20 宇宙マイクロ波背景放射をシミュレーションする

 

☆10万分の1のゆらぎをシミュレーションする
☆2.725K黒体放射をシミュレーションする
☆膨張宇宙では2.725K黒体放射は存在できない
☆Tired Light モデルと宇宙背景放射について

 最近では、ビッグバン宇宙が正しく定常宇宙が間違いであるとされている一番の根拠は、宇宙マイクロ波背景放射の、10万分の1のゆらぎしかないその滑らかさと、2.725Kの黒体放射に限りなく一致することである、と言われているようです。
このような考えはほとんどの宇宙論学者に受け入れられ、ビッグバン及びインフレーション宇宙がこの時代のパラダイムであるとされています。
 しかし本当にこの考え方が正しいのでしょうか。 もし定常宇宙でこの背景放射の滑らかさと黒体放射への限りない一致が説明可能で再現できるのならば当然このパラダイムは再考を必要とします。 このような非常識と一般には思われている課題に当然このホームページは取り組んでいかなければなりません。 それでは定常宇宙でこの背景放射を説明するという人跡未踏の問題にチャレンジすることにしましょう。

☆10万分の1のゆらぎをシミュレーションする
 宇宙マイクロ波背景放射について次の2点を検討しなければいけません。
@10万分の1の温度ゆらぎしかない滑らかさの理由
A正確に2.725K黒体放射を示す理由

まず@の滑らかさの理由を考えることにしましょう。
以前の章(
第19章COBE・WMAPデータはビッグバンを支持しない!)で私は、定常宇宙で10万分の1を説明する困難は、ビッグバン宇宙において、10万分の1の温度ゆらぎでは銀河や銀河の大規模構造が宇宙が誕生してからあっという間に形成されることを説明できないのと、同じような困難である、と言いました。 これは私にとっては逃げの手でありました。 争う相手の困難と同じであると言う理由だけで、定常宇宙で10万分の1という滑らかさを充分には、説明していませんでした。 背景放射のゆらぎが物質密度のゆらぎと同じレベル程度を反映するものであるならば、私たちの銀河周辺での物質密度のゆらぎがいくら銀河間にもたくさんの粒子が存在したとしても、10万分の1のレベル程度のゆらぎで済むはずがないことは、私にも常識的に考えられることでした。 おそらく多くの宇宙論学者は私のこの常識的な認識と同じものを持ち合わせていたために、即座に宇宙マイクロ波背景放射を宇宙空間物質の放射由来ではないと判断したのでしょう。 しかしこのままでは定常宇宙論にとって好ましい状況ではありません。 10万分の1のゆらぎを定常宇宙モデルにおいてきちんと説明する必要があります。 それではそのシミュレーションを行いましょう。 
 私たちの銀河周辺での宇宙の物質密度のゆらぎのレベルがその宇宙空間からの熱放射のゆらぎと同レベルで相関したとします。 背景放射のゆらぎを簡単に表すためここではサインカーブを使うことにします。そしてそのゆらぎを10分の1または100分の1とし、それを図1に示します。




 一番下の黒いラインはゼロのレベルを表し、サインカーブの中心のラインが10又は100のレベルを表すとします。 ゆらぎの大きさはサインカーブの±1のゆれ幅になります。 青のカーブが10分の1のゆらぎ、緑のカーブが100分の1のゆらぎを示します。100分の1はかなり小さいと実感できますが、実際のゆらぎは10万分の1ですから、物理学者の方々が非常に滑らかであるというのも、なるほどと思われます。 宇宙空間の物質の熱放射のゆらぎがその物質密度に相関すると考えますと、背景放射のゆらぎが10万分の1ですので、私たちの銀河周辺の宇宙の物質密度のゆらぎが10万分の1のレベル程度のゆらぎでなければいけないことになります。 いくら銀河形成にバイアスがかかっていたとしても、これは私であっても信じがたいことです。 それで私たちの銀河周辺例えば私たちから150万光年ぐらいの距離の場所の宇宙空間物質からの熱放射のゆらぎが100分の1ぐらいであったとします(このぐらいであれば多くの宇宙論学者の許容範囲ではないでしょうか)。そしてこれをサインカーブであらわしましょう。更にこれを宇宙全体に適用して考え宇宙のどこでも宇宙空間物質の熱放射のゆらぎは100分の1ぐらいであるとします。 この文章を読んでおられる方は10万分の1のゆらぎを導き出そうというのに、最初から100分の1というのは矛盾していると思われるかもしれません。 しかしこれこそが落とし穴です。 この問題を解く鍵は実は簡単なことなのです。例えば、100億光年先の銀河でも我々は観測することができるということがその鍵なのです。 宇宙空間では光が吸収される割合は非常に少なく非常に遠くからでも十分に光は届いています。 つまり各場所で宇宙空間の物質が熱放射したとしてもそれが背景放射のすべてではないということです。 熱放射は光と同じく電磁波ですから遠くの場所の宇宙空間の物質の熱放射も我々のところまでやってきているのです。 定常宇宙で宇宙マイクロ波背景放射が、宇宙空間の物質の熱放射由来であると考えても、周辺空間の物質由来の熱放射だけ考えてよいのではなく、はるかかなた数億光年数十億光年先の宇宙空間物質由来の熱放射も足し合わさなければなりません。
私たちからのある距離における宇宙空間物質からの放射の寄与分を考え、それが幾重にも重なりまるで真珠の層のようになって背景放射が形成されると考えることができます。 それを図2に示します。


