1999年8月6日〜14日
1999年8月14日(土)
「*遊園地*で連想する音楽というと何だろう?」−−「あれま♪これま♪小山遊園地ぃ〜♪」(8月12日(木)のカルテ」in WorP@holic)の一行を見て以来、ずっと気になっています。これ、きっと、「小山遊園地」のCMソングですよね。関西にいると、「エキスポランド」(自宅から自転車で10分、「太陽の塔」って今もあるんですよ)や「神戸ポートピアランド」、和歌山の「パルケエスパーニャ」等々の宣伝しか観る機会がなくて……。
で、最初に思い浮かんだのは、このメロディでした。
[Melody0]circus t120 |
……でも、これは遊園地じゃなくて、サーカス、綱渡りの曲ですね、しかも相当古い。我ながら、想像力が貧困です。気を取り直して、「第3の男」のプラーターの遊園地……、などと考えていたら、次に浮かんだのは、次の歌でした。
[Melody0]O, Prosit' t120 |
ミュンヘンのビヤホール、ホーフブロイハウスで流れる乾杯ソング。バンドに合わせて、「オ〜、プロージット! オ〜、プロージット!」と、店にあゆれるビール腹のおじさんたちが絶叫する光景は、これぞドイツと思える、なかなかパワフルなものです。(新宿の同店でも、おとなしい目ヴァージョンを見たような気がします。)
でも、どうして遊園地がミュンヘンのビヤホールなのか? 実は、かつてミュンヘンの秋のビール祭に留学生仲間と繰り出したときに、その場の勢いで、たっぷりビールを飲んでからジェットコースターと観覧車(異常に回転が速かった)に乗り、大変な思いをしたことがあります。これが私の生涯、最強の遊園地の思い出……。どうも、私の中では、ビールを飲んだ酩酊状態と、絶叫マシンを前にしたハイテンション、お祭りの喧噪が、ごっちゃになって結びついているようです。(そういえばここにもミュンヘンのビール祭りの話題が……。)
……というわけで、今夜はソーセージをつまみに、ビールはいかがでしょうか。(なんのこっちゃ。お盆休みだし、許してください。)
[Melody0]Beyern t160 |
1999年8月13日(金)
東北から戻られたWorP@holicのyashimacさんが、またこのサイトのことを取り上げてくださっています。自分のかなり気ままな関心のおもむくままに作っているこのサイトのお相手をしていただいて、うれしいかぎりです。そして……懲りずに気ままな連想を繰り広げることをお許しいただけるならば、
白石知雄さん指揮する「palm - music」(8月12日(木)のカルテ」in WorP@holic)
「指揮」の一言で、指揮法のレッスンのことを思い出してしまいました。
実は、わたくし、大学時代に桐朋出身の先生から、いわゆる「斉藤式指揮法」の基礎のところを、『指揮法教程』(斉藤秀雄著)片手に教わっていました。……やったことのある人しかわからない話で恐縮ですが、ちょうどピアノの場合の「バイエル → ツェルニー → ……」のように、指揮法のレッスンでも、皆、決まった課題曲を順番にこなしていました。
最初は、基本的な腕の動きだけで指揮できる単純な曲ということで、ピアノのための「ソナチネ」第1集の付録曲を与えられます。例えば、
シューベルト 即興曲変ロ長調
[Melody0]Rosamunde t80 |
初級の仕上げは、リズムの微妙なニュアンスをつかむのが難しいウィンナーワルツ。(下の音楽データを再生するとわかりますが、ワルツをデジタルなイン・テンポでやっても、全然面白くないわけです。そこで、いろいろと工夫して、微妙な揺れを表現しようというのが練習の趣旨だったようです。−−私は、この曲までたどりつかなかったので、詳細は不明ですが……。)
シュトラウス 美しく青きドナウ
[Melody0]Donau t160 |
そしてさらに先に進むと、激しくテンポが切り替わるジプシー音楽などの課題を与えられるようです。
ブラームス ハンガリー舞曲第5番
[Melody0]Ungarisch t160 |
具体的なレッスンは、助手のピアニストの方に向かって、大まじめに指揮をするという、冷静に考えると、かなり滑稽な情景になります。……思い出すと、ちょっと(かなり)恥ずかしいです。
指揮の技術は、PDAの使い心地と同じで、指揮している当人にしか実感できないところが多く、なかなか効用を説明しにくいところがあります。最近では、「斉藤式」の限界が話題になることもあるようです。でも、少なくともアマチュア指揮者にとっては、わかりにくい独善的なジェスチュアで、楽員の皆さんを無用に混乱させないための、いわば指揮者の礼儀作法として、役にたったような気がしています。
