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熱力学第2法則とエントロピー          
熱力学第2法則の限界        
重力が存在する場合の熱力学第2法則       
熱力学第2法則の適用範囲  
宇宙は決して熱的平衡状態にならない          

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  熱い湯は、放置しておけば次第に冷めて、室内の温度と等しくなり、圧縮された気体は解き放たれると周囲に存在する気体と混ざりあい均一化します。これが熱力学第2法則の具体的な例です。この法則は、統計的法則であり、物質粒子がたくさん集り十分な時間を経た場合にその系が最終的に統計的に行き着く姿を予測したものです。この法則によれば、十分な時間を経れば物質は、空間に均等にばらまかれ、そしてその運動も平均化され一様になります。つまり熱的平衡状態になるというわけです。統計則によればより統計的に起こりやすい状態に物質は落ち着く、つまり整頓された状態から、より乱雑な状態に変化していくというのです。そしてこの乱雑を表す尺度がエントロピーであり、このエントロピーは常に増大するとされています。
 この法則は、定常宇宙を否定する理由として、たびたび利用されます。 日本でも知らない人がいないぐらい高名な宇宙論学者が1990年に日本で車椅子で講演を行ないました。その時この人は、定常宇宙を否定するために以下のようなことを言いました。「宇宙は永遠に存在し続けたという理論は、エントロピー、つまり無秩序は常に時間とともに増大する、という熱力学の第2法則に矛盾することになります。人類の進化についての議論と同様に、熱力学の第2法則も宇宙には始まりがなくてはならないことを示しているのです。さもないと、宇宙は現在までに熱平衡に達しているはずですべての物は同じ温度になってしまっていることになるのです。」このような説明により、定常宇宙を否定しているのです。
 しかしながら気を付けなければいけないのは、この熱力学第2法則または、エントロピー増大の法則はもともとは、実験室的現象について得られた法則だということです。実験室で取り扱う気体の状態を記述するには誠に良い法則です。そしてここで取り扱われる気体粒子は、その間には引力が働いていない理想的粒子を仮定条件としているのです。もちろん、実験室の中のような小さな空間で行う気体の実験では、重力というものが非常に小さな力であるために、この仮定はほぼ成り立ちます。熱力学第2法則が矛盾なく適用できたのも、以前はこのような実験室での実験しか取り扱わなかったからです。

BACKMENUHOME  熱力学第2法則の限界

  実験室では小さな部屋に閉じこめられた気体は大きな部屋に解放すると、大きな部屋全体に均一に広がります。これこそ、温度も物質密度も場所によらず均一になるというエントロピー増大の理想的表現です。次に、よく似てはいるものの全く別の結果をもたらす実験を考えてみましょう。小さな部屋に鉄の塊をおく、さてここで大きな部屋の扉をあけるとどうなるでしょうか。大きな部屋には決して、広がって行きませんし、ましてや均一になることなど絶対にありません。温度は均一になるかも知れませんが、ここではエントロピー増大は理想的には実現しません。このようなに書くと、「鉄の塊が空間に均一に広がって行かないことなど当たり前、そんな実験を持ち出すのが間違い」と思うでしょう。そうなのです、エントロピー増大を理想的に実現するのは、理想的気体つまりはお互いの粒子の間に全く力が働かない場合であり、このような前もっての了解事項が満たされていない場合には、そのままエントロピー増大を無制限に適用することはできないのです。この鉄の塊の実験の場合なぜ理想的にはエントロピー増大の法則を適用できないかといういますと、この場合鉄原子同志が化学的な力で固く結び付いているからです。多くの物理学者はエントロピー増大の法則を無批判にそのまま宇宙に適用しようとしていますが、これが本当に正しいのか。宇宙についてこの是非について考えてみましょう。