  宇宙はどこでも同じような姿であると言う宇宙原理に従えば、そのゆらぎを示すサインカーブの振幅や波長はどこでも同じです。ただし各層によって物質密度のゆらぎは当然ずれてくるでしょうから、サインカーブの開始位置の位相は任意の角度を付け加える必要があります。
真ん中のピンクが私たちです。左の水色の扇型はある方向での観測の視角範囲を示します。当然遠くほどその視角にはいる波の山の数は多くなり距離に比例します。これが問題を解くためのイメージです。



   sin(θ + α1)
   sin(2θ+ α2)
   sin(3θ+ α3)
赤のカーブ = {sin(θ + α1) + sin(2θ+ α2) + sin(3θ+ α3)} / 3 ・・・・式1


 これを我々の近くから3層目までで、どうなるかを考え、それを図3に示します。 ゆらぎは我々から重なって見えます。 そして、オルバースの逆説にもあるようにそれらはそれぞれ私たちから見て同じ明るさを持ちますので、ゆれ幅はどれも同じです。 3つの層を合成したゆらぎの大きさは単純に足し合わせて平均を出せばよいのです。 その平均が式1で示される赤のカーブです。 相対的なゆらぎの大きさは小さくなります。




更に10層まで考えたものが図4です。



 そして更に1000層まで考えたものが図5の赤の小刻みに揺れたラインになります。層をたくさん考えるほどゆらぎはどんどん小さくなることがよくわかります。 もちろんここでは簡略化して考えています。 厳密に考えれば途中で赤方偏移を受けたり吸収されたりしますので、オルバースの逆説も当然そのままでは成立しないはずですが、おおよそのシミュレーションとしては理解できると思います。
 一番最初の層を150万光年ぐらいで100分の1ぐらいのゆらぎを持つと仮定します。 そして全部の層を150億光年までとし、それ以上遠いところはかなり減衰するであろうと思われるので無視しますと、全部で層は1万層になります。その層を足し合わせて平均してゆらぎが例えば始めのゆらぎの1000分の1ぐらいなったとします(これらは厳密に計算したものではありません。興味があり数学や宇宙物理学に自信がある人は自分で考えてください)そうすると100分の1の1000分の1で10万分の1となります。 これで見事10万分の1のゆらぎが再現できました。 あまりにもいい加減で強引であると非難されそうですが、少なくとも定常宇宙モデルで宇宙マイクロ波背景放射の形成を考えた場合、そのゆらぎが100分の1や1000分の1程度のレベルではありえない、ということはわかるように思えます。 そして、10万分の1あたりが最もありえそうな妥当な数字と思われます。 宇宙マイクロ波背景放射を定常宇宙では私たち銀河周辺の宇宙空間由来であるとだけ考えてしまっていたことが、大きな間違いであったのです。 遠くから光がやってくるのですから、背景放射のそのほとんどは、はるか何10億光年もの遠方からやってきたものであり、宇宙全体で形成されているという当たり前のことに気づかなければなりません。 近傍の宇宙空間の物質由来の粗いゆらぎは全体の中に埋もれ平均化されて滑らかなゆらぎを形成するのです。  COBEやWMAPの観測結果は定常宇宙モデルにとっては大変ありがたいものです。 定常宇宙では、極わずかの間に大規模構造を作り上げるような必要がないのですから、背景放射のゆらぎの滑らかさはビッグバン宇宙ではなく定常宇宙にこそ好都合で支持する材料といえます。 
 さてここでさらに、日経サイエンス2005年11月号p22〜p31 「宇宙の調べは狂っている? 背景放射の奇妙なずれ」 (第19章 )の中で言及している問題について述べたいと思います。 この文献の中に背景放射のゆらぎの low-l の成分がビッグバン宇宙で予想されるより小さく、かつ近傍の宇宙の構造を反映している可能性を示唆しています。 low-l の成分はビッグバンでは宇宙全体のゆらぎのなかで低調の成分になるようですが、定常宇宙ではこのような低調の成分は近傍の宇宙空間由来であり、宇宙全体にわたるものではないため、当然ビッグバンで予想されるより小さくなると考えられます。 またlow-l の成分が定常宇宙では近傍の宇宙の構造を反映しているのは当たり前のことです。 背景放射において解決すべき問題のすべてが定常宇宙モデルでは完全に解決されているように思えます。 この問題に詳しい専門の方には是非検討していただきたいものです。
☆2.725K黒体放射をシミュレーションする
  