1999年8月12日(木)
被写体が同じでも、撮り方によって、まったく別人のようにみえる−−音楽でもそういうことがあるような気がします。先ほど、トヨタ(「ラウム」と言っていたような気がします、画面をよく見ていなかったので、違うかもしれません)の自動車のCMではロッシーニのオペラの序曲が鳴っているのを聞きました。高級感の演出にクラシック音楽、というのは常套手段ですが、ロッシーニのしかもこのメロディというのは、不意をつかれ、新鮮に感じてしまいました。ふと気づくと、いつの間にか頭の中に滑らかな三拍子が鳴り続けている……。
原曲を聞き直してみると、いたずらっぽいメロディがたくさん入った魅力的な序曲ですね。そして当時の聴衆を熱狂させた「ロッシーニ・クレッシェンド」のスタート地点が、CMで使われている箇所。(ちなみに、オペラ本編では、本当に「かささぎ」が活躍します。)
ロッシーニ オペラ「泥棒かささぎ」序曲より
[Melody0]TOYOTA t160 |
同 オペラ「セヴィリアの理髪師」序曲より……この曲にも、ちょっと似た箇所があります。ついでに入力してみました。
[Melody0]Barbiere t165 |
[追記:1999年8月23日]
トヨタ「ラウム」のCMを改めて眺めておりましたところ、実際には、「どろぼうかささぎ」序曲の上のデータとは別の部分(上の引用箇所の直前)が使われていました。私の思いこみによる間違いでした。実際にCMで使われているのは下のメロディです。どうもすみません。
[Melody0]TOYOTA v2 t160 |
1999年8月11日(水)
以前からなんとなく気になっていて、我が家にあった1972年版の「平凡社世界大百科事典」の「国歌」の項目を調べてみると、次の各国の歌が紹介されていました。初めて知ったインドの歌、中国の歌、それぞれに味があると思いました。個人的には、F1グランプリの中継で、時々、最初のところだけが聞こえるイタリア国歌の後半を知って、とても好きになりました。まあ、品評すべき性質のものではないのですが……、不謹慎ですみません……。
アメリカ合衆国
[Melody0]USA t104 |
中華人民共和国
[Melody0]China t120 |
フランス共和国 → 「ラ・マルセイエーズ」(音日記 8/8)
インド共和国
[Melody0]India t120 |
イギリス
[Melody0]UK t90 |
イタリア共和国
[Melody0]Italy t140 |
また、この事典には掲載されていませんでしたが、ドイツの国歌は、ハイドンの弦楽四重奏曲から取った次の歌だったはずです。
ドイツ連邦共和国
[Melody0]Germany t80 |
そして、我が日本国の歌は……、
日本国
[Melody0]Japan |
1999年8月10日(火)
昨夜からJazzの気分です。
仕事の打ち合わせを兼ねて、大学時代の先輩と大阪・東梅田のジャズ・バー(という言い方でいいのでしょうか、こういう場所は初めてだったのでよくわからなくて)へ行きました。小川理子さんという方のステージ。先輩の高校時代の同級生とかで、いろいろとお話もさせていただきました。昼間は音響エンジニア、オフはジャズピアニストという、張りのある生き方をしておられる、素敵なお姉さまでした。最後のステージでは、「Summer Time」など、私でも知っている曲を歌ってくださって、大満足です。ちょっとハスキーなバラード、すごくよかったです。
本当にいい音楽を聞いた後は、耳が満腹になるとでも言うのでしょうか、他の音はしばらくなしにして、余韻を楽しんでいたい気持ちになりますよね。昨夜から、そういう気分が続いています。「お酒があって、くつろいだ会話があって、そういう時には、やはりJazzが似合う、クラシック音楽は、−−音楽そのものの責任ではないけれど−−ちょっと今の世の中ではニュアンスが違う……」、そんなことを、ぼんやり考えていました。そうしたら、先ほど、Muchyさんの Palmware Review のページ (http://muchy.com/)で、こんな情報を見つけました。
ジャズ・スタンダード・ソング・データベース……ジャズのスタンダート・ソングを集めたデータベース。
内田 邦彦 JFileデータ フリーソフトウェア 1999/8/9 58,815
