一覧表を手にすることができました。
 議員の質問は、資料を手に入れることから始まります。市役所内にある資料を手にするのにもたいへんですが、無所属の市民派議員にとって、府会議員や国会議員を通じずに大阪府や国の資料を手にするには、それはたいへんなエネルギーと執念が必要です。

<ずさんな保管状況>
 一覧表によれば、高槻市は廃PCBとして、25箇所に高圧コンデンサー49個、低圧コンデンサー3333個、感熱紙2950キログラムを保管していることが明らかになりました。
 さっそく1箇所ずつどのような保管がなされているのか、実態調査のため現場にいきました。同時に私の所属する「高槻・市民自主講座」という市民グループからもPCBの保管に関する申し入れを行ったところ、市のほうも再調査を行いました。その結果9月中旬段階で、下記のような問題点が明らかになりました。
1.25箇所のうち、1箇所は二重報告になっていた。またあらたに4箇所(新規3)で報告漏れがみつかり、計27箇所で、高圧コンデンサー58個、低圧コンデンサー3390個保管されていた。
2.管理責任者のうち「特定産業廃棄物管理責任者」の資格をもっていない人が9人もいた。
3.保管状況をつぶさに調べると、表示ラベルが貼ってなかったり、受け皿がなかったり、転倒防止策がとられていなかったりしたところもあった。
4.感熱紙の保管はダンボール箱やポリ袋に入れて積み上げられており、とても厳重保管とはいえない。
5.学校で使用されていた蛍光灯のPCB入り低圧コンデンサーはすでに取り替えられていたが、2380個まとめて小学校敷地内の木造の倉庫に保管されており、緊急避難場所での保管はふさわしくない。
 9月議会でこの問題をとりあげたところ、今後は市として、PCB管理要領を策定し、庁内組織等を整備し、適正管理に努めていくとの答弁でした。私としては、PCB入り機器が現在使用されていないかどうかも早急に調査するよう要望しました。

<ようやく適正管理に着手>
 高槻市PCB類管理要領は12月13日付でできあがりました。要領では助役を筆頭にPCBを保管する部の長で構成する対策会議を設け、適正管理につとめていくことになりました。PCBに関してこのような管理要領を策定したのは全国初とのことです。
また、その後の調査で1箇所の報告漏れがあり、高圧コンデンサーを1個紛失していたことも明らかになりました。使用中のPCBについては、23の施設で高圧コンデンサー20個、低圧コンデンサー555個あることが判明しましたが、道路、公園の街灯等はかなりの数があり、PCB入りかどうかの調査に時間を要するようです。破裂というような事故が起こらないように、できるだけ早期に確認をし、PCBいりのものは早急に取り替えるように12月議会で要望しました。

<無害化まで、厳重な保管・管理を!>
 国連環境計画(UNEP)主催で、122カ国が参加しヨハネスブルクで開かれていた「残留性有機汚染物質(POPs)の規制に関する国際会議」では、12月10日に、PCBやダイオキシンなど12種類の化学物質に関して製造・使用の禁止などの合意がなされました。PCBについては、2025年までに含有機器の使用禁止、2028年までに無害化処理をすることが目標とされたのです。今後政府は、全国に無害化施設を建設する予定ですが、無害化の施設をどこにつくるか、無害化の費用を誰が負担するか、次の大きな問題です。とにかくそれまでは、PCBが環境に漏出しないよう厳重な保管・管理が必要です。
 地球規模の環境問題について、自治体自らがエコオフィスをめざして、紙や電気、水道等の使用量を減らしていく計画がたてられていますが、化学物質に対しての認識はまだまだ不十分です。私は化学物質の使用のあり方についても市の姿勢を質していきたく思っています。

保管中の廃高圧コンデンサー
(受け皿もなく、転倒防止策もとられていない。上部の碍子にひもがかけられているが、碍子はこわれやすく、このような措置は間違いである。)
PCBを含有した感熱紙を保管しているダンボール箱の山


*高槻市PCB使用電気機器等使用保管状況(2000年11月20日現在)
PCB保管事業所数 高圧コンデンサー数 低圧コンデンサー数 感圧複写紙数
保管状況

27

58個

3390個

2950s

使用状況

23

20個

555個

なし



*高槻市PCB使用電気機器等に係る総括管理の概要