さて次にAの背景放射が2.725Kの黒体放射に完全に一致する という問題を考えてみましょう。
宇宙論学者たちは定常宇宙での背景放射は宇宙空間からの熱放射だと考えた場合、遠い宇宙空間由来の熱放射も私たちのところまでやってくるはずであるとし、それら熱放射は赤方偏移を受けるので黒体放射の示すカーブのパターンを保てなくなると考えたようです。 そしてこの考えも宇宙マイクロ波背景放射が定常宇宙にとって否定的材料である根拠となっています。  
 ここで非常に不思議に思うのは、背景放射のゆらぎが非常に滑らかであることで定常宇宙を否定するときには、遠くの宇宙空間から、これら宇宙空間の熱放射がやってくることをおそらく考えず周辺の宇宙の物質密度のゆらぎと背景放射のゆらぎがかけ離れているという理由で定常宇宙を否定していたことです。 背景放射が黒体放射に完全に一致することが定常宇宙では成立しないということの理由付けには、はるか遠くの宇宙から放射がやってくると考えるのとは正反対です。 この問題について定常宇宙の否定理由をはっきりと書いたものがほとんどないので、これらは私の推測です。 もし本当にここで説明したように、この2つの問題に対して正反対の考え方を宇宙論学者が用いているなら、全くの馬鹿です。 まさかそんな事はないと思いますので、専門家の皆様は多くの人にわかるように、ぜひその理由をお示しください。
  ともかくこの問題を考えるには、遠くの宇宙空間からやってくる熱放射をどのように取り扱うのかを真剣に考えなければならないことは間違いありません。
 この問題を取り扱うために、まず私の提唱する定常宇宙モデルを採用した上で、すでに2.725Kの黒体放射で満たされているというシミュレーションモデルを考えましょう。 この宇宙モデルで2.725Kの黒体放射がいつまでも保てるならばOKですが、もし保てずに崩れていくならシミュレーションは失敗です。
このモデルにおいて現在の私たち観測者の地点AとそれからX光年離れた地点Bを考えます。 どちらの場所でもシミュレーションの最初の時点では2.725Kの黒体放射が存在します。 



 図6では中心のピンクを私たち観測者の地点Aとしその部位での背景放射を左の青のカーブで表しました その場所とX光年離れた地点Bからやってくる放射を水色の視角の範囲で観測します。 X年後に私たちがA地点で観測するはずの、X年前のB地点における元々の背景放射カーブを右の青のカーブとしました。 左右の青のカーブはどちらも全く同じ形です。 X光年先からやってきた放射はA地点では赤のカーブに赤方偏移します。 青のカーブと赤のカーブは明らかに違う形態を持ちます。 この2つを足して平均した(緑のカーブ)としてももどうしても元の青のカーブは再現できそうにありません。

 
  ・・・・・・・式2
( プランク定数 h = 6.6260693 * 10^(-34) J・s
 光速 c = 2.99792458 * 10^8 m/s
 ボルツマン定数 k = 1.3806503 * 10^(-23) JK-1
 自然対数の底  e = 2.7182818  
 λは波長 Tは絶対温度)


・・・・・・式3
(z は赤方偏移の量
 e は自然対数の底 式2の説明参照
 x は光の発せられた場所から私たちまでの距離
 R は宇宙の曲率半径 ここでは150億光年としています。150億光年とする根拠は
第17章定常宇宙モデルは観測データに本当に一致するか? を参照してください)
 
 それで次に示す図7aでは2.725Kの黒体放射のカーブを式2(黒体放射における波長λの時の放射の強度B(λ)を表す式)より描画し、それが更に式3(第9章 相対性理論の修正 参照)で赤方偏移を受けると考えた場合の15億光年、45億光年、90億光年先よりやって来た放射を赤のカーブで示したものです。単純に赤方偏移で波長が伸びる分だけ右方向に引き伸ばしています。 これらは遠くなるほど、2.725Kの黒体放射のカーブとは違う形態になります。 これら遠くの放射が赤方偏移をして私たちの方にやってくるなら、2.725Kの黒体放射カーブを再現できないのは当たり前のように思えます。 おおよそこのような考えから多くの宇宙論学者は定常宇宙に対して背景放射は否定的材料であると判断したのでしょう。


