最終消費のために
京都でクラシックの演奏会に行くと、最後の曲が終わった途端、周りのお客さんが熱心に拍手するのを後目に、憤然と席を立つ、細身の眼光鋭いの男性の姿を見かけることがあります。時には、ご家族と思われる一団が、追いすがるように彼に続くことも……。
出された料理を一瞥するなり、黙って席を立つ、「美味しんぼう」の海原雄山を想像させて、なかなか迫力があります。千年の都の怖さを思い知る一瞬です。
そんな京都の鬼気迫る音楽通の「若旦那」が書いたのが、この本。
岡田暁生 『オペラの運命』 (中公新書 1585)
オペラのお話というより、オペラ座に渦巻く人間群像の物語です。一攫千金を夢見る詐欺師まがいの音楽家とか、劇場に通いつめて全財産を使い果たす成金たちとかのエピソードの数々。クラシック音楽に美しい夢と癒しの世界を求める向きには、ちょっと刺激が強すぎるかもしませんが、聖俗入り乱れたラテンのノリは、波長が会う人が読むと、メチャメチャ爽快だと思います。(口調は学術書的ですが、内容はきわめて生々しいです。)
ただし、こういう途方もない浪費の物語を知ってしまうと、「何千万円のストラディヴァリウスなんて可愛いものなんだ」、など金銭感覚が麻痺する可能性があるかも。物欲への免疫が弱い方の服用には、注意が必要かもしれませんが(笑)。
[追記 23:30]
きっと興味をもっていただけると確信しておりました。>Youngさん
(そうそう、私もTRGproユーザー、一票入れました! しかも、2月までは黒バック……。)