KOF。キングオブファイターズ。
世界中の格闘家達が「真に強い者は誰か?」を競う大会。
この大会は招待状が主催者より送られる、そのチケットを持たない者は参加すらできない。
そして、此処にもその招待状を受け取った男が・・一人。

ここはタイ
「へへ、今年も来たか。まぁ当然だな。このジョー様に招待状がこねぇはずがねぇもんな」
Tシャツに短パンというくつろいだ格好でジョーは招待状を見ていた。
招待状の内容はこうだった。

−−−本年も貴殿の参加を心よりお待ちしております。
        なお、今回も3対3のチームバトルでございますので、他に2名のチームメイトとともに参加くださいますよう−−−

「さてと、早速ボガード兄弟と連絡を・・・・」そう言って電話の方に向かうが、その動きが止まる。
彼の頭に一つの妙案が浮かんだのだった。
(たまには・・ボガード兄弟と戦ってみるのも悪くねぇよな。最近戦りあってねぇし・・)
ふたたび、招待状を眺めるジョー。今まで戦ったいろんな奴が頭をよぎる。
「誰と組もうか・・・」
まず頭に浮かんだのは、同じムエタイを使う・・金髪の女性。
だがそれはすぐに消える。
(同じムエタイが二人もいたら俺が目立たねぇ)
いかにも彼らしい考え方だ。そのあと考えること数分、一人の男が浮かび上がった。
「あいつなら!たぶん大丈夫だろう!」
善は急げとばかりに、早速その男がいるであろう場所・・日本へと彼は旅だった。

「日本も久しぶりだよなぁ。舞とか元気にしてるのかねぇ」
空港に到着してすぐに目的地へと向かう。別に急いでも変わりはしない、
が、今のジョーにはそんなことは気づくはずもなく・・タクシーでも
「大急ぎで頼むゼ!」
タクシーの中でも落ち着かない様子だ。今ジョーの考えていることはただ一つ。
(へへっ!俺があいつと組んだと知ったら・・テリー達びっくりするだろうな)
そして・・タクシーは目的地の学校に到着する。

「!?」
例によって、居眠りをしていた草薙京は、その気配によって目を覚ました。
(この・・・闘気とでもいうか・・この気配。だれだ?一度あったことはあるはずだが・・)
幸いにも次は昼休みだ。その時に見に行くか。
そして授業終了までの30分を再び居眠りで過ごすのであった。

一方のジョーは、
(おいおい・・早くつきすぎちまったなぁ・・しかたねぇ。校門のところで待ってるか)
で・・校門の壁にもたれて学校終了時間を待つのであった。
「腹減ったなぁ」

キーンコーンカーンコーン。
「っと昼休みか。じゃあさっきの気配を探ってみるか。」っと席を立つ京。
どうやらその気・・は、校門の方からのようだった。
(校外の奴か、まぁ当たり前だな。・・すると八神の野郎が?いや・・奴の殺気はこんなもんじゃない)
校門に近づくにつれその気配は強くなる・・確実に俺はあったことがある。
そんな思いを抱きつつ、校門まで行く。
「あんたは!?」

こちらは校門側、チャイムの音で身を起こすジョー。
「ん?どうりで腹が減るはずだ。昼じゃねぇか。」
と校内を覗くジョー。そこに・・
「あんたは!?」京の声が響いた。
「うわ!?なんだなんだ?・・・ん?草薙じゃないか。久しぶりに会ったのに脅かすなよ。」
ジョーも言葉の主の方を向く。
京の方も気配の主が分かってとりあえずは安心していた。
「で、こんなとこまでわざわざ何しに来たんだ?ムエタイチャンプのあんたが。」
当然の疑問を京は発した。ジョーがここに来る理由が見付からないのだ。
「ああ、お前のとこにもこれが来なかったか?」
と、KOFの招待状を見せるジョー。
京の方は最初はそれが何か分からなかったが、それが招待状だと分かっても疑問は変わらなかった.
「招待状?・・確かに俺んとこにも来たけどよ。それとどーいう関係があるんだ?」
それを聞いて自慢げに胸を張るジョー。
「だからよ、仲間を集めに来たんじゃねぇか。チームメイトだよ!」
ここに来て、京にもようやくジョーの目的が理解できた。
「なんだと!?おいおい、冗談じゃねぇ。俺はあんたと組む気はないぜ!」
さも嫌そうに言い放つ京。しかしジョーの方には別段気にした風も無い。
「ああ、俺が用があるのは、草薙。お前じゃねぇ。あいつだよ。」
そう言ってジョーが首で促す先には京そっくりの格好をした青年が走っていた。

いつものようにやきそばパンを買った真吾は例の修行場(本当はただの裏庭)へと向かっていた。
しかしそこにいるべき人の姿はない。
「あっれぇ〜?草薙さん何処に行ったんだ?いつもなら『おそいじゃねぇかよ!真吾』って燃やされるのになぁ」
そうは言ってもやきそばパンを渡さない事には何を言われるかわからないので、真吾は京を探すのであった。
まずは教室に向かう。しかしそこにも京の姿はない。
「あの〜?草薙さん見ませんでしたか?」
「草薙?ああ、授業終了と一緒に出ていったぜ?あー・・なんか、外の方へ向かったんじゃないか?」
その言葉を聞きおわったかどうか、真吾は全速力で駆け出していた。
(外・外・外・・取り合えず校門!!)
そして、校門。そこに目当ての人をついに発見した真吾。
「あ〜!!!草薙さん探しましたよ!!」