 しかし、そんなに簡単に否定してよいのでしょうか。 私は少なくともこの考え方は根本的に間違いであると考えます。 遠くの2.725K黒体放射が赤方偏移をしてそのままこちらへやって来るというのは、あまりにも安易な考えと思われます。 定常宇宙でその宇宙空間をみたす背景放射が2.725Kならばその宇宙空間の物質は必ず2.725Kでなければならず、しかし赤方偏移があるのだから黒体放射の形態を保つのは不可能という考えは、先入観に凝り固まった愚かなものです。 宇宙空間を満たす背景放射が2.725Kの黒体放射であるからと言って、その放射を行う物質が本当に2.725Kである必要はありません。 熱平衡にとって重要なことはそれを放射する物質が真にその温度であることではなく、ある温度の黒体放射パターンを作る、ただそれこそが重要なのだと私は考えます。 つまり遠くの宇宙空間からやってきた宇宙空間物質の熱放射が2.725Kから赤方偏移し長波長側にずれるならこちらの宇宙空間物質は2.725Kよりやや高めの短波長側の熱放射を行いそれを打ち消し全体で2.725K黒体放射を形成すればよいのです。 またこれは双方向性のものであり、向こう側の宇宙空間の物質も同様に2.725Kより高いとすればよいのです。 つまりいたるところで宇宙空間の物質の温度は2.725Kより実は高いのです。 こんな無謀とも思えるような考えがはたして成立するのでしょうか。 ここでその無謀なシミュレーションを行ってみましょう。 図7aで赤方偏移すると2.725Kの黒体放射が遠くほど長波長側にずれることを示しました。 もしこのずれを短波長側の放射で補正し2.725Kの黒体放射を再現しようとするとこれらすべての放射を多い尽くす黒体放射を形成しなければいけません。 



 これは図7b見ていただくとわかると思うのですが、 図7bでは1つの例として45億光年先から来る放射のカーブを水色の2.725Kのカーブの形態で覆っています(大きすぎて申し訳ありませんが途中で切れています)。 元の放射カーブよりもずっと大きい放射が必要になります。 遠くの赤方偏移した放射カーブを補正するために近くに来るほど背景放射が大きくなる必要があるということになります。 背景放射の強度は宇宙のどこでも2.725Kの黒体放射の強度であるはずです。 それが私たちに近づくにつれその強度がどんどん強くなるというのでは矛盾になります。この矛盾を解決するには赤方偏移をしても元の2.725Kの黒体放射カーブの内側に収まっていればよいのです。そんなことが可能であることをシミュレーションで示します。
先の図7a、7bは実は正確なものではありません。 赤方偏移をした場合波長が長くなるので、エネルギーは小さくなリますが、その効果を補正していません。 さらにもう一つ、例えば赤方偏移したそのエネルギーを補正したとしても波長が大きくなったところにプロットしグラフを作ったのではグラフが横に引き伸ばされ積分したエネルギー量は増加することになります。これらの二つを補正するには(z+1)^2 = {e^(x/R)}^2  (式3より)で割り算しなければならないでしょう。 そのような点を補正したものが図8です。



 かなりよいところまできましたが、しかしこれでも元の2.725K黒体放射の青のラインからはみ出ています。これではやはり困ります。 どうしても遠くからやってきた放射カーブの長波長側へのずれが黒体放射のカーブを乱してしまいます。 まだ補正が必要です。 私はその補正とは遠くから来る光が途中の物質に吸収されることだと思います。 宇宙空間からの放射が私たちにたどり着くまでには、その途中の宇宙空間に今までにも述べてきましたように、物質粒子が存在するのです。 それら物質粒子が熱放射をすると共に遠くからの光を吸収するはずです。 

 ここで途中での吸収の割合をいろいろ試し計算したところ150億光年先からやってくる光が途中で60%吸収され、40%が無事こちらまでたどり着くというぐらいの割合ですと、どの距離からの放射もほぼちょうど元の黒体放射カーブの内側に収まります。 それが図9です。 各カーブがおもしろいほどぴったり収まっています。 それ以上の割合で吸収しても、もちろん黒体放射の内側に収まりますが、ここでは150億光年で60%の吸収で考えます。





 図10では黒体放射のカーブとそれぞれの距離から来た放射のカーブの差を緑のラインで表しています(青マイナス赤 です、これを今後、補正カーブと呼ぶことにします)。 そしてこれが補正すべき放射量となります。90億光年先からの放射に対する補正すべき放射量(一番高い補正カーブ)のピークは波長1.018mm、45億光年先からでは0.932mm(2番目の高さの補正カーブ)、15億光年からでは0.858mm(一番低い補正カーブ)となります。 しかし遠くからやってくる放射は90億光年先から突然私たちのところまでやってくるわけではありません。 長い距離を旅する間、常に(たった1メートルを進む間ですら)この補正を受けていると考えるべきです。 