内藤邦彦さんが作成されたJfileデータベースだそうです。早速、拝見しました。各曲データが備考情報も含めてきれいに1画面に収まっていてとても読みやすく、私にとっては知らない曲ばかりなのですが、しばし見入っておりました。
……賛美歌や民謡、古謡にもとづくナンバーも結構あるのですね。Jazzをちゃんと聞きたいという気持ちは以前からあったものの、なかなか入り口が見つからず、ぐずぐずしていたところがあります。内藤さんのデータベース片手に、少しずつ、なじみができたらいいな、と思っています。
P. S. MelodyEditor用のために、Jazzのデータがあるといいかもしれません。本当は自分でも少し試してみたのですが、勝手が違って、どうにも様にならない……。どなたか作ってみようという方は、ご一報ください。
1999年8月9日(月)
世間は夏休みですが、仕事の都合でずっと自宅にいます。ふらりと出かけてしまいたいのが正直な気持ち。今、一番行ってみたいのは、ヴェネチアです。本当に涼しいかどうかはわかりませんが、水にかこまれた街というイメージが、猛暑の日本にいると、うらやましいです。
ヴェネチアはゴンドラ、舟歌(バルカローレ)の街。勝手な空想ですが、いつも8分の6拍子で揺れているような気がしてしまいます。
パガニーニ ヴェニスの謝肉祭
[Melody0]Vsnezian carneval t100 |
オッフェンバック 舟歌(「ホフマン物語」より)
[Melody0]Hoffmann t100 |
チャイコフスキー イタリア奇想曲より
[Melody0]Italian capriccio t100 |
そしてヴェネチアといえば、過去の栄華の記憶もろとも、海中に沈みつつある滅びの美学。
「ヴェニスに死す」(マーラー 交響曲第5番第4楽章)
[Melody0]Visconti t80 |
この街を愛した芸術家は多く、特に国際人にやすらぎを与える街だったのか、ホロヴィッツのように、わざわざヴェネチアでの埋葬を望んだ人も少ないないようです。お墓参りを兼ねて、一度、行ってみたい街です。
1999年8月8日(日)
今はどうなのかわかりませんが、私が中学・高校生のころのブラスバンドでは、よく「1812」を演奏していました。何のこと? チャイコフスキーの作品のタイトルです。私たちは「イチ・ハチ・イチ・ニイ」とわざと棒読みしたりしていましたが、本当は「千八百十二年」−−世界史年表に出てくる、ロシアの対ナポレオン軍勝利の年のことです。確か、チャイコフスキーが、ロシアの戦勝何周年かの記念式典のために委嘱された祝典序曲だったと思います。正式には、荘厳大序曲「1812年」。
戦闘開始のラッパが鳴って、
[Melody0]1812-1 t180 |
フランス軍の「ラ・マルセイエーズ」(実際には下の楽譜の冒頭の一節のみ)が聞こえてきて、
[Melody0]La Marsaillaise t140 |
最後は大砲の響くなか、ロシア軍の大勝利という、なんというか……野蛮な曲です。
[Melody0]1812-2 t120 |
*
チャイコフスキーは19世紀末に1812年の事件を回顧してこの音楽を作ったわけですが、ナポレオン戦争当時の音楽史には、やはり戦乱の時代を思わせる逸話がいくつかあります。
ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」(1804)
ナポレオンに献呈しようとしたけれど、彼の皇帝即位のニュースを聞き、激怒して献呈を撤回したという話はあまりにも有名。
[Melody0]Eroica4 t120 |
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」(1809)
「皇帝」というあだ名は後世のものですが、こちらは、ナポレオン率いるフランス軍のウィーン進駐中の作品です。
[Melody0]Emperer t140 |
他にも、ドゥシークとい当時の名ピアニストは、ヴェルサイユから革命を逃れてイギリスに渡り、寵愛を受けたマリー・アントワネットを追悼するピアノ組曲を書いていますし、ドイツでは対仏戦争中にウェーバー作曲の軍歌集「リラと剣」が評判となり、連合軍の勝利を祝うベートーヴェンの「ウェリントンの勝利」(1814)は各地で大成功を収めました。戦乱は、音楽家にとって無縁ではなかったし、結構、皆、時代にコミットしているようです。
*
