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◆ 社名の歴史 ◆
「青磁社」という名の出版社は私たちで3代目となります。 第一次青磁社は昭和初期に歌集出版などを手掛けていました。 第二次青磁社は昭和40年代頃に詩集出版をメインに、やはり歌集も出版していました。 歌集出版にゆかりある社名を引き継いだ使命を、今後十二分に果たしていく所存です。


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◆ 週刊時評 ◆
川本千栄・広坂早苗・松村由利子の三人がお送りする週刊時評(毎週月曜日更新)

第43回迢空賞受賞!!
第20回齋藤茂吉短歌文学賞受賞!!




結社と若い世代
text 広坂早苗

 「短歌新聞」6月号社説は、新体制に移行した「沃野」について評している。この週刊時評でも最近川本さんが取り上げていたが、「りとむ」の三枝浩樹が、歌を始めた時期に所属していた「沃野」の主宰として迎えられた件である。社説には、書き手の驚きが率直に記されている。「堅実な運営を続けてきた同誌の、これは目をみはらせるような選択である」「(三枝浩樹の代表就任を喜ぶ山本かね子の文章に対し)伝統ある結社を支え続けてきた人の言葉である。ここに至る間の苦渋を推しはかるにあまりある期待が表れていることに、新鮮な驚きをおぼえずにいられない。」そして、その上で「多くの結社が、今回の『沃野』の決定をうらやむのではないか。それほど、歌壇の高齢化は深刻なのである」と所感を述べている。
 「沃野」も、その後三枝が活躍した「かりん」も、窪田空穂の系譜に連なる歌誌である。「今回の移籍は、ある結社の歌人が別 の結社に移ったと考えるよりは、窪田空穂につながる結社が共存共栄の形をとったと考える方が短歌史的に見れば正解であろう」と川本さんが言っている通 りだが、これが「モデルケース」とはなりにくいだろうと考える。主宰個人の作品・作風、あるいは人柄に惹かれて結社を選ぶ人が多いからである。従って、主宰の死去により廃刊となる歌誌があるのも、やむを得ないところである。結社の存続を考えるなら、やはり結社内部で主宰を引き継ぐことのできる人材を育てることが望ましいのであろう。どの結社においても、若手の育成が最も重要な課題の一つであることは間違いない。
 同じ「短歌新聞」6月号の「結社の役割と責任」と題された永田和宏の文章に、次のような一節がある。

 結社のもうひとつの大きな責任は、(中略)後続の世代をいかに育てるかという視点をどこかで持つことにもある。自分たちの時代だけでなく、その次の時代にも歌壇が、そして短歌が同じように元気であること、そのための方策と問題意識を、何らかの形で結社自体の存在のなかに抱えることも大きな責任である。

 主宰のこのような考え方の下、「塔」では、全国大会で託児所を設ける、大学生以下の会員の会費を無料にするなどの試みがなされ、編集も運営も若い世代が責任を持つ体制が定着しているという。「子育て真っ最中のもっとも歌ができるときに、大会に参加できない若い母親がいるようでは、若い世代は育たない」「少しずつではあるが、大学生以下の集団ができつつある。若手はまわりから介入しないで、彼ら自身で群れさせることが大切である」と永田は記しており、若い世代を大切に育てようとしている姿勢がわかる。このような主宰の姿勢をうらやましく思う若手は多いのではないか。
 「塔」2008年10月号の「十代・二十代歌人特集」に30名近い出詠者がいるのを見て、若い人材の充実ぶりを感じたのだったが、その背景にはこのような工夫と努力があるのだと改めて納得した。また、「塔」6月号の歌会に関する特集では、30を超える他結社の本部・支部歌会、超結社の歌会、学生短歌会にアンケート調査を実施しており、まるで総合誌のような企画だと思ったものだが、このような手間暇のかかる企画が実現するのも、若手編集部の力によるものだろう。
 結社にとって第一に大切なことは、無論、活気ある結社誌を作り、批評活動としての歌会を充実させることだと思う。優れた歌と評論が魅力ある結社誌を作るのは、言うまでもないことだし、魅力ある結社誌と歌会には、おのずと人が集まってくるだろう。しかし、高齢化が進む結社に若い人材を呼び込むためには、多少戦略的な工夫も必要なのではないか。
 運営の中心にいる人々が、「後続の世代をいかに育てるかという視点」をどれほど持つことができるか。それが、後継者の問題も含めて、結社の将来を左右することになるのだろうと思った。


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