 それではもっと近くから来る放射がどのようになるかを考えます。 図11には2.725Kの黒体放射を青で描き、やはり150億光年の距離を進む間に60%の放射が吸収される条件で、150光年先・1500光年先・6000光年先からやってくる放射を赤のラインで描いていますが、青のラインはなく赤のラインも1本しかありません。 実は青のラインを先に描画したので赤のラインが重なって青のラインを消してしまったのです。また赤の150・1500・6000光年先からの放射のラインもわずかな差異しかないので3つとも重なっています。 それでこれらの差異がどれぐらいあるのかを知るため計算で元々の黒体放射と各々の差異を100万倍し緑のラインとして表しました。 これが各々の100万倍した補正カーブです。 この補正カーブの高いほうから順に6000光年、1500光年、150光年先からやってくる放射との差となります。 いずれもそのピークの波長は0.818mmであり、また適当に倍率を変えて描くと3つの補正カーブは一致してしまいます。



 どうやら限りなく放射場所が私たちに近づくと、補正カーブの波長のピークは、0.818mmに収束するようです。 この0.818mmの波長をピークに持つ黒体放射のカーブと、1500光年の補正カーブとを頂点をそろえて描くと図12に示す水色のラインになります。このラインを持つ黒体放射はウィーン変位則( λmax=0.002898/T )より3.59Kの温度です。 完全には補正カーブと水色のカーブは一致しませんが似ています、おそらく宇宙空間に存在する物質粒子が3.59Kであれば(3.59Kの正確な熱的平衡状態というわけではなく2.725Kの黒体放射を形成するための3.59Kの準熱的平衡状態と思われます)、その3.59Kの物質からの熱放射によって、150億光年の間に60% の光が吸収するような条件では遠くの宇宙空間からやってくる放射の赤方偏移は常に補正され2.725Kの黒体放射を維持し続けることができると考えられます。 どこからやってくる放射であろうが常に2.725Kの黒体放射に補正されるのですから、 ゆらぎの時のようにいくつもの層を足し合わせるとどうなるかなどと考える必要もありません。 
 補正すべき項目がこれで全てであるなら、150億光年の距離を光が進む間にその約60%以上が吸収されなければ完全な黒体放射のカーブを形成することができないことになります。 またこの限界の条件では、宇宙空間の物質温度は実は2.725Kではなく3.59Kであることもわかります。 
 
第17章 定常宇宙モデルは観測データに本当に一致するか? で非常に遠方での実際に観測された超新星のデータのほうが私の予想したカーブ(z+1倍した後のもの)よりもわずかに遠く(暗く)のようにグラフ上見えるのは、この途中での吸収(150億光年で60%程度?)によるかもしれません。 この吸収を考慮に入れればぴったり一致しそうに思えます。 




 光が150億光年進む間にその99%が吸収するような宇宙空間の条件のシミュレーションは図13に示してあります。図11,12と同じく2.725Kの黒体放射を青で(ただし赤に重なり見えません)、150光年、1500光年、6000光年先よりの放射を赤で(重なっています)、その差の100万倍を緑で描いています。 はみ出ているのは6000光年先よりの放射の補正カーブです。これら100万倍した補正カーブのピークはいずれも0.918mmとなり宇宙空間の物質の温度は3.16Kということになります。 3.16Kの黒体放射のカーブを図12と同じく1500光年の補正カーブの頂点に一致させ水色で描いています。 150億光年で60%の吸収の条件の場合(図12)に比べ、150億光年で99%が吸収される場合(図13)の方がより補正カーブは黒体放射の描くカーブに近づいていることがわかります。 ここには示していませんがもし150億光年の間に99.99%が吸収されるのであれば、宇宙空間の物質の温度は2.94Kになり、補正カーブはその温度の黒体放射のカーブとほぼ一致します。 吸収する率が高くなるほど宇宙空間の物質の温度は2.725Kに近づくと共にその補正カーブも2.725Kの黒体放射のカーブに近づくようです。 考えてみればこれは当たり前のことでしょう。 限りなく吸収する率が高くなれば、放射は短距離で全て吸収・散乱され赤方偏移を考えに入れる必要はなく、通常の熱平衡と変わりがありません。 当然黒体放射の温度とそれを補正するはずの物質の温度は一致し、その空間に存在する物質から放射される補正カーブの形態は正にその温度の黒体放射と相似になります。 
 もし宇宙空間の物質温度が3.59Kであっても、それをとりまく背景放射は2.725Kなのですから宇宙空間の物質は冷えていくことになるはずです。 しかし2.725Kの背景放射をずっと保つためにはその物質温度がさがることはできません。 3.59Kを保つのは銀河が放つ放射エネルギーであると思われます。 宇宙空間の物質は背景放射を保つためにそのエネルギーを放出しながら、銀河などからの放射エネルギーを吸収することによりそのやや高めの温度を維持していると考えられます。
 このやや高めの温度を持つ宇宙空間物質の放出する熱放射が赤方偏移し続ける2.725Kの背景放射を常に補正し2.725Kに維持するのです。 まさにこれこそが大宇宙の動的でありながら定常であるという、見事な調和です。
 ここに示した結果はすべてパソコンを用いたシミュレーションで求めたものですが、微積分等に強い方はそれらの数式から直接結果を導くことも可能だろうと思われますので試してみてください。 必要な材料は全てこの章の中に示してあります。