……殺伐とした話ではありますが、このページのアクセスカウンターが「1812」に近づき、おそらく7日の夕方頃、「1812」に達したらしいのを発見して、ふと、妙な連想を広げてしまいました。
皆様、遊びに来ていただき、本当にありがとうございます。
1999年8月7日(土)
「たけしの誰でもピカソ」(毎週金曜夜9:00〜10:00、テレビ東京系)−−時間が合うと、なんとなく観てしまうのですが、この番組で、テーマソングのようにして鳴っているのは、
ムソルグスキー「展覧会の絵」
[Melody0]Exhibition t120 |
……でも、そういえば、このメロディは、展覧会の「絵」そのものの描写ではなくて、絵と絵の間のつなぎのメロディです(「プロムナード(順路)」という名前の曲)。ちょうど視聴者参加のオーディション番組が、出品される「芸・アート」の力そのものというより、出てくる素人さんと審査員、司会者との面白おかしいやりとりで座を盛り上げるように、「展覧会の絵」も、「絵」と「絵」の間の「つなぎ役」が活躍するわけです。
*
ムソルグスキーの友人で、音楽上の同志のひとりでもあったリムスキー・コルサコフの
交響組曲「シェエラザード」
にも、艶っぽい魅力的な「つなぎ役」がいます。シェエラザード王妃の前で、シンドバッドの冒険などを「昔あるところで」と語りはじめるナレーターです。
[Melody0]Shahrazad t80 |
*
実際にナレーションを伴う音楽というのも、結構ありますね。
ストラヴィンスキー「兵士の物語」
プロコフィエフ「ピーターと狼」
......
(「誰でもピカソ」の審査員で時々登場する作曲家の青島広志先生は、子供のための音楽教室での、「ピーターと狼」の個性的なナレーションでも知られた方らしいです。)
ヘンリー・パーセルが作曲した下のメロディも、中学校の音楽の時間でオーケストラの楽器の解説のための教材として使われる重厚な管弦楽編曲のほうで有名かもしれません。(私が子供の頃には、栗原小巻さんの語りのLPを使ったりしていましたが、今はどうなのでしょう。)
ブリテン「青少年のための管弦楽入門」
[Melody0]Purcell t170 |
テレビ番組で司会者の名前が大事なように、「兵士の物語」などのレコード、CDでは、語り手の人選が当然、重要。昔は詩人のジャン・コクトーが出演したものがありましたし、日本語版では、板東玉三郎を起用したCDもあります。
*
子供の頃は、「音楽は黙って聞くもの」と躾けられていますから、音楽に「合法的に」割って入るナレーションのおしゃべりは、なんだかとても特別なことに思えて好きでした。そして……今もこうして、ひとつひとつのメロディに嬉々としてコメントしているのですから、私はまったく成長していないわけです。
……とりとめもないおしゃべりにおつきあいいただき、ありがとうございました。
1999年8月6日(金)
先日、大学時代の先輩の誘いで、近所のホテルの「トワイライトコンサート」というものに行ってきました。ラウンジの一角をステージに見立てて、周辺に並べた椅子には、近隣からやってきた家族連れ。2週間連続シリーズの最終日ということもあって、30、40人くらいのお客さんが集まり、なかなかの盛況でした。舞台と客席という区別のない小さな空間で音楽を聴くのは、とてもいいものです。
演奏は、ピアノとヴァイオリンの二重奏。曲目は、ヴィヴァルディ、ルクレールというバロック期のソナタとシューベルトが少年時代に書いたソナチネ。デスクトップとPDAの違いではないですが、こういう小さな音楽には、大管弦楽とは別のセンスが生きているように思います。
そしてアンコールはゴセックのガヴォット。この曲を耳にしたのは何年ぶりでしょう。懐かしかったので、今日はヴァイオリンの小品をいくつか入力してみました。
ゴセックのガヴォット。お行儀のいい曲調、「発表会」の気分。
[Melody0]Gossek t130 |
ベートーヴェンのメヌエット。クライスラーの編曲でよく知られている曲です。本当はクライスラー自身の作品(「愛の喜び」など)を取り上げたかったのですが、調べてみると、彼は思ったより長生きしています(1967年没)。版権を考えて、掲載は遠慮しました。
[Melody0]Beethoven Menuett t110 |
ちょっと少ないですが、今日はこれだけ……。
これ以前の音日記
1999年07月30日〜08月05日
1999年07月23日〜07月29日
音楽の著作権についての暫定メモ
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