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背景放射とビッグバン宇宙論           
黒体放射について                      
背景放射の源は宇宙空間である                
背景放射と宇宙の絶対静止系             

BACKMENUHOME  背景放射とビッグバン宇宙論

 歴史的に、ビッグバン宇宙が定常宇宙に勝利した理由は、1964年、アメリカのベル電話研究所のペンジアスとウィルソンの発見した宇宙の3K背景放射によるとされています。彼らは通信衛星からの電波を受信するアンテナを使って、通信のバックグラウンド・ノイズとなる宇宙からの雑音電波のチェックを行なっていました。ところが、宇宙からやって来るそれらの雑音電波を消去したのですが、どうしてもあらゆる方向からやって来る雑音電波の原因を同定する事ができなかったのです。この電波は宇宙のあらゆる方向から完全に均一にやってきており、地上にはその原因を求めることができず、また近くの天体にその原因を求めてもその均一性を説明できませんでした。この様な電波の存在が、実はビッグバン宇宙論者によって予言されていたのでした。
 1948年、「αβγ理論」のアルファーらが、ビッグバン宇宙の初期の、高温で不透明であった状態の時の残光が、今もこの宇宙のあらゆる場所に存在すると予想しました。その波長は宇宙の膨張とともに引き延ばされ、現在では、絶対温度にして5Kの黒体の放射する波長に相当すると考えました。ビッグバン宇宙の提唱者であるジョージ・ガモフ自身も1953年に発表した論文の中で、同じ様な推論を述べ、絶対温度7Kに相当する波長の電波をとなるであろうと予想しました。
 一般的に、物理学では、未だ観測されていない事象をある理論や説によって予測し、それがそのとおり発見された場合には、その理論や説は非常に信頼性のあるものとされています。この考え方によれば、3Kの背景放射はビッグバン宇宙の強力な証拠となります。この背景放射の発見により、それまでビッグバン宇宙かそれとも定常宇宙か、どちらが正しいかが激しく論争されていたのが、決着がつきビッグバン宇宙の勝利とされたわけなのです。
 現在、ビッグバン宇宙が支持されている理由は幾つかあるもののその中の大きなものは(その他はとるに足らない理由です)、赤方偏移とこの3K背景放射(その後正確な観測により2.7K背景放射とされた)です。逆にいえばこれらが覆されれば、ビッグバン宇宙は否定される可能性が強いのです。
 さてこの背景放射がビッグバン宇宙論で予測されていたというのですが、これでビッグバンが正しいと決定していいのでしょうか。他の理由で説明が不可能な場合には、充分これは根拠となり得るのですが、他の理由によってもこの現象の説明がつくのであれば根拠とするには不充分と思われます。これについては、物理学会の大勢が他の理由よりもビッグバン宇宙の残光で説明することを支持しているというだけであり、必ずしもあまり積極的な肯定でもないように感じられます。他の理由が否定されたというよりも、ビッグバン宇宙論者が背景放射の発見で彼らが勝利したとして、その他の原因による可能性について検証することを放棄してしまったという方が正しいように思います。
 歴史的にみても、ある科学の説が他の説に対して勝利を宣言したときはしばしばそれがその説の最後であったということはよくあることです。それはあまりに勝利を確信し過ぎてその説の矛盾点に対して盲目的になってしまっているからです。
 さてそれでは、次にビッグバンに対する、反撃を試みることにしましよう。