☆膨張宇宙では2.725K黒体放射は存在できない
 さて今回背景放射のシミュレーションを行ったことにより、今まであいまいではっきりとわからなかった事が私の中でかなり整理されてわかってきました。 それは、B(λ)・・式2のことです。 この式は黒体放射がどのような放射をするのかを、その波長λとそのλにおける黒体放射の強度の関係であらわしたものです。 この式の右辺において、文字があらわすもののうち波長λと温度T以外はすべて定数です。 波長λとその強度の関係の式なのですから、そのλを除けば黒体放射のカーブを変化させる要因は温度T以外はありません。 その式には放射を起こさせる物質がどのような物なのか、そして物質密度がどのぐらいであるかなどの変数は一切存在しません。 つまり宇宙空間の物質が黒体放射を行っていてもそれがどのような物質か、そしてどのぐらいの密度なのかは全くどうでもよいことなのです。 多くの物理学者は宇宙空間が黒体放射が行っていないという理由に、宇宙空間には十分な物質が存在しないことをあげているようです。 また準定常宇宙を提唱していた物理学者ですら、宇宙空間が黒体放射を行っていると言う理由付けに宇宙空間には鉄粒子が存在していて、その鉄粒子が効率よく放射を行っているとしました。 しかし、ここに示したB(λ)の式からは、そんな理由付けは一切関係のない話で、どのような物質であれそしてそれがどんなに希薄であろうが、少しでも物質が存在し温度がある限りは黒体放射が存在してもよいのではなく、必ず存在しなければならないということがわかります。 このことを確信したのは、150億光年の間にどのぐらい光が途中の物質に吸収されているかを検討したことによります。 150億光年の間に60%の光が途中の物質に吸収されるという条件は例えば150光年の間に光は0.000001%吸収されるに過ぎません。 私たちの常識ではほとんど途中に物質はなく全く素通りという状態です。 こんな希薄な状態でも100億光年単位まで考えるとその希薄な物質による放射によって黒体放射の形態を維持することがわかりました。 また反対に物質密度が高ければ光は遠くからやってこれず黒体放射は近傍によってのみ形成され遠方の影響をほぼ受けません。 物質密度が低ければ遠くからの放射が積分され、物質密度が高ければ近傍だけで形成されるということで、結局は物質密度は黒体放射には影響しないのです。 式を見た瞬間にこのようなことは物理学の基本の当たり前のこととして認識されるべきなのでしょう。 しかしなぜか実際の宇宙の話となるとそれが、誤って認識されているようです。 それで宇宙空間に存在する物質は放射を形成しないように説明されているのですが、このようなことは物理学の基本としてありえません。
 もしかして私たちに充分説明していないだけで、ビッグバン膨張宇宙においても、宇宙空間の物質の熱放射を物理学者は検討しているのでしょうか。 わかりませんので、こちらで勝手に検討することにします。 宇宙空間の物質は必ず熱放射を行っています。 それは観測されなければいけませんが、実際には2.725Kの黒体放射以外は観測されていないようです。 そうであれば宇宙空間の物質の熱放射はその2.725Kの黒体放射の中に埋もれていなければなりません。 膨張宇宙では初期の1000分の1の大きさであったときに約3000Kの温度で熱的平衡状態にあった考えられています。 そしてその初期宇宙の黒体放射の光の波長が宇宙空間の長さが1000倍に引き伸ばされると共に光の波長も1000倍に長くなり、今の2.725Kの黒体放射になったとされています。 1000分の1の時の宇宙の宇宙空間物質の温度が約3000Kですが、もし宇宙空間の物質の温度がずっとそのままなら、その時から現在までその温度で熱放射を行い2.725Kの黒体放射はずたずたになってしまいます。 このような異常な事態を回避し、ビッグバン膨張宇宙における2.725Kの黒体放射を守る唯一の方法は宇宙の膨張と宇宙空間の物質の温度が完全に歩調を合わせて変化することしかないように思われます。 黒体放射のピークの波長と絶対温度は反比例しますので、1000分の1の宇宙から大きさが2倍になれば温度は1/2倍の約1500Kに10倍になれば1/10倍の300Kに、100倍になれば1/100倍の30Kになればよいのです。 このようになれば、宇宙の膨張によって引き伸ばされた、宇宙初期の黒体放射の波長とその時の宇宙空間物質から放射される放射の波長は常に一致し現在に至るまでその黒体放射のパターンを乱すことはありません。 しかし、宇宙の膨張と宇宙空間の物質の温度が完全に反比例するという物理学的根拠は不明です。  考えうる理由として宇宙膨張により引き伸ばされた背景放射と宇宙空間の物質が熱的平衡状態となり宇宙空間の物質が背景放射と同じ温度になるということです。 しかしこれでは過去から今までありとあらゆる時期を通じて熱的平衡状態が続いていることになり、宇宙マイクロ波背景放射は宇宙が1000分の1の大きさで熱的平衡状態であった頃の残光であるという主流派の方々の説明とは矛盾します。 これら主流派の説明を無視したとしても、背景放射により宇宙空間の物質が冷めるということであれば、逆に背景放射は宇宙空間の物質により温められるはずです。 だとすれば、宇宙の膨張の度合いと背景放射の温度が完全に反比例するというのは成立しなくなります。 また、定常宇宙での2.725K黒体放射のシミュレーションで示したように、銀河などからの放射により宇宙空間の物質は必ず温めらられるはずですので、宇宙の膨張と宇宙空間の物質の温度が完全に反比例し、黒体放射が維持されるというのは、不可能なように思われます。 やはり、ビッグバン宇宙で黒体放射が成立するのは、宇宙空間物質からの放射の完全な無視しかないようです。 これは主流のビッグバン宇宙支持者によってすでに行われていることです。 ビッグバン膨張宇宙では、1000分の1の宇宙の時代に放射された光が現在の宇宙に至るまで宇宙空間に存在する物質と何の相互作用もせず、また宇宙空間に存在する物質自体からも何の放射もされずに黒体放射を保っていると考えているとしか思えません。 しかし、本当にそれは正しいことなのでしょうか。 どう考えても、物理学の基本を無視した暴挙としか思えません。 式2のB(λ)が示すものを考えれば、宇宙空間の物質の放射を無視するということは、物理学や論理の基本において絶対にしてはいけないことのはずです。 その絶対にしてはいけないことをしなければビッグバン膨張宇宙において黒体放射を説明することができません。 こんな物理学的にありえない条件を脳天気にいつまで信じているのでしょうか。 定常宇宙では、近くから遠くまでの宇宙空間からやってくる放射の赤方偏移・銀河などの熱源の放射・宇宙空間の物質の温度を考えにいれ、それらがすべて調和を保ち2.725Kの黒体放射を形成すると考えます。 あなたはどちらが正しいと思いますか? 
 
