仕事の記録と日記

白石知雄

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2004年7月31日(土)

李早恵ピアノリサイタル(イシハラホール)。バッハ、モーツァルト、ショパン、リスト、ドビュッシーという豪華な選曲に、サン=サーンスの協奏曲(2台ピアノ版)まで付いて、アントン・ルビンステインの「歴史的演奏会」風でもあり、音楽大学やコンクールの課題曲風でもあるプログラム。これをやりたい、弾きたいと思ったら、迷わず、実行に移す、並はずれて意志の強い人なのでしょうか。

楽曲解説の記録を更新。李早恵ピアノリサイタルの解説を書きました。


2004年7月25日(日)

古楽系集団アコルドネによる「タランテラ」(ザ・フェニックスホール)。坊主頭のマルコ・ビズリーの艶っぽい美声、ギターが似合う二枚目俳優ピノ・デ・ヴィットリオ、ワイルドな風貌に似合わないナイーヴな歌を作る「元羊飼い」でタンバリンの魔術師アルフィオ・アンティコ……等々、思い切りキャラの立った曲者ぞろい。クラシック音楽のようでもあり、民俗音楽のようでもあり、ヒーリング系ポップスのようでもあるスタイル。「接合」という無粋な訳語がはばかられる、巧妙なアーティキュレーションということになるのでしょうか。アカデミックでもオーセンティックでもなくて、いかがわしいけれど、プロフェッショナルで。ここまで「根拠」を外して、「つかの間」の世界を漂流して、大丈夫なのかと、後半、やや付いていけない気もしたのですが、よくできたステージでした。


2004年7月24日(土)

びわ湖ホールで、J・シュトラウス「ジプシー男爵」。歌(公募で選ばれたメンバー、初日の今日は若手中心)よりも、踊りや芝居よりも、まず、秋のヴェルディ・シリーズに匹敵する舞台を「見せる」公演。演出は、岩田達宗。、佐藤功太郎指揮、大阪センチュリー交響楽団他。


2004年7月23日(金)

迫昭嘉ピアノ・リサイタル(ムラマツリサイタルホール新大阪)。オール・モーツァルト・プロ。均質に切りそろえられたタッチは、演奏術として、称賛されるべきことなのだろうと思いますし、決して、無表情ではないのですが、いわば、無重力で、現実感に乏しい気がしました。


2004年7月22日(木)

ユーシア弦楽四重奏団演奏会(金剛能楽堂)。昨夏の尖った演奏から一転して、かつての長岡京アンサンブルを思わせる、繊細に作り込んだ演奏。彼ら自身はこの先、どういう展望を持っているのでしょうか?

楽曲解説の記録を更新。ユーシア弦楽四重奏団演奏会の解説を書きました。


2004年7月21日(水)

ジョングルール・ボン・ミュージシャンというグループによる中世・ルネサンスの世俗音楽(ザ・フェニックスホール)。リーダー格の辻慶介氏のアイデアや、歌い手・パフォーマーとしての存在感のウェイトが大きい印象。現有メンバーでも、見せ方・演出を工夫すれば、もっと、あか抜けたステージになるような気がします。商業ベースのプロを目指すのか、「俺流」を通すのか、岐路に立つインディーズ・バンドという印象でした。(ロックに比べれば、ここ十数年で、ようやく商業ベースに乗り始めたばかりの古楽業界は、全然、牧歌的だと思いますが。)


2004年7月19日(月)

内田れい子ピアノ・リサイタル(いずみホール)。今の若いピアニストならば、奏法上の工夫で、かわしてしまうようなところを、丹精込めて、音楽として解きほぐす、逃げない姿勢に、頭が下がる思いでした。曲目は、ベートーヴェン(後期のバガテルと変イ長調ソナタ)、ショパン(即興曲第3番、バラード第3番)、リスト(ペトラルカのソネット、「死者の追憶」)。


2004年7月17日(土)

京都フィルハーモニー室内合奏団定期演奏会(京都コンサートホール小ホール)。武満徹、細川俊夫と、楽団員がソリストに立つミヨー「春」〜「冬」のコンチェルト。志の高さを感じさせる選曲でした。それにあわせて、舞台の転換は、もっとスマートにした方が良いし、立派なことをやったあとなのだから、拍手は、もっと堂々と受けるべきでは、と思いました。


2004年7月15日(木)

長岡京室内アンサンブル演奏会(京都府立府民ホール・アルティ)。全員でウワッと一丸となった、元気の良いエルガー(弦楽セレナード)、ブリテン(シンプル・シンフォニー)。新しいメンバーが増えて、これまでとは、少し違った雰囲気になりつつあるようでした。