BACKMENUHOME  重力が存在する場合の熱力学第2法則

 宇宙のように物質が途方もなくたくさんある場合はどうでしょうか。実験室では無視していた非常に小さな力の重力ももはや無視することができなくなります。例えば水素原子を実験室の中の真空の箱の中に、2個だけ入れたとしましょう。この2個の水素原子の間の重力の作用は計測することもできないぐらい微弱であり、水素原子の動きは全くと言っていいぐらい、水素原子間の重力の影響を受けません。しかし、宇宙では莫大な数の水素原子が、お互いの重力により引き合い、星を形成するのです。
 つまり、宇宙空間では、重力が重要な役割を果たし、理想的気体の問題として取り扱うことができなくなります。いままで知られていた、熱力学第2法則はそのままでは成り立ちません。ここで重力が果たす役割は、先に示した実験において鉄原子に働く化学的力と同じです。統計的に乱雑になろうとする働きと、これらの力は正反対に働く作用なのです。
 宇宙を考える場合は従来の熱力学第2法則のみでは適当でないことは今や物理学会でも常識となっているようです。そしてこれにとって代わってきたのが、重力が存在する場合の熱力学第2法則です。重力がある場合は、重力が引力だけであるため、お互いに引き合い、巨大な物質の塊を形成し、やがてそれらはブラックホールを形成すると一般的には考えられています(ただし私はブラックホールの存在を否定しています)。そしてこのブラックホールの表面がエントロピーをあらわし、どんどんブラックホールが増大し、宇宙にはブラックホールがあちらこちらにでき、充分な時間の経過の後、宇宙に存在する物質は、すべてブラックホールに吸い込まれ、宇宙は熱的平衡死ではなく、ブラックホール死を向かえる、というストーリーがブラックホールの概念が生まれてからしばらくの間は、主流を占めていました。ここで、考えられている宇宙の最終的な姿は、それまでのどこもが均一な熱的平衡の世界とはまるで正反対です。宇宙のいたるところにブラックホールが存在し、そのブラックホールのために宇宙は均一どころか、ボコボコになってしまう。このように熱力学第2法則といっても、ある時期を境として、全く違った結果が得られたわけです。そしてこの話はこれでおしまいではなく、さらにどんでん返しがあります。それはあの有名なホーキングによってもたらされました。量子力学的効果によって、ブラックホールも蒸発するというのです。ブラックホールは重力により物質を集めようとするのですが、量子力学的効果がそれは上回るときに、ブラックホールは蒸発するというのです。それは宇宙の密度が下がり、ブラックホールの周りに吸い集めるような物質がなくなってしまったときに現れるとされています。つまり宇宙が開いていていつまでも膨張し続けるときにブラックールは消失し、狭義の熱的平衡死が訪れるのですが、それに比して、宇宙が閉じており、収縮に向かう場合は、宇宙の密度が増加し、重力の作用が、量子力学的効果を上回り、ブラックホールは消失せず、次第に、その大きさを増し、融合しあい、最後には1つの巨大なブラックホールを生成するだろうと考えるような立場もあります。いずれにせよ、現代の宇宙物理学では、熱力学第2法則の適用と言っても、均一な宇宙からボコボコの宇宙まで、いくつもそのシナリオが存在しその結末も違ったものとなっているのです。そしてどれが正しいのかを決定することが不可能な状態に陥っています。熱力学第2法則により宇宙がどうなるのかという問題自体が乱雑な状態へと向かっているのです。

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  熱力学第2法則やエントロピーの増大の法則が予測した熱的平衡とは、温度及び物質密度が均一化することであったはずです。そしてブラックホールなどはこの熱的平衡とは対極にある状態であるはずなのに。なぜブラックホールの表面積がエントロピーをあらわすのでしょうか。ここではもはやエントロピーに対するまともな概念などどこにも存在していません。熱力学第2法則に対するこのような際限のない拡大解釈が本当に正しいとは考えられません。
 熱力学第2法則が主張しているのは正確には「孤立系でありかつお互いの粒子の間に力が働かない多粒子の系では、充分な時間が経てば温度と物質密度の分布は均一化される」ということなのです。理論や法則はその適用範囲を厳密に守らなければならないのです。それなのに、物理学者の多くは無制限に使い、その結果を完全に正しいと信じ込んでいます。そしてその理論や法則の適用が正しかったかどうかについては全く無頓着です。

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 次に思考実験で単純な熱力学第2法則では決して宇宙が熱的平衡状態になることを証明できないことを確かめてみよう。   宇宙が仮に今のままの宇宙の密度で、熱的平衡に達したと仮定してみましょう。この宇宙がいつまでもこの熱的平衡を保つことができるでしょうか。完全に均等な状態の熱的平衡というのは保つのは不可能です。統計学的にも、必ず、密度のゆらぎは生じるものです。そしてこのゆらぎはによって密度の増加した部分では、重力の作用が他の部分よりも強く働くことになります。そしてこの重力の作用は、ゆらぎをさらに強める方向に働きます。ゆらぎは増強され密度は上昇しこの密度の上昇は、さらに重力の作用を増強させる。ゆらぎを増大させる方向に重力は作用するわけである。従来の熱力学第2法則がより強く働くのは、物質がより強く運動しているときであり、その運動エネルギーはより乱雑な方へとその系の状態を変化させようとします。実はこの最も運動エネルギーの大きな状態は、物質が凝集しているときです。重力による位置エネルギーが運動エネルギーに変換されているからです。一見熱的平衡にあるような状態、それは宇宙空間に物質がばらまかれた状態ですが、このような状態では、極めて少ない運動エネルギーしか持ち合わせておらず冷えきった世界です。このような世界では、重力の影響を受けやすく、もしどこかに揺らぎが生じて、密度の高い部分が生ずれば、運動エネルギーが少ないので、それに抗して、散らばることができずに、凝集を始めるのです。これは決してその2つの間に平衡状態が生じる事なく、2つの間、熱的平衡と重力による凝集との間の振動を続けることを意味します。それはまさしく理想的振り子が永久に運動を続けるのと同じです。 つまり、物質が熱的平衡にある部分と、重力的に物質が凝集している部分が混在しながら、違いに姿を変え、そのような状態の変化を恒久的なものとして続けるのです。このようなことが確かに起こるかどうかを決定するには、熱的平衡状態の部分において、どの程度の熱的エネルギーの密度があるかということと、どの程度の質量が存在するのかということが重要な要素となるでしょう。つまり、ゆらぎを増大させるほど、重力が強いのか、それとも重力の作用を打ち消しかき乱せるほど、熱的エネルギーが強いのかということです。これは、簡単に熱力学第2法則だけを考えれば片付くような問題ではないはずです。このように、既に熱的平衡に達したと仮定した宇宙ですら、その平衡状態を維持するかどうか不明であるのに、いまだ熱的平衡状態に達していない宇宙が、熱的平衡状態に向かっているなどと判断するのは、実に馬鹿げた考えです。 BACKMENUHOME