 私はこの章において
@10万分の1の温度ゆらぎしかない滑らかさの理由
A正確に2.725K黒体放射を示す理由
 この2つが定常宇宙において説明しうることをシミュレーションで示しました。 
次は主流派である方々が、このシミュレーションが完全に間違いであることを証明すると共に、膨張宇宙において、宇宙の膨張と宇宙空間の物質の温度が正確に反比例するのかどうかを説明してください。 反比例することを証明できれば問題ありません。 証明できなければ、膨張宇宙では2.725Kの黒体放射は存在できないと私は考えますので、それでも2.725Kの黒体放射が存在できる証明を是非お示しください。 


☆Tired Light モデルと宇宙背景放射について(2007年4月9日追加)
 これらのシミュレーションを書いた後、背景放射についてさらに調べていたところ、以前に引用したこともある、「Errors in Tired Light Cosmology」  http://www.astro.ucla.edu/~wright/tiredlit.htmを再び目にする機会がありました。 以前この文献での主張の1つである「赤方偏移zに位置する超新星ではその経過の時間がz+1にtime dilation される(引き伸ばされる)が、その効果はTired Light モデルでは説明できない」という考えに対して、第16章において私の説(広義のTired light モデル)ではそれが完全に成立することを説明しました。 このとき time dilation に関する部分しか読んでいなかったので、「背景放射がTired Light モデルでは説明できない」という部分を認識していませんでした。 主流派が、「背景放射は定常宇宙では説明できない」となぜ考えているのかが、ここに書いてあることに、はじめて気がつきました。 この「Errors in Tired Light Cosmology」を書いたのは、Edward L. Wright という方でハーバード大学で博士号を取得し、MITで教えた後、1981年からUCLAの教授をしておられます。 赤外線天文学と宇宙論に興味を持ち、COBEやWMAP の仕事もしておられ、1992年には彼の宇宙背景放射の研究に対して、NASAから特別科学業績メダルを受けています。
それではその人の書いた「Errors in Tired Light Cosmology」 http://www.astro.ucla.edu/~wright/tiredlit.htm の
一部をここに訳して引用します。


 Tired light モデル(疲れた光モデル)では、いくつかの信じられないような偶然がなければ、宇宙マイクロ波背景放射は黒体放射のスペクトルを作ることができません。宇宙モデルとして膨らんでいく風船の類似を考えると、それを示すことができます。下の図は風船による類似で2倍になった状態を示しています。




