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◆ 社名の歴史 ◆
「青磁社」という名の出版社は私たちで3代目となります。 第一次青磁社は昭和初期に歌集出版などを手掛けていました。 第二次青磁社は昭和40年代頃に詩集出版をメインに、やはり歌集も出版していました。 歌集出版にゆかりある社名を引き継いだ使命を、今後十二分に果たしていく所存です。


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◆ 週刊時評 ◆
川本千栄・広坂早苗・松村由利子の三人がお送りする週刊時評(毎週月曜日更新)

この時評に対して小高さんから反論を頂いております。
こちらをクリックして是非お読み下さい。

「大辻隆弘さま」
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小高さんが「かりん」11月号に書かれた
「ふたたび社会詠について」を転載させていただきました 。
こちらをクリックして是非お読み下さい。

「ふたたび社会詠について」
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正しい社会詠?
text : 大辻隆弘

 「かりん」11月号に掲載された小高賢の評論「ふたたび社会詠について」を読んだ。納得できない文章だった。
  小高は、岡野弘彦の『バクダット燃ゆ』のなかの「十字軍をわれらたたかふと 言ひ放つ 大統領を許すまじとす」といった歌を例にあげて、ここには「アメリカの同盟国である日本」という視点が欠けている、という。米国の大統領の世界支配に協力しているのは日本だ。そして、岡野自身も日本国民である以上、米国のイラク侵略に間接的に加担しているはずだ。にも関わらず、アメリカの大統領を「許すまじ」と指弾するのは、同盟国の国民としての自己の立場を認識していない「外部」に立った見方なのではないか……。小高は、そう批判するのである。
  このような小高の認識は、市民としては、誠実な態度といえるだろう。小高は、歌のなかにもアンガージュマン(いささか古い言葉だが)の意識が不可欠だと言いたいに違いない。
  歌人としての小高も、その思いに忠実だ。彼はオウム事件を歌うために、実際に上九一色村に足を運んだという。現場を自分の目で見る。そのなかで自分が確かめたものだけを歌う。彼はそのような態度で歌を作っている。自分の目で見た正しい認識のみに基づいて作歌しようとする彼の態度は、確かに、敬服に値する。そこには、短歌を「認識の器」と考える彼の確固たる信念があるのだろう。
  が、そのような認識の正しさと、歌のよしあしは別次元にある問題なのではなかろうか。
  『バクダット燃ゆ』所収の「ひらひらと手をふりて笑ふ大統領。そのひと振りに 人多く死す」といった歌は、テレビ映像から作られたものであり、現地で歌われたものではない。日米軍事同盟に自分自身も加担している、という当事者意識もあまり感じられはしない。が、手をふりながら衆愚に媚びるブッシュの映像を目にしたときの憎悪の迸りは、私たちの胸を確実に打つ。おそらくそれは、ハ行音の軽薄な音が連鎖する上句と「人多く死す」という結句の間にある激しい調べの落差のなかから、私たちが直観的に感知するものであるはずだ。
  また、小高は「読者の心に届く社会詠」として「新しき国興るさまをラヂオ伝ふ亡ぶるよりもあはれなるかな」(土屋文明)といった歌を挙げる。確かにこの歌は、今なお魅力的だろう。が、その魅力は「正しい社会認識」から齎されている訳ではない。「新しきもの」に亡びを幻視する想像力、またそのニュースを耳にしたときの暗鬱とした心情を表現した重厚な歌の調べ。この歌の魅力は、おそらく、そういった歌の表現や調べから齎されているのだと思う。
  小高に必要なのは、あくまでも歌の言葉に即して、これらの歌の魅力を説き明かすことであったはずだ。文明らの歌を例示しながら、その魅力を「かなり素朴なつくりである」「しかし、それゆえ読み手に届くものがある」といった安易な印象批評で事足れりとする小高の批評態度に、私は強い疑問を感じた。 「正しい社会詠」などといったものはない。あるのは、いい歌と、ダメな歌だけだ。

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