三菱電機「偵察衛星プロジェクト」
政府・防衛庁と連動し推進

偵察衛星導入を見込みマル秘プロジェクトを推進していた三菱電機の動きは政府・防衛庁・自衛隊の動きと連動していました。三菱電機のマル秘プロジェクト※「Mミッション(次期防衛衛星通信システム)」のスタートは、政府・防衛庁が偵察衛星へ本格的な関心を向けた動きと時期的に重なります。

. ■93年の10月から防衛庁が検討開始

「Mミッション」を担当する電子システム事業本部に衛星通信三課が設けられたのは92年4月。
防衛庁装備局通信課は92年9月に陸上、海上、航空三自衛隊幕僚監部通信課へ93年3月までに、それぞれの衛星利用の提案を取りまとめることを内々に指示。

他方、防衛庁は93年10月に偵察衛星の導入に向け内部検討をはじめ、94年1月に「写真偵察衛星の概要」という報告書をまとめています。

 94年8月には首相の私的諮問機関「防衛問題懇談会」が偵察衛星利用を提言、「防衛計画大綱」(95年11月)にも情報体制の確立をうたいました。
97年1月には偵察衛星情報を解析する画像部を含む防衛庁情報本部が新設されました。

これに先立って96年に自民党外交調査会を中心に偵察衛星導入に向けた議論が起こりました。
97年度から外務省予算枠で国際情報収集衛星調査費が予算化されました。  今年8月末の北朝鮮のロケット発射問題を前後して偵察衛星論議は政府・自民党からふきあがり、2カ月後には閣議了承まで持ち込む早さでした。

北朝鮮のロケット発射問題を前後して偵察衛星導入論議が自民党で高まった折、三菱電機は自民党の情報収集衛星プロジェクトチーム(座長・中山太郎元外相)などで谷口社長自身が偵察衛星導入の有用性について説明し、導入初期費用として1,970億円が必要だ、との見通しを示しました。

■TMD構想との関連もにらんで

偵察衛星開発をめざす国内メーカーは三菱電機、東芝、日本電気(NEC)の三社。
このうち東芝は2年前に偵察衛星事業から撤退、日本電気は防衛庁水増し不正請求事件で当面、防衛庁の大型プロジェクトを受注する環境にありません。

このため、軍事産業界では国産、輸入の導入方針にかかわらず政府が発注する偵察衛星は三菱電機が国内企業としては受注主体となるのは確実とみられています。

三菱電機は、アメリカ・クリントン政権が進めるTMD(戦域ミサイル防衛)開発を受注するアメリカ最大の軍需メーカー、ロッキード・マーチン社と今夏、防衛関連事業での提携関係を結んでいます。

三菱電機が自民党などに示した偵察衛星の説明資料では「TMD対処」との関連で偵察衛星導入が有効と記しています。
日本政府は9月下旬にワシントンで開かれた日米安保協議委員会(米側・国務、国防両長官、日本側・外相、防衛庁長官)でのTMD研究への正式参加を合意しました。

偵察衛星導入決定の背景にTMD研究参加合意の一環として急がれたいう対米配慮の事情も指摘されています。
 


「Mミッション」とは
三菱電機の偵察衛星プロジェクトは社内では暗号名「Mミッション」として関係者だけに知らされています。Mとはミツビシ(三菱)とミリタリー(軍事)の頭文字からとったもの。「次期防衛衛星通信システム」が和文名です。

Mミッションの技術面(偵察衛星本体の開発・製造)は通信機製作所(兵庫県伊丹市)と鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)で担当する、としています。

1998年11月10日付「しんぶん赤旗」


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