「あ〜!!!草薙さん探しましたよ!!」
「真吾に?・・・まさかあいつとチームを組むって言うのか!?」
さすがに京も驚きを隠せない。
「ああ、そうだぜ。」その驚きの表情を見て自慢げに答えるジョー。
そこに真吾もやってくる。
「はぁ、はぁ。草薙さんこんなとこで何やってるんですか!」
そしてジョーがいる事にも気づく真吾。
「あっれぇ〜、ムエタイチャンプのジョー東さんじゃないですか?うわぁ!すげー!本物だ!」
相変わらずミーハーな真吾。そこにジョーの一言。
「よう!矢吹。俺と一緒にKOFでねぇか?」
「へぇ、そうなんですか。KOF・・・・・って、ええっ〜〜!!!お、俺ですか!?」
ジョーの言葉に驚く真吾、そこに京も
「おいおい、あんたマジで言ってんのか?真吾だぜ真吾」
「俺は本気だぜ?どうだ,矢吹。俺と一緒に出ようぜ?」
なおも誘うジョー。
「でも・・俺は草薙さんと一緒に出たいですし・・・・」
真吾の抵抗。しかしジョーはその言葉も読んでいた。
「本当にそれでいいのか?お前は草薙を超えたくないのか?同じチームにいたんじゃそれはかなわないんだぜ?」
「!!」「!?」
会心の一言だった。この一言で真吾の心は決まってしまっていた。
「まぁ俺はこのホテルに居るからよ。決心がついたら連絡をくれよ。」
メモを渡し、その場を去るジョー。
残された二人には、言葉がなかなか出てこなかった・・・・。
「く・・草薙さん。おれ・・」
京の方を見つめる真吾。
「ったく・・おせーんだよお前は。さっさとパンをよこせ」
そういってやきそばパンを奪って、その場に背を向ける京。立ち尽くす真吾に京の一言が深く突き刺さる。
「俺はまだお前なんかに負けやしねーぜ。」

その夕方、ジョーの部屋では、3人目のパートナーを探す二人の姿があった。

3日後・・・
「あーだめだ!みんな断わるかもう決まってるかだな」
さすがのジョーも、弱音を吐いた。
3日のあいだ、ジョーと真吾は思わしき人物を片っ端から電話していた。
しかし大半のメンバーは既にチームメイトが決まっており、チームメイトは見つかるはずもなかった。
「ジョーさん。どうしましょう?このままじゃ俺達出場すら出来ないですよ〜」
そう言う真吾はもう涙目だったりする。
「分かってる・・俺だってこのままじゃ終われねーよ」
(とはいってもなぁ)
ジョーの心当たりはもうすべて当たっていた・・後の心当たりといえば・・いままでのKOFの参加者にはもういない。
(俺一人でも勝つ事は出来るけどよ・・・いくらなんでも、その辺の奴じゃあなぁ・・)

トルルルルル・・・・
電話が鳴る。
「おい、真吾でてくれ。」
「あ、はい。わかりました。・・・・・・・・はい?もしもし?」
素直に電話に出る真吾。
「あ、お客様に外線が入っております。お繋ぎしてよろしいでしょうか?」
「ジョーさん?外線ですって」
「外線?」
いぶかしむジョー。この部屋にいる事を誰かに教えた記憶はない。
「わかった俺が出る」
そういって電話を変わるジョー。
「繋いでくれ」
そして外線相手の声が聞こえる。
「ふふ、ジョー東。久しぶりだねぇ。」
女の声だ、聞いた事はある声だがジョーは思い出せなかった。
「誰だあんた?」
「私がわからないのかい?まぁいいよ、あんたチームメイト探してるんだろう?私が3人目になってやるよ。」
そう言って、自分が待っているBARの名前だけを告げ電話の相手は切ってしまった。
「ちょっと待て!おい!!」
ジョーの声ももう遅かった。
「どうしたんですか?」
「ああ・・3人目になってやるってさ」
ぶっきらぼうに答えるジョー。
「え!?誰ですか?テリーさん?アンディさん?まさか草薙さんじゃあ?」
「ばーか、違うよ。ちょっとその待ち合わせの場所まで行ってくるぜ。お前はここで待ってな。」
そう言って扉に向かう。
「ちょ、ちょっと!俺も行きますよ!」
真吾もついて行こうとする
「おいおい、未成年のお前をBARには連れて行けないだろ?おとなしく待ってろ。すぐに戻るさ」
バタン!
扉は閉まり、真吾は一人時間を潰すのだった。

「ここか・・」
待ち合わせのBARに着いたジョーは、早速店内へと向かった。
ドアを開ける。
「!!?」
とっさに身構えるジョー。それほどの殺気だった。
「さすがだねぇ」
殺気の持ち主がそう声をかける。
店内にはバーテンの姿すらない、いるのはカウンターに腰掛けカクテルを手持ちぶさたに転がしている一人の女性。
「お前は・・・・・バイス!!?まさか・・八神に殺されたはずじゃあ?」
バイスは一昨年、八神の血の暴走によって殺されたのだった。
いや、少なくともジョーにはそうおもえるほどの有り様であった。
「まぁ・・私も死んだと思ったんだがね。そんな事より、私を加えてKOFに出ないか?」
そうだった、ジョーは此処に「チームメイトになってやる」との電話を受けてきたのだった。
「何を企んでいる?」
ジョーがそう疑うのも無理はない。彼女はオロチ八傑集の一人なのである。
「別に。少なくともあんたらに危害は加えないさ、今回はちょっと個人的な問題でねぇ」
そういうバイスをじっと睨むジョー。たしかに、その言葉には嘘は感じられない。
(しかし・・このバイスは何か変だ)ジョーは直感的にそう感じていた。
しかし、3人目は彼女を逃せば見つからないかもしれない。
その思いがジョーにこう言わせた。
「いいだろう。今日から俺達は仲間だ」

此処に、新たなチームが誕生した。