BACKMENUHOME 黒体放射について

 背景放射は黒体放射とも表現されます。さてここで、この背景放射の解釈について議論する前に、この黒体放射とはどういう物理学的概念であるかを簡単に考えてみましょう。「黒体とはすべての波長の放射を完全に吸収する物体をいう。周囲の壁が放射を完全に透さないで一定の温度に保たれる空洞の壁に、その壁にくらべて非常に小さい孔をあけるとき、この孔を外部から見ると黒体とみなされる。黒体から放出される熱放射を黒体放射という。」(理化学辞典 岩波書店)  「黒体放射とは、黒体から放出される熱放射。黒体を実現する空洞内では空洞の壁が一定温度に保たれる限り、平衡状態が成り立ち、空洞の小孔はその温度に相当する黒体放射の放出表面となる。」(理化学辞典 岩波書店)
 さてこのような黒体放射が問題になったのは、高温の炉の中で溶かした鉱石の温度を測定する方法の研究からです。このような高熱状態では直接温度計で温度を測定することができないため、その放射する電磁波より温度を決定する方法が研究されたのです。炉の内部のような閉じた空洞の場合には、壁から出た電磁波が空洞内に充満し、壁から出る放射と壁に当たって吸収される放射が同量になって釣り合っています。このような状態を熱的平衡といいます。これを壁に小さな穴を明けて覗き、このスペクトルを測定するとこの放射された電磁波は内部がどのような物質でできているかにかかわらず、温度によって一定の分布を示します。この分布を説明する問題から、20世紀の輝かしい物理学上の成果である量子力学が生まれました。 この黒体放射の問題からいかに量子力学が生まれたかは、ここでの内容とは直接関係しないので触れません。

BACKMENUHOME 背景放射の源は宇宙空間である

 黒体放射とは物質の種類には関係せず、熱的平衡にあるかどうかという事のみによっています。ビッグバン宇宙論ではこのような熱的平衡状態というものは宇宙のできた極初期のみに存在していた状態と考えているようです。宇宙のあらゆる方向からやって来るこの放射は、宇宙が小さかったときから我々の地球にやって来るまでその間に存在する物質に吸収されることもなくやってきたと考えられているわけです。これは本当に正しいのでしょうか。
 ここで先程の黒体の定義について、考えてみることにしましょう。周囲の壁が放射を完全に透さないで一定の温度に保たれる空洞という物を黒体として定義しています。これを宇宙とくらべてみましょう。宇宙が閉じた有限な存在であるなら決してその中にある放射は外界へ出ることはありません。これは周囲の壁が放射を完全に透さないということに一致します。また一定の温度に保たれているという記述に関してですが、これは厳密には今の宇宙では成立していません。他の章において熱的平衡にある広い宇宙空間が存在し、その中に恒星などの高温の部分が点在し、この二つが非平衡状態で共存するという可能性を示しました。この考えが正しいなら、近似的には宇宙空間のほとんどは黒体として存在していることになります。
 銀河の間などに存在する種々の物質、水素原子や分子などほとんどの物質は自らの力で光輝いているのではありません。光り輝くのは重力により物質が凝集した天体に起こる現象です。そしてそれら天体以外の暗黒の空間に存在する希薄な物質は、暗黒という言葉が示すように、宇宙空間の中でごく低い温度で熱的平衡状態にあると考えられます。黒体の定義ではこれら物質がどのような種類であるかということは全く不要です。恒星など自らエネルギーを産生している天体とはもちろん非平衡の状態ではありますが銀河と銀河の間のような想像もつかないほどの広大な空間においては、ほぼ完全に近い熱的平衡状態となるでしょう。これらの宇宙空間に存在する物質が2.7Kで熱的平衡状態にあるとすると、もはや宇宙の初期からやってきた光の放射の温度が何度であろうが、それとは関係なくこれらの物質自体から2.7Kの黒体放射が行なわれることになります。それは黒体放射というものがどういうものかという説明から明らかです。つまり、この考えが正しいならば、2.7Kの背景放射はビッグバンの名残であるなどとすること自体が無意味となるわけです。
 宇宙の背景放射が、定常宇宙を否定するというのであれば、広大な宇宙空間に存在する物質が2.7Kでは存在することが不可能なことを論理的に完全な形で証明しなければいけません。それを証明できない限り、背景放射が存在することによって定常宇宙論を否定することは不可能です。
 私は、以前高名な宇宙論学者の講演において、「銀河間にある物質が背景放射を放っているとは考えられないのか」と質問したことがあります。それに対する答えは「現在観測されている背景放射の強度を充分説明するだけの物質が宇宙空間には存在しない」ということでした。また物理学者の大多数も現在観測されている背景放射の強度は、ビッグバン初期の状態でしか得られないと考えているようです。しかし、そのような脆弱な理由では定常宇宙を否定することにはなりません。なぜなら、背景放射の強度の問題は宇宙空間にどの程度の物質が存在するのかが正確に分かっていなければならないからです。最近になって背景放射とは別の問題(銀河の形態の維持に関する問題)において、現在観測されている宇宙の物質の量だけでは足りないということが言われています。それゆえに、宇宙空間には我々が観測できていない未知の物質であるダークマターが存在していると考えられているのです。このダークマターは光と反応するのかしないのかさえよくわかっていません。その様な説を述べている傍らで、充分な物質が宇宙空間に存在しないからと宇宙空間起源の背景放射を否定してしまうのは一体どういうことなのでしょうか。自分に都合良くいくらでも宇宙空間の物質の量は増やして考えるのに、どうして都合の悪い分野においては宇宙空間の物質の量を昔の考えのままにしておくのでしょうか。背景放射の強度はビッグバン以外では説明できないなどと結論を下すのは実に馬鹿げたことなのです。
 背景放射について記述している書物のほとんどにおいてビッグバン由来の放射以外の理由がどのような理由によって否定されるかについては、ほとんど記載されていません。私が読んだ書物の中でただひとつ書かれていた理由は次のようなものでした。それは、「ビッグバン由来でしか説明できないということが物理学者のおおかたの意見であるから」というものでした。まるで科学的根拠がありません。始めからビッグバンが正しいという先入観を持っており、きちんとした評価をおこなっていないわけです。一般的には背景放射がビッグバンの根拠とされていますが、物理学者の頭の中では、ビッグバンが背景放射の根拠となっており、一生この間違った輪の中から抜け出せそうもありません。

