私の主張
大阪オリンピック環境基本計画(案)「高槻射撃場」に対する意見

   (2000年11月21日大阪市長宛提出)

 「大阪オリンピック環境計画(案)」のうち高槻射撃会場について、下記のとおり意見を述べます。
 なお、「環境計画(案)」の「はじめに」で、「競技施設・関連施設には、既存のもの以外に、計画中のもの及び新たに追加するものがある」が、そのほとんどは「法体系のもとでは環境アセスメントの実施対象外となる小規模なものである。しかし、これらについてもあらかじめ環境影響の検討を行うことで、施設の建設や運営にあたってより効果的に環境影響を低減するための対策や積極的に環境改善を図るための技術の導入について検討したいと考えている」とあります。
 私としては、法に基づく環境アセスメントではないとしても、法の趣旨を尊重した手続きであると解して意見を述べるものです。

1.射撃競技の詳細が不明であり、環境影響評価はずさんである。
 環境影響評価をするに際しての一番の基本は、事業この場合は競技の概要を明らかにすることである。「環境計画(案)」では、まず高槻射撃会場の施設計画の概要が示されているが、施設計画や、「環境計画(案)」の根拠となる競技選手数、関係者数、観客数、使用銃弾の種類、量などの事業(競技)の具体的内容がいっさい明らかにされていない。したがって、施設の運営(供給処理、交通輸送)、建設工事についてをはじめ、各環境影響予測評価について、果たしてこれでよいのか、まったく判断がつかない。このような基本的なデータが示されないまま環境に及ぼす影響を評価することは、まったく意味がない。アセスメントの基本的要件である競技概要の詳細を明らかにすべきである。

2.オオタカについての調査が不十分である。
 今回なされた環境調査はおもに既存の資料による環境調査だが、「環境計画(案)」でも競技施設予定地周辺は豊かな自然環境が存在していることを認めている。
ところが、環境指標として重要なオオタカについて、「現地調査の結果によると飛来は確かめられなかった」とある。招致局に現地調査の内容について確認したところ、8月に二日間、競技施設予定地周辺1.5キロ四方を調査し、競技施設予定地では営巣があるかどうか、周辺は望遠鏡で飛来を調べたが確認できなかった」ということであった。
オオタカは春先営巣を行う習性があり、8月という時期、しかもわずか二日だけの調査で、「飛来は確認されなかった」と結論付けるのはオオタカの生態を踏まえない非科学的な調査である。周辺では飛来したとの情報もあり、もっと生態学に基づく詳細な調査をすべきである。

3.散弾による地質汚染についても調査不十分である。
 鉛の散弾による地質汚染(地下水・土壌汚染)については、「全量を回収・リサイクルするとともに、降雨時には流出水を一時的に貯留し、処理することから、土壌への影響はないものと考えられる」とあるだけである。
あらためて招致局に確認したところ、回収・リサイクルするために競技会場にシートを敷く、ないし散弾は鉛以外のものも考えているとのことだった。そこで、射撃競技で散弾を全量回収・リサイクルしたという過去の実績例を示してほしいと求めたが、明らかにされなかった。
 鉛などの重金属による環境汚染については、具体的数値を明らかにせずして「影響がないものと考える」という結論は出すべきでない。シートを敷くのであれば、シートの素材やシートを敷く面積、使用散弾の量等を、また、降雨時については流出水の貯留方法、処理施設等すべて具体的に示すべきである。「影響はないものと考えられる」と結論を出すに至ったデータ、資料をすべて公開すべきである。

4.交通輸送についての市民への影響が一切考慮されておらず、評価は不十分である。
 建設時及び競技時の工事車両、交通輸送については、単に方法と車両数を述べているだけである。
射撃会場までのアクセス道路は1本だけであり、工事期間中及び競技期間中、渋滞が予想される。しかし、現在の交通量にオリンピックによりどれだけの交通量が負荷されるのか具体的に明らかにしていない。これでは環境影響評価に値するものではない。アクセス道路沿道の住民や市民生活に影響があるのかないのか、もっと詳細なデータを示して評価すべきである。

5.「環境計画(素案)」に対し自治体から出された意見についても大阪市の見解を明らかにすべきである。
 「環境計画(素案)」について市民からだされた意見については大阪市の見解が公開されたが、大阪府の意見については市民にも公表されなかったし、大阪市の見解もだされなかった。関係自治体からの意見はきわめて重要であり、関係自治体からの意見及びそれに対しての大阪市の見解を明らかにしないのは、行政の説明責任を果たしたとはとうてい言えず、秘密主義にほかならない。市民に意見を求めるのであれば、素案に対するすべての意見及びその見解を明らかにすべきである。

6.環境影響評価制度で重要な市民への説明会、公聴会が一度も開かれていない。
 環境影響評価制度では、市民等から環境保全上の意見をきくことになっている。それは、とにかく文書で意見を出してくださいと呼びかければいいものではなく、事業者は、説明会を開き、質問に答える責任がある。大阪市が環境アセスメント制度の市民参加の意義をふまえるなら、高槻市民にたいして、まず説明会を開催するべきであるが、射撃場計画について一度も説明会が開かれていない。このような説明会のない一連の手続きは、環境影響評価制度の趣旨を踏みにじるものである。早急に説明会及び公聴会を開催し、あらためて意見を求めるべきである。

7.「環境計画(案)」の縦覧形式は不十分である。
 射撃会場についての説明会が開かれていないこともあり、市民の多くは、高槻市が射撃競技の開催予定地になっていることを知らない。しかも今回大阪市が意見を求めていることは新聞に掲載されただけであった。したがって、「環境計画(案)」が高槻市で縦覧されていることもほとんどの市民は知らなかった。広報不足であることは明らかである。
縦覧は高槻市役所の情報公開コーナー及び環境保全課で行われたが、縦覧されたのは、「環境計画(案)」「高槻射撃会場」「環境計画(素案)に対する意見の概要と見解」だけであり、他施設についての資料はいっさい示されなかった。本当に高槻市民の意見を求めるのであれば、競技会場予定の自治体でも、「環境計画(案)」の部分的な資料だけでなく、すべての資料をそろえて縦覧すべきである。
高槻市役所には他施設についての資料がないため、大阪市の招致局へ行ったが、そこでは招致局の入り口付近にある胸の高さぐらいのロッカーの上に縦覧用資料がおかれており、私は立ったまま縦覧しなければならなかった。市民に立ったまま資料を読ませるような縦覧形式は前代未聞である。高齢者や障害者にも配慮した縦覧形式をとるべきである。

以  上