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◆ 社名の歴史 ◆
「青磁社」という名の出版社は私たちで3代目となります。 第一次青磁社は昭和初期に歌集出版などを手掛けていました。 第二次青磁社は昭和40年代頃に詩集出版をメインに、やはり歌集も出版していました。 歌集出版にゆかりある社名を引き継いだ使命を、今後十二分に果たしていく所存です。


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◆ 週刊時評 ◆
川本千栄・広坂早苗・松村由利子の三人がお送りする週刊時評(毎週月曜日更新)

第20回斎藤茂吉短歌文学賞受賞!!



「主宰の定年制」に思うこと
text 川本千栄

 3月13日の読売新聞に俳人の長谷川櫂を取材した記事があった。〈俳句 中心軸を30〜40代に〉〈長谷川櫂さん 『古志』主宰定年制表明〉という見出しである。現在50代である長谷川櫂が、主宰する俳誌『古志』3月号で「主宰の定年制」を打ち出した。記事はそれを「異例の決断」と捉えて、長谷川にインタビューをしている。この新聞記事を読んで驚いたことに、短歌結社と俳句結社の抱える問題点はとても似ている。

…まさに「脂が乗り切った」この時期、あえて主宰交代の意思表明をした。「俳句の中心軸を30〜40代に下げる必要がある」という思いからだ。背景には、俳句人口の高齢化や結社の硬直化といった問題への危機意識がある。
 実際、今や愛好者の大半を占めるのは仕事を辞め、子育てを終えた高齢者。一方、「俳句甲子園」などを通 じて俳句に親しむ若者も少なくないが、ほとんどがその後続かないのが現状だ。
 そのような中、打開策として打ち出したのが、30歳若い主宰に道を譲る主宰交代制だった。「俳句は、芭蕉の頃から戦後しばらく、ずっと若い人が担ってきた。それが、この何十年かで俳壇の人口構成ががらっと変わってしまった。それが問題の土台にある。若い人はもっと発言していいし、発言する以上は責任があるから勉強もするはず」と次世代を育てる大切さを説く…

 長谷川が狙ったのは主宰の若返りによって、結社全体の若返りを図り、中心となる世代を現在よりかなり下げよう、そうすることによって若い世代が俳句に取り組みやすくしようということだろう。何しろ2年後に主宰を譲られる予定の副主宰大谷弘至は現在28歳という若さである。30代が主宰する短歌結社は果 たしてあるのだろうか。『古志』の主宰交代が行なわれれば、俳句結社だけでなく、短歌結社から見ても画期的ということになるだろう。
 短歌にしても俳句にしても若い世代をどう育てるかが課題となっているということだ。「俳句甲子園」などで一時的に盛り上がっても同好の仲間に同年代がいなかったり、ただ淡々と作るばかりで自分の存在感が感じられなかったら続かないのも当然だ。
 『短歌現代』3月号の「俳壇」欄でも村上鞆彦が「若手と結社」の関係について述べている。それによると、最近、若手と結社への言及が俳壇においてよく目につくらしい。このテーマは目新しいものではないが、言及が増えたのは、結社に拠らない若手の活躍が目立つことが一因らしい。「彼らは無所属という立場を積極的に選択して、自由な活動を続けている。おそらく彼らの目には、束縛するものとしての結社の一面 がクローズアップされて映っているのであろう」と村上は述べる。しかし、その一方で結社に属する若手も多く活躍しているらしく、「おそらく彼らは結社を束縛とは捉えずに、逆に自らの拠って立つ土壌として、そこから養分を着実に吸収しているに違いない」と考察している。
 実に歌壇にも当てはまる状況分析だと思う。ただ、俳壇にしても歌壇にしても、結社のどういう部分が、なぜ束縛と感じられるのかを具体的に考察しないと解決には繋がらないだろう。村上の文には「指導者や構成員の高齢化、風通 しの悪い閉鎖性、師弟関係という因習」が挙げられていたが、高齢化以外は若干抽象的だ。具体的な「高齢化」に対しては「主宰の定年制」などの具体策が出てくる。件の新聞記事で長谷川櫂が「とにかく『まず隗(櫂)より始めよ』ということで」などと述べていたが、どのぐらいの結社が同様の策を取るかはわからない。わからないが、策を立てられるということがまず大切なのだ。
 結社には正の側面も負の側面もある。結社内部に長期間いると、次第にどちらの面 に対しても感覚が鈍くなってくる。そのため結社内部にいる者こそ、常に時代や状況を考えて、結社という制度の問い直しをする必要があるだろう。そうでないと、本来あったはずの良い面 すら徐々に機能しなくなってくる。これは結社対結社とか、結社対無所属というレベルの話ではない。結社の活性化は、最終的には、ジャンルとしての魅力をどう打ち出すかという問題に繋がっていくことだと私は考えている。


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