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 歴史的にみた場合、一般的には定常宇宙がビッグバン宇宙に対して敗北したのは、背景放射の発見によるとされているのは、すでに書いた通りです。  しかし、別の見方をすれば、背景放射の発見は実は宇宙の絶対静止系の発見なのです。背景放射を形成する系は明らかに他の慣性系と考えられる系とは違って特別の地位が与えられています。背景放射をなす系に対してどのぐらいの速さでどの方向に運動しているかということが観測可能なのです。そしてこの系は宇宙的規模の広がりをもって形成されている事がわかっています。マッハ原理の正しさが証明されたとも考えらます。明らかに他とは違った特別な地位を有する慣性系が発見されたわけですから、それまで考えられていたすべての慣性系は、この背景放射の系とは区別されなければなりません。つまり、背景放射を形成する系は絶対静止系でありそれは真の慣性系です。それ以外の従来慣性系と考えられていた系は、厳密には加速度系ということになります。 宇宙に絶対静止系が、存在することは、もはや観測による事実です。この系は、すでに述べたように、宇宙の背景放射をなす系です。この考えは、背景放射が、発見された1964年までは、相対性理論により否定されていました。しかし、この背景放射の発見により、相対性理論は一部修正されるべきなのです。  今までの相対性理論が完全に正しいとする立場からは、この考えは異端的ですが、よく考えてみればこの絶対静止系という考えは、当り前の事です。宇宙を見渡してみればすぐにわかります。もし一定方向に一様な運動をするあらゆる系が慣性系でありまったく同等であるならば、もっと天体は自由に、光速度に近いような速さで、気まま勝手に運動しているはずである。ところが、実際には宇宙の天体は光速度に比べてはるかに遅い速度で運動しており、宇宙的規模から見ればほとんど静止したようにさえ見えます。そしてそれはまさしく絶対静止系と呼んでよいものです。絶対静止系が存在するものと考えれば、現在観測されている宇宙の状態というものは全く矛盾がありません。ところが、ありとあらゆる同等な慣性系が存在すると仮定すれば、現在あるような宇宙の状態というものは、とても説明のできるものではないのです。絶対静止系に対して速い速度を持つものはやがてその運動エネルギーを失い、絶対静止系にとどまろうとするから、極端に速い速度で移動する天体などは存在しないのです。自由に運動しているはずの光もその運動とともにやがてはエネルギーを失っていくはずです。そしてこの考え方が、ビッグバンの根拠を否定してしまう結果となります。ビッグバンを支持する1番の観測的根拠と考えられていた背景放射が実はビッグバンを否定する1番の根拠となるとは皮肉なことです。そしてこの事について物理学者はだれも気が付いていないように思われます。その詳細について次の章にて説明することとします。 BACKMENUHOME