楽曲解説の記録を更新。長岡京室内アンサンブル演奏会の解説を書きました。


2004年7月11日(日)

渡邊玲奈フルート・リサイタル(京都府立府民ホール・アルティ)。昨年のリサイタルで注目を集めたスケールの大きな歌いっぷりと、細かい奏法的なところにこだわってしまう学生っぽさが相半ばする演奏。まだ東京芸大の学部生だそうですから、これから、色々経験を積んで、成長する人だと思います。


2004年7月10日(土)

大谷正和、マチュー・グレゴワールのピアノジョイントリサイタル(バロックザール)。グレゴワールの武満徹は、音をかなり強めに打鍵して、和音の組成を、ひとつずつ耳で確かめながら進むような、知的な演奏。後半のデュオ(ドビュッシー、一柳、ラヴェル)では、ややせっかちに進める大谷と、呼吸が合わないようなところも感じられました。お二人は、今回が初顔合わせだったようです。

楽曲解説の記録を更新。西本智実・京響のヴェルディ「レクイエム」公演の解説を書きました。


2004年7月9日(金)

いずみシンフォニエッタ大阪演奏会(いずみホール)。「新・音楽の未来への旅」シリーズの一環で、伊藤弘之(「揺れる森の夢」(初演))、川島素晴(「フルート協奏曲」)の新作上演がプログラムの核。後者は、演奏者が、指揮者のジェスチュアを無視して弾いたり、指揮者と、フルート独奏(安藤史子)が一対一で対決したり、指揮者と演奏者の関係を問い直すねらいがあるようでした。プレトークによると、室内楽的な編成を、今回、新たに室内オーケストラ用に書き直したとのこと。このアイデアを展開するには、編成が小さい方が都合が良いのかも、という気がしました。

 

2004年7月8日(木)

大フィル定期(ザ・シンフォニーホール)。朝比奈隆氏の晩年には、誕生日前後のこの季節の定期で、ブルックナーやマーラー、R・シュトラウスの大曲を取り上げるが、大フィルの恒例になっているようでした。今回は、「朝比奈隆生誕96周年記念」と銘打ち、大植英次の指揮で、ブルックナーの交響曲第8番。「後継者」として、避けては通れない道ということでしょうか。

コラールでも、まるで、ピアノでを弾いているように、和音の最高音を際だたせた、腰の高い響き。これは、大植さんの個性というより、現在の耳・感覚の限界なのでは、と思いました。細部まで克明に表情をつけて(終楽章の鳥のさえずりなどは生き生きする面白い瞬間)、全体のプロポーションに気を配って、八方手を尽くした指揮ぶりですが、やればやるほど、ブルックナーのある種の「愚鈍さ」のようなものから、遠ざかるような気がしました。

大フィルは、昨年来、(春に来日したハノーヴァーのオーケストラよりずっと献身的に)大植さんの要求に、敏感に反応しようと努めていたように思います。でも、今回は、指揮と距離をおいて、オーケストラが自分たちのタイミングで弾いているのが、はっきりわかる場面があったように思います。

波風を立てない、表面的なおつきあい以上のところに、オーケストラが踏み込んだ印象を受けました。大植氏が、大フィルとの息の長い関係を望んでいるのだとしたら、これからが正念場なのかもしれませんね。


2004年7月6日(火)

映画「カンダハール」の音楽を担当したホセイン・アリーザーデを中心とする、ハムアーヴァーヤーン・アンサンブルの演奏会(ザ・フェニックスホール)。彼が考案したヘテロフォニー音楽(ハムアーヴァーヤーン)は、イラン古典音楽の断片を組み合わせることで成り立っているようでした。


2004年7月5日(月)

ラファウ・ブレハッチのピアノリサイタル(いずみホール)。昨年の浜松ピアノコンクールで、最高位(1位なしの2位)になった人だそうです。ドビュッシー、リスト、ショパンの有名曲が並び、どれも、よくコントロールされた演奏ではありました。85年生まれで、まだ18歳。


2004年7月3日(土)

午後、イシハラ・リリックアンサンブル演奏会(イシハラ・ホール)。バドゥラ・スコダのピアノ(モーツァルトの協奏曲第17番)は、確かに良いピアノだったのですが、弾き振りだったせいか、ある種のルーズさが、オーケストラと相容れなかったのか、いまひとつ落ち着かない演奏。



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by 白石知雄 (Tomoo Shiraishi: tsiraisi@osk3.3web.ne.jp)