黄色の斑点で表した銀河に気をつけてください。それは大きくなりませんが、銀河の間の距離は大きくなります。そして光子は宇宙が広がるにつれ位置を変え青から赤へと変化し、光子の密度は小さくなります。しかしながら、下の図に示したTired Light モデルでは密度は小さくなりません。



従ってTired Light モデルでは宇宙マイクロ波背景放射の光子のエネルギーは小さくなりますが、冷えた黒体放射の放射の密度に合うようには、光子の密度は小さくなりません。
局所の宇宙は透過性があり、そして広い範囲の温度をもっていますので、等温の吸収状態を必要とする黒体を作ることができません。
背景放射は、はるか遠くの宇宙からもやってこなければいけません。 そして遠くからやってくる光子はTired Light 効果(疲れた光の効果)によってエネルギーを失います。 下のプロットはz=0.1 から背景放射がやってきたらどうなるかを示しています。



背景放射が、T = (1+z)*To = 2.998 K の黒体(それは青色のカーブになる)からやってきたと考えます。なぜなら光子のエネルギーはただ単に失われるだけでその密度は小さくならないからです。その結果である赤のカーブはTo = 2.725 の黒体放射ではなく、そのかわり黒体放射の(1+z)^3 = 1.331倍になります。FIRASのデータはこの要因を 1.00001+/-0.00005に制限します。これは背景放射が赤方偏移0.00005以下か、0.25Mpcの距離までからしか来ないことを意味します。 これはM31アンドロメダ銀河までの距離であり、われわれは宇宙がこの距離よりも遠くまで透過性があることを知っています。 実際mmの波の放射は赤方偏移4.7若しくはそれ以遠の銀河からやってくるのが観測されているので、Tired light モデルはこのテストを標準偏差の100,000倍で満たしていないことになります。

(以上にて引用終了 最後のグラフは、私の示した背景放射のグラフとは単位が違うので見た目が違います)

 一般的にTired Light 宇宙論 やTired Light モデル と呼ばれるものでは、赤方偏移を、ドップラー効果あるいは宇宙空間の膨張によって説明するのではなく、長い距離を光が旅する間に疲れてしまったかのようにそのエネルギーを失うという考えで説明しています。 なぜこのような説が生まれたのでしょうか。 それは赤方偏移の原因を宇宙の膨張に求めず、それ以外の原因を探すことにより、定常宇宙モデルを成立させるためなのです。 従って、通常、定常宇宙モデルとTired Light モデル はセットとして考えなければいけません。 残念ながら、この筆者はTired Light モデル が定常宇宙モデルを正当化するためのものという根本的な理由を完全に無視しているようです。 定常宇宙モデルでは通常、完全宇宙原理を踏まえているはずですから、宇宙の姿はどこでも、いつでも同じはずです。 2.725K背景放射は、宇宙のどこでもいつでも2.725K黒体放射でなければいけないのですから、私のシミュレーションのように、宇宙のあらゆる場所で2.725Kの背景放射が存在するという仮定から、始めることが必要です。 この方は、Tired Light モデルでは現在我々の周囲に2.725K背景放射があるのなら、z=0.1 またはその他の高赤方偏移の場所の背景放射は必ず赤方偏移する前の波長の短いところにピークのある黒体放射でなければいけない、という柔軟性のない安易な考えしかできないようです。 しかしそれは定常宇宙モデルではなく得体の知れない非定常宇宙モデルです。 この方は定常宇宙モデルとTired Light モデルのセットではなく、非定常宇宙モデルとTired Light モデルのセットで考え、それでは矛盾が起きるからと、Tired Light モデルを否定するというあきらかな間違いをおかしています。 そのせいで、非定常宇宙モデルでありかつTired Light モデルであることを否定したのに過ぎないのに、一般的にはこれをもって、Tired Light モデルの否定及び、それに引き続き定常宇宙モデルの否定が証明されたとなっているようです。 Tired Light モデルの否定の証明を開始したときにはTired Light モデルと定常宇宙モデルをセットにしていなかったのに、証明が終わってからはTired Light モデルと定常宇宙モデルをセットにするという信じられないような凡ミスです。 背景放射が黒体放射に一致するという観測結果により、定常宇宙論が否定されたと主流の人々が言っているのは、どうもこの文献に根拠があるようなのですが、全くの言いがかりであることがわかります。 あまりにも、お粗末な証明なので、はじめこの人の経歴をまだ読んでいなかった時には、この文献は、私のようにたいした経歴もない人の書いたもので、重要視されていないだろう、と思っていました。 しかしそうではなく、どうもこの人は背景放射に関してエキスパートであり、主流の人々の考えを代表するもののようです。
 引用していて申し訳ないのですが、私の戦っている相手は、この程度の人たちなのかと拍子抜けしてしまいました。