<緊急報告>
JT「医薬総合研究所」研究員による放射性同位元素散布事故 (2000年12月20日)



 新聞、テレビなどの報道でご存知のように、私たちが以前から懸念していた事故が現実に起こりました。
 私は、当日の午後、事故の第一報を聴いてすぐにJR高槻駅に駆けつけました。科学技術庁の専門家が到着し、ようやく処理作業が始まりましたが、放射性物質の除染は予想以上に困難な様子でした。結局、午後7時過ぎに作業が一応終了しましたが、この間、私は現場に留まり、事故対応の一部始終を確認しました。
 翌日12月21日午後1時、「高槻JTバイオ施設情報公開訴訟」原告及び「バイオ時代の安全性・環境研究センター」が共同でJTに対して緊急の申入れを行ないましたが、私も立会いました。(⇒資料1) 私からも、同研究所の西野和博副所長に対して、申入書の内容を厳粛に受け止めるように厳しく求めました。
 引き続き、午後2時過ぎからの高槻市長に対する緊急の申入れにも立会いました。(⇒資料2) 高槻市側は、政策推進室長他2名が対応しました。 
 また、同日、高槻市も、JTに対して、申入れを行なっています。(⇒資料3)
 JTは、12月21日、各紙の朝刊に「お詫び」を掲載し、また、23日の朝刊には「お詫びとお知らせ」を掲載して、フリーダイヤルの問い合わせ先を設置しています。24日には、JTは近隣住民に対して「お詫び状」を戸別配布しました。
 しかし、JTは、地元住民や市民に対して、いまのところ、なにも説明をしていません。今回の事故の詳細、今後の放射性物質、病原体、遺伝子組換え体、化学物質等の管理体制、職員の健康管理体制などを明らかにさせていくことが必要です。(2000年12月24日記)

<資料1> 市民団体によるJTに対する申入書 

<資料2>  市民団体による高槻市に対する申入書 

<資料3>  高槻市によるJTに対する申入書 


<ドキュメント―手間取る除染作業>              ⇒現場写真(クリックしてください)

 私がJR高槻駅に着いたのは午後2時前でした。放射性同位元素が散布されてからすでに約4時間たっていました。
 散布され、放射能汚染があったと思われるところにガムテープで印がつけられ、その周りをロープで囲まれていました。ロープの中には除染作業をする人や大阪府警、高槻消防署の人たちが手持ち無沙汰に見守っているだけです。放射性物質に関する事故の処理は科学技術庁の指示がないと動けないとのことでした。
 除染作業が始まったのは、3時過ぎてからでした。表面汚染強度(1平方cm当りの放射能の量)が小さいとのことで、合成洗剤を使っての拭き取り作業が続きました。しかし、汚染の強い個所の除染は、合成洗剤ではなかなかとれず、磨き粉を使って拭き取りがなされました。床のタイルの目地に染み込んだ放射性物質の除染は、それでも取れず、ドライバーで削り取る作業が続きました。
 7時過ぎに、ようやく除染作業が一応終了しました。散布したのは数ccで、汚染も微量だったと発表されていますが、除染は手間がかかる作業で、改めて放射性物質の汚染の恐ろしさを痛感しました。
 科学技術庁原子力安全局は「安全上問題がない」と発表していますが、散布された放射性物資の量や汚染の状況について詳しいデータは明らかにされていません。また、事故後1週間たった現在も、JTは、事故の概要等の正式な文書を高槻市には提出していません。(2000年12月28日記)




 科学技術庁のホームページより

大阪府高槻市における放射性同位元素に係るトラブルについて

 平成12年12月22日
 科学技術庁原子力安全局

1.安全性の確認
 除染作業は終了し、平成12年12月20日18時58分、科学技術庁の担当官、日本原子力研究所の専門家等により、安全上問題がないことが確認され、立ち入り制限が解除された。

2.事実の概要
(1) 12月20日午前10時20分頃JR高槻駅において、日本たばこ産業(株)医薬総合研究所の所有する瓶2本とチューブ1本に入った放射性物質(ヨウ素125が、同研究所職員によりばらまかれた。
(2) 汚染箇所の周囲をロープで縄張りし、立ち入り制限を行って、専門家による除染作業を実施した。
(3) 放射性物質をばらまいた男は、威力業務妨害容疑で逮捕されている。

3.科学技術庁の対応
(1) 12月20日11時48分、日本たばこ産業(株)医薬総合研究所より連絡を受け、直ちに対策チーム(リーダー:今村原子力安全局長)を設置して、情報収集及び現場への担当者の派遣等の対応を実施した。
(2) 科学技術庁より職員3名、日本原子力研究所の専門家4名、(社)日本アイソトープ協会の専門家1名を派遣し、現地にて安全の確認を行うとともに、除染作業の指揮に当たった。
(3) 12月21日、日本たばこ産業(株)医薬総合研究所に対し、科学技術庁の放射線検査官による立入検査を実施した。





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